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旅って初めてじゃない?

気付くの遅っ!

 バイコーンに乗って半日、昼食を取る為に焚き火をしている。

 途中で見つけた村で新鮮な野菜と果物を買ってきたので、ちょっと豪華な昼食となり、野菜と肉(その辺で捕まえた鳥)の炒め物、野菜と豆のスープ、パン(自前)、果物を頬張る。


「今更だけどさ、このメンバーの旅って初めてだよな!」

「まあね。移転魔法で一瞬だもの」

「………普通、逆」

「楽で良いじゃん~」

「確かに、楽です」


 今更気付いた一同。

 〈レッドエリア〉も幻獣に乗って行って(短時間)から、現地で探索しただけで旅とは言えないし、命の精霊が居た洞窟へもそんなに離れてはいなかったので旅と言う感じがしない。

 楽過ぎるのも困ったもので、慣れない事(大陸では馬での旅は普通だが)に疲れが出て来たジン、ラング、ムウ。

 昔は平気だったのに…。


「腰痛い…」

「……疲れた」

「神経を使い過ぎました…」


 年寄りのような事を言う3人。


「疲れるの早いわ…」

「頑張れ~」


 常識が通用しないアヤメとツバサ。

 全く疲れていないようだ。


「2人が言ってもなぁ…」

「………なんかね」

「元々、作りが違いますから…」


 2人と比べると一般人のジン、ラング、ムウは苦笑する。


「?…まあ、今しかゆっくり休憩する事出来そうにないしね…」

「ギルドで聞いた話し?」

「そう、魔物の増殖と力の増加。ここら辺でも、報告されているけど…」

「………山の中にある村に向かうには、魔物の巣窟である森に入るしかない………巻き込んでごめん」

「ラングは悪くないよ~」

「会える時に会う方が良い…」


 ラングの出身である村は、山に囲まれた場所にあるので、森を突っ切るしかたどり着く手段は無い。

 幸いにも、魔物に気後れしない愛馬バイコーンと、力強い見方のアヤメとツバサがいるので、不安は無い。


「村に戦力はあるの?」

「……結界と、魔法師のお婆さんが居るけど…癖のある魔法師でね…ほとんど家から出ないし、怖い人だけど、力は確かだと思う…」


 だんだん小さくなる声に、不安がにじみ出ている。


「出来るだけ、急ぎましょう。多分、休む時間はあまり取れないわ。今のうちに、しっかり休んで」


 各々の準備が整い、完全武装でバイコーンに跨がった。

 ここから直ぐに、山道に入る。

 力強く駆け出したバイコーン達。


「上!ラング頼んだわ!」


 森に入った途端に襲い掛かる魔物。

 鳥型の魔物が急降下して来たが、ラングの盾が弾いた。

 いちいち倒していては進めないので、とりあえず吹き飛ばして、逃げ切る。

 ゴブリンが立ちふさがったが、飛び越えて蹴り飛ばした。

 こちらに再度向かっていた鳥型の魔物に飛ばされたゴブリンがぶつかって、周りの魔物を巻き込みながら飛んでいく。


「バイコーン、すげー!」


 鼻高々なバイコーン達。


「前見て!ウルフの群れよ!ジン、前方だけ焼き払って!開いた穴から駆け抜けるから!」

「おう!」

「一瞬スピードが落ちるね~。ムウ、後ろの魔物を頼んだ~」

「はい」


 なるべくアヤメとツバサの力を温存したいと、ジン、ラング、ムウの意見が一致したので、2人は指揮官を担当している。

 指揮官が2人だと混乱するのが普通だが、アヤメとツバサは絶妙な連携プレーでお互いの死角をカバーしている。

 流石としか、言いようが無い。

 まさに、阿吽の呼吸だ。


「紅蓮の砲撃!」

