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今更だけど

「人数多くない?」


 今更ながら、集まった卒業生達と冒険者達の数に驚いたジン。

 流石に人数分の馬車は用意出来なかったので、数台の荷馬車に荷物を積んで、皆は歩いて行動する事に。


 〈フラウニア〉から、〈ガイス〉と〈トウゴク〉の順に回っていく。


 帰りの方が人数が増えるので、荷物の載っていない荷馬車も用意されている。

 新入生の荷物の大半は、国の召還獣によって運ばれるが、手ぶらの者など少数派だし、冒険者達の旅荷物や、食料、学園から支給された魔法薬、卒業生の荷物、武器の予備など、どうしても必要な荷物は出てくるので致し方ない。

 荷物持ち、雑用係りなどは、自分で荷物を運ぶ必要があるが、非戦闘員とされているので当たり前だ。


 戦ってくれる者の負担は、出来るだけ減らしておきたい。

 荷馬車にも限界があるので、戦闘員と依頼人を優先した結果だ。

 治療が出来る者も優遇されている。

 長期間の依頼に、治療が出来る者は貴重で、ありがたい存在だからだ。


 アヤメ、ツバサ、ラングも治療班として認識されている。

 アヤメとツバサは荷物の事など気にしないのだが(異空間倉庫に繋がっており、重さも感じないので)、わざわざ断る必要もないので(絶対に騒ぎになるので説明出来ないし)甘えさせてもらっている。

 その際、ちゃっかりジンとムウの荷物も医療道具だと言って、どさくさに紛れて放り込んでいたりする。

 手ぶらだと何か言われそうなので、ポーチ位は持っているが。


「まあ、仕方ないわよ」

「守れるのか?」


 確かにこの人数を護衛するのは難しい。

 だが、一応卒業生の中には魔法師や、騎士見習いも居るので、行きはなんとかなるだろう。

 帰りは、各地に配置された国の騎士達が交代で応援に来てくれる手筈になっているので、少しは安心出来る。

 過度な期待は出来ないが。


「非戦闘員の私達には、関係ないでしょ~気楽に行こうよ~」

「ツバサ、根に持ってるのか?」


 朝、集合場所である学園の門の前に集まった時、武器を持っている〈レジェンド〉一同に気付いた冒険者の1人が、学生が武器を持つ必要などないので、直ぐに動けるように荷馬車に積んでおけと、わざわざご忠告して下さったおかげで、周りの冒険者達にも気付かれ、中には見下してくる奴も居たのだ。


 最初に忠告した冒険者は、たんなる親切心と、後輩の冒険者に対して心配してくれただけだったので、他の冒険者達の物言いに戸惑っていたので、小さくお礼を言っておいた。

 長旅に慣れぬであろう初心者に、かさばる武器はキツかろうと思っただけだったのだから。


 他にも学生で依頼を受けた者も居て、その者達は武器を積んで、端っこで小さくなりながら、黙々と荷物を運んでいた。

 彼らも言われたのか、もしくは自らの判断なのかもしれない。


 その場では笑顔で礼を言い、初心者故に心細いので、直ぐに手に取れる場所に置いておく事を承諾して欲しいと言って、丸く収めたツバサ。

 だが、ツバサを良く知る者には、全く目が笑っていない事に気が付いていた。

 無言を貫いていたアヤメからは、僅かに冷気が放たれていた。

 はっきり言って、怖かった。


「何の事~?」

「ナンデモナイデス」


 笑顔で惚けるツバサ。

 だが、その目を見て、背筋が凍り付いたジンは、反射的に何でもないと言って、目を逸らした。


(死ぬかと思った……)


