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大戦争に向けて

開いて下さってありがとうございます。


 話しを聞いて、しばし呆然とした一同。簡単には受け止められない。


「…証拠は?」


 かすれた声でスヴェートが問いかける。


「神獣が知っています」

「神獣?」

「校長が連れています」


 一斉に校長を見る国の代表達に、少し引きながら苦笑する校長。


「やっぱりそうなるかのぅ…〈才希〉!出番じゃ!」


 校長の目の前に現れた〈才希〉に、皆驚きながら見つめる。


「む…無遠慮だな!」


 喋ったと、誰かが呟いた。


「神獣なのだから当たり前だ!神の位を賜りし者ぞ!」

「冗談はよせ!そんなバカな」


 スヴェートが否定する。


「なんと!?この礼儀知らずが!」


 〈才希〉が神気をぶちまけ…解き放った勢いでスヴェートをぶっ飛ばす。

 魔力とは違う神聖なる力に、本能的に理解する一同。


「…いたた」

「へ、陛下!」

「遅いわ!馬鹿者!」

「申し訳ありません」


 席に戻ったスヴェートが、睨むように〈才希〉を見つめる。


「なんだ!」

「…獣が」 ボソッ

「聞こえたわ!」


 飛びかかりそうな〈才希〉をひっつかんだ校長。引っかかれて傷だらけになった手を治癒しながら宥める。


「ふん!まあ良い。魔王の語った事は真実だ。間違いない」

「神が言うなら、信じよう」


 相変わらず不機嫌そうなスヴェートを、横目で睨む〈才希〉。キッパリと断言して周りを見渡す。

 〈才希〉の力から神だと判断したスヴェートが、苦々しく頷いた。


「魔王陛下、先ほどの無礼失礼した。出来れば、少し話をしたい」


 ゲイルが謝罪して、頭を下げる。

 魔王はちらりと見てから、小さく頷いて先を促す。


「ありがたい。直ぐにとはいかぬかもしれぬが、わが国も魔物と共に戦いたい。誤解は直ぐには晴れぬと思うが、ゆっくりと解いていくつもりだ。どうか、力を貸しては頂けぬか?」

