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問題点と対策

読んでくださってありがとうございます

 盗賊との戦いの翌日の朝ジン、ムウは、アヤメとツバサに呼び出された。

 一つの個別をエリナ先生に了承を得て借りている。


「ラングは?」

「ん~?ああ、まだラングには関係ない事だから~」


 眠そうにツバサは答える。昨日のツバサの状態は、戦闘時のみの性格らしい。

 アヤメとツバサは、昨日の傷が残っており、包帯を巻いている。とっさに治癒魔法で傷口を閉じたが、動き回った時に開いたらしく、現在魔力を総動員して傷の治癒に専念している。魔法では塞ぐだけで、治りはしない。何度も掛けて治すのが当たり前だが、魔力が多く、扱いにたけているので自分で体内に魔力を循環させ、細胞を活発化させている。

 達人ならば魔法より、魔力を循環させる方が、体にも優しく、早い。ものすごく難しい精密操作が必要なので、極一握りの魔法師のみ利用している。

 だが、その最中には魔法を使うのが困難で、危険な為(誤って魔力が体内を破壊する事が懸念される)戦闘は不可能。


「痛む?」

「これくらいは平気よ。」


((いやいや!かなり深い傷だから!しかも数も多いから!))


 内心、驚き心配するが、本当に気にしていない。普通なら、絶対安静、入院が当たり前なのだが、涼しい顔で居る。


「本題に入ります。まず確認。昨日の戦闘中に魂の力を解放したよね?」

「した。」

「しました。」


 蛇型召還獣に尾で叩き付けられた時、とっさに解放したが、ジンの力では周りの仲間を巻き込む可能性が有り、ムウの知識では頭が着いて来なくて、実力も追い付かず打破出来なかった。


「巻き込むかなと思って…」

「可能性は考えられましたが、自分の実力や状況に対処出来ませんでした。」

「昨日、ツバサと話し合ったけど、力が合っても扱い方が分からないなら、意味ないのよ。」

「これで分かったと思うけど~戦闘経験が不足してるの~」

「これからの事を考えて、扱いきれない力は諸刃の剣だから、自分の力を扱いこなせるまで、力の解放は禁止します。」

「つまり、今まで通り、自分の力のみで、魂に頼らないって事か?」

「そう。危ない時はしょうがないけどね。戦闘経験を積む事に、専念します。」

「「了解!」」


 圧倒的な経験不足によって、扱いが困難では、自分を傷つけかねない。今までもあまり解放しないように言って居たが、腑に落ちない二人には実際に経験して、気付いてもらわないといけないと、悩んで居たが、今回の戦闘中に気付いたので、二人も納得した様子。


「もう少しで、ラングと〈ミラージュ〉が来るけど、内緒よ。」

「時間ずらして、呼んだのか?」

「もちろん~」

「師匠、わざわざ、ありがとうございます。」


 頭を下げる二人に、気にするなと笑うアヤメ。ツバサはどうやら眠いらしく、左右に船を漕いでいる。

 しばらくして集まった皆で、ギルドの書庫に向かう。アヤメとツバサの二大勢力が自分たちのせいで負傷した為、本人は平気だと言ったが無理やり勉強会にする事にした。昨日見た罠の事も調べたいと、言いくるめた。

 途中で見た派手な女性と、引きずられて行くボロ雑巾みたいな校長を見て、一同は見なかった事にした。衝撃的な光景だったから…。(見知らぬ女性のファッションが!)