 理由は分からないが、死の恐怖を味わったジンは、良く分からない汗を流した。

 問うのが間違いである。


「出発しますよ!」


 今回の依頼で沢山の冒険者を纏める事になったのは、ギルドから派遣された、元冒険者で、現ギルド職員のグンヌ。

 元Aランカー上位の実力者で、ギルド職員にも関わらず、度々前線に現れ、冒険者の獲物をかっさらっていくような、頼りがいがあるが、ちょっと困った人である。

 そんな頼もしいリーダー、グンヌの合図によって皆が歩き出した。









「まあ、予想はしてたけどさ……ちょっと早くね?」


 困った顔で、後ろを見るジン。

 少し後ろに座り込んでいる者が居り、その周りで待機する冒険者達も呆れながらも周囲を警戒している。


 歩き出して二時間、冒険者からするとたったの二時間で、卒業生の中の何人かが足を痛めた。

 文官候補生である。

 普段から、あまり運動をしない彼らにとっては、一時間でも辛かったのだが、いくらなんでも早過ぎると考え、頑張ったのだが……持ったのは二時間だった。

 まあ、仕方ないけどね……。


「運動不足にも程があるぜ……」

「まあ、文官候補生だし……ね?」


 とりあえずフォローするアヤメ。


「鍛冶科、農業科は普段から肉体労働で鍛えられているし、医療関係も意外と体力要るらしいから、まだなんとかなりそうね……まだ、だけど」

「俺、不安になってきた」

「…………僕より体力無い」

「ラング、そんな事を比べないで~反応に困るから~」

「うむ……たどり着けるのか?」


 笑うしかない。

 どうしようもないので、使っていない荷馬車に交代で休憩する事になった。

 流石に全員を乗せて各国を回っていくのは、馬の負担が多すぎる。

 いざという時に馬が動けなくなってしまえば、逃げる事も出来ないので、皆も納得した。


「召還獣を貸せば良くない?」

「却下。ジン、あの子達は荷物引きではないわ。雑用係りでもないわよ」

「他人に力の大安売りする程、お人好しではないよ~それに、普通の召還獣でもないから、騒ぎになるし~」


 バイコーンはともかく、ドラゴンやフェンリルを呼び出したら、とんでもない騒ぎになりそうだ。


「あと、誤解しているみたいだけど、バイコーン達だって、プライドが高いのよ。あなた達は私達の仲間だから乗せてくれたけど、見知らぬ他人には触れさせもしないわよ。便利屋ではないのだから、彼らの意思を考えず、安易に頼らないで」

「協力関係にあるのであって~僕ではないよ~」

「ああ……すまん」


 彼らの力を、圧倒的な力を思い出したジンは、彼らにそんな事を頼める訳がないと思い、素直に謝った。

 人間より強くて、ちゃんと知性もあり、誰かに頼る必要もない彼らが、この前の戦いに力を貸してくれたのは、アヤメとツバサとの信頼関係もあるが、彼らの好意によるものでもある。

 ただ単純に、気が向いたから、暇でもあったから、気に入った人間に力を貸しても良いと、好意で手伝ってくれたのだ。

 ついでに、気に入った人間が仲良くしている人間も、わざわざ無視するのも面倒なので、少しなら付き合ってやろうと思っただけなのだ。

 都合の良い考え方をしてはいけない。

 彼らがその気になれば、人間など一捻りで潰されるのだから。


「良いわよ。彼らは、いちいち小さな事は気にしないから。その代わり、気に入らなければ……」


 容赦なく

 気持ちのままに

 破壊し尽くす


 静かに、言い聞かせるかのように、警告するアヤメ。

 彼らがもし此処に居たら、あなた達の命は消えていた……と。

 軽い気持ちで、当たり前のように他者に頼るべきではないのだ……と。


「頼るなら、こちらも何かしないとね」

「分かった」

「誰でも、目の前の力に頼りたくなるものだよ~ただ、頼り方を間違えるな。これからも間違える事はあると思うけど、間違えたら反省して、次は気を付けようと、少しずつ学んでいけば良いよ~世界は優しくないけど、チャンスは与えてくれるから」


