帰っていく代表達
開いて下さってありがとうございます
テントで休憩する一同。
副会長が何かを思い出したようで、ツバサに振り返る。
「いつ、貴族を集めたの?」
皆も知らなかったので、あの時は動揺を隠すのが精一杯だった。
「その辺の風紀委員に、走り書きのメモを渡して、適当に近くの貴族を呼んで貰ったの~」
「いつの間に…」
「会議室を出て直ぐに~揉めると思ったんだよね~」
「だから、あんな事言ったのね」
「あんな事?」
副会長が納得したのを見て、会長が思わず訪ねる。
「会議室を出る前に、王族を誤魔化せないか聞いてきたのよ」
「今、知らされても何とかなるかもしれないけど~犠牲者が増えるからね~出来るだけ、先伸ばしにしたいんだ~」
「そこまで気が付かなかった…」
「あくまで、予想だから分からないけど~召還獣を使ったとして、ここから首都まで3日か4日だから、それまでに口裏合わせるのは不可能だよね~?」
「時間の余裕は、戦局にも関わるものね。私だって、国王は別として、国と民を守りたいもの。これくらい、やれるわ」
貴族として、国の顔としてより、自分の守りたい物の為、危ない橋を渡るのは厭わない。
そんな副会長の言葉に、エレミアとクリスティアも頷いた。
同国のシディアとリーゼも頷く。
「戦うの?」
「言ってなかった?」
「聞いてないよ?」
知らされてない会長、ルクス、ゼファ、チャカが説明を求める。
「あんまりにも強引だから、もう限界なのよ。国の内部も荒れ果てているし、一部の貴族が民を虐げるし」
「へ、平民には、収入の半分を税として収める義務がありますから…」
シディアの言葉に、耳を疑った一同が副会長、エレミア、クリスティア、リーゼに確認する。
「一番酷い所が六割ね。五割は平均で、一番少ないのは、ネーヴェン家の領地の三割よ」
他国では、平民からは税をほとんど取らずに、王族や貴族が自らの資産で賄う。
国民の税は、必ず国民に還元されるので誰も文句は言わない。むしろ、皆払いたがる。
皆が出し合っていかないと、魔物の被害や、安定しない食料問題が、更に悪化してしまうので、皆が協力をしている。
王族、貴族も国民が居なければ意味がない事を理解している。
王族、貴族は農業を知らない。家畜の違いも、野菜の違いも、土の違いも分からないのだから、国民のおかげで食べていける事を理解している。
国民には武力と知力が足りない。学ぶ時間もお金もない。せいぜい、柵を作ったり、盗人を捕まえる事位しか出来ない。商人のように、他国との取引など出来ない。
故に、食物や衣類、装備品や武器を賃金として払い、国に守ってもらっている。
上手い事、世界は回っているのだ。
だが、長い歴史中で、全てが守られたなど、言えはしない。
圧政が苦しめた時代も有るし、税を払わず働かぬ国民で溢れた時代も有る。
だが、大陸の自然は決して優しくはないので、必ず国が傾く時が来る。
魔物が居なければ、戦う必要も無いので兵力が必要無い。
自然が豊かであるなら、汗を流して畑を耕す必要は無い。
だが、いつも自然は厳しい。
決して平和だけで暮らしてはいけない。
絶えず、人々に危機が訪れる。
結果、人々は問題点を見直さなければ、生きていけなくなる。
故に、今の大陸の形が定着した。
なのに…
「そんな!無理だよ!」
「落ち着いてルクス。私達、貴族の中からも、国民に見方する者は少なくないの」
「お、公にはされていませんよね…」
「国王の監視がね…ネーヴェン家が税を軽く出来たのは、長い事国に仕えて来たけど滞納した事が無いからよ」
「信用の問題か…」
「ええ。他家は一度受け取ってから、物に変えて返しているわ」
「バレない?」
「足りない分は、貴族の財産で賄うから…多分、大丈夫…」
自信なさそうに呟く副会長。
「でも、それも限界なのよ」