「そういえば、いつもの武器だな?」

「ええ。それが?」


 アヤメとツバサの武器は、いつものレイピアと双剣を装備している。昨日見た幻想的な武器では無い。


「あれ使わないのか?」

「威力がね…」

「手加減難しい~」


 二人のあの武器は高威力、広範囲が持ち味で、下手すると全てを破壊しかねない。もちろん二人の技量が有るからこそ、凄まじい破壊力になるのだが…。

 そうこう言って居たら、ギルドに着いたので、まずは書庫の利用の許可をもらって書庫に向かう。


「これと、あれ、それも覚えておいてね。あとここも。」

「多!無理無理!」

「はい~追加~」

「………埋もれる…」

「ああ、あそこにも有るわね。」

「師匠、机がいっぱいです…」

「さっさと書き写して。」

「そんな簡単な量では、無くてよ!」

「更に追加~」

「お待ち下さい…」

「間違っているわよ。」

「んな!分かんねー…」

「りーちゃん頑張って~」

「頭痛いよー」

「ちょっと、現実逃避しないでよ。」

「むむむ!」


 書庫を片っ端から漁り、山のように積み上げるアヤメとツバサ。皆げんなりしながら抗議するが、意味なし。

 周りの冒険者や学生は、青ざめて関わらない様に逃げていく。


「もう。文句多いわよ。」

「とう!」


 ツバサが何処から出したのか、飴を一人一人に放り込む。

 読んでいる本は、昨日見た罠関係と、魔力探知の本、薬草や魔物の図鑑などで、かなりの量になっている。メモ書きによって、皆手が震えている。

 飴で回復しては、突っ伏し、また飴で蘇生されるループが出来上がった。男子は飴でテンション上がって、やる気になっている。単純だ…。


「皆さん、お疲れ様です。お茶いかかですか?」


 ギルドのお姉さんが、すっかり顔馴染みになった一同にお茶を差し入れしてくれて、休憩時間となった。いつの間にかお昼を過ぎていた。


「根詰めすぎです。大丈夫ですか?」


 一同無言で否定する。


「はあ…お昼食べに行きましょう。」


 ギルドの隣りに食堂が有るので、移動する事にして、机の上はそのままでとお姉さんに言い残して出て行く。

 定食を頼んでがっつく一同。ここの料理は量が多く、安く、早いので冒険者には人気がある。


「あれだけ覚える必要有るのか?いくら何でも大げさじゃね?」

「甘いわねジン。“あの”エリナ先生が手を抜くとでも?あの日の笑顔を思い出しなさい。」


 …とっても黒い笑顔でした♪


「ああ…」

「………うーん」

「む…」


 一同は改めて認識した。絶対に殺す気でくると…

 食事を食べ終わってからは、また書庫に缶詰め状態で、まさに飴と鞭の使い分けで叩き込まれた一同。

 ギルドの職員は、何度も心配になり見に行っては、青ざめて出ていった。







☆☆☆☆☆


 そしてついにやって来たテスト当日。嫌味な程に晴れ晴れとしている。


「はい皆さん。チーム毎に並んでください。リーダーに配る紙に魔法陣が有ります。これでスタート地点に飛びます。ランダムです。頑張ってね☆」


 皆呆気に取られながら、エリナ先生のペースに巻き込まれて何も言えない。

 クラスの皆の持ち物は多いが、〈レジェンド〉はかなり少ない。野宿の為のテント二つ、小鍋、少しの調味料と水、各自の毛布一枚、いつもの装備以上。

 かなり奇異な目で見られている。サバイバルの危機感は無いのかと。


「本当に、良いのか?」

「今更。食料は現地調達、テントが有れば雨風しのげる。他に何が要るのよ?」

「………まず、食料位…」

「重くて邪魔~魔物に気付かれる~」

「毛布だけで大丈夫ですか?」

「そんなやわな体してないでしょう。」 


 2人には、常識は通じないので諦める3人。もうどうにでもなれ!

 エリナ先生の号令で魔法陣に魔力を流すと、慣れない生徒は動揺しながら、大きな魔法陣に乗り飛んだ。移転魔法では無く、あらかじめ決めた指定の場所に誘導する魔法陣を残し、対の魔法陣の描いてある紙に魔力を込めて、引っ張ってもらう魔法で、移転魔法と違い、それなりに時間も掛かるので“移動魔法”と呼ばれる。点を繋いだ線を強制的に進む感じで、違和感も凄い。 魔力で出来たレールを、自分たちが走ると考えれば良い。


「違和感すげー!」

「やっぱり嫌いね…これ…」

「引っこ抜かれる野菜の気持ち~」

「………確かに」

「嫌な汗が…」

 

