歩いて歩いて 戦って
名前考えるの大変になってきた…
意外にも、バイコーン達のスピードが速かったようで、ここからなら歩いて1日だと言う事が分かり、皆歩いて村に向かう事になった。
「修行?」
「ああ!先生が実戦の方が良いって」
仲良くなったジンとガル。
ガルの魔法修行の話しで盛り上がっているようだ。
「まあ、そうだな。初戦は怖かったけど」
「しばらく肉食えなかった…」
「肉云々より、怖い程強い人にびびった」
「なるほど…」
前で黙々と歩くアヤメと、ラウザと談笑するツバサを見るジンに、何故だか納得してしまうガル。
「ウルフに囲まれた時、先生も怖かったなぁ…バキバキ雷が鳴ってた」
「あー、多分それより怖いわ…多数の魔法が飛び交うし」
「うわぁ…腰抜けそう…」
「俺は固まった」
吹き出したジンとガル。
やはり師は怖いものらしい。
「置いてくよ~」
少し遅れたジンとガルに、ツバサが振り向いて手招きする。
「わりー!」
「今行きます!」
走って向かうジンとガル。
ガルは何故だか敬語になった。
「………懐かしいなぁ」
「ん~?」
「………狩りで来た事あるんだ。…僕は入り口までだったけど」
綺麗な川が見えた時、ラングが嬉しそうに目を細めた。
川の向こうに小さな小屋があり、その奥には森が広がっている。
ここまでもかなり深い森だったが、川の向こうは若干坂がきつく、険しい道のりとなっているようだ。
「………あっちの森には、小動物が多いから…年に一度、皆で来るんだ」
「年に一度~?」
「村から遠いんだ!足場も悪いし!」
「ガルも行ったの~?」
「たどり着く前にバテた…」
ガルは体力が無いらしい。
「………毎回、移動中にバテたよね」
「ああ。否定出来ないのが悔しい」
しょんぼりするガル。
良く見れば、足が痛いのか少し引きずっている。
「足痛い~?」
「ちょっと…でも大丈夫!これでへたばりたくないし!」
「無理しないでね~?」
少し微笑んでから、また前を向いて黙々と歩き出したツバサ。
ガルがラングに小さく話しかける。
「か、かわいいな」
「……う、うん」
「癒された…俺頑張る!」
「………譲らない」
「なに?」
「………僕も師匠に認められたい」
「なんか違うが…まあ、良いか」
ラングの少しずれた回答に、突っ込んでみようかと思ったガルだが、ラングの顔が必死だったので指摘しない事にした。
空気の読める良い奴である。
「俺も譲らないぞ」
いきなり割り込んで来たムウに、ちょうど驚いたガル。
「………手強い」
「手は抜かん」
張り合うラングとムウ。
「なんか、面白いチームだな…」
「おい!俺を忘れんな!」
「………ジンはうるさい」
「お前は無理だ」
「今の言葉覚えてろ!ギャフンと言わせてやる!」
「………無理」
「負け犬の遠吠え」
容赦ないラングとムウに、全身で抗議するジン。
賑やかだ。
「ふむ。良いアイデアじゃ」
「でしょ~」
ラウザは、ツバサの作った魔物避けをしばらく見詰める。
どうやら気に入ったようだ。
「確かに、嗅覚の良い魔物には効くじゃろうな。従来の魔物避けでは、弱い魔物にしか効かなんだからのぅ」
「かなり凝縮したからね~魔草の花の蜜、ビッグベアの体毛も入ってるよ~」
「あの魔物か!死ぬと凄い匂いを撒き散らすからのぅ!体毛からなのか?」
「体の一部なら効果あるよ~体が腐る匂いみたいだから~」
「なるほどのぅ!ニシシシ!高く売れそうじゃ!ヒヒヒ…」
金儲けを企むラウザの姿は、その姿も相まって、不気味なものとなっている。
「採取が大変ですよ?」
アヤメが心配そうに忠告する。
「そうじゃな…弟子に行かせるかの」
「先生!殺す気ですか!?」
必死に抗議するガルだが、薄い笑みを浮かべて思案するラウザを見て、目線で皆に助けを求める。
「頑張って~」
にこやかに突き放したツバサ、その後ろで手を振るアヤメ、目をそらすジン、聞いてないラング、無表情のムウ。
完璧に見捨てられたようだ。
「無理ですからね!自慢じゃないけど、ウルフで手一杯ですから!」
「自慢どころか、恥じゃ!」
沈没したガル。
何故だか暴露大会に発展した一同は、賑やかに笑いながら歩いていく。
「ジンは空気を凍らせる達人だよね~」
「どういう事?」
「空気読めないわよね」
