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ラングの境遇

登場初期のラングを思い出してみましょう

 門までたどり着いた一同。

 自衛団が門を守っていたので、ラウザとガルが話をしに行った。

 ラウザの顔パスで簡単に入れた一同は、ちょっと拍子抜けしてしまった。


「ご苦労様ですラウザ様」

「村長よ、言われていた薬草じゃ」

「ありがとうございます」


 走り寄って来た男性に、ラウザが布袋を手渡した。

 意外と若い村長と、ラウザが話をしているのが、どこかよそよそしい。


「薬草?」

「依頼だよ。見ての通り、村にお金が無いからさ、先生にお願いする人が多いんだ。もちろん、報酬は貰うよ」

「でも、なんかよそよそしいな」

「まあね…先生は村人とあまり話さないからさ…何も言わず何も聞かず、ここに住む事を許可する事も報酬なんだ」


 何か理由が有るのだろうが、聞くのは失礼だろう。


「お帰りガル」

「はい!ただいま戻りました」


 話が終わったらしく、村長がガルに声をかける。


「お客様かな?」

「はい!ラングも居ますよ」

「……お久しぶりです」


 ガルが村長に報告するので、ラングも挨拶をしたが、村長はラングを見もせずにガルと話し続ける。


「ふむ。泊まる所が必要だな」


 そう言って、ラングを除く〈レジェンド〉の皆に会釈をして去っていく。

 自衛団の者達も、ラングを無視して去っていく。


「え?何で?」

「………良いんだ。いつもの事」


 ラングは力無く笑う。

 ガルはそんなラングを見て俯いた。


「……家に案内するね」

「村長には説明しとく」


 説明はガルに任せて、ラングの後をついていく一同。








 村の端っこに有る小さな家まで来て、ラングが扉を開けて家の中に話しかける。


「……ただいま!」


 ラングの呼びかけに誰も応じない。


「居ないのか?」

「気配は有るわよ」


 人が居る気配を感じたアヤメとツバサだが、誰も出て来ない。

 首を傾げるジンとムウ、周りを確かめるアヤメとツバサ。

 立ちすくむラング。

 そうして悩んでいると、ガルが慌てて走って来た。


「やっぱりか…来て良かった。おばちゃんを呼ぶなら、ラング以外が呼ばないといけないんだ…おばちゃん!」


ドタドタドタ、ダンッ!


