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大忙し!

開いて下さってありがとうございます

 寮の前


「寝れんかった!」

「ジン、寝坊したの誰よ」


 朝、食堂で待っていたアヤメとツバサは、なかなか起きてこないジン、ラング、ムウを起こす為、近くにいたラザックとガナンに頼んで起こしてもらった。当然だが、男子寮には入れないので。

 ラングとムウは少し揺さぶったら起きたのだが、ジンはラザックに文字通り、叩き…いや殴り起こされた。


「ぐーすか寝てたな!」

「だからと言って殴るなよラザック!」

「何度声かけたか分かるか?」

「…すまん!俺が悪かった!」


 起こした時、寝ぼけたジンに蹴られたガナンが腹をさする。結構、良い感じに入ったらしい。


「………ごめん。待たせて」

「申し訳ありません」

「良いわよ。とりあえず生徒会室に行きましょう」

「ねえ~良いの?エミー?」

「もちろんです」


 3人を起こす為に、〈ミラージュ〉に相談した際、人手不足と聞いて、手伝ってくれる事になった。

 〈ミラージュ〉も、一年の中ではかなり強いので、一年の喧嘩ならば止められる。それだけで助かる。

 生徒会室の前にたどり着いて、ドアを開ける。


「はよーっす!誰っすか?」

「おはようございます。援軍です」

「一年の中なら抜きん出てるよ~」

「言い過ぎですわ」

「恥ずかしいです」


 エレミア、クリスティアが顔を赤くして俯く。リーゼ、ラザック、ガナンは後ろで首を横に振っている。


「チーム名はなんっすか?」

「〈ミラージュ〉ですわ」

「ああ!名前聞いてるっす!助かるっす!会長!」


 中に入ると、会長が大きく手を振って招いている。


「おはよう」

「おはようございます会長」

「助かるよ!一年は任せる!」

「早いですね…もう騒ぎに?」

「大騒ぎだ!」


 臨時で風紀委員のバッジを受け取った〈ミラージュ〉一同。チャカから、簡単な説明を受けて、現状を把握する。


「王族ですって!?」

「そうなんっす!今日、教室で説明があるんっすが…昨日いきなりで、俺達が戸惑ってるんっす!」

「まあ…そうですわよね…」

「騒ぎになりそうですね…」


 エレミア、クリスティアが話している間に、リーゼ、ラザック、ガナンが担当区域を覚える為に地図を眺める。


「おい!この飯屋は…」

「分かれている。ラザック、行くなよ」

「当たり前だろ?ガナン」

「なんで普通に店かまえてるの…」


 どうやら教師陣の店舗を見つけたらしい。やはり、想像出来ないようだ。


「行きますわよ」


 エレミアについて出て行った〈ミラージュ〉一同。


「今日は荷馬車はなしですね?」

「そう。だから今日は見回り」

「了解です」


 今日の確認を終えたアヤメ。

 今日は荷物の配達は朝早くに終わったらしく、準備中の生徒の見回りが仕事だ。


「で、これが問題なんだが…」

「何ですか会長?」

「今日の夜、〈ガイス〉の次期国王の、ザガン・ルト・ガイス様がご到着だ。さっき使者が来た」

「ああ…もう来るんですか」

「反応薄!」

「顔見知り~」

「何だと!?」

「ザガンが来るんだ~」

「ツバサ、呼び捨てはどうかと…」

「アヤメ~今更~」


 何が今更なのか分からないが、既にツバサの中では呼び捨てで定着したらしい。


「久しぶりだね~」

「そうね」

「オホンッ!ああ、あと明け方〈フラウニア〉の国王様と、王子様がいらっしゃる」

「ああ、あの国王様ね」

「顔広い!」

「あと~〈トウゴク〉と魔王も顔見知りだよ~」

「更に広い!って!なんで魔王!?」

「夏休みに泊まりました」


 ポカーンとした生徒会一同と、風紀委員長。


「お土産期待しよ~」


(するんだ…)×6


「とりあえず教師に任せるのね?」

「ああ、それで構わない」

「〈トウゴク〉と〈ニーファ〉と魔王はまだでしょうか?」

「明日の朝の予定だが、まだ使者は来ていない」

「分かりました。見回りに行きます」


 さっさと出て行った〈レジェンド〉に、取り残された生徒会一同と風紀委員長。

 気を取り直して書類の確認に戻った。






『二年Dクラスと馬術部が衝突!手が足りない!応援を…ギャー!』


「…行くわよ!」

「おう!」

「……うん」

「了解です」

「はいよ~」


 現場に走る一同。

 着いたら直ぐに、争う怒鳴り声が聞こえて来た。


「知らねーよ!」

「お前らだろ!」


ドンッ!


 炎弾が爆発する。

 割ってはいる一同。


「止めて下さい!」

「なんだよ一年!」

「生徒会です!」

「知るかよ!どけ!」

「はい~眠れ~」


バチッバチッ


 ツバサの雷撃で、あっさりと倒れる二年生。さっきからずっとこのパターン。


「どっちが原因?」

「は、はい!馬術部の馬がいきなり暴れ出したようです!移動中に通りかかったDクラスの前で、暴れ出したようで、Dクラスの一人が軽症です!」


 風紀委員の二年生に敬語で報告を受けるのも、何故だか定着してしまった。

 曰わく、強いから…らしい。


「原因は?」

「大きな音に、馬が驚いたようです!」

「まあ、どっちが悪い訳でもないか…魔法はどっち?」

「両方です!風紀委員3人が吹き飛ばされました…」


 止めに入った風紀委員に、両方からの集中攻撃を受けたらしい。流石に風紀委員でも、囲まれたらどうにもならない。


「両者の代表を本部に連行して、Dクラスと馬術部にはペナルティー」

「了解です」


 本部とは、風紀委員に与えられた一室で、問題を起こした者を集め、担当教師に判断を求め、実行する部屋。

 本部には、一番常識のある副校長が待ち構えている。かなり厳しいらしい。


「多分、人手不足だから清掃ね…」

「ああ、ものすごい量のな…」


 学園祭の後の片付けは、準備より大変で人手不足が否めない。

 今日聞いた限り、大半の生徒が清掃と言う名の肉体労働を命じられたらしい。


『薬学部、美術部が衝突!ひいっ!良く分からない薬品がゲホッゴホッ』


「何よ?薬品って?」

「行くよ~」


 何に使うのか分からないが、とにかく急いで向かう。

 灰色の煙りが充満した廊下にたどり着いた。


「ゲホッ!の、喉が…」

「ガハッ!いてー!」


 口元にハンカチをあてがって、皆で相談する。


「どうすんだ?」

「とりあえず外に出すね~」

「………よろしく」

「ムウ、保健室に行って人呼んで」

「了解です」

 