「光の乱矢」


 魔法の発動の衝撃を抑える為にスピードを落としたバイコーン達。魔力を練る時間稼ぎも兼ねている。

 スピードが落ちたのを見て加速する後方の魔物に、ムウの放った矢が降り注ぐ。

 ジンの放った燃え盛る大蛇が、敵に突進していき、その勢いと火力でウルフを燃やし尽くす。曲がる事なく真っ直ぐに突き進む姿は、蛇と言うより大砲だ。

 迫る炎と衝撃を上に跳んで回避し、ふたたび襲い掛かって来たウルフをラングの風玉が弾き飛ばす。

 全てを倒す事は出来ないが、今立ち止まる訳には行かない。

 魔物に囲まれてしまう。


「進んで!」


 群れにぽっかりと開いた穴に向かって、猛スピードで駆け抜けるバイコーン達。

 一瞬、判断が遅れるも、直ぐに追いかけ始める魔物達。

 器用に馬上で振り向いたツバサが、液体の入った瓶を魔物に向かって投げる。

 瓶が割れると同時に、魔物達が慌てて足を止め、瓶から距離を取る。

 その隙に引き離す事に成功し、魔物の姿も見えなくなった。


「何を投げたんだ?」

「市販の魔物除けの香と、様々な匂いのきつい薬草と混ぜて凝縮した物~匂いだけだからその場しのぎだけど、十分だったね~思いつきで作って良かった~」

「思いつき!?」

「暇つぶしも兼ねてね~」


 なんとなく気が向いて、アイデアが浮かんだので、暇つぶしに作った試作品だったようだ。


「………!ま、待った!橋が無い!」


 橋の残骸しか残っていない崖。

 慌ててラングが皆に叫ぶ。


「飛び越えるわ!」


 アヤメが当然のように宣言する。

 基本的にバイコーン達は、アヤメとツバサの命令を優先し、特に無い場合にはジン、ラング、ムウの指示も聞いてくれる。

 命令は聞かないが。

 分かっているジン、ラング、ムウは青ざめながら手綱を握りしめ、とっさに体を強ばらせる。

 加速し、力を貯めたバイコーン達が、躊躇なく跳躍する。


「うわ~!底見えな~い!」


 楽しそうなツバサ。

 跳んでる途中で下を覗き込んだようだ。

「!ちょっ!落ちてねえか!?」

「一回で跳べる距離じゃないもの。私達が足場を作るわよ」


 一瞬、バイコーン達の足元に見えない足場が出来上がり、それを蹴り上げもう一度跳躍するバイコーン達。

 空間を固定する魔法で、古代魔法によるものなので、アヤメとツバサにしか出来ない芸等。


「これで橋を作ってよ!」

「難しい上に、魔力の無駄遣いよ」


 陸地を繋ぐ事も可能だが、大量の魔力を使う上、制御を誤ると自分達まで固定されてしまうので、バイコーン達のタイミングに合わせて発動したようだ。

 バイコーン達は2人から様々な訓練を受けており、主人の指示と発動する際の魔力の質から、自然と意をくんで行動出来るようになっている。

 主人の指示に、バイコーン達が恐れず迷わず素早く従う姿から、信頼度の高さが伺える。


「マジで賢い…」


 無事に崖の反対側に着地したバイコーン達に、ジンが関心し、ラングは胸をなで下ろし、ムウは感謝を伝えている。

 誇らしげに胸を張るバイコーン達。


「行くわよ」


 誇らしげに走り出したバイコーン達。

 やり遂げて、誉められた事にテンションが上がったようで、走るスピードまで上がってしまった。

 ジン、ラング、ムウが声にならない悲鳴を上げる。

 時折、岩や倒れた木を飛び越えるたびに、思わず首にしがみつく3人。

 バイコーン達はこれでも魔物なので、その程度では気にならないようだ。苦しむどころか、ますますスピードが上がる。背の上でしっかり捕まってくれた方が、落とす心配がないからだろう。

