表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/166

国の事情

開いて下さってありがとうございます

「良いのかしら?」


 真夜中、ツバサの部屋でくつろぐアヤメとツバサ。紅茶を片手にまったりとしている。

 しかし、話しの内容は国に関わる重要な話しで、その姿と相反する。


「何が~?」

「〈ニーファ〉よ」

「あの国は、内部から崩壊しているからね~どうにもならないよ~」

「まあ、そうだけど…」


 知る者は限られるが、〈ニーファ〉の内部は荒れ果てている。


 スヴェートは先王の隠し子で、本来ならば王位には就けないが、先王の正式な子供で男児ならば突然病に倒れ、女児ならば他国へ嫁がされたので、スヴェートしか残らなかった。


 先王が倒れ、亡くなる直前にいきなり婚約の話しが舞い込んで、2人の王女が他国の“貴族”に嫁いだ。反対意見が多数あったが、“何故か”嫁ぐ前日になって話しが明らかになるので、断れない。先方では既に決まった事として、“王印”の押された書類が届けられ、国民に公にされていた。もちろん、王が倒れているので、有り得ない筈だが…。


 王女が居なくなり、王が危篤状態になると、5人の王子が次々と倒れた。長男は弓で撃たれて、次男は突然魔物の群れに囲まれて、三男は流行り病で、四男は魔力の暴走で、五男は心臓の病で亡くなった。次男の場合、“何故だか”護衛が呼び出された事で手薄になった瞬間に襲われた。護衛は王から呼び出されたと言われ動いたが、後で誤った通達だと明らかになった。


 スヴェートが疑われたのは当然だが、証拠は何もなく、更にスヴェート自身にも毒が盛られたので、疑いが薄れた。一時、重体となるが、適切な処置によって難を逃れた。


「自作自演だけどね~」

「“何故だか”側に医師が居たんでしょう?分かりやすいわね」

「まあ、昔からある事だからね~王位を狙った暗殺は」

「まあね…」

「でも、内部で隠されたとは言え、国民も不信感を持つ訳で~」

「反乱が起こったと」

「で、スヴェートはこれを機会に、圧政を敷き始めた。国民に罪をなすりつけてね~この頃から、王族と貴族は勢いを増したんだよね~」

「前から王族と貴族の権力は強かったから、国民は更に苦しみ始めた。代々、身分にうるさい国柄だから」

「闇が濃いんだよね~でも、流石にスヴェートのやり方に反発する貴族が現れて、内戦が起きてもおかしくない状態になったから~」

「他国との話し合いどころではないと」

「多分ね~」


 小さく笑うツバサに、苦笑するアヤメ。2人共、目が笑っていない。


「どうしても、今回の戦いの主導権が必要だったと…言う事かしら?」

「握れなければ、はねのける事もね~」

「何故かしら?」

「身分にうるさい国柄だから。あの国は、他国を見下しているから~他国と平等は貴族が嫌がるんだよ~すべてでは、ないけどね~」

「敵は増やしたくないと?」

「そう。あと、兵力に自信が有るのは本当だろうね~」

「それは分かるわ」


 〈ニーファ〉は他国を見下してきたので、他国の力を借りた事が無い。

 元々、魔力に恵まれていたので、他国より兵力は高い。魔法師が居るか、居ないかで大きな差が開くからだ。

 故に、魔物の被害も少なく、悩んだ事も無い。あくまで、表面上だが。

 独自に生み出された魔法も多い。

 自信を持ってもおかしくはない。


「でも、今回は…」

「そうはいかないね~」

「でしょうね」


 今までは良くても、これからも良いとは言い切れない。

 大戦争は規模も、敵も違う。敵はほとんどが謎に包まれた、圧倒的な力を持つ、最悪で最狂の生き物だ。

 どれだけ被害が出るのか、まったく分からない。


「どうなるか、分からないけど~私達に関係無いな~」

「まあ、そうね」


 2人にとって、国がどうなろうと興味が無いのだ。それほど気にする必要も無い。せいぜい、知人が無事か気になる位だ。


「そろそろ寝よう~明日も早いし~」

「そうね。おやすみなさい」


 アヤメを見送って、紅茶のカップを片付けたツバサは小さく呟く。


「面倒な事になるな…」







◇◇◇◇◇


 朝、生徒会室に集まった一同は、早くも頭を抱えていた。


「どうしてだ…」


 会長が皆に問いかけるが、当然皆にも良く分からない。

 朝、急いで集まるように言われ生徒会室に来ると、珍しく慌てふためいている副会長が一枚の紙を取り出した。


~~~~~


我が国〈ニーファ〉の者達へ


此度、学園が他国と共謀し、我が国を侮辱した事により、今日から〈ニーファ〉は学園から撤退する事が決まった。

学生の君達には悪いが、我が国を侮辱した学園に置いては行けぬ。

心苦しいが、明日には皆で学園を出たい。

もちろん、旅費は国が出そう。

優秀なる君達の為だ。出し惜しみはしない故、安心して欲しい。

尚、今回帰らぬ者は、反逆者として追放処分とする。

良き返答を期待する。


スヴェート・セティ・ニーファ



