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授業……なのか?

 翌朝、第三グランドに集まった一同は、さっそく魔王軍と訓練をする事に。


 予想通り、ウル、アミダ、ネルが学園に来ていた。

 この前、魔王の護衛として来ていたリザードマンとケット・シーも、わざわざ来てくれたようだ。

 ケット・シーはメモリー、リザードマンはキリトと言う名だ。


 メモリーと言う名は、代々受け継がれる役職名のようで、魔物界の記録をつける役職らしい。

 何処にでも溶け込める、見た目は普通の猫であるケット・シーが代々勤めているのだそうだ。

 一度話をしだすと長くなる傾向にあるようで、この前学園に来た際には、混乱を防ぐべく、人語を禁止されていたらしい。

 今も、自らの紹介の為に、30分もかかっている事から、普通の会話がどれだけ長引くのか、考えたくもない。

 因みに、種族と名前の紹介だけの筈だったのだが……。


 キリトは人語が苦手なようで、たどたどしく挨拶をして、黙り込んでしまった。


 皆、それぞれの挨拶を交わして、さっそく実戦を学ぶ。

 魔法はアミダとメモリーが、体術はウルとネル、キルトが担当する。


「俺達、暇じゃね?」


 〈レジェンド〉は、クラスの皆と混じりながらの授業が不可能なので、チームでの訓練となっている。

 それは、〈レジェンド〉にとって、今までの訓練と同じな訳で、ジンは不満げにしているし、ラングは何気にアミダの側に行っているし、ムウはとりあえず瞑想中、アヤメは全体を眺めており、ツバサは木陰で寝ている。

 思いっきり、授業を放棄してしまっている……。

 とりあえず、ツバサを起こすのだけは止めておいた方が良いだろう。


「暇なら、炎を凝縮して爆発させる技術でも覚える?」

「何それ?」

「今までは、ただ炎を放つだけだったでしょう? それだと途中で威力が分散するから、高い威力は望めないわ。魔法耐久性が高い敵には、ダメージを与えにくいわね。凝縮して、方向性を加えるだけで、大分威力が変わるわよ」

「マジで!? 教えて!」

「良いわよ。ムウも覚える?」

「はい。よろしくお願いします」


 ジンとムウの魔法を見て、今まで考えていた事を、物凄く暇そうな2人に提案するアヤメ。

 すかさず食い付いたジン、丁寧にお辞儀をしたムウ。


「ムウ、前から弾丸を使っていたわよね? あれ、やってみて」


 ムウが闇の弾丸と、光の弾丸を飛ばす。

 真っ直ぐ飛んでいき、勢いを失った所で霧散する。


「形はあんな感じ。ただ、小さな形の中に出来る限りの魔力を凝縮するだけよ」


 アヤメが、木に向かって光の弾丸を飛ばすと、当たると同時に弾丸が破裂した。

 木の幹が、何かで大きく抉ったような形になっている。

 小さな弾丸が、思わぬ威力を発揮したのを見て、しばし固まったジンとムウ。


「透明にしてみるわね」


 風の弾丸を作り、目の前に浮かせるアヤメ。

 普通の風玉より小さく、中は見づらいが何かが詰まっているのが分かる。

 凝縮された風の魔力が、ぎっしり詰まっている。


 ただ放出するだけしか知らなくて、それさえ感覚が頼りだったので、力でごり押しする形になっていたのだ。

 おかげで魔力の消費が激しくなってしまっていた。


 ラングの場合、精霊の魔力を頼りに、僅かな魔力で高威力の魔法が使え、更に精霊の判断により、消費を抑えつつ効率良く発動出来る魔法が使われていたので、力でごり押しでも問題ない。

