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次々と到着する要人達

登場人物がいきなり増えます


 後ろに居る一同を見渡すザガン。


「久しぶりだな〈レジェンド〉」


 目を細めて〈レジェンド〉の一同に声をかける。

 それぞれの礼をする一同。


「会長、本人に間違いないよ~」


 急に砕けた態度に戻るツバサに、会長のの力が抜ける。

 立ち直った会長が改めて挨拶をする。


「はじめまして。生徒会会長のヴァルカン・トルメンです」

「はじめまして。いきなりですまない。よろしく頼む」

「はい。皆」

「副会長のスーウェン・レイシア・ネーヴェンです」

「生徒会のルクス・ハウンズです!」

「同じくゼファ・ワールウィン」

「お、同じく、シディア・モノリスです」

「ザガンだ。よろしく」


 威風堂々としたザガンに思わず畏縮する生徒会一同。


「最後に、風紀委員長のチャカ・メトラ。風紀委員の頭っす!あ!」

「チャカ!申し訳ありません」


 口癖が出てしまったチャカに、咎めて謝る会長。


「良いよ気にしなくて」

「ありがとうございます」

「生徒会長。校長先生を呼んできました」

「はじめましてじゃのぅ」

「はじめまして。父とは面識がお有りでしょう?」

「随分前じゃがのぅ」

「では、若輩者の私には礼は要りません。よろしくお願いします」


 頭を下げるザガンに、頷いて朗らかに話す校長。


「なぁに。元から気にせんよ!聞いておるじゃろう?」

「そうでした」

「さあ、部屋に案内しよう。今回は大勢でな、窮屈やもしれんがのぅ」

「大丈夫です。温室育ちには程遠いので。むしろ広いと落ち着かない」

「父親そっくりじゃ!」


 目の前がクラクラして来た生徒会、風紀委員一同。非現実的だ…。

 案内したのは学園の敷地内にある、ひとつの館。来客時使用する建物で、外見は普通の建物だが、中には使用人がいる。

 政治科の三年生が身の回りの世話を、騎士科の三年生が見張りをする。

 もちろん、ちゃんとした使用人も雇っているので不便はない。

 確かに十分な広さはあれど、全国の代表は入りきらないだろう。

 しかし同じ建物が2つあるので、二カ国共同ならばなんとかなる。

 足りない部屋数は、使っていない寮を片っ端から清掃した。


「申し訳ないが、使用人達は寮になるが良いかのぅ?」

「仕方ない。今回はこちらが多すぎる」


 使用人達を風紀委員が案内して、ザガンと近衛兵、貴族を館に案内する校長。

 生徒会一同は直ぐに必要な物や、馬屋の手配をする。事前に送られて来た荷物も運んで来る。

 何故だか、雑用に向かおうとした〈レジェンド〉を必死に阻止する近衛兵。正確に言うと、ツバサを雑用などに行かせられないと言い張っている。


「シラハネ様はお座り下さい」

「そうですよ!雑用は私達が行きます」

「大袈裟な…生徒会の一員なんだけど」

「しかし…やはり駄目です」

「シラギ様止めて下さい!」

「だって。ツバサ、諦めたら?」

「はあ…仕方ない」


 とりあえず座るツバサに、安堵する近衛兵達。立場が逆だ…。


「〈レジェンド〉はお客様の対応よろしくね!荷物は俺達で大丈夫だから!」


 会長まで加わって、一同は取り残された。

 曰わく、『強者は敬うべし』と言うお国柄らしい。


「だから大袈裟な…」

「間違ってないけど?」

「アヤメも強いじゃん!私と張り合えるのはアヤメ位だし!」


