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盗賊退治

いつも読んで下る方、ありがとうございます。

 ヘルハウンドを討伐して報酬を山分けにして、宝石も全て山分けした。

 今回〈ミラージュ〉は何も出来ていないと拒んだが、チームで受けたのだからとアヤメとツバサに説得されて、皆報酬を受け取って自室に戻った。


「ふ~…雪。」


 ツバサが部屋の椅子に座り、〈雪〉と呼んだ。

 真っ白な髪、真っ白な着物、瞳も真っ白の、額に小さい角を持つ鬼が現れた。


「はい。ここに居ります。」

「話し相手になってくれる~?」

「もちろんです。」


 白鬼で有り、鬼の祖で有り、鬼で有りながら神の位に居る白鬼。

 本来の名は、〈白華之雪姫びゃっかのゆきひめ〉なのだが、長いからとツバサは雪と呼んでいる。


「人間は面白いね~」

「そうですか?」


 鬼は人間と同時期に生まれた、浅い歴史の生き物だ。もちろん鬼の神も、神の中では新参者で、位も低い。

 位が低いなら、真王とも会えない筈だったが、真王が近衛に任命した。おかげで他の神から守られた。どんな事が有っても可笑しくなかった。神の位の剥奪も有り得たのだ。鬼の存続にも関わる。


(恩は返しきれません。この身滅びようと力を捧げましょう。)


 神は力無き者には厳しい。逆に力さえ有れば新参者でも歓迎される。鬼は弱い。闇でしか生きられない。

 だが真王は鬼の力を評価した。力の有無など歯牙にもかけず、その高潔な魂を評価した。


「最近の人間とは、どうしている?」

「あまり、接点は有りません。眷族達は何もしなくとも、人間に嫌われ、追われると嫌がって居ます。」

「なるほど。人間らしい。人に似て、違う力を持つ鬼に恐れたか。」


 血の薄い鬼はともかく、濃い鬼は争いを好まない。只平和に暮らすだけ。只自分達の意志を貫くだけだ。


「苦労をかける。」

「いいえ。これも定め故。」


 人間にとって、長い歴史では、今まで一度も相容れない。人間に欲が有るが、鬼にはほとんど無い。理解しあえない。


「雪、エルフと鬼は似ているな。」

「はい。習慣もほとんど同じです。」


 エルフも鬼も、隠れ住んで静かな暮らしを求める。他者には関わらない。

 だが、手を出されれば、全力で応じるし、気に入らないなら、避けて回る。

 そっくりなのだ。


「鬼もエルフも、潔癖だな。」

「そうですね。」

「この戦、人間は歩み寄れるか?」

「難しいかと。」


 真王もエルフの事を気にしている。

 手は出せないが…


「上手く行くと良いな。」

「はい。」


 月を見上げて静かに呟いた…





☆☆☆☆☆


「今日も依頼を受けるけど、何か希望有る?」


 皆が朝ギルドに集まって、アヤメが問いかける。昨日の戦い方から、ヘルハウンドみたいな魔物は無理だと判断したらしい。見る事で学ぶ事も出きるが。


「弱いのが良いわね。」

「群れは無理です。」

「エレミアに任せる。」

「何でも良いぜ!」

「ラザック、昨日何もしてないだろう。」


 〈ミラージュ〉はあまり強い魔物は無理だと言うが、それでは意味が無い。


「テストの内容は分からないけど、エリナ先生だからね…」

「容赦無いだろうな。」

「だね~」

「うむ。」

「……ははは」


 とりあえず依頼を漁る皆。


「これはどうかしら?」

「エミー却下~ゴブリンは相手にならない~」

「ではこれは?」

「クリスティア、それほとんど動かないから、意味ないわよ。」


 エレミア、クリスティアの提案は切り捨てられた。


「お!始めて見た!」

「どれ~?」


 ジンが一枚の紙を見せる。


~~~~~


依頼 盗賊団の壊滅

最近様々な国で強奪を繰り返す盗賊団〈タランチュラ〉のアジトを発見。

出来るだけ生け捕り、身柄の引き渡しを依頼する。

被害は数え切れない程で、次から次ぎへと対象の国を変えるため、各国で協議の後、処罰を決める。

バライの森の奥に屋敷が有る、アジトはその屋敷の模様。

引き渡し先は、シオン監獄。


ランク B

報酬 30万+a


