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埋まらぬ溝

悩み事はぐるぐる頭の中で、エンドレスループしてしまう白狐です。

アクセス1000やったよ私←

 エリナ先生のご機嫌が良く、つつがなく授業が終わった放課後。

 校長室にアヤメとツバサが訪れた。2人共力を半解放している。ツバサは瞳の色が変わり、アヤメは外見は変わらないが、淡い金の光を纏って居る。


「真王と翼王が揃うと、壮観じゃのぅ」

「聞いて居ましたか」

「我が言った。隠すことでも有るまい」


 2人はソファーに腰掛ける。一つ一つの動作が流れるように美しい。


「預言者、ジン、ムウは覚醒したが、問題が出て来た。」

「ラングか…」


 皆が帰って数日たったが、話も出来ていない。こちらが近付いたら、あちらがそそくさ逃げる。

 〈フラウニア〉の人間は、事の真相を知って、〈レジェンド〉に代表が謝罪と礼を言いに来て、今は普通に学園に馴染んで居る。


「どうにも、負い目を感じて居るようね…真王の一言も有るかも知れないけど…」

「翼王、そなたも言って居ったぞ。だが、あの日どう言って、場を切り抜ける?生半可な同情も、否定も無意味だ。」

「確かにのぅ…」


 ラングが自分の意志で言ったならばともかく、あれは言わされたのだ。後ろに居た者に何か言っても、感情を逆なでするだけで、意味が無い。

 乱闘騒ぎを防ぐには、一度切り離すしかない。騒ぎになれば、修復が不可能な亀裂が走っただろう。

 ジンはあのままなら納得しないから、絶対に言い合い、殴り合いに発展する。幸い、ムウは勘が鋭く、察してくれたが。

 ラングの性格から、板挟みでは潰れる。騒動になれば、最悪学園を出て行くだろう。こちらに引っ張っても、同国人に謝り続けるだろう。


「翼王も優し過ぎて扱いが難しいが、ラングはもっと優し過ぎて壊れそうだ。」

「私を話に出さないで。」

「優しさは、時には自分を苦しめる物じゃからのぅ…」


 後少しで、チームで行うテストが有り、それが終わったら学園祭、そして冬休みになる。テストに合格しなければ、補習と言う名の雑用係りが待っている。

 テスト自体は、問題は無い。個人の実力は既についている。

 学園祭は出し物によって、状況が変わるが、冬休みの課題はチームでやる事になっている。


「課題は普通よね?」

「討伐依頼の数を決めて、実際にやってもらうつもりじゃ」

「良かったわ。あれは嫌だもの。」

「あれは呆れたぞ。」

「…今回の課題は、副校長が決めたんじゃ…惚れ薬………」

「…預言者の魂、返上してもらいましょうか」

「良いな。」

「翼王様、レイピアを下げて下さい!真王様、笑顔が怖いのぅ…」


 ふざけた事を言う校長、翼王のレイピアが首元に突き付けられ、真王の余裕の笑みが恐怖を煽る。


「主よ、自業自得だ。」

「〈才希〉見捨てるでない!」


 溜め息混じりに〈才希〉は主を咎める。校長の悪びれない姿に、もう知らんと諦めた。

 〈才希〉はペンダントを取り出す。金魚が宝石を抱えたデザインのペンダントを。慎重に机に置く。


「ラングのか。あの日か?」

「はい。様子を見ていたら、他生徒が取り上げ、投げ捨てたもので、拾っておきました。」

「ご苦労。」

「頼んで居たの?」


 真王と〈才希〉のやり取りから、あの日の出来事を思い出して、質問を投げかける翼王。長年の付き合いから、既に答えは分かって居るが、聞いておく。


「少し気になってな。ああなるとは、思って居たが、いじめになれば危ないと判断した。〈才希〉ならば、気付かれず、行動出来よう。」

「そうね。〈才希〉ご苦労様。」

「いえ。…その…お怒りでは…」

「無いよ」

「子供の喧嘩よ。」


