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皆の決意

開いて下さってありがとうございます。


 流石に動揺する副会長、エレミア、クリスティア。


「冬休みの間に?」

「冬休みなら、皆家に居るでしょ~?」

「そうだけど…」

「帰れないわよ?」

「問題ないよ~学生が言うならともかく、貴族の当主が言えば、門番も道をあけるから~名門貴族の三家がね~」

「あ、ああ!」

「それだけ影響力があるなら、簡単にははねのけられないからね~それに、国も一枚岩ではないし~」


 副会長、エレミア、クリスティアは何かに気が付いた。


「何で知っているのよ…」


 現在、〈ニーファ〉は内部で2つに分かれている。

 国王を支持する貴族。

 国民を助けようとしている貴族。

 前者は税を巻き上げ、どんどん財力を、権力を得ていく。

 後者は国民の意見を尊重し、税を国民に返していき、国民の支持を得ていく。

 国民は貧困に喘ぎ、国を出る者まで居るが、見つかり次第厳罰を受ける。

 ネーヴェン家、サウエラン家、ガーデン家は後者で、特にネーヴェン家は昔から国民を大事にして来たので支持が厚い。

 そして、門番をやるのは力の弱い貴族、平民の兵が勤めるので、いくら国の命令と言っても、名門貴族の三家が出て来たらお手上げだ。

 門番である平民は、当然三家を支持しているので、逆らう気もないだろう。


「でも、門番が…」

「罰を受ける事になりますわ!」


 副会長とエレミアに詰め寄られたので、慌てて宥めるツバサ。


「落ち着いて~そんな事したら、よけいに民が反発するよ~それに、もうこの処置を知れば何もしなくても反乱が起こるよ~だから、わざと貴族のせいにするの~民に矛先が向く前に!」

「へ?」


 情けない声を出したのはエレミア。

 副会長、クリスティアもポカーンとしてしまった。


「元から国民を助けて来た家何でしょ~?なら、今回の事で黙っているような当主ではないでしょ~?」

「私にそんな価値は…」


 小さく呟くクリスティア。

 副会長とエレミアも頷く。


「何言ってんの~?無いわけ、無いじゃない~価値が無いなら、わざわざ学園に通わせないね~家に閉じこめてしまえば良いからね~」

「え?あ、うん」


 価値が無いなら、生かしておかないのが貴族だ。

 面倒なら、隠してしまうのが貴族だ。

 家に残したくないなら、他家に嫁がせるのが貴族だ。

 認められなければ、生きていけないのが貴族だ。


「皆の話しから、家の悪い印象は見受けられなかったけど~?」


 3人共、誇らしげに家を語った。

 無条件で家を信頼していた。


「そうね」

「そうですわね!お父様に我が儘を聞いて頂きましょう!」

「ふふ、そうですね」


 3人は力強く頷き合った。


「なら、手紙を書かないとね~」


 手を宙にさまよわせるツバサに、どこから出したのか分からないが、紙とペンを渡すムウ。

 びっくりして凝視するアヤメ。


「ありがとう。とりあえず、今までの出来事を書いて~いきなりは駄目でしょ~」


 何故だか気にしないツバサ。

 ジンとラングが何故だか悔しそうにしている。

 何故だか、おっかなびっくり紙とペンを受け取る副会長とエレミア。

 丁寧にお辞儀してから受け取るクリスティア。

 不安げなリーゼ。

 置いてきぼりのラザックとガナン。


 出来事と、お願い事を書いて、自分の名前と宛名を刻印魔法で刻む。

 刻印魔法は字の通り、文字を物に刻む魔法で、重要な書類のサイン等で使われ、偽装防止策として使われている。

 魔力を練り込む為に、人それぞれの魔力がにじみ出ているので、魔力で書いた者を判断できる。

 手紙に使われる場合、宛名を刻印魔法で刻むと、刻まれた名前の本人にしか開けられない。文字自体に力が有るらしいが、良く分かっていない。無理やり開けると燃えてしまう。


 ペンを返してから、問題に気付いた副会長。


「どうやって届けるの?」


 大陸全土で主流となっている配達手段は旅商人に預ける方法。ただし、安全性も保証も無いので、良く知っている者に、短距離で重要度の低い物を預けるのが一般的。

 貴族が良く使うのは、使用人によって直に届ける方が多い。ただし、かなりの費用(旅費や護衛代)がかかる上に、魔物の心配もある。

 王族御用達なのは、召還術師の呼び出した召還獣に届けさせる方法。召還術師自体が希少で、飛べる召還獣も限られる為、一般人には不可能。鷹のような召還獣(鷹ではなく魔物)が最高峰とされているが、大陸を渡るには一週間は必要になる。


