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仲間なのだから

自分が思って居るだけで、案外皆気にして居ない事も良く有りますね。

 翌日、ラングは皆の元に急いだ。今なら食堂だろうと走って行くと、4人揃って朝食を食べて居た。


「………皆、ごめんなさい!」


 突然、走って現れ、頭を下げるラングに固まる一同。


「えっと、何が?」


 困惑しながら、アヤメが問う。皆も首を傾げながら聞いている。


「…この間の僕の発言」


 どんどん小さくなる声は、震えて居た。まだ顔を下げたままだが、青くなって居るだろう。


「あれか~気にしてないよ~」

「…ほえ?」

「良いのよ。怒って無いし。」

「え?」

「気にするな。」

「え?え?」

「別に終わった事だろ?」

「ええ?」


 ツバサはあっけらかんと、アヤメは微笑んで、ムウは素っ気なく、ジンは今思い出したと言う感じで、許した。


「…良いの?」

「何を気にしてるの?」

「〈フラウニア〉の生徒からは~もう謝罪されたし~気にして無いよ~」

「…いや、その…実力が合わないと…」

「「「「何だそんな事?」」」」

「ええ?」

「確かに、実力は開いたわ。でも、仲間には違いないわよ。」

「今から少しずつ頑張ろ~どうせジンとムウも、まだまだだし~」

「ひでー!」

「ご指南よろしくお願いします。」

「ムウ!堅苦しい!」

「ジン、当たり前だろう?教えて貰うんだ。礼儀は大切だ。」

「まあ、そうだけど。」


 本当に気にしてない皆に、ホッとするラング。


「………これからもよろしく」

「もちろんよ。はいこれ。」

「…ペンダント!」

「親切な生き物が~拾ってくれたの~」

「…生き物?」

「校長の神獣よ。」

「…ああ、〈カーバンクル〉!」

「今の名前は~〈才希〉だよ~」

「「「そうなの?」」」


 ジン、ラング、ムウは知らなかった為、どうやって名前が付いたのか気になったが(校長のネーミングセンス無いから)、とりあえず良かったと喜んだ。魔物の種族名なのは気になって居たらしい。

 受け取って直ぐに、ペンダントをつけて眺めるラング。


「これからは、相談してね。」

「……うん!」


 皆笑いあって、朝食を食べ終わってギルドに向かう。今日も〈ミラージュ〉のメンバーと、待ち合わせをしている。







☆☆☆☆☆


 ギルドに着いて直ぐ、ツバサは掲示板に向かった。


「…有った~」

「どうしたの?」

「勉強だけだと~分からないでしょ~討伐依頼を探したの~」


 ひとつの依頼を見せるツバサ。


~~~~~


依頼 ヘルハウンド討伐

アルカムの谷に突然ヘルハウンドの群れを発見。

数不明、正確な情報無し。

数を減らすか、殲滅で達成。


ランク B

報酬 20万

条件 10人以上必須+討伐依頼三回以上の達成。Bランカー必須。