 僅かに魔力が必要なのは、精霊との見えない繋がりを作り、意志を伝える為だ。

 ラングの意志に従い、精霊の持つ知識から効率良く発動出来る事は、魔法師として大きなアドバンテージとなる。

 もちろん、精霊との相性や、普段の精霊との過ごし方によって、精霊の気分が変わってしまうので、根気が必要になるが。

 そして、伝える能力も必要となる。

 慣れるまで時間がかかる事と、精霊が使う魔法の偏りが欠点と言えよう。精霊に創作意欲がほとんど無い事が原因だ。

 ラングは、生まれつき精霊が見える事により、日頃から精霊と共に会話していたおかげで、違和感なく使う事が出来ている。


 しかし、精霊が見える人はとても珍しいので、普通はそう簡単に魔法は使えない。

 どうしても、単調な攻撃になるか、牽制程度の魔法になってしまう。

 精霊と言う情報源と魔力源がないので、想像し易い魔法か、魔力消費が少ない小さな魔法になってしまうのだ。

 物事の性質を詳しく知らない人間が、効率良く発動出来る魔法が想像出来る訳がない。

 限り有る魔力を、好きなだけ使う訳にはいかない。 物事の構造を詳しく知らない人間が、効率良く発動出来る魔法の構造が想像出来る訳がない。

 限り有る魔力を、好きなだけ使う訳にはいかない。

 一つ一つの魔法に個性が出るので、それぞれのスタイルに合わせた組み合わせが出来る事が長所と言えよう。


「って事なんだけど」

「全く分からん!」


 説明されても理解出来ないジン。


「えーと、風玉の威力をそのままに、外見を小さくする感じよ。風玉の大きさを10とする、弾丸の大きさを1とする、風玉の威力は10、弾丸の威力も10だとしたら、強さは同じよね?」

「うーん、多分」

「その弾丸の大きさを、風玉と同じ10に上げると、威力はいくつ?」

「10?」

「バカ。100だ」

「ムウ、正解よ」

「何で?」

「ジン、弾丸が10個有る事になるの。風玉の大きさが10で威力も10、弾丸の大きさが1で威力が10が10個……つまり、10×10は100よね?」

「ああ!」


 長い説明をするうちに、だんだん分からなくなってきたアヤメは、ついつい疑問系になってしまう。

 それでようやく理解出来たらしいと分かって、少しほっとする。

 これ以上の説明は不可能だ。


「で?」


 訂正……分かっていなかった。


「……同じ大きさで、威力が10と100ならどっちが良いかしら?」


 根気良く教えるアヤメ。


「そうか! 凄いやアヤメ!」


 はしゃぐジンを、生暖かい目で見守るアヤメとムウ。

 理解するのが遅い……。


「慣れれば意外と早く出来るし、魔力の消費も抑えられるし、見た目が小さいから意表をつけるし、隠密行動にも最適なの。それに、固めてしまうから力も逃げずに威力が下がらないし、上手く当てれば一撃必殺にもなるわよ」

「火で炙るより、着弾と共に爆発させた方が一瞬の威力が上と言う事ですね?」

「半分正解よムウ。爆発の衝撃による、連鎖的ダメージも与えられるわ。あと、対処する時間も与えないわ」

「火炎が迫るなら、その場から逃げるか消せば良いですが、当たると同時にダメージを負うなら避けるしかないですね」

「小さいから、確認しにくくて避けにくいし、避けても、近くに着弾すれば、爆発の衝撃によるダメージは受けるわ。爆風に煽られるからね」

「なるほど! 良く分かりました。外しても無駄が無いですね!」


 ムウは正しく理解出来たようだ。

 ジンには、なんか凄いらしいとしか、理解出来なかったようだ。


「普通に使う魔力が今までの二倍でも、威力が三倍、四倍、五倍位も上がるなら、やらない手は無いわよね?」

「おう!」

「はい」

「今から練習しましょう。一発一発に集中して、隙間無く固めなさい。初めは、放ちたい方向に体を向けてやった方が安全よ」


 さっそく自分が使い慣れている属性の魔力を、一点に集中して、掌の上に集めた魔力を固めようと魔力を操る。

 イメージは、パンパンに膨らんだ風船。

 初めから弾丸にするのは難しいので、掌に収まる位の球体にする。


「ん? なんか分かってきた!」


 頭は悪いが、勘は良いジンが少しコツを掴んだようだ。


「うわ! 抑えられん!」


ドガンッ!


 しかし、制御に失敗したようで、とっさに手放した結果、勢い良く目の前の地面に着弾した。

 大きく抉れて、赤くなった地面は、僅かに溶けている。

 いつも放つ魔法より、随分小さな火球だったものが、今までの必殺技には及ばないながらも、想像以上に高い威力を持っていた事に、流石に呆けるジン。

 これならハイウルフでも、重傷は与えられるだろう。


「うわぁ……もうちょっと、人から離れるわ……何かあったら呼ぶから」

「了解。疲れたら休憩してね。制御を誤ると危ないから」

「おう……分かった」


 グランドの端に向かったジン。


パァン!