 ふわっと風が煙りを包み込んで、開けた窓から外に逃がすが、次々と煙りが立ち上る。


「何この薬品!?」

「原因の薬品が分からないわ」

「とりあえず続けるね~」

「………外に出したら霧散した」

「ラング、私達も手伝いましょう」

「ジン、そこの人引っ張り出して~」

「俺かよ!…分かった」


 おっかなびっくり近寄って、引っ張り出して非難したジン。風がジンを守っていたので大丈夫だった。


「もしもし?分かりますか?」

「ゲホッゴホッ…分かる…ゲホッ」

「何の薬品か分かりますか?」

「詳しくは知らんが…ゲホッゴホッ…空気を入れ換え…ゴホッ…続けてくれ」

「時間たてば消えますか?」

「…ケホッ…そう聞いた…ゲホッ」


 とにかく外に出し続ける。

 保健室から担架が到着。医者と看護士と医学科の生徒複数が駆けつけた。

 薬学部の事を訪ねたが、医学科の生徒の中でも限られた生徒しか所属していないので、詳細は分からない。


「少し収まった~」

「続けて」


 僅かに視界が晴れた廊下。

 倒れた生徒が沢山居る。


「命に危険は?」

「ゲホッ…無い無い」

「ジン、ムウ~あの人達引っ張り出して」

「あいさ!」

「はい!」


 一時間半かけて換気を行い、ようやく煙りが消えた。


「風紀委員!無事ですか?」


 小さく手を上げる二人。犠牲になったらしい。


「ゲホッ!あの人とあの人が部長です…ゴホッ」

「分かりました」


 根性で部長を教える風紀委員。直ぐにぱったりと力尽きた。


「話しは後で聞きますが、症状が収まってから、本部に連行します」

「うう…わがっだ…」


 美術部部長は既に声が出ないらしい。ギルドカードを受け取って、担架に乗せる。こうして保健室に運ばれる場合、身分証を預かって本部に提出する。ギルドカードが無い事はほとんどないが、持って無い者は重い腕輪をはめられる。本部でしか外せないので、自ら行くしかない。