「追放処分となれば手紙も送れないわよ?即返されるわ」

「“まだ”追放処分にはなっていないよ~国王が戻ってからか、明日からだよね~多分、明日からだけど~」

「…今日中なんて無理よ?」

「ついて来て~」


 外に出るツバサに、何かを思い出したらしいアヤメが追いかける。

 皆も慌ててついていく。


「「我が血にて契約せし者よ」」


 いつもは詠唱しないアヤメとツバサが、凄まじい魔力を集めて詠唱を始める。


「「彼方より我が元に舞い戻る事願う」」


 目の前に大きな魔法陣が表れ、眩い光は放ち始める。


「「来たれ鳥の王たる者よ!」」


 魔法陣を中心に光が渦を巻く。


「「風の使者〈鳳凰〉!」」


 光が凝縮され、散るように消えると、そこには美しい大きな鳥が居た。

 虹色の光を纏い、金色の羽毛に包まれ、凛とした立ち姿の二羽の鳳凰。

 自分たちの胸辺りまである、見たことの無い生き物に息を呑む。


「うそ…」

「召還獣…」


 誰が言ったのか分からないが、皆の胸中を表した言葉だ。


「風の使者だけあって、速いよ~」

「半日あれば十分ね」


 受け取った手紙を二羽に差し出すと、自らくわえる鳳凰。


「文字の力で場所は分かるだろう~?」

「よろしくね」


 二羽は頷くと、凄まじい速さで飛んでいった。

 飛ぶ瞬間すら見えなかった一同は、何が起きたのか分からないまま空を見上げた。

 そこには数少ない雲と透き通った青空しか存在しなかった。


「あの子達なら届けてくれるよ~」

「本当に速いもの」

「え、えっと…まさか、幻獣?」


 魔物とは違う雰囲気を感じて、まさかとは思いながらも質問する副会長。

 幻獣は存在自体が疑われ、居ても神に近いとされる神聖な生き物。

 そんな生き物が目の前に現れて、しかもお使いを頼まれ黙って従うなど、理解が出来ない。と言うよりは、理解したくない。


「幻獣だよ~」

「鳳凰ね」


 何を聞くのかと、不思議そうに答える2人。


「テストの時、神獣見てるよね~?」


 〈ミラージュ〉の一同に訪ねるツバサ。

 山頂で見た、神秘的な四体の獣を思い出した一同。


「え?神獣なの?」

「そうだけど?」


 正体を知らなかった為、確認するエレミアに、それがどうしたと言う顔のアヤメが答える。


「あれよりは、普通の生き物だよ~」


 “あれ”と言う言葉に、もはや笑えてきた一同。

 規格外にも程がある。


「ん~〈ファング〉よりかっこよかったけどな~」


 ジンがものすごく失礼な事を口にする。


「………綺麗だった」

「流石です師匠…」


 見とれるラング、納得するムウ。

 このチームが可笑しいのだと、副会長と〈ミラージュ〉が今更ながら認識した。


「さて、片付けに戻ろ~」

「そうね。戻りましょう」


 さっさと仕事に戻る2人に、黙ってついていくジン、ラング、ムウ。

 それを見て慌てて仕事に戻る副会長。

 副会長の手伝いの為に追うエレミアとクリスティア。

 体力仕事を思い出したリーゼがうなだれて、とぼとぼと歩き出す。

 肩をすくめてついていくラザック。

 苦笑しながら後を追うガナン。







「それにしても、凄かった!」


 仕事をしながらジンが叫ぶ。

 撤去作業で周りがうるさいので、大声でなければ聞こえない。


「何がよ?」

「幻獣が!」


 アヤメが荷物を確認しながら、不思議そうに訪ねる。

 ジンが興奮気味に答えると、ラングとムウも頷いた。


「そうかな?ちょっと、手伝っただけだと思うけど」

「ちょっとした、おせっかいだよ~」


 アヤメが首を傾げ、ツバサが朗らかに付け足す。

 2人にとっては、友達に手を貸した程度に過ぎないらしい。

 世界の基準が良く分かっていない2人。


「…基準を間違えたかな?」


 ジンが小さく呟いた。


キシッ


「ラング!上!」


 慌てて叫ぶムウに、皆が驚き振り返る。

 ラングに左側の木材が、屈んでいるラングに向かって倒れる。

 大量の木材には釘が刺さった物もある。今壁から外して、とりあえずまとめて立てかけてあった物で、まだ釘まで抜いていなかった。

 置き方が悪かったのか、崩れてしまったようだ。

 流石に直ぐには動けない体勢のラングには、避ける手段が無い。

 反射的にうずくまるラング。

 大きな音と、誰かの悲鳴と叫び声が辺りに響いた。


「ラング!」


 慌ててジンが叫ぶが、視界が埃で遮られて見えない。


ガラガラガシャン!


