表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/166

帰っていく代表達

開いて下さってありがとうございます

 テントで休憩する一同。

 副会長が何かを思い出したようで、ツバサに振り返る。


「いつ、貴族を集めたの?」


 皆も知らなかったので、あの時は動揺を隠すのが精一杯だった。


「その辺の風紀委員に、走り書きのメモを渡して、適当に近くの貴族を呼んで貰ったの~」

「いつの間に…」

「会議室を出て直ぐに~揉めると思ったんだよね~」

「だから、あんな事言ったのね」

「あんな事?」


 副会長が納得したのを見て、会長が思わず訪ねる。


「会議室を出る前に、王族を誤魔化せないか聞いてきたのよ」

「今、知らされても何とかなるかもしれないけど~犠牲者が増えるからね~出来るだけ、先伸ばしにしたいんだ~」

「そこまで気が付かなかった…」

「あくまで、予想だから分からないけど~召還獣を使ったとして、ここから首都まで3日か4日だから、それまでに口裏合わせるのは不可能だよね~?」

「時間の余裕は、戦局にも関わるものね。私だって、国王は別として、国と民を守りたいもの。これくらい、やれるわ」


 貴族として、国の顔としてより、自分の守りたい物の為、危ない橋を渡るのは厭わない。

 そんな副会長の言葉に、エレミアとクリスティアも頷いた。

 同国のシディアとリーゼも頷く。


「戦うの?」

「言ってなかった?」

「聞いてないよ?」


 知らされてない会長、ルクス、ゼファ、チャカが説明を求める。


「あんまりにも強引だから、もう限界なのよ。国の内部も荒れ果てているし、一部の貴族が民を虐げるし」

「へ、平民には、収入の半分を税として収める義務がありますから…」


 シディアの言葉に、耳を疑った一同が副会長、エレミア、クリスティア、リーゼに確認する。


「一番酷い所が六割ね。五割は平均で、一番少ないのは、ネーヴェン家の領地の三割よ」


 他国では、平民からは税をほとんど取らずに、王族や貴族が自らの資産で賄う。

 国民の税は、必ず国民に還元されるので誰も文句は言わない。むしろ、皆払いたがる。

 皆が出し合っていかないと、魔物の被害や、安定しない食料問題が、更に悪化してしまうので、皆が協力をしている。


 王族、貴族も国民が居なければ意味がない事を理解している。

 王族、貴族は農業を知らない。家畜の違いも、野菜の違いも、土の違いも分からないのだから、国民のおかげで食べていける事を理解している。


 国民には武力と知力が足りない。学ぶ時間もお金もない。せいぜい、柵を作ったり、盗人を捕まえる事位しか出来ない。商人のように、他国との取引など出来ない。

 故に、食物や衣類、装備品や武器を賃金として払い、国に守ってもらっている。


 上手い事、世界は回っているのだ。


 だが、長い歴史中で、全てが守られたなど、言えはしない。

 圧政が苦しめた時代も有るし、税を払わず働かぬ国民で溢れた時代も有る。

 だが、大陸の自然は決して優しくはないので、必ず国が傾く時が来る。

 魔物が居なければ、戦う必要も無いので兵力が必要無い。

 自然が豊かであるなら、汗を流して畑を耕す必要は無い。

 だが、いつも自然は厳しい。

 決して平和だけで暮らしてはいけない。

 絶えず、人々に危機が訪れる。