~~~~~


「ちょうど良いじゃん~♪」

「まてまて、明らかに危ないぜ!条件有りの依頼だし!」


 条件は、ギルドの職員が危険と判断し、なおかつ二回以上の他の冒険者の失敗が有った場合、つけられる。


「言いにくいのだけれど、私達Cランカーしか居ないわよ…」

「エミー、こっちSランカー居るよ~」

「あの、問題点が違うのですが…」

「クリス何~?」

「討伐依頼は、二回しか受けていません。ほとんど、採取依頼ですし、討伐依頼もゴブリン位なんです…」

「良い機会じゃん~」


 学生ならば当たり前なのだが、討伐依頼はほとんど受けない。採取依頼で出る魔物に手一杯だからだ。

 受けても、二、三匹程度の物位で、集団の依頼は受けれない。

 ツバサは問題ないと判断したが、エレミアとクリスティアは戸惑っている。ラザックとガナンは受けたいらしい。リーゼはエレミアの判断に任せる事にしている。


「私達もちゃんと援護するわよ。」

「そう…」

「分かりました。」


 アヤメも合意して、ジン、ラング、ムウも受けると言うので、2人はしぶしぶ承諾した。

 受付に持って行き、カードを提示して書類にサインをする。条件有りの依頼には、ギルド側は責任を持たない事を合意する書類にサインをしなければいけない。


「受付完了~魔法薬とか買いに行こ~」

「俺、ヘルハウンドにつけて図鑑見て来る!」

「俺は、仕込み武器を調達して来ます。」

「……魔法補助具と装備を見て来る。」

「了解。私達は薬の調合してくるわ。」


 流れ作業のように、スムーズにそれぞれの準備に向かう〈レジェンド〉に、ついて行けない〈ミラージュ〉の一同。


「ちょっとよろしい?」

「どうしました?」


 流石にエレミアがアヤメを呼び止める。アヤメとツバサは首を傾げている。


「どうしたら良いのか、分からないから、教えて下さる?」

「良いわよ。」

「その装備だと~ヘルハウンドの牙に耐えられないね~装備店に行こ~」


 〈ミラージュ〉の一同を見て、装備が不足だと判断したアヤメとツバサは、直ぐに店に向かう。

 ついて行く一同は、財布の心配をしながらついて行く。装備はお金がかかる。買い足しを頻繁にしたり、メンテナンスしたりすると、あっという間に財布がすっからかんになる。

 報酬のほとんどは、装備や薬などに飛んで行く。


「いらっしゃい!」


 考えている内に、店に着いてしまった。学園の中のお店のひとつで、結構良い物が置いてあり、数多く有る店でも高めの値段で一年生は近寄らない。


「珍しいな!一年生か!」

「後ろの皆の装備を見に来たの。」

「ほう、ズタボロだな!」

「良いの有る~?」

「こっち来い!」


 普通に奥に入って行くアヤメとツバサに、困惑しながら着いて行く5人。

 奥にはずらっと、沢山の装備品が並んでいた。


「お嬢さん達は、この辺かな?」

「これは、ごつく有りませんこと?」

「まあ、普通だろ。」


 …鎧を普通と言うのかこの店員!

 銀色の鎧に、引きつった顔をするエレミア、クリスティア、リーゼ。

 多分…いや絶対見た目重視だ…


「初心者なら良いけど、ヘルハウンド相手には、重すぎるわよ。」

「あん?ヘルハウンド?お嬢さん達が?止めとけよ!無理無理!」

「うざい~」


 店員の言う事は、当たり前なのだが、アヤメとツバサには、当たり前は通用しない。

 さっさと違う装備を見始める2人。


「これは~?」


 ツバサが出したのは、動きを妨げない物で、一見頼りない。


「いや、それは…」

「隠しても無駄よ。保護魔法が掛けてある。ナイスよツバサ。」

「良く分かったな…」


 どうやら、アヤメもツバサも普通の防具では無く、素材と掛けてある魔法で選んで居るらしい。


「そりゃあ、私達も只の防具は使って無いもの。」


 アヤメとツバサの服装は、制服の上にコート、見た目は普通のブーツで冒険者には見えない。

 実はコートには、強化、防火、対魔法、再生、癒やしの魔法が掛けてある。着ていても、邪魔にならないように、快適な温度と軽量化がされて居る。素材は、とある精霊に貰った特別な布。

 ブーツは、対魔法、軽量化、素材はドラゴンの皮で、かなり丈夫。

 全て動きやすさ重視の、高グレード装備である。 


「なるほど…」


 全てを聞いた店員は、呆けている。いったいいくら掛かるんだ…。

 本当はまだ魔法補助具を沢山装備して居るが、あえて言わない2人。店員が倒れそうだ…。因みに、武器も普通では無い。


「分かった。倉に有る物も持ってくる!待っとけ!」


 30分かけて、引っ張り出した装備品に呆けて居る〈ミラージュ〉のメンバー。

 山のように出て来た物は、全て補助魔法が掛けてある、高グレード装備ばかり。


「エレミアとクリスティアは、これかしら?」


 アヤメが見つけたのは、ハイウルフの皮で出来た、強化と保護の魔法が掛けてあるローブとグローブ。

 さっそく試着室に連れてかれる2人。拒否権無し。 


「どうかしら?」

「変じゃ無い?」


 魔法使いそのものの2人に、メンバーは高評価を出す。もともと、後ろから援護する役割の2人には、ちょうど良い。グローブは肘まで有り、金属の板が着いて居る為、万が一の時はそれで防げる。今までつけて居た胸当ても有るため、問題は無い。