 魔物の基準で良いならば…









 野営地を探した一同は、ちょうど良い洞窟を見つけ、中を確認する。

 大きな角を持った猪のような魔物が居たので、さっくり倒して夕食の材料に追加する。


「大丈夫~?」


 ツバサが声をかけた先には、地面に倒れ伏したジン、うずくまるラング、壁に背を預け座っているムウ。


「うう…」

「……あう…」

「ぐ…ぅ…」


 駄目そうだ…

 バイコーン達のスピードに、体がついていけなかった3人は、見事に撃沈した。

 もはや、酔ったのか、体を痛めたのか、ただの疲れなのかも分からない。


「駄目そうね…」

「あれま~」


 むしろ、何故アヤメとツバサが平然としているのか分からない。


「俺…生きて…る…か?」

「……………た…ぶん」

「知るか…そんな…こと」


 3人は思う…


(((ただ、旅をするだけで、こうなるとは…想定外だ…)))


 しばらくして、ようやく復活した3人がさっさと食事を済ませて、毛布にくるまり焚き火を囲む。


「なあ!皆さ、自分の名前って、どうやってついたか知ってるか?」

「何よ?いきなり」

「皆、国も違うし、何か知らない決まりが有るのかなって思って!」


 単なる好奇心らしい。


「私達は、自分で決めたわよ」

「へ?」

「生き残り以外、名前を名乗る資格が無い家だったからね」

「それまでは、番号だったね~」


 2人の家の簡単な事情は知っていたが、まさか名前までそんな由来だとは…。


「そ、そっか…理由を聞いても?」

「くだらないわよ?家に飾ってあった花が、菖蒲の花が多くて、好きだったからよ…分かりやすいわよね」

「俺、見た事無いな…」

「〈トウゴク〉にしか無いからね」

「なるほど…ツバサは?」


 眠そうにしながら、思い出そうと必死になっている。


「ああ!髪型からだよ~一部だけ上に跳ねるんだよ~」

「確かに!鳥の羽みたいだ!寝癖?」

「ないない。ツバサは一度寝たら、寝返りさえしないし。全く動かないのよ」

「ご当主が~慌てて生きてるか、確認したんだよね~」

「あんまりにも、静かで微動だにしないから、驚いてもおかしくないわよ」


 そりゃあ、確認したくなるよね。


「ただの癖っ毛だよ~」

「そうか。ラングは?」

「………祖父がとても強い人だったみたいでね、騎士から引退した後も自衛団の団長をしていた位、凄い人なんだって。……祖父みたいに、皆を守れるような子になってほしいから、祖父の名前〈ランガル〉からつけたんだって」

「すげーな爺さん!」


 興奮気味に身を乗り出すのジンに、困った顔でのけぞったラング。

 いきなりキラキラした顔で、ムウに振り返ったジン。

 名前の由来を聞きたがっていると、引きながらも理解したムウ。


「俺の名前か…村の伝統で、村人皆が相応しい名前を考えるんだ。幼い時は仮の名前だったな…兄が出来る人間で〈ユウ〉、兄の影にいるから〈ムウ〉だ。俺の家は、かなり薄いが〈トウゴク〉の者の血が流れているらしい。国境に近いからな…おかしくはないな。〈トウゴク〉の文字を使うのが決まっていたそうだ」

「〈有〉と〈無〉かしら?」

「はい。才能有る兄が〈有〉、才能無き弟が〈無〉です」

「ひでーな!それ!」


 ジンが叫ぶと、ラングが小さく頷いた。


「昔の事だ。で、ジンは?」


 言い出しっぺのジンを促すムウ。


「あー…変な決まり事が有るんだ。長男、長女の名前に、弟と妹には一文字加えるんだ。俺が〈ジン〉で、弟がラを付けて〈ラジン〉、妹が2人居るんだが、姉が〈トゥナ〉で、妹が〈エトゥナ〉だ。親父の兄弟も、〈ライン〉と〈オライン〉。親父は次男なんだ。長男の〈ライン〉は、若い時に魔物にやられたらしい」

「なるほど。面白いわね」

「たまに、混乱するけどな」


 それぞれの名前が、全く違う由来なのが面白い。

 故郷の話しで盛り上がった一同は、皆が眠りにつくまで、賑やかに談笑していた…

一人称とか、三人称が分からない…←

読めれば良いか←開き直りました

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