行動開始
開いて下さってありがとうございます
政治は良く分かりません(笑)
皆の覚悟は決まった。
「これからの事だけど、書簡には一度帰るようにと書かれていた」
「冬休みを理由にねぇ」
「公になるまで、学園に居る事は許可が出たんだ!」
「一度帰って、戻れるのかしら?」
「心配要らないわぁ。商家の力でぇ、旅商人のふりして入るのぉ」
「流石と言うか、やはりと言うか、ネーヴェン家のご当主が、商人を家に呼ぶ事を王家に許可を貰ったようだ」
大陸では、誕生祭と言う年に一度の行事が有る。
太陽が2つ現れて一週間後に夜空に月が2つ現れる日か1日だけ有る。月が2つの日を年はじめとして、約350日で一周する。約なのは、前後する事が多く、定まっていないからだ。
昔、沢山の人が数えて来たが、きっちりと一年の日にちが合う事はなかったらしい。352日だったり、347日だったりしたようだ。
故に、等しく1日しかない月が2つ現れる日を、一年の区切りにしたようだ。
正確な暦が無いので、その日を皆の誕生日としているので誕生祭の日とされ、皆でお祝いをするのが恒例となった。
王家や貴族は誕生祭にパーティーを開くので、家に商人を呼ぶ事が多い。一応国の許可が要るが、毎年の事なので直ぐに許可される。
「今年は国の監視がキツいからぁ、ネーヴェン家以外の法家は許可されなかったわぁ」
「下流貴族もね」
「中流貴族は問題無いみたいだがな!」
「まあ、我が家が暴れたら困るからでしょうね」
良くも悪くも力が有るのがネーヴェン家だ。
味方なら心強いが、敵なら脅威となる。
それだけの実力と実績、民からの信頼が有るのだ。
「ネーヴェン家の雇った商人に紛れ込むのね」
「そう。大勢は無理だから、法家だけなんだがな」
「資金、物資を受け取りに行くのぉ。監視がキツいからぁ、送れないしぃ」
「出来るだけ、質素な服装にしてくれ」
ぴんと来ない一同。
良くも悪くも貴族だ…。
「…商家に任せよう」
皆、素直に頷いた。
「後、民が戦火に巻き込まれないように、他国の協力を得なければならないが…」
「家も動いているけどぉ、難しいのよねぇ…」
「時間稼ぎの一番の目的なんだがな」
「繋がりが無いしな!」
一時的に避難する場所が問題になる。
他国を見下してきた〈ニーファ〉には、頼れる国が無い。
王家や貴族には自業自得なのだが、民には関係のない話しだ。
「〈レッドエリア〉は無理だよな?」
「行った事無いわよぉ」
「アヤメさん!ツバサさん!行った事有りますよね?」
副会長は噂として聞いていたので、2人にすがりつく勢いで振り返る。
周りの生徒は驚きながら、訝しげに2人を見る。
「魔王が協力すれば、可能ですが…してくれないと思います」
アヤメが重々しく口を開く。
「魔王に従う者ばかりではありませんし、知能の低い魔物は襲ってきます。あの地域の魔物は、他の地域の魔物より遥かに強いです。ゴブリンが相手でも、かなり苦労しますよ」
「…騎士でも?」
「若手では、自身の身を守るのが精一杯でしょう」
沈黙する会議場。
「魔王にドラゴンやら、ロック鳥やらを貸して貰えば、別かもね~」
他人事のように、ツバサが呟いた。
他人事だが…。
「無理だから」
即座にアヤメが否定する。
「魔王は基本的には、他国に関わらないもの。自軍を貸す事は、国の依頼でも嫌がると思うわ。特に強い者はね」
「だよね~」
「…そう。分かったわ」
こればかりは諦めるしかない。
皆も分かっていた事だ。
「生徒会からも、話しをしておきます」
「無理しないでねぇ。協力してくれると嬉しいけどぉ」
学生に出来る事は限られている。
「私達は、情報を集める事しか出来ないわね」
「そうねぇ」
結局、ほとんど良い案が浮かばないまま会議は終わった。
◇◇◇◇◇
「副会長~鳳凰が戻って来たよ~」
アヤメとツバサの部屋に戻って来ていた鳳凰が、副会長、エレミア、クリスティアへの手紙を持っていたので、まだ生徒会室に残っていた副会長に届ける。
「お父様から?」
~~~~~
スーウェン、突然幻獣が現れて驚いた。
詳しい事は帰って来てから聞くが、幻獣は目立ってしまうので、出来れば目立たない召還獣にしてほしい。