 聞いていた近衛兵が椅子を差し出す。困りながら座るアヤメ。


「お強いのですね!お二方は!」

「いや…私は…」

「私達は瞬滅でしたよ。姿さえ見えませんでした…」

「アヤメなら良い勝負だな」

「まあ、間違ってないけど」

「やはり素晴らしい!」

「精進あるのみ!」


 近衛兵達が一斉に頷き、尊敬の眼差しを向ける。ジン、ラング、ムウは羨ましいと、もみくちゃにされている。いつの間にか仲良くなったらしい。


「そうだな!」

「そうじゃのぅ!」


 いきなり現れたザガンと校長。聞いていたらしい。血の気の多い二人だ…。

 再会を喜び、盛り上がった一同。いつの間にか生徒会も巻き込んでお祭り騒ぎになっていた。



 ようやく寝静まったザガン一行。


「次の御一行の為に門に」


 会長の一言で動き出した一同。静かに館を後にした。まあ、長旅で疲れて皆眠り込んでいるが。



 まだ薄暗い中、一時間程度の仮眠をとって、眠気覚まし(物凄く苦い)を飲んで待ち構える。


「見えました!」


 風紀委員の報告に、気を張りつめる一同。アヤメとツバサはいつもと変わらない。

 大きな馬車が到着し、一人の近衛兵が歩み寄る。


「〈フラウニア〉現国王ゲイル・ウィン・フラウニア国王陛下、ブラスト・ウィン・フラウニア殿下のご到着である!」

「失礼ながら、ご本人確認をしなければなりません」

「陛下、殿下がお疲れなのだ!部屋に案内せよ!」

「久しいな」


 長引きそうなので、前に出るツバサに、驚きで固まる近衛兵。なんか、見た事ある気がする…。


「な、なんと!陛下!」


 直ぐに陛下に報告する近衛兵。

 国が荒れた際、活躍を見せた〈レジェンド〉(ラングを除く)は、少しの間だが王城にいたので、ほとんどの近衛兵が顔を知っている。


「いやはや!驚いた。出迎えがあなた方だったとは…」


 馬車から降り立ったゲイル国王陛下は、目を丸くしている。


「生徒会の仕事。本人に間違いないよ」

「わ、分かった」


 戸惑いながら頷いた会長。

 直ぐに校長をたたき起こして、引きずってきた風紀委員。


「お疲れ様じゃのぅ」

「此度は世話になる」

「あいにく、そんなに沢山の部屋はないのでのぅ…窮屈だが良いかのぅ?」

「承知している。流石に全国の王が集まるのは想定外だろう」

「そうじゃのぅ…こっちじゃ」


 施設が足りないのは当たり前だ。そう言う目的の場所ではないのだ。まだ、2つの大きな館が有るだけましだ。

 〈ガイス〉の一同を案内した館の間に広い庭を挟んで、もう一棟館がある。

 外見が少し違うが、部屋数と内装はほとんど同じだ。

 使用人達を風紀委員が寮に案内して、陛下、殿下を校長が部屋まで案内する。

 生徒会は、馬屋の手配、荷物の持ち運びを手伝う。


「国の恩人にやらせる訳には…」

「仕事だよ~」

「ジン、これ二階よ」

「了解!」

「ムウ、これあの部屋~」

「はい」

「えっと…」


 気にせず荷物を運ぶ一同。


「お前は?」

「……ラング・カウザックです」

「同じチームだよ~」


 一人だけ知らない顔のラングを、不思議そうに見る近衛兵達。

 掻い摘んで説明するツバサ。何気ない顔で、上手い事問題点を隠し、要点だけ伝えながら、双方に誤解のないよう、しかし、ちゃんと理解出来るように、言葉を紡いでいく。瞬時に組み立てたとは思えないほど良く考えてあり、話し方も日常会話のように、すらすら言葉を紡ぐ。