「………突っ込み過ぎ」
「恥知らず」
「ひでーよ!ムウも凍らせるだろ!物騒な事言って!」
「最近は無いけどね。前は良くあったね」
「申し訳ありません」
「自覚有るだけ、良いよね~?」
ツバサの一言に、アヤメ、ラング、ムウがジンを一斉に見詰める。
流石に慌てるジン。
「い、いや!最近は分かって…」
「ないよね~?」
「ないです…」
ガルに優しく肩を叩かれるジン。
「諦めろ」
「ああ…」
うなだれたジンを放っておいて、話を続ける一同。
「ラングが初めて魔法を使った時、消し方を聞かれて戸惑ったわ」
「有ったね~火球が消えて喜んでたね~」
「………ジンが焦げた」
「あれ?ラングは魔法苦手じゃなかった?魔力も少ないし」
ガルが改めてラングの魔力を感じ取るが、やはり少ないので首を傾げる。
「………精霊に手伝ってもらってる」
「ん?精霊って見えるのか?」
「………見えるよ。…アヤメとツバサも見えるよね」
「私は、はっきりは見えないけどね」
「普通に見えるよ~」
「珍しいのぅ!どんな形じゃ?」
ラウザが食い付いてきたが、少し悩むラング。
アヤメとツバサも困った顔をしている。
「……決まってない…いろんな形で見えるよ」
「それぞれ違うわね」
「いきなり変わったりするよね~」
表現のしようがないようだ。
「面白いのぅ!」
「昔から良く分からない所に話し掛けてたが、精霊が居たのか…」
「………うん」
「こりゃあ、村の人に言わなきゃな!散々な言われようだったし」
「………どうやって?」
沈黙するガル。
皆からの痛い視線に、たまらずジンの後ろに隠れるガル。
似た者同士慰め合う。
「まあ、言って信じてもらえていれば、今更言う必要ないんじゃが…」
「信じてもらえなかったのか?」
ラウザの呟きに、ムウが反応する。
「私は噂しか聞いておらんが、灰髪の少年が不気味に独り言を言うと、相談があったんじゃ。私はそんな事言われても分からんのでな、聞いただけじゃった」
「……まあ、会った事も無かったし」
そりゃあ、相談されても困るだけだろう。知らないのだから。
「精霊も見えんしのぅ」
「ある意味、それで助かったかもね~」
「ん?」
ツバサの言葉に、ラウザが不思議そうに目線で問う。
「魔法師が分からないなんて、見た上で言ったら、それこそ扱いが悪くなるよ~最悪、悪魔憑きって言われたかもね~」
悪魔憑き…行動、言動がおかしい人間を悪魔に取り込まれたとして、隔離または処刑する事がある。悪魔と契約した人間の特徴が狂った言動であった事が、危険な者達を見分け、身を守る手段として定着したようだ。
十分に確認する事が稀な為、誤った判断も多いので問題となっているが、今の所改善はされていない。
「本当は、優れた魔法師ならば見分ける事が可能なんだけどね~」
「その優れた魔法師の基準がのぅ…」
「物凄く曖昧で、魔法師ではない人には判断出来ないからね~」
「魔法師ってだけで、何でも出来ると思われるからのぅ…迷惑な事じゃ」
魔法師だって、不可能な事や、理解出来ない事など沢山ある。
だが、一般人からしたら奇跡を起こす存在なので、出来ると思い込んでしまう。
頼る割には魔法師を理解しようとしない人達が多く、頼られる魔法師には迷惑な事も多い。
病気を治してほしい、橋を作ってほしい、作物を実らせてほしい、魔物を倒してほしい、金を出してほしいなど、結構無理な事を要求される。
一度好意で関われば、何でもかんでも街全体で頼ってくるので、身が持たない。
押し付けられて、プレッシャーや疲労で倒れた魔法師も多い。
「人間は身勝手だからね~」
「風邪位、寝て治さんか!」
「擦り傷とかね~」
「橋は自分で作ってほしいわ…ずっとそこに居なきゃいけないじゃない…」
頼られる事など、ラウザはともかく、学生にはないような気がするのだが…。
「まだ、関係なさそう…」
「先生…ご苦労様です…」
「………細々と生きたい」
「無視が一番良いな」
ちょっと、魔法師になる事は間違いではないかと悩む見習い達(上から、ジン、ガル、ラング、ムウ)。
もう遅い…。
「!…何かこちらに向かって来る!」
ツバサの警戒区域に何かが引っかかったようだ。
皆臨戦態勢に入る。
周囲に神経を張り巡らせる。
ガキンッ!
