校長と親友
開いて下さってありがとうございます。
昨日の報告には驚いた。直ぐに人員を派遣したが、報告によると見た目は、普通の教会で、活動内容も問題無し、孤児を引き取ったり、炊き出しをしたりと、おかしな所が無い。
だから、どの教会が、もしくは全てか分からない。
「分からん訳じゃ…」
「流石に見抜けんな…」
校長と〈才希〉は溜め息を吐きながら、話し合いをしている。
とにかく、これと言った特徴が無く、昨日捕まった団員は、下っ端は知らず、大柄な男と魔法師だけ知って居たが、人物については酒場のマスターと言われ、場所も指定された酒場で、酒場は潰れていた。
つまり、証拠と依頼人は消えた。
「急に増えた教会は、目くらましかのぅ?それとも、面の顔かのぅ?」
「分からんな…」
そこに駆け付けた人物が、ど派手に現れた。
バーンッパラパラパラパラ
「よう!元気か!」
「ドアが粉々じゃ…」
「相変わらず細かいな!」
「誰かに似ておる…」
「誰だ!?子供は居ないぞ!」
「もう良い…」
現れたのは、見た目50位の女性で、髪は何故だか赤に染めてあり、瞳は黒で、そして派手なふりふりの服で、雑巾…じゃなく、人間を引きずって入って来たのは、校長の元パーティーのメンバー、元カラス長、現在カラスの育成担当である。
カラスに入った時に名前は既に捨てたので、校長は親友と呼んでいる。(内心ではじゃじゃ馬、ケバいおばさんだが)
「なんか、内心不服だと言ってないか!?白状しろ!」
「親友よ、何か有ったのじゃろ?」
「スルーか!まあ良い。教会に行くぞ!今直ぐに!」
「何故じゃ!」
パコーン
「たわけ!動く時は動け!」
「痛いのう…そこの人は?」
「ん?ああ、カラスの一員らしいがな、なっとらんので伸ばした。」
ずるずる引きずられながら、校長はカラスの一員に合掌した。〈才希〉も心配そう覗き込んでから、着いて来た。
(生きとるか?)
(一応…)
(後で呼ぶから、人呼んでやれ…)
(分かった…)
「ん?どうした?神獣が行ってしまったが…何かしたのか?」
「〈才希〉はわしの留守を、言いに行ったんじゃよ。」
「名前決まったのか?誰が付けた?お前センス無いだろう?」
「サソリ型召還獣に〈ムシ〉って名前付けるお前が言うな!」
「過去を掘り返すな!それで、誰?」
「真王…ツバサ君じゃ。」
「!!!」
「どうした?」
「いや、センス良いと思った。」
「そうか…」
(真王?いやいやまさかね…)
親友は何かに気付いたが、即座に否定した。有り得ないと。
☆☆☆☆☆
「普通じゃ…」
「だな!行こう!」
「まてまて!正面からか?」
怪しいと感じると、言いながら連れてきた教会に、普通に入ろとする親友。流石に慌てて止める校長。
「何故だ?教会は誰でも入れるだろう?」
「いやいや!お前、侵入する気じゃろ?」
「当たり前だ!」
「なら、とりあえず普通の格好して来い!目立つわ!」
「普通だろ!おしゃれには敏感なんだ!最近ふりふりの服が流行って居るしな!」
「その年でか!」
ゴンッ
「年関係ない!」
「痛いのぅ。」
問答無用で入って行く親友に、着いて行くしか無い校長。ものすごい注目を浴びている。
(もう70後半じゃろお前…)
痛い視線を受けながら、上機嫌で歩く親友に呆れる校長。
中にも人が居て、またもや注目を浴びるがどこ吹く風の親友に、諦めた校長。
「おや?見慣れない方ですね…」
「精霊教かな?」
この世界では、教会の一番上の人を〈精霊教〉と呼ぶ。神父は居ない。まず、この世界では神の為の教会は無い。馴染みが無いと言う事だ。
精霊の事を教え、導くから〈精霊教〉だ。分かりやすい。
「はい。そうですよ。精霊の加護を求めて来たのでしょうか?」
「あいにく、精霊は信仰して居ない。」