~~~~~


「シオン監獄って、ガイスに有る地獄より怖いとか言うあの?」

「だな!凄いらしいぜ!」

「バライはガイスの近くの森よね。何考えて居るのかしら?」

「さあな…」

「受けましょう。人相手の経験も必要です。」


 アヤメの発言に一同(ツバサは除く)は固まった。

 盗賊団は殆ど依頼に出ない。今の世界は手を取り合って対象する為、生き残れない。生き残り、名が付いた盗賊団は、魔物よりたちが悪く、魔法師が居る事も有り、更に強い団員や、頭の切れる者が居る事が殆どで、確実に殺し合いになるので、対人戦闘の経験のほとんど薄い一同には踏み切れない。負けたら、慰み者になる女性には、関わりたく無い相手だ。


「賛成~」

「良いよね?」


 アヤメとツバサが意見を求めたが、否定が出来ないプレッシャーが襲う。2人は曲がった事が嫌いなのだと、今更だが皆が気付いた。

 皆一斉に首を縦に降った。


「受付完了。最悪、裏に奴隷商が居るかも知れないから、気を付けて。じゃあ移転魔法でバライの森近くに飛びます。」


 スムーズに受付を済ませて、怖い情報をさらりと言って、ギルドを出て行くアヤメ。慌てて一同が外に出ると直ぐに魔法陣を発動させる。

 目の前には森が広がり、薄暗く、肌寒い。バライの森は、原因の分からない霧が良く発生し、気温も低く、いつも薄暗い。


「行きましょう。」


 アヤメとツバサが先に進み、一同は後を追う。不気味な程静まり返っている。


「下がって!」


 アヤメの言葉に素直に従った一同の目の前を、ナイフが数本飛んで行く。


「用心深いね~賢いのが居るね~」

「そうね。」


 アヤメとツバサは普通に話して居るが、残りの一同はいきなり飛んできたナイフに固まって居た。何も兆候が無いので、かなり手の込んだ罠だろう。

 ジン、ラング、ムウも以前のキメラ討伐を思い出したが、洞窟内と違い草で地面が見えず、より見つけにくい。

 アヤメが見ている先に、切れた細い糸が有る。草に紛れて気付けなかった。


「私達が先を進んで、罠を感知するから、後ろからの襲撃は任せるわ。」

 アヤメとツバサが目の前に集中して進んで行く。後ろの一同は左右、背後を確認しながら進む。

 ツバサが手で止まれと合図した。


「あの岩の近くに、魔法の罠が有るから覚えておいて。」


 いつもの眠そうな表情は切り替わり、鋭い光を宿す瞳で先を見据える。

 確かに集中すれば、僅かな魔力を感じる。本当に僅かな物だ。


「分かった?」

「エリナ先生なら、もっと上手く隠すわね。覚えた?」


 あれより見つけにくいなら無理だと、思ったが頷いておく。

 〈ミラージュ〉の一同がツバサに違和感を感じて、ジンに尋ねる。


「今までと口調が違うわね?」

「真剣な時はあんな感じ。アヤメは口調は変わらないけど、ツバサは口調が強くなるんだ。」

「そうなの…」

「あの時の師匠に、容赦は無い。気を付けておかないと、置いてかれる。」

「………後魔法が飛んで来る。」


 ジン、ラング、ムウの表情が強張っているので、真実なのだろう。


「何してんの?」

「いや、必死に覚えようと思って!」


 くるりと振り向いたツバサに、慌てて言い訳をするジン。ツバサは、すっと目を細めて見つめた後、また黙々と前に足を運ぶ。一同は冷や汗をかいた。


「しゃがんで!」


 アヤメが慌てて皆に叫んだ。一同がしゃがむと頭上を矢が数本通り過ぎた。

 頭上の枝に糸が有り、触れたら作動する仕組みらしい。


「下だけじゃないのか…」

「当たり前。」


 バッサリと切り捨てるツバサ。2人は元から頭上にも気を配って居たらしい。それでも、避けられない罠が多数有るのは、単純に数が多いのだ。


「十分歩いて、16の罠。多いな。」

「警戒態勢が厳重過ぎるわね。指名手配が関係して居るのね。」


 数を聞いて驚いた一同。間違い無く、2人が居なければ死んでいた。