「そうか、それは仕方ない。失礼した」

「……いえ!」

「祖国が心配になるのは分かるが、そう言う時こそ落ち着けよ」

「………はい」


 ラングはついていけなかったが、近衛兵達は理解したようだ。

 ラングは心配のあまり、判断力が落ち、あまりにも狼狽していたので、致し方なく留守番になった…と伝わったらしい。

 これならラングを咎める者はそうそういないだろう。出身国が傾いたら、パニックになるのは、当たり前だ。前例が無いなら尚更だ。


「……ありがとう」

「別に~仲間だし~」

「……助かった」


 嘘は絶対ついていない。噛み砕いて、つなぎ合わせただけで、事実なのだ。


「判断力うんぬんは事実だし~」

「………そうだね」

「良くあんなに上手く言えるな…」


 荷物を運びながらこっそりと話す一同。 ジンの言葉に、アヤメ、ラング、ムウが頷いた。

 不思議そうに首を傾げるツバサ。


「ちょっと良いかな?」

「殿下?どうなさいました?」

「この前は時間が開かなくてね…見送りに行けなかった。すまない」

「いえ。お気になさらず」

「気にしてないよ~」


 全く動揺していないアヤメとツバサだが、一国の王子が頭を下げるという、しかも個人的にという、非現実的な光景に右往左往するジン、ラング、ムウ。

 因みに、悪魔騒動が落ち着いてからゲイル国王陛下が一同に謝った時にも、ジン、ムウはオロオロしていた。


「ふむ。言うべき事は詫びではないな…助かった。礼を言う」

「どういたしまして」

「刻印解除できた~?」

「地脈のかな?」

「そう。あの置き土産」

「あのあと、ひと月かけて解除したが、いまだに土地は回復していない…」

「そうでしょうね…」


 地脈の上にかけられた呪いは、一度大地の地脈を汚してしまったので、解除しても汚れが落ちる訳ではない。悪化しないだけなのだ。

 浄化魔法をかけ続ける必要がある。


「そろそろ休むよ」


 自分にあてがわれた部屋に戻るブラスト殿下。

 国の為に走り回ったのだろう。前見た時より、やつれている。


「私達も仮眠をとりましょう」


 アヤメの言葉に従って、門の近くにあるテントに向かう一同。

 急遽設置された、仮眠用の大きなテントが2つ並んでいる。

 そして、小さなテントが一つ、奥に設置されている。校長用だ。

 僅かな時間でも、休憩をしないと倒れると、激務に励む生徒を見かねた副校長が設置したのだ。因みに、校長用は、いちいち呼びに行くのが大変なので、自室でのんびりしていた校長を無理やり押し込んだ。見張りまでいる。






カンカンカン!


「起きて下さい!いらっしゃいました」


 目覚まし代わりの、鉄板を叩く音で起きる一同。交代で見張りをしていた風紀委員が知らせてくれた。


「皆、しっかりして」


 副会長が、寝ぼけまなこの一同を注意する。限界が近いが、だらけてはいられないので、皆背筋を伸ばして前方を見やる。

 今まで来たどの馬車より豪華で、とても大きい。近衛兵も多い。


「〈ニーファ〉より参った!」

「ご苦労様じゃ。本人確認をしたいがのぅ…良いかのぅ?」

「疑うと申すか!?身の程を知れ!」


 馬車から出て来る様子はない。

 〈ニーファ〉の王族は校長しか面識がなく、直接校長が確認するしかない。

 もし、身分を偽って、学園を荒らす荒くれ者だといけないので、必要な事だ。全ての国でも、当たり前のようにやっている。人相を知るには、自画像や、噂話しかないので仕方ない。それもあっていない事も数多くあるので、面識がある者が見るしか方法がない。

 しかし、学園は国ではないので、軽んじられる事も多い。


「良い」


 馬車内から低い声がかけられる。

 ゆっくりと、威圧感を放ちながら現れたのは、スヴェート・セティ・ニーファ。〈ニーファ〉現国王陛下である。


「お久しぶりですなぁ」

「相変わらず、礼儀知らずな者よ」

「直ぐにご案内しますぞ」


 〈フラウニア〉の一同と同じ館に案内する校長。人数が多く、共同になると説明した。


「まったく、薄汚い所だ。そこの者、早く荷物を運べ」


 視線で促された生徒会一同。

 しぶしぶ運び出した。


「もっと大事に扱え馬鹿者」

「汚い手でベタベタ触るな」


 近衛兵から一つ一つ指摘されながら、黙々と運ぶ。とにかくうるさい。

 部屋に案内する校長も、散々な物言いに苦笑しながら謝る。

 王族らしいと言えば、らしいだろう。


「父上、疲れました。休んでもよろしいでしょうか?」

「私も疲れましたわ」

「フェリス、ルミエール。狭苦しい部屋だが、我慢しなさい。私も休む。騒がしいから出て行け」


 言われなくとも出て行きますと、心中で怒鳴りながら、静かに出て行く一同。

 門について、明るくなり始めた空を見ながら、ぼんやりと待つ。


「腹立つ」

「ジン、落ち着いて」

「………嫌な感じ」

「イラつく」

「だから~落ち着け~」


 周りの生徒会、風紀委員、校長も同じように苛立っている。

 落ち着いているのは、アヤメとツバサだけだ。


「いらっしゃいました!」


 休む間もなく、次の一行が現れた。

 落ち着きのある、品のある朱色が印象的な馬車。


「〈トウゴク〉だね~」

 