 木材が崩れる音に、皆が目を凝らして息を呑む。

 アヤメとツバサの姿が見え、少し安心するジンとムウ。

 作業中に邪魔になるので、武器を持っていなかった2人だが、手元にあった木材や長い定規で、的確に木材の勢いを逃がしながら防いだらしい。

 2人の間で唖然とするラング。

 掠り傷程度で目立った怪我は無い。


「大丈夫か!?」


 ジンとムウが走り寄って来て、ようやく我に返ったラング。


「……え?あ、うん…大丈夫」

「良かった!」


 小さく頷いたラングに、ほっとしたジンとムウ。


「手伝ってくれると嬉しいのだけれど?」


 困った声でアヤメが呟く。

 皆が2人を改めて見ると、庇った拍子に沢山の木材がぶつかったようで、木屑だらけになりながら、自分の身に食い込む木材と格闘している。

 足元の木材が邪魔で、抜け出せないらしい。膝の辺りにある木材が、2人の足に食い込んでいる。

 ラングの周りも木材が邪魔して、立つことが出来ない。

 幸いにも、上から降って来ないように弾かれていたので、近寄る事は出来る。


「悪い!今どける!」

「今すぐ行きます師匠!」


 ジンとムウが素早く木材を運び始める。

 周りの生徒も慌てて手伝う。

 釘に気をつけながら格闘して、木材を片付け終わった一同。

 傷を綺麗に洗って、治癒魔法で傷を塞いでおく。


「………助かった」

「とっさに滑り込んで良かったわ」

「そうだね~」


 ムウが叫んだ瞬間、2人は瞬時に駆けつけて、危ない木材だけ弾いていた。

 目視出来ないスピードだったので、皆も気付かなかったようだ。

 ラングも良く分かってないらしい。

 2人だけなら防げるだろうが、人を守りながらは難しかったので、怪我を覚悟して危険な木材を弾く事にしたようだ。

 周りに飛ばして周囲の生徒に当たる可能性もあったので、あくまで少し軌道をそらす程度にしていた。

 結果、2人が傷だらけになってしまったのだが、2人は気にしていない。


「ごめん!」

「………ごめんなさい」

「申し訳ありません」


 何が起きたのかを理解したジン、ラング、ムウはとっさに頭を下げる。


「謝られても…」

「誰も悪くないし~…」


 困り果てる2人は、とりあえず仕事をする事にした。

 皆も黙々と作業を進める。

 使える木材から釘を抜いて、指定の場所に集める。

 使えない木材は、出来るだけ小さくしてから、大きな箱に入れる。後で、薪として使う為だ。

 終わった頃には、皆木屑だらけで凄い事になっていたので、寮の大浴場を求めて足早に帰る。

 初めは副校長の趣味で教師寮に作られたらしいが、生徒にも好評だったので、学生寮の中にも2つ作られた。 

 もちろん男女別で、覗き防止策として結界が張られている。

 夕食を済ませて、睡魔に襲われた一同は素早く自室に戻り、早々と眠り込んだ。








◇◇◇◇◇


 〈ニーファ〉の夜は大騒ぎになった。

 ネーヴェン家、サウエラン家、ガーデン家に幻獣が降り立ったのだ。

 サウエラン家とガーデン家はあまり離れていないので、ガーデン家に両家の当主と家族が集まった。

 ネーヴェン家は離れているのと、貴族ですら簡単には入れないので(地位が高いので)、ネーヴェン家の使用人が行ったり来たりしている。

 現在、ネーヴェン家とガーデン家に居る幻獣は、使用人が慌てて用意した毛布の上で静かにくつろいでいる。

 ガーデン家に居る幻獣は、一度サウエラン家に寄ってから来たらしい。

 幻獣にも驚いたが、渡された手紙にも驚いた当主達が使用人を走らせ、今の状態に落ち着いた。




 その日を境に、国の歴史が大きく変わる事になる…

ご感想お待ちしております。


王族とか貴族とか、よく分からないので全て適当です!(おいっ!)


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