テストでは無く、サバイバル!
開いて下さる方に、感謝します。
早朝、アヤメに起こされテントから出るジン、ラング。ツバサとムウは小鍋の中身を覗きながら、水を入れたり、火を弱めたりしている。
「朝食食べるでしょう?その辺にとりあえず座って」
「おう…体中いてー!」
「………寝不足」
用意されていた敷物の上に座りながら、あちこちをさする2人。
「ごつごつして痛かった。」
「………うん」
「慣れないからね。はい」
「おう!」
「………ありがとう」
昨日の残りに薬草を沢山入れた薄味のスープを口にしながら、少しずつ眠気を覚ましていく。アヤメとツバサは早々に食べ終え、簡単に武器の手入れを行う。
「擦り傷だらけだね~昨日は暗くて気付かなかった~」
「罠がな…死ぬかと思った!」
「………先生怖い」
「テストなのか?これ?」
「まあ、やり過ぎよね。傷に効く薬草有るわよ。はい」
ジン、ラング、ムウはすりつぶした薬草を水で清めた傷に塗っていく。かなり染みるらしく、呻きながら悶えている。
「いてー!」
「………うう」
「くう…」
「我慢して。化膿したら大変だからね。はいジン、隠さない!」
「ギョエー!」
「うるさい。いい加減慣れろ!」
「ツバサ無理!」
テキパキと片付けていくアヤメとツバサは、戦闘体制も整え、3人の準備が整うのを街ながら、辺りの警戒を改める。
「夜は?」
「襲撃は無かったわ。様子見は有ったから追い返したし」
「ご苦労様」
一同の準備が終わって、結界を解除して山をひたすら進み始める。時折現れる魔物は、ツバサに感知され、ジンとムウが倒し、ラングが援護をしていく。治癒魔法は魔力の温存の為に使わない。無駄に魔力が必要になるし、一回の治癒に限度が有る。1日山に居るなら、いくら治癒しても足らない。今の所、罠は見つからない。
「生きてる?」
無言でのろのろ歩くジン、ラング、ムウにアヤメが問いかけるが、声出す気力も無いらしく無言で否定する。
「ツバサ、魔物の気配は?」
「遠い。今なら良い」
「分かった。休憩しましょう」
午前中を戦いながら山登りに費やし、力尽きて座り込む3人。あれから川を辿りながら、来る敵をひたすら凪払い、足元を注意しながら黙々と進んで来た。直ぐ横に川が有るのが嬉しい。
アヤメもツバサも平気らしく、警戒を続けている。
「な…何で、疲れない…んだ?」
「とりあえず感知しながら、対応するだけだろう?」
「………その集中力が…凄い」
「そうか?」
「流石…です…」
「息絶え絶えだな」
「ツバサの集中力は凄いと思うわよ。擬態した魔物や、足元の危険も直ぐに感知するもの」
「いやいや…アヤメも凄いから…切り裂く速さハンパない」
「………見えなかった」
「返り血すら浴びてない…」
「普通じゃない?」
手を横に振って否定する3人に、不思議そうに首を傾げるアヤメと、警戒を緩めずに背を向けてるツバサ。
一応交代で気配を探って居る2人だが、苦にならないらしい。
「その辺に食べ物が無いか見て来る」
「分かったわ。ここは任せて」
ツバサが軽々と木に登って、次々と飛び乗って行く。あっという間に姿が見えなくなった。音すら、消されている。
(((ええ!?)))
「どうしたの?私だと不安?」
「違う違う!」
「………凄いなと」
「体の作りが違う…」
「???」
分からないらしいアヤメ。更に首を傾げながら警戒を続ける。
2人は魔力を循環させ、身体能力強化をして居るのだが、そんな高等技術など知らない3人。
「今のうちに傷の手当てしてね。…はっ」
ザシュッ
斜め後ろから、目にも留まらぬ勢いで飛んできた鳥型の魔物を振り返る事もせず、レイピアを後ろに走らせ両断するアヤメ。なんだか魔物が可哀想になってくる。
せっせと傷に薬を塗り、川で洗った包帯(数に限りが有るので)を巻いて待つ。ついでに、革製の水筒に新しい川の水を入れ直した。
一時間程で体力を取り戻したジン、ラング、ムウ。ちょうどツバサが帰って来て、沢山の木の実を持ってきた。
「肉じゃないけど良い?ここだと火をおこせないから」
周りは草木で燃え移る可能性が高く、魔物も匂いによって気安い。食料が見付けられない3人は黙って頷いた。勉強したおかげで薬草の調合や採取は出来るが、狩りは慣れず、木の実は見分けがつかず、見付けるのも難しい。
「どうやって見付けるんだ?」
「目を凝らす」
「集中するのよ」
「………そう…」
「難しいです…」
殻を砕いて、魔法の小さな火(小指の先程)であぶって配られた木の実をかじる一同。香ばしくて美味しい。果物も有って、ナイフで切り分け、かじりついた。みずみずしい。
「食料持って来なくて良かった!」
「………有ったら歩けない」
「無駄に重いからな…」
「でしょう?とりあえず水が有ればなんとかなる物よ」
「まあ、数日食わなくても生きて居られるがな」
(((それは遠慮します!)))