 のんびりとツバサが立ち上がる。どこまでもマイペースだ。


「出迎え感謝する。〈トウゴク〉から参った」


 なんとも謙虚な物腰に、喜んで迎え入れる一同。第一印象がものすごく良い。


「司だ~!」

「久しぶりね」

「姉御!お久しぶりです!」

「近衛になったんだ~」

「おかげさまで」

「顔見知りがのぅ?」


 アヤメとツバサは良く知っているようで、親しげに挨拶をかわす。


「私達の事件があったでしょ?あの事件の時、各地の実験施設を潰して回ったんだけど、その時手伝ってもらった自衛団のリーダーなの」

「自衛団とな?」

「白凰家から、出来損ないの烙印を押され、国境付近を警備していたのです。道具にならずに済んだ、幸運な集団です」

「まあ~自衛団の方が、強かったよ~」


 事実を知っている校長は、なにやら納得したようだ。


「あの後、正式に魔法師として、役職につけました!近衛兵なんて、夢みたいです!」

「良かったね~」

「おめでとう」


 後ろの近衛兵達も含めて、一斉に礼をする。とても息が合っている。


「久しいな」


 にこやかに、しかし堂々と現れたのは、ハヤト・トウゴク(東國 隼人)。現〈トウゴク〉国王陛下。


「お前達、挨拶を」

「はじめまして。イオリ・トウゴクです」

「ミカ・トウゴクです」

「ミヅキ・トウゴク。ミカとは双子です」

「チナツ・トウゴクでしゅ!」


 最後に噛んだのは、まだ幼い王女。恥ずかしそうに、姉の後ろに隠れた。


「すまぬ。まだ慣れてないのだ。あと恥ずかしがり屋でな」

「いえいえ。ご案内しますぞ」


 上機嫌で校長が歩き出した。

 〈ガイス〉の皆と同じ館に案内して、荷物を運び込んでいく。積極的に話しかけてくれる近衛兵達。直ぐに馴染んだようで、雑談をしながら共に荷物を運ぶ。


「しかし、出迎えがそなたとは」

「生徒会だからね~」

「不思議な話しだな。学園で会うとは」

「そうかな~?」

「十分強いではないか」


 ハヤト陛下の言葉に、周りの一同が一斉に頷いた。

 不思議そうにしながら、仕事を進めるアヤメとツバサ。

 自覚無いらしい。

 テキパキと仕事を終わらせて、〈トウゴク〉の皆は部屋に入っていった。長旅で疲れたのだろう。チナツはいつの間にか、長椅子で寝てしまっていたので、ミカが寝室に抱かえていった。


「残るは魔王…」


 急いで門に戻る一同。

 今までと違う緊張が走る。


バサッ!


 大きな影がよぎり、皆が上空を見上げて固まった。


「魔物!?」

「会長、大丈夫です。魔王です」


 魔王も大丈夫ではないが…


「ロック鳥で来るなんて…」


 優雅に降り立ったロック鳥。ひらりと降り立った魔王一行。


「久しぶりだね」

「魔王、ロック鳥はないでしょ」

「これが一番早いんだ。荷物も運べるし、便利だよ」

「ネル!?」


 以前会った時は、一番背の低いアヤメとツバサより、頭一つ分小さかったネルが、一番背が高いムウと同じ位になっていた。


「僕の一族は、ワーキャットの中では一番大きな一族なんだよ!」

「だからって、早すぎだろ!?」

「いやあ、一時期体中が痛くて大変だったな…」


 これが普通らしく、魔王一行は皆の反応に不思議そうだ。


「久しぶりラング」

「………アミダ久しぶり」

「これ、留守番の精霊使いから預かった物なんだけど」

「……精霊の資料!」


 仲良く話し始めて、2人だけの世界に入り込んだアミダとラング。


「よ!強くなったか?」

「いてーよウル!」

「力強い」


 ジン、ムウの頭を乱暴に叩くウル。一応手加減しているが、結構痛いらしい。

 他にはリザードマン、リザードマンの肩の上にいるケット・シー、そして、こいつだけで他の護衛要らないと思う程でかいロック鳥。


「のう魔王。流石にロック鳥が入る獣舎は無いぞ」

「適当にこの辺の山で待機してもらうから大丈夫だ」


キュイッ!


 どうやら、了解の返事らしい。意外とかわいい鳴き声だ。

 直ぐに飛び去ったロック鳥。


「良い子ね」

「ああ」

「さて、宿だかな、今使ってない、教師用の寮の建物で良いかのぅ?」

「屋根があれば良いよ」


 案外、適当な魔王。


「こっちじゃ」


 想像と違い、穏やかで、丁寧な性格の魔王に、呆気に取られる生徒会と風紀委員一同。慌てて後を追う。

 魔王一行の宿が、他の建物と離れた場所なのは、混乱を避ける為だ。良く思わない者も多いだろう。

 世界一般的には、魔王は恐怖の存在なのだ。

 だが、目の前の魔王からは、あまり恐怖を感じない。ものすごく魔力が多いとしか、感じないのだ。

 むしろ、他の王族よりも品がある。

 荷物も少なく、全てを自分達でやってしまうので、手持ち無沙汰な生徒会、風紀委員の一同は、もう朝になってしまったので、数人が残り、皆寮に一度帰った。


 数時間後には、激務が待っている…

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