早く知らせてくれて助かった。
まだ王は帰って来て居ないが、召還獣によって伝達があった。
3日早く知っていたので、出来るだけ手は打ったが、法家以外はまだ理解出来ていない。
法家は元々、あまり協調性がないからな…。
王家は…やはり、王を良しとしない者が多数出てきた。
王家の内乱で、貴族の事を気にする余裕も無いようだ。
故に、まだ法も変わっていない。
こちらの事は任せよ。
冬休みは帰ってこい。
その後は学園で過ごせ。
中途半端は許さぬ。
何か有れば、直ぐに知らせてくれ。
無理はしないように。
フロウズ・レイシア・ネーヴェン
~~~~~
「良かった…」
手紙を抱き締める副会長。
「ありがとう。なんとかなりそうよ。幻獣には驚いたみたいだけど」
「緊急用だからね~」
「普段は呼びませんよ」
ちょっとホッとした副会長。
アヤメもツバサも、幻獣を見せびらかすつもりはないらしい。
「エレミアとクリスティアにも渡しに行きますね」
アヤメの言葉に、副会長が頷いたのを見て、アヤメとツバサは寮に向かう。
エレミアとクリスティアの部屋は割と近いので、帰りに立ち寄っていく。
副会長の部屋は2人共知らないので、生徒会室に居てくれて助かった。
エレミアも、クリスティアも家の状況が分かって、ホッとしたようだ。
ツバサの部屋で、お茶を飲むアヤメ。
どこから持って来たのか、高級なお茶菓子を口にするツバサ。
「…それ、どうしたの?」
「エリナ先生から貰った~」
奪ったの間違いだろう…。
「そう…」
「食べる~?」
「貰うわ」
何も聞かない事にしたアヤメ。
黙って口に運ぶ。
「明日、〈フラウニア〉の依頼を身に行かなきゃね~」
「おいしい…そうね。ちょうど良い依頼が有ると良いのだけれど」
「沢山有ると思うよ~」
「…良いのかな?それ」
「良くないよね~」
依頼が多いのは、冒険者としては嬉しい事だが、それだけ世界が荒れている証拠となる。
一般人の被害も計り知れない。
「でも、私達には関係ないね~」
神族である2人には、全く関係ない事なので、関わる気はない。
どうなろうと、ひとつの種族が消える事位は、“良く有る事”としてしか認識しないのだ。
世界が消えるのは、“出来るだけ”避けたい事でしかない。
神族の見ている世界は、果てしなく広く、数え切れない程多い。
そして、気が遠くなる程の時を、世界は“繰り返し”ている。
「まあ、“人間として”出来る事はやるけどね~」
「ええ」
2人に、“神として”助ける気は全く無いが、“人間として”出来る事をする気は有る。
あくまでも、人の範囲からは出ないので、奇跡的な結末は有り得ない。
「その気なら、悪魔位根こそぎ消せるからね~」
「もれなく人も消えるけどね」
「しょうがないよね~根本的には“同じ”だし~」
「人の欲から生まれた悪魔。悪魔の元となった欲の塊である人…悪魔だけでは、完全に解決する事はない…」
「欲は無くならないからね~また、生まれるからね~」
そんな面倒な事を、わざわざ解決する暇はない。
世界の一部である生き物を簡単に消してしまえば、世界のあらゆる面に支障が生じる。
長い時間をかけて作られた今の世界に、無駄な物は存在しない。無駄ならば、勝手に消えるだけだ。
時には世界の消失も、“必要な事”となる事もある。
「維持するだけで、大変だしね~」
「そうね」
奇跡的なバランスで維持される世界。
上手い事回り続ける世界。
世界は、綱渡りのように危なっかしく回り続ける…
◇◇◇◇◇
「ふにゃーん…」
翌日、毎回恒例となったジン潰し(ツバサがジンの上に飛び降りる)をして、避けられなかったジンを放っておいて、ギルドに向かった〈レジェンド〉一行。
ちらちらと雪が降る中、足早にギルドに駆け込むと、快適な温度に包まれた。魔法は偉大だ。
椅子に座ると、早速机に突っ伏したツバサ。
周りの冒険者やギルド職員の男性が、なにやらにやけている。
「寝ないでよ」
「暖かい所に来たら寝るでしょ~」
「寒くても寝るじゃない」
「屋根が有れば、寝るでしょ~」
「何しに来たのよ…」