突然飛び出した影と、とっさに大剣を盾にしたジンがぶつかる。
緑の鱗、トカゲのような体、鋭い爪、黄色い目…クリーヴリザード
切り裂くと言う意味の名前の通り、鋭い爪から繰り出される攻撃は鉄すらやすやすと切り裂く。
リザード系では一番素早く、緑の鱗は隠密に優れる。
リザード系はドラゴン程ではないが耐久性が高く、生半可な攻撃は効かない。ロックリザードが物理耐久なら、クリーヴリザードは魔法耐久に優れる。
魔法が使えないのが唯一の救いだ。
「っ!」
ジンが押されたので、慌ててムウが斬りつけるが、鱗に弾かれる。
クリーヴ・リザードは素早く後ろに下がって、木々に身を隠す。
「6体居るな…威力の低い魔法は弾かれる。接近戦で戦え」
「私は後方支援に徹するぞぃ!下がれバカ弟子!」
「…はい」
「ラング、任せるよ」
下がったラウザとガルをラングに任せて、アヤメとツバサは前に出る。
魔法師には相手が悪すぎる。
生半可な魔法は効果がないので、牽制にもならない。
せいぜい、盾を張り、見方の身体能力の底上げしか出来ない。
森は彼らにとって、絶好の狩り場。
木々に隠れて、こちらの隙を狙っているようだ。
キンッ!
2体のクリーヴリザードが飛び出して、アヤメとツバサとぶつかる。
その隙に残りの4体が一斉に魔法師を標的にして飛び出した。
ジン、ムウが対応するが、元々の力が違いすぎる。
ラウザとラングは盾で耐え忍ぶ。 ガルが木を操って、クリーヴリザードの動きを邪魔するが、クリーヴリザードのスピードについて行けない。
ドサッ!ズンッ!
アヤメとツバサに襲いかかったクリーヴリザードが倒れる。
鱗など意味はないと言わんばかりに、深い傷がついた2体。
「良く耐えた!」
僅かな時間だが、魔法を封じられた中で耐えてみせた仲間を労うツバサ。
駆けつけた際に立ちふさがったクリーヴリザードを切り捨てるアヤメ。
「私とツバサが2体引き受けます」
残った一体をジンとムウに任せて、近くのクリーヴリザードと切り結ぶアヤメとツバサ。
2人を警戒したクリーヴリザードが、木々の間を走り回って錯乱する。
大剣を盾にして、クリーヴリザードの攻撃を一手に引き受けたジンと、ジン以外目に入っていないクリーヴリザードに切りかかるムウ。
力を貯めた一撃は、浅い傷をつけるだけにとどまり、怒り狂ったクリーヴリザードがジンを飛び越え、その先に居たガル目掛けて突進する。
ガンッ!
間一髪、ラングが槍で受け止めて、素早く引き離し突きで応戦する。
ラングの槍の腕前は、一般的な騎士よりかは下だが、狩りを行う村人よりは上である。幼少より狩りで培った経験もあり、勘も良い。
ラングの予想外の妨害に、一瞬動きが止まったクリーヴリザードに大剣を叩きつけるジン。
鈍い音と共に、大剣が当たった所がへこんで鱗が剥がれ落ちる。
そして、その場所を狙ってムウが刀で斬りつける。
鱗が無くなったクリーヴリザードの皮膚を易々と切り裂いて、振り抜かれた刀。
クリーヴリザードが力無く倒れ、しばし痙攣した後息絶えた。
「た、助かった…」
へたり込んだガル。
「………間に合った」
ほっと胸をなで下ろしたラング。
「良く頑張ったね」
「お疲れ様~」
いつの間にか戻って来ていたアヤメとツバサが労う。
ちゃんと換金部位を回収してくる所は、抜け目がない2人。
「移動しよう。血に集まってくるかもしれないから」
アヤメの提案に、皆一斉にその場から逃げ出した。
もう、こんな魔物と戦いたくない。
村が有る方向へ進む一同。
しばらく歩くと、前方に村を囲む柵が姿を表した…
時間が開いたら、登場人物紹介…更新しなくちゃね