 代表が本部で取り調べを受けて、連帯責任となる。嘘を見抜く魔法具で取り調べをするらしい。


「あなたが薬学部の部長ですね?」

「ああ…」


 少し離れて見ていた生徒に話しかける。もう一人の風紀委員が必死で捕まえていたようで、しがみついていた風紀委員が力尽きた。

 直ぐに保健室に運ばれる。


「あなたは平気なのですか?」

「とっさに逃げたからな。追いかけて来た風紀委員に捕まったが…」


 どうやら一人逃げたらしい。


「良くあの薬を吸い込んで走れたな…」

「本部に連行します」

「いやはや…恐れ入った。素晴らしい」

「黙れ~」


バチッ


 薄ら笑いを浮かべて呟き続ける薬学部部長を、問答無用で気絶させるツバサ。

 駆けつけた風紀委員に任せ、見回りを続ける。

 忙しいのだ…。


『農業科の動物脱走!捕まえくれ!食用猪三頭!第2グランド!早い!強い!』


「…猪?」

「こないだ繁殖の為に仕入れたやつか?確か、でっかいぞ!」

「そうなの?」

「ああ、遠目に見た」


 意外な事にジンが知っていた。繁殖の勉強の為に足りない数を仕入れたらしい。そのうち三頭が逃げ出したようだ。


「あ!第2グランドで、農業科の出展があったわ」

「飲食店~」

「「「…食べるんだ」」」


 とにかく走りながら、状況を把握していくと、なんだか微妙な気持ちになった。

 グランドはパニック状態で、逃げ回る生徒が多数、追いかける生徒少数で、脱走した猪は余裕綽々で走り回る。


「生け捕り?」

「ここの責任者は~?」

「すいません!私ですー!」

「うわー…」


 責任者は土まみれになりながら、追いかけているが、見事に振り回されている。


「出来れば生け捕りでー!うわっ!」


 すれすれを通り過ぎた猪に、びっくりして転んだ責任者の女生徒。


「あとは私達がやりますので、下がって下さい!」


 走り出した一同。


「ていやっ!」


 近くにいた一頭はツバサの蹴りで気絶した。顎を強打し、衝撃が脳を揺さぶったようだ。もちろん生きている。


「捕まえ、た!」


 “た”の所でアヤメが猪を転ばせ、素早く縄をくくりつけ、風魔法で獣舎に送る。職人技だ。


「ふげっ!」

「………くうっ!」

「ぐきぎっ!」


 ジン、ラング、ムウが命がけでしがみついて捕まえる。ジンは蹴り飛ばされた。

 そのままひっくり返し、押さえつける。直ぐにツバサが縛り付け、獣舎に送りつける。


「いてー!」

「……ヒリヒリする」

「助かりました」


 簡単に治癒魔法をかけてもらい、責任者に話しを聞きに行く。


「ごめんなさい!こちらの不手際です」

「まあ、この場合は誰も悪くないわよね…これからは気を付けて下さい」

「はい!本当にごめんなさい!助かりました!」


 風紀委員からの連絡で、逃げ出した経緯は聞いていたので、お咎めなし。猪が必死に柵を壊しただけだ。


「いえ。どう致しまして」

「じゃあ、巡回に戻るね~」

「はい、ありがとうございました!」


 農業科三年生(風紀委員から聞いた)の女生徒は、律儀に頭を下げ続けた。


「丁寧な人…」

「あと、そそっかしい~」

「言わないの」

「悪い気はしねーな」

「お前は蹴飛ばされただけだ」

「うるせー!」

「………ははは」

「そういえば、うちのクラスは参加してないな…」

「今更~エリナ先生はテストの準備で忘れてたんでしょ~多分」

「そんな理由…」

「一年生の半分のクラスは参加してないわよ。その大多数が魔法学科」

「………テストか」