 2人は気にしていないと、静かに微笑んで〈才希〉を労う。


「ラングの事は、時間に任せるしか無いのぅ…」

「そうだな。一応気にかけておいてくれ。一人で落ち込んで居そうだ。」

「そうね頼むわ。それじゃあ。」


 2人は校長室を出て行った。ペンダントはアヤメが持って行った。

 校長と〈才希〉は、肩の力を抜いて、今後の事を考え始めた…







☆☆☆☆☆


「テストの内容を教えます☆」


 もうすぐテストの時期なので、皆がエリナ先生に質問して、エリナ先生はにっこりと笑いながら答える。


「私の超力作の罠だらけの登山です!☆もちろん魔法が使いこなせ無いと、突破出来ないよ♪魔物も放つよ♪」


 学園の周りは山に囲まれている。その一部をこのクラスが貸切で、ものすごく物騒なテストが一週間行われる。


「これからの授業は、テスト対策の為に自習にします。もちろん困った時には、私に相談してね☆」


 違うチーム同士で、合同で受ける事は不可能だが、訓練で対策を皆で考えるのは良いらしい。


「それじゃあ頑張って☆」


 簡単に説明したエリナ先生は、凄く不気味な笑顔で教室を出て行った。


「どうする?」

「どうって?」


 ジンの視線をアヤメが辿ってみると、ラングに行き着いた。ラングは視線から逃げるように、背中を向ける。

 どうしようかと迷って居ると、〈ミラージュ〉のメンバーが集まって来た。


「ちょっと良いかしら?」

「何~?エミー?」

「合同訓練をしたいのよ。」

「エレミア、理由は?」


 ジンの質問に、少し考えてから答える。


「…〈レジェンド〉の力は皆承知の事だし、私達の知識では、罠の解除なんて不可能だし、強くなるにはあなた達の実戦を見た法が、ヒントになるかと思って。」

「どうかしら?分からないわよ?過大評価かもしれないし。」

「それは無いわよ。とにかく私達は信頼しているわ。」

「まあ~良いけど~」

「そうね。」

「俺も良いぜ!」

「うむ。」

「………うん」


 合同訓練の為に、両チームのランクと実績の情報を交換して、それぞれの役割の再確認を行った。

 クラスの他のチームも入りたがったが、実力に差が有りすぎると皆判断したらしい。







☆☆☆☆☆


 現在ギルドの書庫で、大量の資料を集めて〈レジェンド〉〈ミラージュ〉の一同は格闘している。

 アヤメとツバサはともかく、他のメンバーが山の知識が皆無だった為、あらゆる図鑑と資料を漁っている。

 学園の図書館でも良いのだが、本が膨大な量で埋め尽くされ、アヤメとツバサはともかく、他のメンバーには多過ぎて混乱する為、ギルドに押しかけた。


「これ食える?」

「良く読んで、一口で死ぬわよ。」

「これは何かしら?」

「擦り傷に良く効く薬草~覚えといて~似たような草も有るけど、ここの付け根部分が赤いから見分けられるよ~」

「ありがとう。」

「こんな罠どうやって、見分けるんですか?」

「クリス、良く見るしか無いわよ。エリナ先生の事だから、簡単には分からないかもしれないけど。」

「棒で前を突っつけば~?」

「その手が有ったわ。」

「まあ!ありがとうございます。」


 アヤメとツバサが同じ生徒だと、完全に忘れている一同。

 そうして居ると、周りの冒険者や違うクラスの生徒の話しが聞こえて来た。


(なあ!あれ〈レジェンド〉だろ?)

(ああ。メンバーの4人がSランカーで、学生では異例なチームだ。)

(でも、何で一人Bランカー何だろ?)

(ええ、不思議よねー…)

(ああそう言えば、この間チームから抜けようとしたらしいぜ!)

(あの騒ぎ?)

(そうそう!)

(何であんな奴が、あのチームに居るんだよ!俺と変われよ!)

(決めた時から、二年生になるまで変えられないでしょ!)