「…こちらも直ぐには無理だろう。だが、気持ちは伝わった。国を思う気持ちは同じだ。共に歩もう」

「ありがたい!」


 深く頭を下げるゲイルに、少し微笑んだ魔王。

 ザガンとハヤトも改めて助力を願い、魔王も承諾した。

 自然とスヴェートに視線が集まる。


「…臆病者めが」

「む?」


 小さく呟いたスヴェートの言葉は、元々耳が良い魔王と、隣りで神経をとがらせていた校長だけが聞き取れた。


「わが国には兵力が豊富にある。力を貸してもらう必要はない。皆、勇敢な魔法師達だ。手を出さぬだけで良い」

「良いのかのぅ?」

「良いと言っておる!今までも力を貸してもらった覚えはない!遊んでばかりいるそなた達とは違う!」


 そう言って席を立つスヴェート。

 護衛を引き連れ会議室を後にする。


「困った国じゃ」

「身分制度が強いからな。プライドが頭を下げる事を許さぬのだろう」


 呆れ顔の校長に、〈才希〉が国柄を思い出し付け加える。

 未だに王族、貴族が国を握り、国民は抗う事を許されない。身分にうるさいのが、〈ニーファ〉の特徴だ。


「あー、おっほん!皆様よろしいかのぅ?各国が魔王と手を組むのは決まったが、国同士はどうするかのぅ?」

「もちろん、共に戦いたい!」

「わが国もです」

「うむ。よろしく頼む」


 ゲイルが皆に確認し、ザガンとハヤトも頷いた。後ろにいる護衛達も、既に挨拶を交わしている。

 反対はないと分かり、ほっとする各国の代表達。


「良かったのぅ!」

「うむ!」


 嬉しそうな校長と〈才希〉。

 静かに頷く魔王。


「皆で頑張ろうぞ」

「必ず勝ちましょう」

「頼もしいな」

「決まったら即情報の交換じゃ」

「うむ」


 各々が集めた情報を、各国の側近が纏めた書類を見ながら交換していく。

 思った以上の被害に驚くゲイル、他国の情報の量に感心するザガン、魔法師の力を再認識するハヤト。

 校長と魔王は既に世界の状況を知っているので、他国の特徴を再確認する。両者、随分前から各地で活動していたのだ。


「ふむ。薬草ならば心配は要らぬ。自然だけは豊富にある」

「ありがたい。わが国は荒れ地だらけなので助かります。砦の修復はお任せを。皆、力だけは余っていますから」

「助かる。この前結界は無くなったからな。砦が必要だ。わが国は手先が器用な者が多い。武器、魔法具などは任せてくれ」

「魔力が少ない者にも扱える武器は有りますかな?」

「もちろん」

「素晴らしい!」


 各国の苦手分野を補える事に、新鮮な感覚と喜ばしい思いに盛り上がる一同。

 いつの間にか、魔王の護衛のリザードマンが各国の護衛に囲まれている。どうやら戦いの話で盛り上がっているようだ。

 肩に居たケット・シーは、女性の護衛達に人気らしい。もふもふされている。

 精霊の話をアミダに聞いている護衛、ウルとネルに筋肉自慢する護衛など、皆既に打ち解けたようだ。


「ほう!皆ご存知で?」

「もちろんです。近衛が軒並み倒されましたよ」

「強いからな…村を消したほどに」

「「え!?」」

「くくっ!やりそうだ」

「流石じゃ!」


 〈レジェンド〉の話になったようで、皆が知っている事に驚き、納得する。

 ハヤトが村が消えた事を言うと、ゲイルとザガンが目を点にして、魔王が笑い、校長が感心した。


「規格外だ…」

「ですね…」

「だなぁ…」

「頼もしい2人だ。ジン、ラング、ムウは成長したかな?」

「あの2人の側じゃ!成長せんで生きていけんわい!」


 一斉に頷いた一同。

 側近達も密かに後ろで頷いた。

 情報の交換と確認が終わった後、合同訓練のスケジュールを組み上げ、必要な物を確認し発注して、お金を出し合い学園が一時的に預かる。魔王からはお金ではなく、貴重な薬草と鉱物が提供される事になった。

 

次の会議の日程を決め、各自が帰る為の準備の為に会議室を後にする。

 会議室には校長と護衛2人だけが残った。

 ずっと黙って後ろに居た護衛は甲冑を纏い、顔しか出ていない。

 黒い髪の短髪の中性的な騎士と、ブラウンの肩までの髪のおっとりした感じの女性騎士。

 校長が周りを確認して、誰も居ない事を確認したので2人を呼ぶ。

 校長の隣りの席に座る2人。


「そろそろ良いじゃろう?」


 校長の言葉に頷いた2人は、同時に指を鳴らす。

 光が2人を包んで直ぐに、花が開くように光が割れて消えていく。

 黒い髪の騎士はアヤメ、ブラウンの髪の騎士はツバサだった。


「凄いのぅ」

「簡単な偽装魔法だよ~」

「声も変えたけどね」


 それどころか、魔力でバレないように魔力の質まで変えて、魔法がバレないように外に漏れる魔力だけを消す魔法具を使っていた。違和感がないように、“分かりやすく”肉体強化魔法を使っていた。