キッパリ言い切る親友に、精霊教は唖然として、校長は溜め息を吐く。
「ならば、何故?」
「見に来た!」
「はあ…」
「失礼するぞ!」
「ええ!」
いきなり教会内を走り回る親友。校長はがっくりうなだれ、眺める。
中の人は唖然として、驚いて逃げ惑う。
「自重と言う言葉を知らんのかあやつ…」「彼女を止めて下さい…」
「無理じゃ!殺される!」
ドガァァァンッ
「なんじゃ!?」
「何ですか!?」
「見つけたーーー!」
「何をじゃ!」
「隠し通路よ!早く来い!」
「でかした!」
「んな!あなた方何者ですか!?」
「すまん!」
「ゴフッ!」
精霊教を手刀で昏倒させ、親友の元に向かうと、入り口から二本目の柱の下に穴が出来ていた。
「壊す必要有ったのかのぅ?」
「取っ手無いし、レバーもスイッチも無いからしょうがない!」
「精霊教が持ってるんじゃ?」
穴の近くに小さな鍵穴が有り、大きな穴は扉をぶち破ったらしい。階段が下に続いている。
校長が手のひらサイズの光球を作って足元を照らして、用心しながら下って行く。親友は何もせず、鼻歌を歌って居るが…
「下まで来たが…行き止まりじゃ。」
階段が終わって、辺りを見渡したが突き当たりで、左右にも何も無い。
「なら後ろよ!」
「はあ?…ってマジか!」
そんなバカなと振り向いたら、階段の横に細い通路が有った。一人ずつしか通れないので、校長が前に押し出され進む。
10歩進むと少し幅が広がって、二人なら並んで進める。
「逃げ道無し、すれ違えないか…何考えて作ったのかのぅ?」
「違う入り口も有るんじゃない?」
ずんずん進んで行く親友に、あくまでも慎重に進んで行く校長。
「また行き止まりじゃ…」
「なら上!」
「はあ?どうやって?」
30分黙々と進んで行き止まりに当たり、左右には壁、今までの道には切れ目無しでお手上げの校長に、また奇天烈な発言の親友。
(まあ、こやつは切れ者じゃしな…)
迷宮の攻略に一番適しているのは、校長のパーティーにはこの親友しか居ない。いつもいきなり、有り得ない事を言って、実行して、突破口を見つけて来た。
「おや?ここ少し溝が…へぶっ!」
「本当だ!少しだけ浮いてる!」
「いきなり押し飛ばすな!」
五ミリ位の溝の違いに気付いた校長。他より深く不安定だ。僅かな差だが、元勇者なら迷宮で見る物だから、余裕だろう。
遠慮も躊躇も警戒も無く、押し込む親友に若干文句が言いたかった校長。
天井が徐々に下がって来て、階段になった。上がって行く親友に、校長は流石だと思ったが、言わない。調子にのるから。
「ほほう!」
「何これ?」
登りきった先には、大きな空間が有り、奥までは暗くて見えないが、何故だか奥が光って見える。
またもや辺りを探る親友は、なにやらスイッチを見つけて押した。
壁に有る、大松に自然と火が灯り、当たりを照らす。魔法具の様だ。この世界では電気はあまり復興していない。学園には当たり前に有るが、一般的には魔力で動く魔法具に頼る。明るさは電気の方が良いが、安定した電力が無い。
「この大掛かりな魔法具は、信者からの貢ぎ物からか…」
教会では、お金の代わりに価値有る物を捧げる。これは、精霊はお金に興味が無いからで、物ならたまに精霊も喜ぶからだ。水の精霊は宝石、土の精霊には鉱物など、関わりの有る物が良いとされる。
良い物が多い為、たまに偽物の教会を作って騙し取る者も居て、いつも国は厳しく監視している。
「これだけ大掛かりだと、バレないか…案外頭良いのね!」
「奥のあれは…魔法陣か?」
不気味に光って見える物体に近づくと、魔法陣の描かれた水晶玉が有った。
「!!!」
「どうした?」
見た瞬間、親友が蒼白になり、思わず下がる様子に警戒心を上げて問いかける。
「悪魔の魔導式!」