 出発地に着いて直ぐに一同はへたり込んだ。それだけ、違和感が気持ち悪い。


「移転魔法は便利だ!」

「古代魔法だからね。便利よね。」

「………移動魔法は…古代魔法じゃ無いの?」

「古代魔法の劣化版~大掛かりな収縮魔法みたいな物~」


 収縮魔法は物を伸ばしたり、縮めたりする魔法で、魔力を糸の様に使うのが一般的。


「点と点の片方、つまり対象を魔力の紐で繋げてもう一方は固定して縮める感じ、ですか?」

「そうよ。釣りみたいな物ね。」


 納得した一同は、ゆっくりと山に入って行く。ちょっとふらふらして居るが…。


「そういえば移転魔法で頂上には…」

「ジン、禁止されたわよ。」 


 ずるは駄目です。エリナ先生にきつく言われたアヤメとツバサ。2人にとっては実力なんだが、あくまでチーム毎のテストなので仕方ない。


「さっさと行こ~」


 山道を普段通りのスピードで進むアヤメとツバサに、男3人は慌てて着いて行く。多分2人だけなら1日で登るだろう。


「しゃがんで!」


 アヤメの一言にとっさにしゃがむ一同の頭上を、ナイフ数本が飛んで行った。

 木の枝に糸が有る。枝に触れたら作動するトラップ。


「あぶねー」

「止まって!」


 慌てて停止する一同。どうやら驚いて下がれば足元に糸が、安心して進むと魔法の罠が有るらしい。魔法の罠を解除して、進む一同。

 

「連鎖式って、やり過ぎ!魔法の罠だけ壊せない?」

「それも禁止されたわよ。」

「飛んで!」


 ツバサが叫んで、一同がジャンプすると足元を紐が走った。転ばせて、更に上から石が落下してくる連鎖式。石は各自が避けたり、弾いたりして防いだ。石に紛れてナイフまで落ちて来た。


「転けたら、刺さるし!」

「………先生怖い」

「本気だ…」


 一応、盗賊のアジトまでの罠を見ておいたおかげで、直ぐに反応出来るからなんとかなっている。書庫で言われた『無駄に動くな』も役にたっている。


「依頼受けて良かった!」

「………勉強して良かった」

「流石です師匠。」

 

 姉御モードになった2人は、黙々と進む。ツバサがああなると言う事は、気を抜いたら死ぬと言う事で、どれだけ危険なのか分かった男3人は、気を引き締めて進む。


「右に迂回。」

「落とし穴よ。気をつけて!」


 ツバサの言う通り、右に大きく迂回して、良く見ると確かに少し凹んで居た。


(((分かんないです!)))


 迂回しながらも辺りを見渡して進む一同だが、かなりの数の罠にへたばりそうになって来たジンとラング。ムウはなんとか着いて行けてる。


バンッ


 いきなり近くの地面が破裂して、驚いたジン、ラング、ムウ。


「動くな!」

「爆発は只の脅しよ。反対側の足元に魔力探知しなさい。」

 

 動きそうになる3人をツバサが制し、アヤメが解説する。探知をしたら、あと一歩下がっていたら罠に掛かって居た事が分かった。

 それから二時間程罠と格闘しながら進むと、いきなり罠が無くなった。


「罠エリアを抜けたみたいね。」

「魔物の気配有り。」


 どうやら魔物のエリアに入ったらしい。気配に敏感なツバサが常に探り、念の為にアヤメが罠を探して進む。


「なあ、アヤメ。」

「何?」

「罠と魔物の探知を両方は無理?」

「私は出来ない訳では無いけど、難しいわね。ツバサは出来ると思う。」

(((出来るんだ…)))

「左から二匹。ハイウルフ!」 

 ツバサの言葉に、一同が構える。魔物はジン、ラング、ムウが片付ける事になってアヤメとツバサは下がる。


グガアッ

ガウウゥ


 ジンが大剣で牽制、ムウが素早い動きで錯乱、ラングは魔力を貯める。


「風切り舞」


 ジンとムウが下がると、ハイウルフの周囲から風の刃が飛び交う。数が多く、ハイウルフの頑丈な毛皮にも、掠り傷が出来る。同じ場所に何度も当たり、耐えきれなかったらしい。