ふにゃふにゃし始めるツバサに、アヤメが呆れながら揺さぶる。
「依頼を選ぶわよ!」
「〈フラウニア〉のAランク依頼なら~何でも良いよ~」
「希望だけ言って、寝ないでよ!」
「ふわぁ~」
リラックスモードになったツバサ。
諦めるアヤメ。
「なあ!Aランク依頼自体が少ないぞ」
「……Sランクばかり」
「変だな…」
真面目に依頼を選んでいたジン、ラング、ムウ。
掲示板にも、受付にも高ランクの依頼が溢れている。
「魔物の異常発生が原因よ」
「そうなのか?」
「魔物が多いから、商人も出歩かないの。護衛依頼が減ったから、競争率が高いの。皆、出歩かないから、討伐依頼も減ったのよ。まず、たどり着けないし…」
「ああ…」
「これと、あれかな?」
二枚の紙を手に取ったアヤメ。
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タランチュラの討伐
ランク A
報酬 50万
〈フラウニア〉の北西、聖霊の涙にタランチュラが住み着いた。
討伐を願う。
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「タランチュラ?あの盗賊?」
「違う違う。魔物よ。体高が2メートルから、3メートルほどの蜘蛛。毒があって、刺されたら即死。物凄く素早い」
「でかっ!」
「……即死…」
「なのに早い…」
「真っ黒で、見つけにくいから、危ないのよ。近付くと、針を飛ばすし」
「どうやって倒すんだ?」
「魔法が有るでしょう。とにかく吹き飛ばせば良いわ」
もはや、作戦ですらない。
前に依頼で潰した盗賊の名前は、この魔物からとったようだ。そのままだけど。
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キリキリ草採取
ランク A
報酬 40万
薬草になるので、見付けて欲しい。
〈フラウニア〉西部、湿地にある。
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「何でランクがAなんだ?」
「動くからよ。蔦で捕らえて、葉で切り裂いてくるの。辺り一面に花粉をばらまくのだけれど、吸うと強力な睡魔に襲われるから、危険なのよ。湿地には、高ランクの魔物も居るし」
「大丈夫なのか?」
「解毒薬を飲めば、吸っても大丈夫。安い物は駄目だけど」
「高級品?買うの?」
「まさか。何故、わざわざ高い額払うのよ…その位、私とツバサで調合出来るわ」
その位ではないが…。
魔法薬に限らず薬自体が高く、そう簡単には買えない。薬学が発達しておらず、薬師が不足しているので仕方ない。風邪は寝て治すのが当たり前だ。
魔法師や、錬金術師の薬は最高級品で、ひとつ一般的国民(農民や漁師など)の収入の約一年分。かなり効き目が良い。
魔法を使わない、普通の薬師が作った粉薬が、安くて収入の約2ヶ月分。風邪薬、痛み止め(気休め程度)、熱冷まし(緊急用)が精一杯なのが現象。
傷は自然治癒で頑張る。魔法師を雇えば、それだけで破産する。破産で済まないと思われる。
一応、学園で薬学を学ぶが、応急処置、風邪薬、熱冷まし、解毒薬(猛毒には意味が無い)、魔法薬(魔法師のみ)、軟膏位しか、学べない。良くも悪くも、魔法が有るので発達していない。
それでも、覚えられるのは極僅かな生徒のみ。
つまり、学生が最高級品を作れる事自体がおかしい。
「なら安心だな!」
「……そうだね」
「流石、師匠です」
疑問に思うのも、驚くのもやめたらしい男3人。
「じゃあ、依頼受けて来るから、明日出発ね」
「準備してくる!」
「………買い足しに行かなきゃ」
「失礼します」
この展開に慣れてしまった3人は、さっそく準備に取り掛かる。
「ツバサ、いつまで寝ているの?」
「ふみゅ~?終わった~?」
「依頼受けて、今日は終わりよ」
「任せた~」
「あ!ちょっと!?」
止める間もなく、寮に向かって走り出したツバサに、伸ばした手が空をさまようアヤメ。
リーダーである事を忘れている。
まあ、いつもの事だが…
ご感想お待ちしております