「なんだい?ガル坊」


 恰幅の良いエプロン姿の灰色の髪と茶色の瞳の女性が、凄い迫力で現れ、玄関に仁王立ち。

 ちょっと引く…。


「シーナおばちゃん、ラングとお客さんが困ってるよ」

「…逃げ帰って来たのかい?」

「………違うよ母さん。…冬休みだから、様子見にきた」


 シーナさんと言うようだ。

 ラングの母親のようだが、ラングを見ても良い顔をしない。


「ふん!なら安心だ!」

「えーと…おばちゃん、お客さん置いてきぼりだよ」

「誰だい?」


 ちょっと現状について行けないので、ガルに説明を任せる(押し付ける)一同。

 4人の視線から意をくんで、致し方なく引き受けたガル。


「ラングの友達…と、師匠」


 友達の所で少し悩んだガルに、無言の圧力をかけるジン、ラング、ムウ。

 その様子に首を傾げるアヤメとツバサ。


「えっと、ジンとムウ、アヤメさんとツバサさんです」


 ちゃんと、“さん付け”にするガル。

 ガルの中でも、アヤメとツバサを呼び捨てには出来ない程、重要な人物とされているらしい。

 ジン、ラング、ムウも、友達と言うには抵抗があるようだ。

 距離が遠いのではなく、単に恐れ多いだけなのだが。


「どんな関係か、良く分からんね…」


 シーナの言う事はもっともだろう。

 同年代の師匠って、凄い違和感がある。


「同じ学園で、この5人でチームを組んでいる仲間です」


 アヤメが説明を加えると、ようやく納得したシーナ。


「なるほど。学園の仲間ね…物好きだねぇーあんた達」

「「「「???」」」」


 よく分からないことを言われて、とりあえず沈黙を選んだ一同。

 あまり、余計な事を言って、ごたごたしたくない。


「いや…あんた達が悪い訳じゃないさ!余ってたから、組んだんだろ?こいつ、気味悪いからさ!」


 酷い言われように、思わず抗議しようとしたジンとムウだが、ラングに無言で止められた。


「……そうだよ。……お世話になってる」

「そうかい。上がっていきな!こんな田舎までご苦労様だねぇ。ガル坊も上がっていきなよ」


 逃げ出そうとしたガルを、ムウがとっさに捕まえる。

 性格がジンと似ているガルを、普段ジンのお目付役をしているムウが、みすみす逃がす筈もない。

 ガルを引っ張って、ラングの実家にお邪魔する一同。


「道中、魔物に出会わなかったかい?」

「あー、凄い数でした」

「良く無事だったねぇ!」

「なんとか」


 椅子に座って、いろいろな話で盛り上がる一同。


「………」


 だが、ラングだけは押し黙ったまま、小さくなっている。


「この辺でも、魔物がうろついていると言うからさ…交代で自衛団が見張っているのさ」

「被害はありませんか?」

「何人か、やられたねぇ…ラウザ様の結界のおかげで、村の中までは来てないけど、時間の問題だねぇ…」

「引っ越さないのか?」

「ジン、そう簡単な問題ではないわ」


 無神経な発言をしたジンに、ツバサの拳骨とムウの蹴りが襲い掛かり、最後に追い討ちのように殺気を放ちながら、アヤメが咎める。

 小さくなって、静かになったジン。


「ははは!まあ、そうしたいけどねぇ…先祖代々受け継いだ土地さ…畑や家畜も簡単に捨てられん」

「あ…ごめんなさい」



 ようやく理解したジン。


「良いさ!それより、心配してくれて、ありがとうね!」


 照れるジンに、再度ムウの蹴りが襲い掛かった。


「何故、お前が照れる?」

「ごめんなさい…」


 相当痛かったらしく、足を抱えてうずくまったジン。


「いざとなったら、逃げるけどねぇ…この数だと、移動が大変さ。行く場所もないしね。護衛も必要だね」

「ですね…」

「国が動いてくれりゃあね!」


 ぴくりと反応するアヤメとツバサ。

 青ざめるジン、ラング、ムウ。


(((ヤバい!城に乗り込む気だ!)))


 ジン、ラング、ムウが2人に視線を送ると、ニコッと笑った2人。

 慌てて首を横に振るが、今度は殺気の籠もった笑顔を向けられた。


「安心して…いきなりはしないから」

「脅しはするけどねぇ~」


 安心出来ない!


「何の話だい?」

「「なんでもないです」」


 シーナの問いに、満面の笑顔で答えるアヤメとツバサ。

 その笑顔から、これ以上触れてはいけないと判断したシーナ。


トトトッドサッ!