 気付けないかも知れないけどね……と、悲しそうに付け加えるツバサ。

 アヤメもツバサも、一度頼る事を知った人々は、頼る事に慣れた人々は、中々甘い幻想を忘れる事は出来ない事を良く知っている。

 全ては、儚い夢だと知らずに。

 だからこそ、2人は人々を甘やかさず、自ら行動するようになるまで、一切手を貸したりしない。

 僅かなヒントを与え、考える時間を与えるだけだ。

 例え、冷たいと言われても……。


「まあ、あなた達には手が余る事であれば話は別だけどね」

「あと、猶予が無い時ね~」


 ジンも、ラングも、ムウも、2人には頭が上がらない思いを抱いた。

 同時に、自らの甘さを認識した。


「でも、私も少しは頼りたいわ」

「いやいや、アヤメは私に頼ってるよ~忘れたとは言わせないよ~」

「ツバサには、頭が上がらないわね」


 クスクスと笑う2人。

 こうして笑い合っているのを見ると、何処にでも居るような学生である。


「いやはや、見た目では分からないものだね」


 突然会話に割り込んできた声に、びっくりして声の主を探す。

 いつの間にか、ジンの真横にいた黒髪の女性に、文字通り飛び上がったジン。

 女性が居る反対側、ジンの横に並んでいたラングは小さく悲鳴を上げ、ジンより少し前に居たムウは振り返った姿勢のまま固まっている。

 ジンに向き合って居たアヤメと、アヤメの横に居たツバサは、気付いていたようで驚いていない。

 ゆっくり歩きながら話していたので、2人は後ろ向きに歩いていたのだ。

 目隠ししながら訓練出来る2人には、前を見なくても何の問題もないらしい。

 そんな2人を、何が面白いのか分からないが、にこにこしながら見つめる女性。

 冒険者にしては軽装で、黒いワンピースにレギンス、腰に小さなポーチ、二本のナイフを装備している。

 暑かったのか、手には厚手のコートが無造作に握られている。

 春とは言え、まだ肌寒いと思うのだが。


「なあに? 見にきただけ~? にしてもさ、全身真っ黒だね~メモリー?」


 ツバサの言葉に、ジンとラング、ムウが驚いて、思わず女性を凝視する。

 関心したように、目を細めたメモリー。


「一発か……流石だニャ」


 普段の柔らかい喋り方に戻ったメモリーは、にんまりと笑う。

 喋り方と、語尾から、なんとなく理解出来た……と思うジンとラング、ムウ。

 肩まである黒髪が前に流れてきたのが鬱陶しく思ったのか、無造作に後ろに払いのけるメモリー。

 しなやかな腕の動きや、スラリとした立ち姿から、どことなく猫らしさを感じる。

 立ち居振る舞いから、妙に怪しい魅力を感じる。


「メモリーなのか?」

「何処見てるニャ? 胸かニャ?」

「見てねえし! 揺らすなよ!」

「……メモリー、人目気にして」

「大丈夫ニャ。ただの冒険者に、正体を見抜くのは無理ニャヨ」

「そう言う問題ではない」

「ムウとやら、どういった問題かニャ? ちゃんと出掛ける事は、言ってきたニャ」


 やはり、魔物は魔物である。

 周りの冒険者が、メモリーの色気に気を取られている事に、全く気付いていないようだ。

 こんなにあからさまな視線を向けられているのに……。

 ちらほらナンパと言う言葉が、冒険者達の会話から聞こえてくる。


「じゃなくて! 何で人の姿!?」

「溶け込みやすいからニャン!」

「そうじゃなくて、猫だろう?」

「猫じゃなくて、ケット・シーだニャ」

「いや、姿が!」


 全く噛み合わないジンとメモリー。

 ちょっと面白い。


「ケット・シーは、人間の姿になれる能力があるのよ」


 終わりそうにないので、アヤメがジンの疑問に答える。

 その説明に、ドヤ顔で頷いたメモリー。


「そうなのか!」

「そうだニャ!」

「……びっくり」

「勉強になります」

「至る所にケット・シーは紛れ込んでいるのだニャ! 油断禁物ニャ!」

「マジかよ!」


 得意げに胸を張るメモリー。

 無駄に豊満な胸を張るので、目のやり場に困る。正直、止めて欲しい。


「何しに来たのよ?」

「ただの好奇心だニャ! 人間の国が見たかったんだニャア! ちゃんと、冒険者登録はしてあったからニャ、依頼を受けて同行させてもらったんだニャア! そしたら君達を見つけたんだニャ! 楽しそうだったから、近付いてみたんだニャー!」


 ウキウキした様子で、早口で説明してくるメモリー。

 息継ぎは何時しているのだろうか?


「どんな所かニャア? 珍しい物は有るのかニャア? 人間の文化は、どれだけ魔物と違うのかニャ? 知らない魔法も有ると嬉しいニャン!」


 ……話が長い。


「馬車とやらも面白いニャア! どうしてワイバーンに乗らないのかニャ? 不便じゃないのかニャア? そういえば、巨鳥も居ないのニャ。不思議だニャア……ゆっくり歩くのが楽しいのかニャア?」


 全部独り言である。

 返事は求めていないようだ。


「昔から、人間は面白い生き物だニャ。そもそも、こだわり過ぎだニャア。どうしてこんなに荷物が要るのニャ? 食料なら狩れば良いのにニャ。わざわざ遠くに移動する必要は有るのかニャア? こんなに大変なら、もうその辺で暮らせば良いのにニャア。一カ所に留まる必要有るのかニャ?」


 ついて行けない。

 とりあえず、楽しそうなので放っておく事にした一同。


 結局、この日の野営地に着くまで、メモリーの弾丸トークは続いた……

ケータイだと、読めば五ページなのに、編集の画面では20ページに分割されるのは、何故?

と言う事で、誤字脱字を見つけても、簡単には直せません(ノ△T)

でも、見付けたら教えて下さると助かりますm(_ _)m

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