 前もって知っていた校長以外、全く気付いてなかった。魔王でさえも。


「言われなんだら、儂も分からんわい」

「頑張ったから~」


 内心、「そう言う問題か!」と突っ込んだ校長。


「本題に入りましょう」

「うむ。あの真実は皆にはきつかったかのぅ?」

「でしょうね」

「〈ニーファ〉には困ったのぅ」

「仕方ないでしょう」

「神はどうお考えで?」


 人間としてではなく、神の意見が聞きたいと言う校長に、神としての姿になる2人は重々しく口を開く。


「どうとも思わぬ」

「我らには関係ない事です」

「…見放すと?」

「我らは誰の味方でもない。誰の敵でもない」

「あくまで、中立です」

「そうですか…」


 あっさりと言う2人。

 校長とて分かっていた事だが、どうにもやりきれない。


「英雄達を支えるのは、古の約束故。特別人間を守る気などない」

「我らが肩を持つのは、あってはならない事です。手を貸すなど、あり得ません」

「じゃろうのぅ…」

「…しかし、例外がある」

「何ですかな?」


 希望にすがる校長。


「皆がひとつになる事だ」

「さすれば、世界の意志として少しの力を貸しましょう」

「皆?ひとつ?」

「人間、魔物、精霊だ」

「簡単ではありません。上辺だけでは、私達に祈りは届きません」

「通じ合う事かのぅ?」

「何かの味方にはなれん。だが、全ての味方にはなれる」

「それでも、全力ではサポート出来ませんよ。あと、全ては自分達で解決して下さい。私達の力は強過ぎます」


 とても難しい…否、不可能に近いもの故に、に校長は頭を抱える。


「かの英雄は成し遂げたぞ」

「だからこそ、神に祈りが届きました」

「う、ぬう…」


 かつて英雄は世界を巡り、全てと向き合い成し遂げた。

 もちろん1人ではなく、大賢者、預言者の協力が有ったからこそ出来た事。


「我らにも規則がある。必要ない規則など有りはしない」

「私達はこの世界一つを守っている訳ではありません。あなた方が知らぬ世界を、あなた方の数では数えられない程、守っているのです」

「………」

「僅かな過ちで、数多くの世界に異変が起こるのだ。仕方あるまい」

「かの英雄の魂一つで、他の命の運命が、がらりと変わりました」


 校長は納得し、自らの言葉の迂闊さを恥じた。神が意味なく行動する筈などないのだ。何もしない事も必要なのだ。

 今、目の前で助言してくれるのも、古の約束と、大いなる慈悲である。

 これ以上は求めてはならない。

 原因は人間に有るのだから。


「規則を破る結果となった、あの約束は…叶えた神は…」

「対価は受け取った故、地位の剥奪、追放処分で済んだ」

「そんな!?」

「中級神から、下級神になっただけです。神界から地上に降りただけです」

「しかし…」


 そんな事になったと知って動揺する校長に、説明する2人。


「神に寿命はない。しかし、規則を破った者は罰を受ける。内容から下される罰には様々な種類が存在する」

「存在自体の消滅…人間で言えば死です。何も残りません。

地位の剥奪…一つ下げる事が多いですが、時折神から天使、神から地上の生き物へとなる事も有ります。その後、上がる事も有りません。

追放処分…神界へ入る事が出来なくなります。地上で暮らす事になり、故郷には戻れません。環境的に、地上は生きにくいですね。あまり自由が有りません。一つの狭い世界から出られませんから。

地獄での労働…地獄を管理する神の元、雑用を一定期間与えられます。基本的には、肉体労働です」

「一番軽いのは、最後だな。働けば良いからな」


 神の基準は分からないが、とにかく罰は軽くないと理解する校長。


「輪廻から特定の魂の力を故意に動かすのは御法度。本来ならば、地上の生き物にして追放処分だ」

「かなり重い罪なのです」

「当たり前だろう。一つの魂が抜けた場所に、本来ならば死ぬ必要ない者の魂を埋める必要がある。抜かれた魂を浄化せず、更に同じ世界に戻せば、周りの魂の運命がずれてしまう」

「死ぬ必要ない者の死、死ぬ筈の者が死なず、幸福になる筈の者の不幸、不幸になる筈の者の幸福、そして…力を受け取った本人の負担」


 悲しげに、儚げに、何かを耐えるように話す2人。

 校長は理解する。

 神も辛いのだと。本当は、そうしたくないのだと。しかし、回避する事は不可能なのだと。


「すまぬ。我が儘じゃった」

「良い。これが、世の理よ」

「分かれば良いのです」

「…儂も頑張ろう。まず、エルフを探さねば」

「最優先だろうな」

「難しいですよ」

「どうにも見つからんわい」

「普通に探すからだ」


 きょとんとする校長。


「まさか、普通に森で静かに暮らしていると思ったのか?」

「神秘的な森の奥かと…」

「…はあ。翼王、ヒントだ」

「…後で、対価を貰いますから。異空間です」

「異空間!?分からん筈じゃわい!空間魔法かのぅ?」

「そうだ。特定の空間を“切り離して”隠している」


 天を仰ぐ校長。

 古代魔法故に、無意識に除外していたので、候補に上がらなかったのだ。

 思いつきもしなかった。


「出入り口は一カ所です。入れる時と、入れない時があります」

「分かりました!頑張りますわい!」

「対価は、歪みの修復です」

「なんと!?」

「国境に多いのだ。そなた自身が向かえ。連れが居ても構わん」

「歪みは見えるでしょう?」

「…はい。分かりました」


 とても大きな対価に、うなだれる校長。修復にはかなりの魔力が必要になる。あっちこっちにあるなら尚更大変だ。


「世界が滅ぶよりマシだろう?エルフは今回の戦いの鍵だしな」

「…はい。ありがとうございます」


 小さくなった校長を置いて、さっさと自室に戻る2人。

 しばらくして、校長はトボトボと、時折ふらつきながら自室に向かった。

ご感想お待ちしております。


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