「言いにくいけれど、我が家…つまり、サウエラン家は末端貴族、財産も足りないのですわ…」
渋い顔でエレミアが口を開いた。
「でも、今回の事が良い機会ですわ!向こうから手を引いて下さるなら、大喜びですわ!」
「そうですね、エレミア」
クリスティアも、口元だけに笑みを浮かべて頷く。
「今まで動かなかった貴族も、今回は流石に無視出来ないでしょう」
笑い合う副会長、エレミア、クリスティアの表情が怖い。
いつも、おどおどしているシディアまで険しい顔をしている。
リーゼは暗器を確認している。
「そんな貴族の説得に、時間が必要なんだね?」
「はい。正直、気休め程度ですが…」
「十分でしょ~スヴェートを嫌う王族は多いのだからね~王宮内の争いが、一番早いと思うよ~」
「何でも知っているわね…」
ニコッと笑うツバサ。目が全く笑っていない。
「とにかく、今出来る事はやったわ。で、いつ合流したの?」
「副会長が注意を引き付けた時だよ~移転魔法だから、一瞬だよ~」
「え?古代魔法?」
「そうだよ~」
「どうして使えるのよ?実力と能力から、国が放って置かないんじゃ…」
「副会長、ストップ!」
ジンが慌てて止める。過去を知っているので、これ以上は駄目だと判断した。聞けば教えてくれるが、聞いた方が衝撃を受けるからだ。
ラングとムウも、無言で頷いた。
「まあ、助かったから良いわ」
3人の表情から、聞いてはいけないと判断したので誤魔化す副会長。
「会長、〈フラウニア〉の方々が」
ちょうど良いタイミングで風紀委員が呼びに来た。
皆素早く門に戻り、一列に並ぶ。
のんびりと現れた馬車。
「見送りご苦労様です!」
近衛達が〈レジェンド〉を見つけると、素早く礼をする。
逆だと思うのだが…。
「おお。有り難い」
止まった馬車から、ゲイルとブラストが顔を出した。
風紀委員の女子数名が、ブラスト殿下を見て頬を染める。
後ろの方で、校長が羨ましがっているのが気持ち悪い。
「此度は楽しんで頂けたでしょうか?」
緊張しながら会長が訪ねる。
「良い休息となった。特に、最終日は素晴らしかった」
「有り難いお言葉、感謝します」
「そんなに堅くなるな。横を見て見るが良い」
会長、副会長が横を見る。
ルクス、シディア、ゼファは緊張で固まっている。
アヤメは普段通り、隙は無いが堅くもない。
ツバサは、にこやかに手を振っている。
ジンは緊張のし過ぎで、気持ち悪い程大人しい。
ラングは直立不動。置物みたいだ。
ムウは、全く気にしていないようで、少し退屈そうだ。
チャカは何故だかテンションが高い。
「えっと…」
「堅苦しいわい!」
いきなり後ろから現れた校長に、文字通り飛び上がった会長と副会長。
「道中、気をつけるんじゃよ」
「心配には及びません」
国王が近衛兵を見やる。
校長もにこやかに頷いた。
「そうじゃのぅ!」
「では」
「うむ。またな」
「ええ」
最後に〈レジェンド〉に向かって一礼するゲイルとブラスト。
馬車が見えなくなるまで、皆笑顔で見送っていた。
「会長!手伝って下さい!」
風紀委員が走って来たので、皆が心配そうに顔を見合わせる。
「〈トウゴク〉の方々のお帰りです」
「準備は?」
「ほとんど終わりましたが、その…チナツ様が…」
まだ小さい王女には、国王のハヤトも怒れないらしく、駄々っ子になってしまった王女に皆困って居るらしい。
「行くよ~」
さっさと歩き始めるツバサ。
直ぐに後を追うアヤメ。
出遅れながら、急いで追いかける生徒会の一同。
「いやー」
じたばたと、小さい手足を最大限に使って暴れるチナツ。
困りながら、微笑むハヤト。
呆れ顔のイオリ。
黙って見守るミカとミヅキ。
「かえりたくない!」
「こらこら」
頬が緩んだままでは説得力がない。
ハヤトの様子を見て、盛大にため息をつくツバサ。
アヤメは笑いをこらえている。