 結果、人々は問題点を見直さなければ、生きていけなくなる。

 故に、今の大陸の形が定着した。

 なのに…


「そんな!無理だよ!」

「落ち着いてルクス。私達、貴族の中からも、国民に見方する者は少なくないの」

「お、公にはされていませんよね…」

「国王の監視がね…ネーヴェン家が税を軽く出来たのは、長い事国に仕えて来たけど滞納した事が無いからよ」

「信用の問題か…」

「ええ。他家は一度受け取ってから、物に変えて返しているわ」

「バレない?」

「足りない分は、貴族の財産で賄うから…多分、大丈夫…」


 自信なさそうに呟く副会長。


「でも、それも限界なのよ」

「言いにくいけれど、我が家…つまり、サウエラン家は末端貴族、財産も足りないのですわ…」


 渋い顔でエレミアが口を開いた。


「でも、今回の事が良い機会ですわ!向こうから手を引いて下さるなら、大喜びですわ!」

「そうですね、エレミア」


 クリスティアも、口元だけに笑みを浮かべて頷く。


「今まで動かなかった貴族も、今回は流石に無視出来ないでしょう」


 笑い合う副会長、エレミア、クリスティアの表情が怖い。

 いつも、おどおどしているシディアまで険しい顔をしている。

 リーゼは暗器を確認している。


「そんな貴族の説得に、時間が必要なんだね?」

「はい。正直、気休め程度ですが…」

「十分でしょ~スヴェートを嫌う王族は多いのだからね~王宮内の争いが、一番早いと思うよ~」

「何でも知っているわね…」


 ニコッと笑うツバサ。目が全く笑っていない。


「とにかく、今出来る事はやったわ。で、いつ合流したの?」

「副会長が注意を引き付けた時だよ~移転魔法だから、一瞬だよ~」

「え?古代魔法?」

「そうだよ~」

「どうして使えるのよ?実力と能力から、国が放って置かないんじゃ…」

「副会長、ストップ!」


 ジンが慌てて止める。過去を知っているので、これ以上は駄目だと判断した。聞けば教えてくれるが、聞いた方が衝撃を受けるからだ。

 ラングとムウも、無言で頷いた。


「まあ、助かったから良いわ」


 3人の表情から、聞いてはいけないと判断したので誤魔化す副会長。


「会長、〈フラウニア〉の方々が」


 ちょうど良いタイミングで風紀委員が呼びに来た。

 皆素早く門に戻り、一列に並ぶ。

 のんびりと現れた馬車。


「見送りご苦労様です!」


 近衛達が〈レジェンド〉を見つけると、素早く礼をする。

 逆だと思うのだが…。


「おお。有り難い」


 止まった馬車から、ゲイルとブラストが顔を出した。

 風紀委員の女子数名が、ブラスト殿下を見て頬を染める。

 後ろの方で、校長が羨ましがっているのが気持ち悪い。


「此度は楽しんで頂けたでしょうか?」


 緊張しながら会長が訪ねる。


「良い休息となった。特に、最終日は素晴らしかった」

「有り難いお言葉、感謝します」

「そんなに堅くなるな。横を見て見るが良い」


 会長、副会長が横を見る。

 ルクス、シディア、ゼファは緊張で固まっている。

 アヤメは普段通り、隙は無いが堅くもない。

 ツバサは、にこやかに手を振っている。

 ジンは緊張のし過ぎで、気持ち悪い程大人しい。

 ラングは直立不動。置物みたいだ。

 ムウは、全く気にしていないようで、少し退屈そうだ。

 チャカは何故だかテンションが高い。


「えっと…」

「堅苦しいわい!」

 