 ムウの光球が破裂し、衝撃でよろめいたムウをアヤメが支える。

 どうやら、集めた力に、周りを囲む魔力が少なかった事で強度が足りず、途中で耐えきれなくなり破裂したようだ。


「すみません」

「良いわよ。怪我無い?」

「大丈夫です。衝撃が凄いですね……あまり、上手く集まっていなかったのに」

「まあね。どうして威力が高くなるか、良く分かったでしょう? 無理だと思った時は、前に押し出した方が安全よ」

「そうですね。端に移動します」


 グランドの端に有る、少し大きな木の前で練習を始めたムウ。

 いざとなったら、木に当てるつもりなのだろう。

 確かにその方が安全だ。


バァン!

バキィッ!


 絶えず聞こえてくる轟音に、周りの生徒も何事かと視線を向ける。

 あまりの惨状に、見なかった事にして自分の事に集中する生徒達。


 エリナ先生は、頭を抱え込んで動かなくなった。多額の修理費が請求されると、分かったからだ。

 一応授業中の事なので、グランドの破損は教師が払う事になる。

 悪い事をしている訳ではないので、止める訳にも、咎める訳にもいかない。

 訓練をすると言ったのも、エリナ先生なので逃げ道は無い。


(外でやらせれば良かった)


 レベルが違うからとか、何でも良いから理由を付けて、自習にすれば良かったと考えるエリナ先生。

 そうすれば、練習の為に山に行くか、実戦を学ぶ為にギルドで依頼を受けるか、最悪グランドを使われても、あくまでも自己責任として、彼らに払わせる事が出来たであろう。


「ふっ……甘いねエリナ先生~?」

「ツバサちゃん!?」

「まさか外でやれとか言わないよね~?」

「え!? い、言わないわよ☆」

「そうだよね~外でやったら、近くの村が危ないもんね~依頼受けろなんて、ただの職務放棄だしね~山が荒れたら、学園に駆除や、非難が来るかもね~一応、国から譲り受けた土地だし~」

「あははは♪」

「まあ、先生なら分かっているよね~じゃあ、訓練に戻れるね~」


 ひらひらと手を降って、さっさとアヤメの元へ向かうツバサ。


「完全に読まれたわね☆」


 しかも、先手を打たれて、この先の授業でもこの手は使えなくなった。 そうすれば、練習の為に山に行くか、実戦を学ぶ為にギルドで依頼を受けるか、最悪グランドを使われても、あくまでも自己責任として、彼らに払わせる事が出来たであろう。


「ふっ……甘いねエリナ先生~?」

「ツバサちゃん!?」

「まさか外でやれとか言わないよね~?」

「え!? い、言わないわよ☆」

「そうだよね~外でやったら、近くの村が危ないもんね~依頼受けろなんて、ただの職務放棄だしね~山が荒れたら、学園に駆除や、非難が来るかもね~一応、国から譲り受けた土地だし~」

「あははは♪」

「まあ、先生なら分かっているよね~じゃあ、訓練に戻れるね~」


 ひらひらと手を降って、さっさとアヤメの元へ向かうツバサ。


「完全に読まれたわね☆」


 しかも、先手を打たれて、この先の授業でもこの手は使えなくなった。

 あんまりにも清々しい笑顔で言われたので、最初は気付かなかったが、それとなく脅されたのだ……。

 もっと面倒な事になるぞ、と……。


「今でも凄い被害なのに……」


 青ざめるエリナ先生は、恐る恐るジンとムウの方に視線を向ける。

 溶岩地帯と、クレーター地帯が出来上がっていた。

 盛大に失敗しまくったらしい。


「やり過ぎじゃないかな?」


 へたり込んだエリナ先生に、周りの生徒達は心の中で合掌した……。







「ジン、大丈夫?」

「ちょっとした火傷だから、大丈夫だと思う……」

「いやいや、仰向けに倒れて動けないのを大丈夫とは言わないから」

「……やり過ぎたんだよ」

「でしょうね……」


 爆風で吹っ飛ばれる事数十回、熱風での火傷多数、擦り傷、切り傷、その他諸々でのダメージで、仰向けに倒れて動かなくなったジンに、アヤメが治癒魔法を施している。

 近くでは、同じように倒れて動かなくなったムウが居て、ツバサが治癒魔法を施していた。

 ムウは、内出血が多いようで、至る所が青くなっている。

 国に仕える治癒魔法師より、遥かに腕が良いアヤメとツバサによる治癒魔法で、ジンとムウは上体を起こせる程には回復出来た。

 立つことは出来ないが。


「もう、いろんな所が痛くて、自分がどんな状態かも分からん」

「体がバラバラになりそうです……」

「体より、グランドの惨状が凄い事になっているけどね……」

「アヤメ、気にしない気にしない~エリナ先生も容認しているから」

「それ、脅したでしょう?」

「何の事かな~?」


 ジンとムウの怪我は、アヤメとツバサによって出来るだけ治されたので、後は時間の問題だろう。

 流石に溶岩地帯は危ないので、気付いた時に冷やして埋めておいたおかげで、今はそこまで酷くはないが、クレーターや倒れた木、砕けた岩などはそのまま放置されているので、まるで魔物が暴れた後のように荒れ果ててしまっている。