「なに笑っているのかな~」
「ああ。おはよう。いや、可愛くてな」
「この、親バカが!周りを見てから言え~迷惑だ~!」
自国の国王に親バカと言うのは、勇気があると言って良いのか、悪いのか…。
「親は皆、親バカさ!」
「吹っ切るのか!?そこ否定しないのね~…どうする~?」
「私に聞くの!?」
突然問われ、慌てるアヤメ。
「泣き疲れたら、静かになるんじゃない?…多分」
適当に答えるアヤメ。考えるのが、面倒になったようだ。
「よし!会長~」
「え!?俺!?」
「こんな時の為の会長だし~」
「意味分かんないけど!?」
「頑張って~」
あたふたする会長を、ひらひら手を降って見捨てるツバサ。
「さあ、帰るぞ」
「いやー!」
「我が儘言わないのよ」
突然クリスティアがチナツの前に出る。
頭に手を置いて、目線を合わせながら話しかける。
「お家は嫌いですか?」
「…すきー!」
「何故、帰りたくないのですか?」
「きらきらたのしい!」
「お祭りが気に入りましたか?」
「うん!」
「じゃあ、来年また来て下さい」
「あしたは?」
「明日から、来年の為の準備をします。来年の楽しみに取っておいて下さい」
「みちゃだめ?」
「それは、お楽しみです」
「おたのしみ?」
「見ない方が、楽しいですよ」
「…わかった!かえる!」
皆はついていけなかったが、チナツは納得したらしい。
大人しく、馬車に乗った。
「助かった…」
会長がクリスティアに礼を言う。
「子供、好きですから」
満面笑顔のクリスティア。
風紀委員の男子数名が見とれている。
馬車に皆を乗せて、ハヤトも乗り込んでから、顔だけ出す。
「助かった。とても有意義な時間だった。礼を言う」
生徒会、風紀委員の一同が頭を下げると馬車が走り出す。
門まで来ると、隠れていた校長がにこやかに現れた。
「またのぅ!」
「ええ!また!」
馬車を見送って、皆は一息つく。
あったかい紅茶を飲んで体を温める。
「会長!〈ガイス〉の方々です!」
残った紅茶を一気に飲み干して、皆が門に戻る。
何か大きな物を布で包んで、荷馬車に積んである。
「わざわざ、ご苦労様」
まだ動いている馬車から飛び降りるザガンに、皆(アヤメとツバサを除く)が慌てて駆け寄る。
「ああ。大丈夫!慣れてるから」
いつもの事だと、笑うザガン。
心臓に悪い。
「びっくりするじゃん~」
「そうは見えないけど?」
「びっくりしてないし~」
「やっぱりそうなんだ…」
あっさり頷いたツバサに、苦笑するザガン。
後ろでアヤメも苦笑している。
「楽しかったよ」
「良かったね~」
「他人事じゃないよね?」
「遊べてないからね~」
「そっか…」
内心を隠す気も無いツバサ。
会長が気まずそうにしている。
「あれ、何~?」
ツバサが大きな荷物を指差すと、よくぞ聞いてくれましたと笑顔になるザガン。
「鍛冶科の店に有った、大きな大剣だよ!良い出来だったからね!」
皆が「あれか…」と、納得する。
使い道の分からぬただの展示品だと思ったら、ちゃんとした売り物だった大剣だ。
初日に売れていたので、皆も不思議に思っていたのだ。
「どうするの~?」
「飾るよ」
「ああ…王城にいっぱい有ったね~」
「武器が好きな家系だからね」
なにやら納得したらしいツバサ。
会長が皆に押し付けられて、致し方なくツバサに訪ねる。…興味津々だが。
「どう言う事?」
「前、城に乗り込んだ時に見た~」
「うんうん…いきなり現れたよね」
知らなかった者は驚き、知って居た者は遠い目をする。
「兵が居るよね?」
「なぎ倒した~防御が紙なんだもん」
キッパリ言い放ったツバサに、ポカーンとした周りの一同。
近衛兵は互いに頷き合い、ザガンは楽しそうに笑っている。
校長は吹き出した。
「これから、精進するよ」
「おう!頑張れ~」
オオーーーーーーッ!