 いきなり後ろから現れた校長に、文字通り飛び上がった会長と副会長。


「道中、気をつけるんじゃよ」

「心配には及びません」


 国王が近衛兵を見やる。

 校長もにこやかに頷いた。


「そうじゃのぅ!」

「では」

「うむ。またな」

「ええ」


 最後に〈レジェンド〉に向かって一礼するゲイルとブラスト。

 馬車が見えなくなるまで、皆笑顔で見送っていた。


「会長!手伝って下さい!」


 風紀委員が走って来たので、皆が心配そうに顔を見合わせる。


「〈トウゴク〉の方々のお帰りです」

「準備は?」

「ほとんど終わりましたが、その…チナツ様が…」


 まだ小さい王女には、国王のハヤトも怒れないらしく、駄々っ子になってしまった王女に皆困って居るらしい。


「行くよ~」


 さっさと歩き始めるツバサ。

 直ぐに後を追うアヤメ。

 出遅れながら、急いで追いかける生徒会の一同。







「いやー」


 じたばたと、小さい手足を最大限に使って暴れるチナツ。

 困りながら、微笑むハヤト。

 呆れ顔のイオリ。

 黙って見守るミカとミヅキ。


「かえりたくない!」

「こらこら」


 頬が緩んだままでは説得力がない。

 ハヤトの様子を見て、盛大にため息をつくツバサ。

 アヤメは笑いをこらえている。


「なに笑っているのかな~」

「ああ。おはよう。いや、可愛くてな」

「この、親バカが!周りを見てから言え~迷惑だ~!」


 自国の国王に親バカと言うのは、勇気があると言って良いのか、悪いのか…。


「親は皆、親バカさ!」

「吹っ切るのか!?そこ否定しないのね~…どうする~?」

「私に聞くの!?」


 突然問われ、慌てるアヤメ。


「泣き疲れたら、静かになるんじゃない?…多分」


 適当に答えるアヤメ。考えるのが、面倒になったようだ。


「よし!会長~」

「え!?俺!?」

「こんな時の為の会長だし~」

「意味分かんないけど!?」

「頑張って~」


 あたふたする会長を、ひらひら手を降って見捨てるツバサ。


「さあ、帰るぞ」

「いやー!」

「我が儘言わないのよ」


 突然クリスティアがチナツの前に出る。

 頭に手を置いて、目線を合わせながら話しかける。


「お家は嫌いですか?」

「…すきー!」

「何故、帰りたくないのですか?」

「きらきらたのしい!」

「お祭りが気に入りましたか?」

「うん!」

「じゃあ、来年また来て下さい」

「あしたは?」

「明日から、来年の為の準備をします。来年の楽しみに取っておいて下さい」

「みちゃだめ?」

「それは、お楽しみです」

「おたのしみ?」

「見ない方が、楽しいですよ」

「…わかった!かえる!」


 皆はついていけなかったが、チナツは納得したらしい。

 大人しく、馬車に乗った。


「助かった…」


 会長がクリスティアに礼を言う。


「子供、好きですから」


 満面笑顔のクリスティア。

 風紀委員の男子数名が見とれている。

 馬車に皆を乗せて、ハヤトも乗り込んでから、顔だけ出す。


「助かった。とても有意義な時間だった。礼を言う」


 生徒会、風紀委員の一同が頭を下げると馬車が走り出す。

 門まで来ると、隠れていた校長がにこやかに現れた。


「またのぅ!」

「ええ!また!」


 馬車を見送って、皆は一息つく。

 あったかい紅茶を飲んで体を温める。


「会長!〈ガイス〉の方々です!」


 残った紅茶を一気に飲み干して、皆が門に戻る。

 何か大きな物を布で包んで、荷馬車に積んである。


「わざわざ、ご苦労様」


 まだ動いている馬車から飛び降りるザガンに、皆(アヤメとツバサを除く)が慌てて駆け寄る。


「ああ。大丈夫!慣れてるから」


 いつもの事だと、笑うザガン。

 心臓に悪い。


「びっくりするじゃん~」

「そうは見えないけど?」

「びっくりしてないし~」

「やっぱりそうなんだ…」


 あっさり頷いたツバサに、苦笑するザガン。

 後ろでアヤメも苦笑している。


「楽しかったよ」

「良かったね~」

「他人事じゃないよね?」

「遊べてないからね~」

「そっか…」


 内心を隠す気も無いツバサ。

 会長が気まずそうにしている。


「あれ、何~?」


 ツバサが大きな荷物を指差すと、よくぞ聞いてくれましたと笑顔になるザガン。