「そういえば、途中で他のチームが居たな…下の方だが」
「そうなの?どこまで行ったの?」
「罠エリア内。遠目で見たから、詳細は分からんが、魔法で治癒して居たが、それで精一杯だなあれ」
案外下まで行ってらっしゃったらしい。頭が上がらないジン、ラング、ムウ。
「まだあそこなの…大丈夫かしら?」
「補修決定だな。魔力が足りてない」
「あらあら…まあ、無理もないかな?」
「食料だけは、有るから死にはしない。その荷物が足を引っ張って居るが」
「ご愁傷様」
(((うわぁ…過酷!)))
食べ終わって歩き出した一同は、自分達の位置が分からなくなる程の魔物に遭遇しながら登って行く。アヤメとツバサが居なければ、遭難して居ただろう。
「この辺、足元がぬかるんで居るわよ。気を…」
「うわ!」
「「ラング!」」
「待ってろ!アヤメ、ここは任せた」
「任されたわ!」
足を取られ、急な斜面を転がり落ちて動けないラングの元に、器用に降りていくツバサ。
「アヤメ、包帯と湿布を!」
「了解。えーと…」
「師匠、これですか?」
「ありがとう。受け取って」
「うむ。少し我慢しろよ」
幸い足の骨に異常は無いらしく、治癒魔法で少し痛みを和らげ、湿布用の薬草を布に染み込ませた物を、手慣れた手付きで包帯で固定する。擦り傷程度の傷と、軽い捻挫で済んだ。魔法で作った氷を当てて、15分位冷やした。
ラングの槍を拾い、杖代わりにして立ち上がる。ツバサがラングを背負って、器用に駆け上って一同の元に戻った。
「注意が遅かったわね。ごめんなさい」
「………ううん!大丈夫!」
深く頭を下げるアヤメに慌てるラング。責任を感じたらしい。
「いいえ。自分基準はいけないわ。もう少し注意するわね」
「アヤメ、今は仕方ない。とりあえず今日の野営地を探そう」
元々のスペックの違いで分からないのは仕方ない事だと、日頃の付き合いで分かって居るジン、ラング、ムウ。ツバサは悩みすぎる友を先に促す。
「そうね。開けた場所を探しましょう」
ムウがラングを背負いながら、川伝いに登って行くと、ちょうど岩陰にスペースが有ったのでテントを広げる。危険が無いか十分に確認したアヤメとツバサに、沢山の事を学んで行く3人。
「そうか頭上から岩が落ちて来る可能性も有るか!」
「………罠の可能性も」
「火の燃え移りの可能性もか…」
崖上からの落石の懸念が有るので、少し崖から離してテントを張り、岩も食い止める事が出来るように結界用の魔法具を配置して、火の周りの雑草を刈り取り岩で囲った。流れ作業の様に進む光景に、立ちすくんだ3人。昨日は偶然周りが何もなく開けて居たので分からなかった。
「とりあえず、ラング座ってて」
「………うん」
「集中して治癒魔法を使えば、明日は動ける筈だ」
「私がやるわね」
足を毛布に乗せて、患部に治癒を施すアヤメ。冷やしたおかげで、少し腫れは引いている。
様子を見ていたツバサが立ち上がり、ジンとムウも、立ち上がる。
「私は、食料を探しに行く」
「俺は薬草探して来る!」
「俺も行きます」
「分かったわ。気を付けて。遠くまで行かないでね。困ったらこれを」
アヤメが魔法具をジン、ムウに渡す。授業で習った物で、魔力を流すと通信出来る優れもの。だが、高すぎて買えないし、距離が有りすぎると使えない。そして壊れやすく、手入れが必要。
「3つしか持って無くて」
「有るだけ凄くない!?」
「行ってきます」
既に居ないツバサ。気付いたら居ないので驚いたジン、ラング、ムウ。ジンとムウも走り出した。
治癒魔法に集中するアヤメと、手持ち無沙汰にそわそわするラング。アヤメの魔力量なら問題は無いが、気が引ける。
「……ごめん…鈍くさくて」
「いいえ。初めて山を登ったんだもの。この位当たり前よ」
「……ありがとう」
しばらく2人は、他愛の無い雑談をしていた。
辺りが暗くなり始めた時、ジンとムウが戻って来た。いろいろ有ったらしく、傷が増えている。
「ご苦労様」
「こんだけしか見つから無かった」
「申し訳ありません」
「十分よ。ありがとう。何が有ったの?はい、塗り薬」
「サンキュー!…魔物に遭遇した」
「あと、ジンが転けました」
「言うなよ!」
「ふふ…なる程。お疲れ様」
確かに少ないが、毒草が無いのは素晴らしい。数多くの野草が有るので、毒草も多いが、勉強の成果が出たらしい。昨日の残りを合わせれば、一食ならなんとかなりそうだ。
スタンッ
崖上から軽やかに降りてきたツバサに、驚愕するジン、ラング、ムウ。口をパクパクさせている。建物の三階まで有りそうなのだが、ほとんど足音も立てない。
「どうした?はい。足りる?」
「十分よ」
(((“どうした?”じゃ無い!)))
ジン、ラング、ムウの反応に、首を傾げながら、うさぎの様な魔物を手渡したツバサ。見た目は普通だが、足の爪が出し入れ出来る様で、捌いて居たらいきなり出てきてジンが飛び上がった。意外にも肉食の魔物で、鋭い牙が生えている。
大きな葉っぱで包んで、薬草と蒸し焼きにした肉を頬張る。独特の臭みは有るが、慣れも有って気にならない。食べやすい魔物を探してくれているようだ。
余った肉を薫製にして簡易の保存食を作った後、明日の確認をした頃には既にすっかりと日も沈んで居たので、結界の確認をしてから、早めにテントで眠りに入った。
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