「なんて理不尽な!」


 『魔法学科の生徒は一番教師の被害を受けるので毎年参加クラスが少ない』と、会長が言っていたのを思い出したアヤメ。昨日の帰り際に小さくぼやいていたのを、偶然聞いただけなので、皆は聞こえなかったらしい。


(聞かなくて正確ね…)


「まあ~私達は生徒会として参加してるじゃん~」

「そうだな!」

「確かにそうね」

「……楽しい」

「貴重な経験です」


 歩いていると、なにやら前から変な匂いがして来るので、顔を見合わせる一同。


「遠回りしましょう…」

「なんで?」

「【旅日記】だよ~この先が出展場所だったよ~」

「よし!遠回りしよう!」


 そそくさ逃げた一同。誰も止めようとしないのは、離れているのに凄い異臭がするからだ。

 遠くから悲鳴が聞こえたが、気のせいって事にした。


『教師陣営から異臭!生徒非難させて下さい!』


 が、上手くいかないものだ…。


「しょうがない」

「うへー」


 しぶしぶ走る一同。既に会長と副会長が走り回っている。風紀委員も顔をしかめながら非難させている。


「会長!」

「とにかく!生徒を遠ざけて!」

「了解です!」


 非難させて、空気を入れ換え、原因の物体を燃やし尽くし、その場に座り込んだ一同。


「うう…」

「目眩がするわ…」

「………無理」

「ふへ~」

「もう駄目だ…」


 周りを見渡すと、風紀委員がぶっ倒れている。


「流石にすごかった…」

「もう嫌ですわ…」


 会長と副会長がへなへなと座り込んだ。副会長は涙目になっている。


「おかしな☆ハンバーグなのに☆」

「…エリナ先生…何を入れたんです?」

「その辺の魔物、その辺の草、調味料を入れただけ☆」


 全く悪びれない教師陣。

 本人達は普通に料理しただけだと、思っているようだ。


「何故魔物?臭味が強いでしょう?」

「冒険者時代の料理を出し合うの☆」

「だから魔物?」

「そう!いつも魔物だったし☆」

「臭味を取り除く薬草は?」

「そんなのあるの?☆」

「あります!臭味が比較的ましな魔物もいますよ!?」

「いたんだ!知らなかった☆ホーンバードだったかな?」

「それは絶対食べれません!」

「あれま☆」


 駄目だこいつら…


「ああ!生徒会で忙しくて、HR来なかったね!今日、HRで配ったの」


 渡されたのは、このお店の割引券。

 昨日の朝から忙しくて、HRも許可をもらって欠席していたが、本来なら朝指定の場所でHRに出る必要がある。


「〈ミラージュ〉は助っ人だったかな?これ渡して☆」


 〈ミラージュ〉の分まで渡された。


「えーと…」

「ああ!忙しいよね!来れたらで良いよ!特別に生徒会の皆にもあげる☆」

「はあ…」


 きっちり人数分渡された会長は、一応頭を下げておく。


「お仕事頑張ってね☆」


 晴れ晴れとした笑顔で厨房に戻っていくエリナ先生。

 生徒会一同、風紀委員一同は一斉に立ち上がると、そそくさと遠ざかっていく。


「どうすんだこれ?」

「捨てます」

「………だよね」

「ちょっと水欲しい~」

「大丈夫ツバサ?」

「無理~水道無い~?」

「あっちにあります!」


 匂いでダウンしたツバサ。優れた嗅覚が災いしたようだ。

 一気に水を飲み干して、深呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いたらしい。そうとう苦しかったようで、涙がこぼれ落ちた。

 どんな匂いかは…想像にお任せします!