「鍛冶科の店に有った、大きな大剣だよ!良い出来だったからね!」


 皆が「あれか…」と、納得する。

 使い道の分からぬただの展示品だと思ったら、ちゃんとした売り物だった大剣だ。

 初日に売れていたので、皆も不思議に思っていたのだ。


「どうするの~?」

「飾るよ」

「ああ…王城にいっぱい有ったね~」

「武器が好きな家系だからね」


 なにやら納得したらしいツバサ。

 会長が皆に押し付けられて、致し方なくツバサに訪ねる。…興味津々だが。


「どう言う事?」

「前、城に乗り込んだ時に見た~」 

「うんうん…いきなり現れたよね」


 知らなかった者は驚き、知って居た者は遠い目をする。


「兵が居るよね?」

「なぎ倒した~防御が紙なんだもん」


 キッパリ言い放ったツバサに、ポカーンとした周りの一同。

 近衛兵は互いに頷き合い、ザガンは楽しそうに笑っている。

 校長は吹き出した。


「これから、精進するよ」

「おう!頑張れ~」


オオーーーーーーッ!


 一斉に近衛兵が雄叫びを上げて、やる気を示した。

 アヤメとツバサは涼しい顔だが、他の生徒はびっくりして固まった。

 ザガンと校長は嬉しそうだ。


「では、また」

「またね~」


 馬車に戻ったザガン。

 走り出した馬車を、皆で手を振って見送った。


「後は魔王じゃな!」


 忘れていた一同。


「そうじゃないかな…とは思ったよ」


 後ろから聞こえて来た声に、皆がゆっくり振り返る。

 魔王一行が、苦笑しながら近付いて来たので、反射的に背筋を伸ばした一同。

 〈レジェンド〉だけは、何も気にしてないが…。


「忘れてたよね?」

「うっ!」


 会長が冷や汗を流す。

 その様子を楽しそうに眺める魔王。


「完璧に悪役だね~」

「ん?人間の認識はそうでしょ?」

「そうだね~」

「実際は、“見た目は普通”なんだけどね…」

「あれ?見た目だけ?」

「「内側真っ黒!」」


 笑顔で言われた言葉で、大ダメージを受けた魔王。

 ジン、ラング、ムウは吹き出した。

 校長は何度も頷いている。


「酷い…」

「心はへなへなだよね~」

「もう、止めて下さい」


 何故だか敬語になった魔王。


「どうやって呼ぶの?」

「これ」


 魔王が笛を取り出して、天に向かって吹くと、綺麗な音が広がった。

 だんだん大きな影が近付いて来て、優雅に降り立った。


キュイッ!キュキュキャッ!


 本当に似合わない程かわいい鳴き声のロック鳥。


「何々?『魔王陛下!お帰りですね!』だって~」


 何故だかツバサが通訳する。

 適当かなと皆が思った。


クルッ!?


「全部あってるね…」


 ロック鳥が驚き、魔王が唖然とする。

 驚きたいのは、こっちです…。


「かわいいなぁ~」


クルル?


「良いの~?」


キュン!


「わ~い!」


 校長も驚きながら、魔王を見る。


「魔王よ…通訳頼む」

「…かわいいの後が『触りますか?』で、良いの?の後が『どうぞ!』だよ」


 きちんと通訳してくれた魔王。

 ツバサはロック鳥に抱きついている。もふもふと楽しそうだ。

 もふもふされるロック鳥も、なんだか嬉しそうにしている。


「あのロック鳥、雄かのぅ?」

「雄です…」

「なるほどのぅ…」

「こんな事初めてですよ…彼、お堅い性格なので」


 ひとしきり頬ずりして、満足したらしいツバサが振り返る。


「良い子だね~」

「そうだね」

「また来るよね~?」

「彼が目当てだね?まあ、来るけど」

「またね~」


クー…


「はいはい。帰るよ」


 しょぼーんとしたロック鳥に、魔王一行が乗り込んで、皆に向き直る。


「楽しかったよ!ありがとう!またね!」

「今度は一撃当てる!」

「ウル、無理よ。ラング!また精霊の事調べておくよ!」

「また僕も来るよ!楽しかった!」


 魔王、ウル、アミダ、ネルが挨拶をして、リザードマンが片手を上げ、ケット・シーが後ろ足で立って手を振る。

 力強く羽ばたいて空に浮かんだロック鳥に、皆が手を振って見送る。

 あっという間に飛んでいったロック鳥。

 自然と皆も笑顔になっていた…

ご感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