 そして、ジンとムウによる被害だけではない……。


「ウルとネル、かなり暴れたようね」

「何故、根っこから木が抜かれているのかな~? あれ、振り回したのかな~?」

「ある意味凄いわね」

「地割れまで出来てるね~」

「そうね……」


 ウルとネル、キリトによって、地獄の訓練が行われた所には、引っこ抜かれた木、ひび割れた地面、投げられて転がったであろう岩などが、至る所に散乱していた。

 相当暴れたようだ。


「で、そろそろ現実を見ようか~」


 ツバサが振り向いた先には、大樹がそびえ立っていた……。

 花畑まで出来ている。

 花畑と言うのは外見の事であり、生えているのは魔草、毒草、花に擬態した魔物などなど……つまり、花畑と言う癒される物ではない。

 アミダとラングが精霊魔法で草木を、メモリーが蓄えられた知識で魔草を生やした事で、いきなり現れた新しい森の出現に、近くの森から好奇心に誘われ、ひょこり出て来た魔物が住み着いたようだ。

 つまり、普通に授業をしていた筈が、何故だか新しいダンジョンを、グランドに作り出してしまっていたのだ……。


「楽しそうに暮らしてるね~」

「現実を見るんじゃなかったの?」

「見てるさ。平和な光景じゃないか~」

「ここが森ならね……」

「お! 鳥まで飛んできた~」

「魔物だけどね……」


 思いっきり現実逃避を決め込んだツバサに、とりあえず指摘しておくアヤメ。

 アヤメも対処する気は無いが。


「精霊魔法って凄いな!」

「ふむ。薬草まで有るな」


 ジンもムウも、視点がずれている。

 とりあえず、そっとしておこう。


「おお! 入り口発見~中に入れるよ~お邪魔します!」

「あ! 私も行くわ」

「俺も行く! いてて」

「気になるな……ぐぅ」


 大樹には入り口らしき物があった。

 喜んで入っていくツバサ、少し嬉しそうについて行くアヤメ、痛む体を引きずりながら向かうジンとムウ。

 内部は空洞になっており、三階建ての構造になっていた。

 家として暮らせるだけの広さがある。

 魔法具のランプで、良い感じの明るさに保たれており、落ち着いた雰囲気となっている。

 二階に上がると、アミダとラング、メモリー、魔法を集中的に習っていた生徒達に迎えられた。

 ちゃんと窓もあるので、見晴らしも良さそうだ。

 これでもまだ計画の途中で、五階まで作るつもりらしい。


「へ~なんか楽しい~」

「出来上がるのが楽しみね」

「ワクワクするな!」

「ふむ。落ち着くな」


 皆、気に入ったようだ。


「……アミダの提案だよ」


 三階から降りてきたラングが、後ろに居るアミダの提案だと言うので、アミダに視線が集まる。

 アミダが慌ててメモリーを抱き上げ、真ん中にあるテーブルに乗せる。


「計画や、知恵はメモリーから聞いたの」

「ふふ……アミダも恥じらう時が有るんだニャア! 初めて見たニャ!」


 語尾で分かるだろうが、今のがメモリーの言葉だ。


「いつもウルを叱ってばっかで、おっかない娘だと思ってたニャ! 普段もそうやってかわ……」

「分かった分かった! 長いわよ!」

「今のアミダは怖いニャア……」

「悪かったわね!」

「食われるニャア!」


 素早くツバサの後ろに隠れたメモリー。

 流石猫! 早い!

 半眼になったアミダと、楽しそうに笑う一同。

 後で入ってきたウルとネル、キリトは、なんだか良く分からないが、楽しそうだから良いかと、とりあえず見守る事に。


 外では、楽しそうな一同の笑い声を、複雑な顔をして聞いているエリナ先生が佇んでいた。


「私を忘れてないかな☆」


 そんなエリナ先生の事を、皆は完全に忘れていたのだった……

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