 ブーツはもともと、学園指定の丈夫な物なので、買い足す必要は無い。


「リーゼには、これかな?」


 リーゼに渡されたのは、機能性重視の皮の軽装備。胴には袖は無く、変わりに肘までのグローブ。下は同じ皮のズボンで、沢山のホルダーが着いて居る。

 また強制的に試着室に連行されたリーゼ、恥ずかしそうに顔を出す。


 

「すごく動きやすい。」


 活発的で、暗器を使いこなすリーゼにはかなり合うらしい。ホルダーに沢山のダガーが入るのが、嬉しいらしい。


「決定ね。」

「次~男共~」

「適当だな…」

「扱い酷い!」


 ガサゴソと漁る2人、店員は空気になって居る。意外と楽しそうだが…


「これ~」


 ツバサが、胴だけの銀の鎧を見つけ出した。ラザックにちょうど良い。

 ひょいと渡され、受け取ったラザックは驚いた。結構重い。


「力有るな…」

「後これも。」


 アヤメが、肘当て、膝当て、先端部分が鉄で脛当て着きのブーツを渡す。


「案外、着けると軽いな。動きも邪魔されない。グローブは今までので良いな。」

 

 制服の上に装備して、満足げに頷くラザック。斧を振り回すラザックには、少し重い鎧でちょうど良い。機能性より、防御と耐久性を重視した。


「ガナン、受け取って~」

「おわ!」


 軽い調子で投げ渡された物の重さに、驚いたガナン。

 ラザックと同じように、胴だけの鎧に、肘までのグローブ。但し、鎧はラザックより厚め。グローブには金属の板が着いて居る。指の辺りも丈夫にガードされている。素手の戦いに最適な物だ。

 続いてブーツが渡された。こちらは膝までで、皮製、動きやすさ重視。かかとに棘が着いている。


「ふむ!これなら走りやすく、後ろの敵にダメージが与えられる!」 

「素手だからね。接近戦には防御力が必要だよね。足元は動きやすさ重視が良いでしょう?」

「うむ!気に入った!」


 全ての防具には、強化の魔法が付属されている為、長持ちするし、身を守れる。

 感動して居る一同。そこで店員が話しかける。


「言っとくけど、魔法補助が有るから高いぜ!」


 固まる一同。まあ、エレミアとクリスティアは問題ないが…。

 結局、これ以上の物はめったに見ないと判断して、財布を空にした一同。

 店員は苦笑いしながら、少しまけてくれた。


「悪いわね。全員分見て貰って。」

「仲間だから、良いのよ。」

 

 店を出て、薬を買って、武器をメンテナンスして、一同は寮に帰って来た。

 アヤメとツバサの品物を見る目に、狂いは無く、良いもので安く手に入れた。


「明日朝、ここで。」

「ええ。ありがとう」


 皆それぞれ、自室に戻って行った。満足げに…






☆☆☆☆☆


 夜闇を学園の暗部カラスの1人が走る。満身創痍の状態で、走り回る。


(くそ!有り得ない。こんなに早くも!)


 カラスに所属する者は、元勇者のパーティーのメンバーの中から、隠密に優れた者が入っている。

 弱い筈は無いのだ。


(どうなっている?)


 カラスは、見えない敵に追われている。カラスの見つけ出した村は、狂った魔物と人間で溢れていた。

 早すぎる異常が広がるのが。


(この事を校長に!)


 カラスは最後の魔力で、鳥を作り出して文を足に縛り、飛ばした。


ザシュッ


「ガハッ」


 後ろから切り裂かれ倒れるカラスは、敵に目を向ける。

 人間が佇んで居た。

 だが、腕がカマキリのように変化しており、理性は無く、唸って居る。


「狂い…変化した…人間…か…」


 夜闇に血飛沫が舞った…

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