~~~~~


 朝、騎士によって届けられた手紙で、王印も押されている。

 流石に内容が横暴なので、抗議したいと思うが、相手が国王なので不可能だ。


「失礼しますわ!」


 いきなり入って来たのは、〈ミラージュ〉の一同。

 エレミアとクリスティアが慌てて駆け込み、続いて残りの3人が何が起きたのか分からない顔をしながら入って来た。


「このような手紙がきましたわ!」

「私もです」


 エレミアとクリスティアが取り出した手紙を見て、天を仰ぐ生徒会一同。

 会長がなにやらぶつぶつ言い出した。


「わ、私も〈ニーファ〉なのですが…と、届いてませんよ?」


 小さく手を挙げるシディア・モノリスに皆が振り返る。


「私も貰ってないよ!」


 リーゼも手を上げる。


「どういう事?」

「…会長~手紙貰った生徒だけ呼び出すのは可能~?」

「ツバサ君?出来なくはないが…」

「副会長~集まった生徒と話し合いをお願い出来る~?」

「え、ええ…」

「では~会長、一階の会議室に皆を集めて~ここだと面倒な事になるから~」

「わ、分かった。チャカ!」

「分かったっす!皆行くっす!」

「副会長、集まった生徒から話しを聞いてくれる~?あと、身分の確認も~」

「…分かりました」

「ルクス先輩、会議室の使用許可を~」

「行ってきます!」


 テキパキ指示を出すツバサに、圧倒される会長と、何かに気付いた副会長。

 直ぐに動き出した風紀委員達。

 ルクスが会議室の使用許可を貰って、副会長とエレミア、クリスティアが会議室に移動する。


「ジン、校長連れて来て~」

「お、おう!」

「どんな手を使っても良いよ~」

「おう!」


 何故だか嬉しそうに走っていくジンを、苦笑しながら見送る一同。


「ラング、ムウは片付けの手伝いをするふりして、情報集めて~」

「……うん」

「了解です」


 通信用魔法具を受け取って、駆け出していく2人。


「会長、他国の対応よろしく~」

「え!?」

「ほうっては置けないし~」

「会長だけでは足りないわ。ゼファ先輩、シディア先輩もお願いします」


 流石に1人は厳しいとアヤメが判断したが、ツバサが首を横に降る。


「簡単な説明だけで良いよ~多分、気付いている筈だから~ああ、少しごまかした方が良いかな~?」

「生徒間の会議…で良いかしらね」

「良いよ~大人数が動くからね~」

「では、緊急会議と伝えて下さい会長」

「荒波たてないように、いつもの事のようにね~」

「ああ…分かった」


 走り去る会長。

 完全に立場が逆転しているが、誰も気にしない。誰も対応出来ないからだ。

 冷静に対応出来るのは、こんな事に慣れているツバサと、ツバサと長年共にいるアヤメだけだ。アヤメも慣れてはいるが。


「ゼファ先輩、シディア先輩は生徒の監視をお願い~」

「混乱するかもしれません」

「ふむ」

「は、はい」


 静かに出て行った2人。

 残ったアヤメはツバサを見据える。


「厄介ね。もしかして、分かっていたのかしら?」

「なんとなくね。アヤメも薄々気付いていたでしょ~」

「なんとなくね…」

「ここ、任せるね~」

「…分かったわ」


 少し考えてから頷いたアヤメ。

 何をするのか気になるが、何か考えが有るのだろうと判断する。

 こんな時こそ頼りになるのがツバサだ。

 直ぐに生徒会室から出て行ったツバサ。素早く、そして静かに走る。







 物陰に隠れたツバサは、見た目を茶髪のショートカットに変えて、生徒会のバッジを取り、“分かりやすく”探知魔法を発動し、スヴェートに近付いていく。

 焦るように足をもつれさせながら、必死に走る演技をする。


「止まれ!」

「はっ!」

「何者だ!?」


 素早く片膝をついて深々と頭を下げるツバサ。


「〈ニーファ〉の出身で、魔法科一年、サラ・クランツと言います」

「平民か…何用だ?」

「失礼ながら、そちらのお方はスヴェート陛下とお見受けします」

「分かっておるなら目障りだ!下がれ」


 見下した目で、ツバサ…が演じるサラを見るスヴェート。

 怯えたふりをして、震える声を必死に抑えながら喋るサラ。