「何だと!?」
悪魔召還の為の図形だと、聞いた校長は唸る。こんな小さな水晶玉で、呼び出せるのか?どうやって壊す?と、頭の中がぐるぐるする。
「この水晶玉からなら、低級悪魔位でしょうけど、よろしく無いわよ。多分目的は世界を狂わして、歪ませる事でしょう。」
「大量の魔物、突然現れる魔物の被害、大きな魔石、急激な狂化、低級悪魔の地脈の汚染、全て布石かのぅ。」
「その報告聞いて、調べていたら、歪みの酷い所がここだったのよ。魔石は献上の品か、込められた魔力による、魔物の成長、突然の魔力の暴走が目当てね…他の洞窟にも有ったわ。あれよりは小さいけど。魔物と低級悪魔に関しては、同意見。」
「問題はどうやって壊すか…」
下手に刺激すれば、この場所に低級悪魔が溢れる事になる。
考えあぐねて、〈才希〉を呼び出し説明をする。
「ふむ。我に任せよ。神獣にはこれを壊す力が、与えられている。下がって居ろ。下手に魔力に触れさせたくない。」
既に神々は先手を打って居たらしい。神獣に魔導式を壊す役目を与えて居た。
〈才希〉の神気が水晶玉を覆い、徐々に水晶玉に送り込んで行く。
ピキッピキッピキッバギンッ
ひび割れが徐々に広がって、水晶玉が割れた。魔導式が広がろうと、校長と親友に向かうが、神気が抑え、打ち消して行く。霧が霧散するように、魔導式が消えた。
〈才希〉は場の浄化も行って、空気が軽くなったのが、校長と親友にも分かった。疲れ果てた〈才希〉を校長が抱き上げる。くてんと、しているが力の使い過ぎらしく、休めば良いと姿を消した。
前聞いたが、この世界に居るだけで神気を使うらしい。
「問題はこれからね!」
「うむ!」
慌ただしい足音が聞こえて来る。自分たちの来た道はもちろん、違う方向からも聞こえて来る。
左右6の壁が動き、階段になった。そこから武器を手にした者達が現れる。
「なんて事を!」
皆一様に嘆き、怒りの視線を二人の侵入者に向ける。皆雰囲気が普通では無く、狂気に満ちて居る。
「聞きだいね…何故悪魔を、求めるのかな?」
「あの高貴な方々は、我々信者に絶対の世界と力を下さるとおっしゃった。事実、我々には魔力が満ち溢れて居る。」
「そんな魔力で?」
「分からないとは、哀れだな!」
そうだそうだと周りが騒ぐ。そして大げさに天を仰ぎ、小瓶を口にした。以前〈レジェンド〉〈ミラージュ〉の見た物と違い、禍々しい黒の液体を飲み干した。
途端に魔力が膨れ上がり、狂気も膨れ上がった。
二人は笑いながら、魔力を解放した。
場が凍りついた。
「私達二人の魔力に負けてるし。こんなに居て、薬まで飲んでも届いて無いわよ!聞いてる?」
「驚いて固まったみたいじゃ。アホらしいのぅ!」
皆化け物を見たかの様に、二人を凝視している。
二人は頷き合い、地を蹴って目の前の敵を殴り飛ばす。純粋な殴り合いだが、魔力で強化した二人に勝てない。
強化魔法では無く、体の中に魔力を循環させて、体内で魔力を使い肉体の力の全てを底上げする。
魔力の量に依存して、多ければ強くなるが、扱い方が難しく、体内から崩壊する事も有る。
莫大な魔力で、老化まで抑えて(魔力が勝手に巡り、細胞を勝手に強化してしまう為)しまえる二人の力を、体の組織を壊さず、素早く回すなど、超人的だ。
あっという間に敵は地面にひれ伏した。直ぐに地上に戻った二人は、騎士に後処理を任せて、学園に戻った。
「これで少し、時間が稼げたかのぅ?」
「多分ね…でも、進んだ物は戻らない。少し止めただけね。あれしか無いとは、限らないしね。」
「引き続き頼めるかのぅ?」
「もちろん!後でワイン送ってねー♪」
鼻歌を歌って去っていく親友。
校長は小さく礼を言った。
「今回も助かったぞ…」
ご感想お待ちしております。