「時間が掛かり過ぎる。」

「仕方がないわよ。」

「…魔法の罠だけ、解除する。」

「探知できる?」

「問題ない。」


 手を地面に当て、魔力を流すツバサ。凄まじい速さで、膨大な魔力が駆け巡る。森のあちこちから、音が聞こえる。


パリンッパリンッパリンッパリンッパリンッ


 強制的に魔法陣に魔力を流す事で、魔力が魔法陣の許容量を超えて、割れて行く。連鎖的に聞こえてから、三分で音が止んだ。


「終わった。全部解除した。結構有ったな。」

「いくつ?」

「57だよ。一応森の向こう側まで解除したから。」

「流石ね。」


 涼しい顔で言ってのけたが、驚異的な数と、スピードで有る。


「普通のも沢山居るから、気を抜くなよ」


 コクリコクリと頷く一同。

 心の中で一同は〈姉御〉と呼ぶ事を決めた。何故か一同の心境が通じ合った。因みに黙々と作業を続いて、背中で語るアヤメも〈姉御〉である。


(なあエレミア。)

(なによ?)

(双子みたいだよな?)

(確かに。)


 小声で話すジンとエレミア。見た目もそっくりで、声もそっくり、性格は違うけど考え方も同じ、意志疎通もバッチリで双子のようだ。

 最近皆が気付いた事は、顔の造形が左右対象で、人間離れしている事で、クラスは盛り上がっている。今まで、アヤメはツバサしか見てないし、少し距離を置いていた、ツバサはいつも寝てたり、だらーとして居たから気付かなかった。


(なんか、神秘的だ!)

(そうよね!)

「何か有ったの?」

「「いいえ!」」


 こそこそ話していたら、アヤメが訝しげに声をかけてきた。見事にハモってしまって、顔を見合わせる。


「前向かないと死ぬよ。」

「気を付けてね。」


 また黙々と進み出して、たまに立ち止まり罠を解除したり、周囲を見渡して歩く2人。

 あれから一時間歩き続けて、視界の先に何かを見つける。

 古びた屋敷。だが生活感が有り、たまに影が窓を横切る。


「あの大木まで行く。」

「罠はなさそうね。少し様子を見ましょう。」


 大木まで気配を消して(アヤメとツバサは完璧だが、後の皆は意味なし)そろそろと移動した。幸い見つからなかった(実はアヤメの認識阻害魔法が発動している)。 ツバサはするりと木に登った。


「ツバサが中を確認してくれるわ。」

「見えるのか?」

「視力は良いのよ私達。」


 この世界には、視力の検査が無いので分からないが、大木から窓の中を見る位は余裕らしい。皆は屋敷の窓が有る事を確認出来る位だ。


「お待たせ。内部構造は単純。三階建て、真ん中に巨大な階段、そこは吹き抜け、三階に人は少ない。二階に集まって居るみたい。一階には下っ端らしき人間が多数。二階に金品が有るから、リーダーも二階かと思う。」

「部屋は少ないの?」

「有るけど、一つ一つが広くて、ドアは無い。」

「単純ね。でも罠かもしれないわ。」

「多分罠だね。後は入らないと分からないけど、一階の空き部屋から行く?」

「そうね。準備は良いかしら?」


 一同が頷く。

 屋敷の周りを回り込んで、窓のカギをツバサが開けて侵入。

 大階段目指して歩き始めて、直ぐに下っ端と遭遇したが、素早く悲鳴も上げさせず手刀を当てる。

 繰り返し同じ作業をしながら進むと、大階段に到着。いきなり影が皆の足元に広がった。


ズドンッ


 アヤメとツバサが皆を素早く非難させ、なんとか間に合った。

 大きなサイのような生き物が、目の前に居た。更に頭上には鳥の形の生き物が見下ろしている。


「召還獣…」


 召還獣は、魔物と契約して、いつでも呼び出して使役出来る契約魔法。高難易度の魔法で、学園ではまだ教えてもらって居ない。

 アヤメとツバサは知って居たので、驚きに目を見開いた。

 何故それだけの力を持ちながら、盗賊団に居るのかと…

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