「大丈夫?」

「多分~」

「飴有るわよ」

「欲しい~」


 黙って差し出された飴を美味しそうに舌で転がすツバサ。

 アヤメは、ジン、ラング、ムウにも配って自らも口に入れる。


「生き返る…」

「………美味しい」

「助かった…」


 ジン、ラング、ムウもきつかったようで、幸せを噛みしめる。アヤメも我慢していたようで、ほっと一息ついた。


「ツバサは嗅覚良いもんね…」

「うん…」


 やはり人一倍鋭い嗅覚らしく涙目で頷いたツバサ。空気中の匂いも駄目らしい。


「離れましょう」


 とにかく離れる事を最優先に移動する一同。

 どうやら、会長達は分かっていたようで、教師陣のお店は一番端にある。周りも少し離れて店が配置してあった。


「お疲れ様っす!大丈夫っすか?」


 いつの間にか小走りになっていた一同はチャカの声で我に返る。


「大丈夫じゃないわ」

「やっぱり…端に追いやって正確っす」

「やっぱりわざとなんだ…」

「良くあるらしいっす」

「なんで許可するのよ…」

「上には逆らえないっす!端に無理やり追いやるのが精一杯っす!」

「そう…」

「あんな騒ぎのあとっす!食堂で美味しいご飯食べないっすか?ハーブティーも付いてくるっすよ!」


 一同一斉に頷いて、食堂に向かう。交代要員に挨拶して、食堂に入るとすっきりとした香りが漂ってきた。


「お疲れ様」


 食堂で待機していたおばちゃんからハーブティーを受け取って、席に座る。


「大変だねぇ…皆いつも青い顔で逃げてくるんだ…」

「前からですか…」

「ずっと前からさ…だから、あっさりした昼食を用意してるよ」


 運ばれて来たのは、新鮮な野菜のサラダ、薄味のスープ、魚の塩焼き、柔らかいパン、甘い香りの果物。


「幸せだ!」

「ありがとうございます」

「……嬉しい」

「落ち着く~」

「ありがたい」


 幸せを噛みしめながら食事を口にする一同。薄い味付けなので、あんな事件のあとでも食べやすい。

 あっという間に食べ終わった一同は、満足げに立ち上がって、仕事に戻っていく。


「鍛冶科の人手が足りない」 

「今いくわ」


 ゼファが呼びに来て、笑顔で付いていく一同を、おばちゃんと料理長は暖かく見守っていた。






◇◇◇◇◇


 綺麗な月夜の中、生徒会一同と風紀委員一同が学園の門の下に集まった。

 突き刺すような夜の風に、震える者もいたが、寒さよりも、違う意味で震える者が多かった。


「もうすぐで、ザガン・ルト・ガイス様一行が来られる。気を抜くな」


 会長の一言に背筋を伸ばす一同。

 少し経って、遠くに魔法の光が見えてきた。


「いらっしゃった」


 だんだん大きくなる馬車。周囲を囲む近衛達。様々な大きさの光球。

 一同の眼前に止まった馬から一人の近衛兵が声を張り上げる。

 

「話は聞いて居ろう!道を開けよ!」

「もちろんです。しかし、ご本人確認をしなければなりません」


 少し震える声で返答する会長。


「貴様!」

「随分高圧的だな~近衛兵?」

「!!!」


 目を見開く近衛兵に、息をのむ一同。ただし〈レジェンド〉は平然としている。


「あ、あなた様は…シラハネ様!」

「いかにも…久しいな」


 雰囲気が変わったツバサに、動揺する一同。〈レジェンド〉のメンバーは苦笑している。


「こちらの都合も考えよ」

「申し訳ありません!」

「ははは!相変わらずだな!」

「久しいなザガン」

「久しぶり」

 

 馬車から降り立ったザガンがツバサに駆け寄る。呼び方にも気にしない。


 理解出来ない光景が繰り広げられた…

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