一斉に近衛兵が雄叫びを上げて、やる気を示した。
アヤメとツバサは涼しい顔だが、他の生徒はびっくりして固まった。
ザガンと校長は嬉しそうだ。
「では、また」
「またね~」
馬車に戻ったザガン。
走り出した馬車を、皆で手を振って見送った。
「後は魔王じゃな!」
忘れていた一同。
「そうじゃないかな…とは思ったよ」
後ろから聞こえて来た声に、皆がゆっくり振り返る。
魔王一行が、苦笑しながら近付いて来たので、反射的に背筋を伸ばした一同。
〈レジェンド〉だけは、何も気にしてないが…。
「忘れてたよね?」
「うっ!」
会長が冷や汗を流す。
その様子を楽しそうに眺める魔王。
「完璧に悪役だね~」
「ん?人間の認識はそうでしょ?」
「そうだね~」
「実際は、“見た目は普通”なんだけどね…」
「あれ?見た目だけ?」
「「内側真っ黒!」」
笑顔で言われた言葉で、大ダメージを受けた魔王。
ジン、ラング、ムウは吹き出した。
校長は何度も頷いている。
「酷い…」
「心はへなへなだよね~」
「もう、止めて下さい」
何故だか敬語になった魔王。
「どうやって呼ぶの?」
「これ」
魔王が笛を取り出して、天に向かって吹くと、綺麗な音が広がった。
だんだん大きな影が近付いて来て、優雅に降り立った。
キュイッ!キュキュキャッ!
本当に似合わない程かわいい鳴き声のロック鳥。
「何々?『魔王陛下!お帰りですね!』だって~」
何故だかツバサが通訳する。
適当かなと皆が思った。
クルッ!?
「全部あってるね…」
ロック鳥が驚き、魔王が唖然とする。
驚きたいのは、こっちです…。
「かわいいなぁ~」
クルル?
「良いの~?」
キュン!
「わ~い!」
校長も驚きながら、魔王を見る。
「魔王よ…通訳頼む」
「…かわいいの後が『触りますか?』で、良いの?の後が『どうぞ!』だよ」
きちんと通訳してくれた魔王。
ツバサはロック鳥に抱きついている。もふもふと楽しそうだ。
もふもふされるロック鳥も、なんだか嬉しそうにしている。
「あのロック鳥、雄かのぅ?」
「雄です…」
「なるほどのぅ…」
「こんな事初めてですよ…彼、お堅い性格なので」
ひとしきり頬ずりして、満足したらしいツバサが振り返る。
「良い子だね~」
「そうだね」
「また来るよね~?」
「彼が目当てだね?まあ、来るけど」
「またね~」
クー…
「はいはい。帰るよ」
しょぼーんとしたロック鳥に、魔王一行が乗り込んで、皆に向き直る。
「楽しかったよ!ありがとう!またね!」
「今度は一撃当てる!」
「ウル、無理よ。ラング!また精霊の事調べておくよ!」
「また僕も来るよ!楽しかった!」
魔王、ウル、アミダ、ネルが挨拶をして、リザードマンが片手を上げ、ケット・シーが後ろ足で立って手を振る。
力強く羽ばたいて空に浮かんだロック鳥に、皆が手を振って見送る。
あっという間に飛んでいったロック鳥。
自然と皆も笑顔になっていた…
ご感想お待ちしております