「お、お兄ちゃん!?」


 何故だか話をしただけで張り詰めた空間になってしまったリビングに、茶色の髪を二つに縛った女の子が入って来た。

 ラングを見つめて硬直している。

 皆の視線が集まり、ようやく我に帰った少女は、びっくりした拍子に落とした鞄を拾ってラングの元へ駆け寄った。


「お兄ちゃん!どうしたの?何かあった?大丈夫?」


 ラングの妹のようだが話の内容を聞いていると、妹の方が姉のように…いや、母親のようにラングを心配している。


「……落ち着いてレイナ」


 少女…レイナは、とりあえず落ち着こうと深呼吸をする。

 落ち着いた所で、ラングの他に知らない顔を見つけ、首を傾げる。

 小さく手を降ったガルは、見事にスルーされた。


「誰です?」


 少々刺のある言い方で問うレイナ。


「……学園の仲間。同じチーム」

「あら?お兄ちゃんのお友達?失礼しました。私はレイナと言います」


 とりあえず悪い人では無さそうだと判断したレイナが、改めて自己紹介をする。


「アヤメ・シラギです」

「ツバサ・シラハネだよ~」

「ジン・ラインブルグだ!よろしく!」

「ムウ・サラード…」


 自己紹介を終えて、ラングの隣に座るレイナ。

 シーナが一瞬顔をしかめるが、レイナは気にしていないようだ。

 ラングとレイナは仲が良いらしい。


「お兄ちゃん、この辺で魔物に合わなかった?最近、声が聞こえるの」

「……居たよ」

「やっぱり…」


 レイナは、まだ村から出た事が無い。

 村長の家で、村長の娘が子供達に勉強を教えてくれるのでレイナも参加しているのだが、勉強会に来る子供の中には狩りに行く子供も居る。

 その子供達も、村の近くで魔物に遭遇して怪我をしたと聞いて、レイナも不安になったのだ。

 夜、村の近くで魔物の声が聞こえる事があり、村の大人が総出で見張りにつく事もあるらしい。


「怪我人が増えて、薬草が無くなったからラウザ様にお願いしたの」

「先生が村を離れるのは、物凄く危ないんだけどな」

「ガル坊がしっかりせい!」

「んな!?俺が?無理!」


 いまだに1人で戦えないガルに、村を任せるなんて有り得ないが、簡単な結界だけでも張れるならば少しは時間が稼げる。

 ラウザにかかる負担を出来るだけ軽くしたいと、村の皆は思っている。

 それはガルも同じだ。


「……頑張れガル」

「お前まで……」


 自慢出来ないが、魔物に遭遇したら詠唱している間にやられる自信があるガル。

 自分の不甲斐なさに、勝手に落ち込んだガル。

 誰も気にしてないが。


「お兄ちゃん、皆さんは家に泊めるよね?用意しなきゃ!」

「……良いの?」

「もちろん!お兄ちゃんのお友達だし」


 シーナを無視して、勝手に決めてしまうレイナ。

 申し訳ないのでテントでも良いかなと思っていた一同は、ちょっと期待する。

 地面で寝るのは、結構辛いものがある。


「はあ…仕方ないさね。レイナ、部屋用意してくれ」

「はーい!」


 乗り気ではないが、子供達に野宿をさせるのは気が引けるシーナ。

 シーナが泊めたくないのは、ラングだけなのだが。


「帰ったぞ……ラング?」

「………父さん」


 茶色の髪で、がっちりした体つきの男性が現れ、ラングを見て固まった。


「ロックおじさん!」


 固まって動かない男性に、慌てて呼び掛けるガル。

 その声でようやく復活した男性。

 男性が何か言う前に、早口で説明するガル。


「なるほど。ラング、お前よく友達出来たな…」

「……う、うん」

「俺はロック。一応ラングの父親だ」


 威圧感を放つロックに、たじろぐラングとガル。

 ラングを見る目は冷たい。


「あんた!仕事終わったら、体洗えって何度言わせるんだい!」


 シーナの怒鳴り声に、びっくりして振り返る一同。

 ロックが土まみれで家に入ったのが気に入らないようだ。

 言われた本人は気にしてないが。


「忙しい…後にしろ。ガル坊、荷物運び手伝え」

「え?俺力無いです!体力も無いです!」

「知らん」

「酷い…」


 首根っこ掴まれ引きずられていくガル。

 一同、心の中で手を合わせる。


「用意出来たよ!」


 部屋の用意ができたので、急いで呼びに来たレイナ。

 一同は、レイナに案内された部屋に荷物を置いて礼を言う。

 何故だかガルの悲鳴が聞こえた気がするが、気のせいだろう。

 何もしないのは気が引けるので、家の手伝いをする。

 レイナのおかげで、楽しく夕飯をご馳走になった一同。


 疲れていた一同は、夕飯を取って直ぐに眠りについた… 




◇◇◇◇◇









「で?どうした~?」


 皆が寝静まった頃、窓の外を見つめているアヤメに、静かにツバサが問い掛ける。


「……見えたわ」


 そのたった一言で、ツバサには伝わる。


「そう……いつ~?」

「明後日よ」

「相変わらず、便利だね~」

「そうね」

「でも、今は何もしないよ~」

「分かっているわよ」


 何かが見えたらしいアヤメと、それだけで理解するツバサ。

 出来ないのではなく、やらないと言うツバサに、素直に頷いたアヤメ。


「未来を見るのは、人の力ではないからね~人なら知らぬ事だ。そこまで面倒見るほど、お人好しではないしね~」

「ええ。でも、明後日は準備体操のようなものよ」

「分かってるよ~次は?」

「一年先よ」

「随分先だね~」

「そう?案外早いけど?」

「その位、想定内でしょ~」


 緊張感のない2人。

 だが、話の内容は…

ラウザの方が不気味だと思う…

魔女らしい魔女を出したかったのです

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