 力を貯めたジンとムウが魔法が途切れた瞬間に傷を狙って切りかかる。


ズシャッ

ザンッ


 大剣が鈍い音をたて、傷を潰しながら切り裂く。

 狙いすました刀は、傷にあっさりと吸い込まれる様に刺さる。 

 大剣は強引に切り裂いて、刀は的確に急所を捉えた。


グガアァァァッ

グルッ


 二体は崩れ落ちた。


「お疲れ様。休憩しましょう。」

「見張りは私がやる。」


 なんか、逆な気がしなくも無いジンとラング、ムウだが、素直に座って水を少し飲んで休憩する。

 一見、目を瞑り体を石に預けてリラックスして居る様に見えるツバサだが、少しの情報も逃さぬ様に、神経を張り詰めて居る。なんとなく、張り詰めた空気を察知して押し黙る一同。

 十分休憩を取り、しばらくしてから静かに目を開くツバサ。


「アヤメ、今日はこの辺りまでだな。」

「そう。」

「何で?」 

「この先、かなり魔物が居る。もう少しで暗くなる。危険だ。近くから水の音がするからそこまで行く。」

「………もう?」

「山は薄暗いだけで、様子が変わるのよ。かろうじて見える地面でさえ、境目が見えなくなる。なら、近くの小川を探して野営地を決めた方が良いの。」

「なるほど。分かりました。」


 アヤメにも水の音は聞こえないらしく、ツバサが先頭になって歩く。少ししてアヤメにも聞こえたらしいが、ジン、ラング、ムウには分からない。

 気付いた時には、目に見える位置まで来ていた。一時間位歩き続けた。その頃には薄暗くなり、足元が見づらくなって居た。


「本当に見えねー!」

「こんな物よ。」

「………怖い」 

「大丈夫よ。」

「薄暗いと不気味だ。」

「まあね。」


 恐る恐る小川の近くに移動して、平らな所を作ってテントを広げて、焚き火を起こして、座り込んだ。


「ちょっと薬草とってくる。」

「私も行く。ラング、障壁を張って」

「………分かった。不可視の防壁」


 ラングの障壁が囲ったのを見て、再び走り出した2人。


「情けねー!俺!」

「そうだな。」

「………うん」

「何も出来ない!震えてるし!」

「奇遇だな。同じだ。」

「………山は怖いね…」


 しばらく打ちひしがれて、呆けていた一同。辺りはすっかり真っ暗になった。


ガサガサ


「「「!!!」」」

「え?何?どうしたの?」

 

「びっくりしたー」

「………はわわ」

「自分が情けない」

「ああ。ごめん。少し有ったから採ってきた。」


 障壁を消して、中に招き入れたら、少しでは無い量の薬草が置かれて、驚いた3人。普通にサラダバーが出来る。


ガサッ


「「「!!!」」」

「ツバサだから。大丈夫だから。」

「何?何かあった?」

「何度驚くんだ俺!」

「奇遇だな。俺もだ」

「………あはは…」


 アヤメは分かるらしいが、普通に驚いた男3人は苦笑いをする。


「はいよ。」

「鳥?」

「うん。木の上に居た。魔物だけど、臭みは少ない。薬草と一緒なら平気。」

「………どうやって?」

「ん?ジャンプして」 

「流石師匠です。普通無理です。」

「まず見つけれない!」

「………足元悪いのに」


 あんまり気にせず、捌いて料理を開始する2人。

 鶏肉と薬草のスープを食べて、満腹になったので寝る事に。


「ツバサは寝て。私が見張るから。」

「ああ、大丈夫。これ」

「………魔法具!」


 ラングがいち早く食いついたのは、結界を張る魔法具。かなり高い物で、4つに分解して四隅に置いて魔力を流すと、協力な結界と探知能力を発動する物。ハイウルフ位なら三回位は耐えるので、時間稼ぎが出来る。探知能力は、結界から10メートル離れた所に反応が有ると、結界の強度を上げて、使用者に知らせる。


「なら見張りは要らないわね。せめて探知能力の知らせは私が受け取るわ。ツバサは休んで。」

「分かった。お休み」


 アヤメが四隅に置いて、一つ一つに魔力を流して発動させる。

 火を消してから、一度辺りを見渡してテントに入る。


 1日の距離は短かったが、とても大変な1日目が終わった。

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