「も、申し訳ありません。無礼は承知ですが…わ、私のクラスの御貴族様に文が届いたと聞きまして…」

「貴様!黙れ!平民の身分で!」

「良い」

「へ、陛下?」

「何用か、早く言うが良い」

「あ、ありがとうございます。あの、内容も聞きまして、でも…私には届いて無いので…な、何かあったかと」

「何かとは?」

「だ、誰かに盗まれたか、手違いかと」

「ふん!誰が平民風情にわざわざ文を出すものか。身分を弁えよ」

「は、はい!し、しかし国に帰るには…」

「帰る?」

「あ、明日帰るようにと…」

「愚か者め。平民に用はない!どうしてもと言うならば、自費で帰るが良い!」

「そ、そんな!」

「黙れ!こちらが情けで話しを聞けば、不服を申すとは何事だ!身分も分からぬ薄汚い平民風情が!」


 スヴェートの合図で近衛がサラを蹴り飛ばす。

 壁に叩き付けられて咳き込んだサラに、近衛が槍を叩きつける。

 なんとか避けたサラに、風玉が当たり吹き飛んだサラ。

 鼻で笑って去っていくスヴェートと近衛兵達。


「…なるほどね~」


 まったくダメージを受けていないサラが起き上がってため息をつく。

 直ぐに物陰に隠れてツバサに戻る。


「分かりやすくて良いね~」


 穏やかな声とは裏腹に、鋭い目つきでスヴェートの去って行った方を睨むツバサ。


『ツバサ?ちょっと来て』


 通信用魔法具(自分達の物)で呼び掛けるアヤメに、少し間を置いてから返答するツバサ。


「…分かった~」


 素早く身を翻し、生徒会室に向かうツバサ。








 生徒会室には、生徒会一同と風紀委員長、〈ミラージュ〉の一同、校長が集まっていた。


「お待たせ~」

「どこ行ってたんだ?」

「ちょっとね~」


 はぐらかすツバサに、訝しげに見つめるジン。


「良いかしら?」

「良いわよエレミア」

「手紙を受け取ったのは、貴族だけみたいだわ。集まったのは貴族だけでしたもの」

「誰一人、一般人は居ませんでしたわ」


 エレミアとクリスティアが会議室に集まった者達を話す。

 副会長も何度も頷いていた。


「片付けの手伝いの時、噂を聞いて来ましたが、一般人には届いてないようです」

「……皆動揺していた」


 ムウとラングが片付けの最中に聞いた話しを報告する。


「一部、争いが起きていた」

「え、えっと…〈ニーファ〉の生徒が他国の生徒を疑って…」


 ゼファとシディアが、それぞれが駆け付けた騒動の内容を報告する。


「他国の代表は気付いていたよ」


 他国の代表に説明に向かった会長が、他国が既に理解していた事を報告する。


「そういえば、貴族を呼びに行った時、護衛の生徒が荷物を纏めていたっす!」


 呼びに行った時の事を報告するチャカ。


「そう…会議はどうなったの?」

「まだ決まっていないわ。既に帰る事を決めた者も居るけど」


 疲れた顔で副会長が説明する。


「学園に残りたい者も多いわ。皆、家の相続権は無いから。学園に来るのは、相続権の無い女か、相続権争いに負けた者だけだから。相続権が有るなら、王立の魔法学園に行くから」

「お坊ちゃま学園か~」

「ええ…」

「相続権が無いなら、帰っても意味ないのかな~?」

「無いわね。政略結婚が待ってるわ」

「なるほどね~」

「学園を出れば騎士として国に仕える事が出来るから、皆学園に来るのよ。でも、今回はどうにも理解出来ないし」


 今、素直について行けば騎士になれるのか分からないので、皆悩んでいる。

 もし、仕える事が出来なければ、一生下働きと捨て駒にされる。

 政略結婚など、血が残せれば良いので、ただのお飾りに過ぎない。


「貴族は面倒だね~」

「そうね…」

「スヴェートに会ってきたけど~」


 ツバサの一言に固まった一同(アヤメは除く)。


「もちろん、変装したよ~平民に興味無いらしいよ~貴族にだけ出したみたい~」


 脱力した一同(アヤメは除く)。

 ツバサは振り返って校長を見やる。


「で、校長はどうするのかな~?」


ご感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