(羨ましいー)


 少しは隠そうよと、ツバサは心中で突っ込んだ。一応小声だが、狭い部屋ではまる聞こえで、一同も気にしている。

 と言うよりは、お前達も実力低いだろうがと、言いたい一同。書庫に居る時点で、低ランカーだと分かる。


「あ!この間の校長の課題の薬草だ!」 

「あん?…普通に危険だと書いて有るな…何考えてんだ?」


 ジンの見つけた薬草の欄に、夏休みの課題に出た薬草が有り、呆れた声で呟くラザック。ラザックは普通の時は、イケメンで優しいく、線が細いので、冒険者には見えない。…戦闘狂だが。


「魔法で作った罠も有るんだな。」

「ガナン、それなら魔力探知で見分ける事が出来るわよ。」

「エリナ先生が~そんなに分かりやすく作るかな~?」


 …絶対に見つからないよう、全力で隠すだろう。ダミーまで使って。


「期待しない方が良いわね…」

「アヤメ、ものすごく不安になって来たよ!どうしよう!」

「落ち着いて~りーちゃん」

 

 リーゼは不安になって、アヤメにしがみついた。アヤメは困った顔になって、どうにも出来ず助けを求める。すかさずツバサが落ち着かせる為に、飴をリーゼの口に放り込んだ。


「むごっ!…甘い~幸せ~」

「助かったわ。」


 この日、1日を書庫で過ごした一同は、不安になるたびに叫び、飴を口に放り込まれて、落ち着き、皆疲れた顔をして寮に帰った。

 因みに男性陣は、アヤメやツバサに飴を貰って上機嫌になって、集中力が倍増して知識をみるみる吸収していった。





☆☆☆☆☆


 〈スカイ〉はラングに寄り添い、心配そうに見上げる。自室に戻り、直ぐに座り込んで、頭を抱えこんでしまった。


「主様、どうしたのです?」

「……何で…何であの日断れなかったのかな…僕はあんな事…」

「本当は着いていきたかったのですか?」

「……うん。でも…」


 あの日、ラングがチームから抜けた日、皆を拒んだ日、ラングにも全く疑問が無かった訳ではないが、チームのメンバーを否定する気も無かった。


(お前同国人だな!他国の侵略の疑いが有るんだ。ちょっと来い!)

(これからは、あいつらは敵だ!)

(おそろいのペンダントね!捨てたら?)


 皆から取り上げられそうになって、慌てて隠して、素知らぬ顔をした。アヤメ、ツバサ、ムウには気付かれて、一瞬ドキリとしたが、何も言わなかった。

 隠してからは、何も言われなくて安心していたが、あの日取り上げられ、捨てられた。バレて居たらしい。


「………どうしよう…見つからない。…それに…」


 あの後、メンバーの4人が祖国を救ったくれた。あんなに嫌がらせを受けたのに。当然だと、完遂してのけた。

 直ぐに祖国の皆から代表が詫びと礼を言いに行った位、皆申し訳無い気持ちと恩を感じている。

 でもいまだに、ラングは声が掛けられない。怖いのだ。


「……拒絶されたら、どうしよう…」

「それは無いでしょう。」

「…どうして?」

「アヤメ様とツバサ様は、気付いて居られました。主様の状況も把握して居られました。だから、お二方は怒ったりしません。ムウ様も、話せば分かって下さるでしょう。」

「でも、裏切り者は要らないって…」

「あの時の状況を思い出して下さい。同国人達に囲まれて居ましたよ。主様をかばって、わざと突き放したのでしょう。あのまま、ジン様と言い合いになれば、二度と元に戻らなかったでしょう。それだけ危ない状況だったのです。」

「…囲まれてた?」


 ラングは気付いて居なかったが、ラングも含めて同国人達が見張って居た。

 騒ぎになれば、また争いの種が増え、生徒同士の亀裂は増えていた。手を出せば尚更煽るだけだ。

 あの時、表面上対立して、分かれたのは要らぬ争いを増やさない、最善手だった。むやみに、言葉で説得しても、全く意味は無かった。むしろ、逆効果だ。

 頭に血が上った者に、説得は通用しない。聞きもしないだろう。


「………そうだったんだ」


 〈スカイ〉の説明に、ようやくあの日の2人の行動の意味が分かった。同時に、自分では出来ない程、視野が広く、思慮も深く、落ち着いて居る事に驚いた。


「……でも今日…」

「どうしました?」

「…ギルドで…」


(何であんな奴が…)

(Bランカー…)


 他にも、数々の言葉が脳裏をよぎり、落ち込んでしまうラング。学園でも、数日前から聞こえて来ていた。

 自分でも、釣り合わないと思う。


「あのような事、今から実力をつければ良いのです。少しずつ、近付いて行きましょう?」

「………うん」


 皆は、只本心を言っただけで、悪気は無いからたちが悪い。

 容赦なくラングの心をえぐって行った…

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