試練の洞窟
罠なんてどうやって見つけるんだろう?
ジンが過去を吹っ切って、一週間たった。
ジンはかなり成長して、自信もついて、魔力操作も上手くなった。
ムウも、なにやら目標が出来たらしく、ジンと張り合っている。
ラングは相変わらず、精霊と話をしている。
そうして、皆が強くなって来た時、遂に異変が学園の近くに迫って来た。
「早すぎるのぅ!」
「主、良い機会だ。魂の覚醒はまだ先だろうが、戦いに慣れた方が良い。」
「そうじゃのぅ。エリナ君!」
「分かりました。この依頼を、〈レジェンド〉に渡します。」
「頼んだ。」
☆☆☆☆☆
「試練の洞窟?」
「そうよ♪そこに居るキメラを倒して欲しいの☆」
「何で俺達?」
「実力的にちょうど良いから☆」
(エリナ先生、校長からですか?)
(アヤメちゃん!鋭い!)
(分かりました。)
「どうかした~?」
「受けるわよ。」
~~~~~
依頼 キメラの討伐
場所 試練の洞窟
ランク A
報酬 50万
~~~~~
「………詳細が無いよ」
「良く分からないの♪本来キメラが出る所じゃないから☆」
「師匠、やるんですか?」
「もちろんよ。」
「面倒~」
「良いじゃないツバサ。」
「は~い」
「師匠が行くなら。」
「………頑張る」
「行くのかよ!」
「ジン、これ完遂したらBランカーよ。」
「やります!」
「決定☆」
Bランカーの言葉に、反応したのはジンだけでなく、ラング、ムウも反応した。
アヤメとツバサのランクがどうなるかは分からないけど。
もちろん、ツバサは校長の持ってきた厄介事だと、気付いたが、あえて知らん顔を決め込んだ。
「期限は無いけど、早めにやりましょう。今日は各自準備ね。」
「私は寝る~」
「ツバサはそれが準備だしね…」
依頼の前に寝させないと、依頼の途中でいきなり魔法をぶっ放すのを、3日前に知った一同は文句など言わない。
高威力で無詠唱、広範囲だからものすごく、危ない。魔物よりも…
「俺、大剣磨いてくる!」
「………魔法補助具見てくる」
「クナイを仕入れよう。」
「私は…ツバサの分のも、買い足しに行くわね…」
すでに、自室に行ってしまったツバサの居た場所を見るアヤメに、一同は心の中で応援した。
☆☆☆☆☆
校長室の窓際に有る特等席に、いつも〈カーバンクル〉は座っている。
「主よ、此度の戦大きいやもしれぬ。」
「どう言う事じゃ?」
「前の大戦争に降り立った神は、中級神だったのだ。」
「ふむ。聞いたぞい。上級神は降り立たなかったと。」
「正確には、来る必要が無かったのだよ。」
「意味分からん。」
「あちらの悪魔もキングの位の悪魔は、現れなかった。」
「つまり、本気の争いではないと?」
「違う。魔法師の力が足りなかった。だから、世界に姿を表せなかった。」
「して、此度の戦は?」
「あの2人は、まだ覚醒には至って居ないのだが、片鱗は見せた。私が見た中級神の力ではない。遥かに上だ。」
「なんと!?」
「忙しくなるぞ。預言者よ。」
「うむ。」
☆☆☆☆☆
「アヤメ、ツバサはどうした?」
「まだ起きてこないわ…」
「とうっ!」
ドンッ
「ぐえ!」
「ごめん~寝坊しちゃった~」
朝寮の前で待ち合わせて居たが、なかなか起きないツバサを待っていたら、ジンの上に落ちてきた。
「降りて!おもぶへっ」
「今何て~?」
「ごめんなさい!」
要らぬ一言を言いそうになったジン、その上で跳ねたツバサ。
ようやく、現状を把握したアヤメがツバサを下ろす。
「………外なんだけど」
「何処からですか?」
「遅刻したから、窓から出て、屋根伝いに玄関の前に来て飛び降りた~」
「ツバサ、窓は?」
「じゃーん」
「ピッキング!」
ツバサが取り出した物は、細い針の様な様々な棒。
ピッキングに使うあれだ。
「ジン正確~」
「はあ。試練の洞窟まで、移転魔法で行くわね。」
「行ったことあんの?」
「錬金術の材料は探すの大変なのよ…」
「大変だったね~」
(((うわ!めっちゃ遠い目!)))
「とりあえず行くわよ。」
一同、目の前の景色がいきなり変わり、辺りを見渡す。
~~~~~
試練の洞窟
通称 戻らずの洞窟
沢山の冒険者が挑み、帰って来なかった為に付けられた名前。中は岩が何故だか光っており、明るい。
一階二階までなら、普通に行けるが、罠、魔物が沢山居るため、最奥まで行ける冒険者は数少ない。
~~~~~
「私達も~材料探しだったから二階までだったね~」
「それでも、苦労したわね。」
「学生の行く所じゃなくない!?」
「………怖い」
「気が抜けないな。」
「だからAランク依頼なのよ。」
一同は洞窟に入って、直ぐにスケルトンの群れに出くわした。
「初っぱなから!」
「………これなの?」
「くそ!」
「頑張って!」
「ていっ!」
アヤメが光の矢を飛ばし、ツバサが火球を飛ばした。
どんどん出てくる。
「炎の大蛇」
「………光の刃」
「光散」
ジンの大蛇がうねり、ラングの刃が飛び、ムウの光弾が破裂する。
スケルトンの壁が僅かに開いた。
「行くよ!」
「早く~」
「おう!」
「………あわわ」
「はい!」
まだまだ出てくるスケルトンに、辟易しながら、アヤメの聖なる槍で貫きながら奥に進む。
「のあ!いきなり坂に!」
「地下二階にこのまま行くわよ。」
「降りて直ぐに~休める場所有るよ~」
「分かった!」
坂を駆け下りると、石で囲まれたくぼみが有り、そこに入る一同。
「ハァハァ…きつい!」
「ツバサ、障壁を」
「はいよ~」
入り口にツバサが障壁を作って、小さな休憩所を作る。
「………今気付いたけど、ツバサの魔力上がった?」
「よく気付いたわねラング。」
「精神世界のプログラムを弄った~」
「精神世界の意味が分からん!」
「あれ?まだ教えて無かった~?」
頷いたジン、ラング、ムウにどうやって説明するか悩むツバサ。
~~~~~
よく多重人格に間違われるが違う。
ツバサの場合は、脳の分割化をして、それぞれの役割を果たす人格を、本体が操っている。
本体の指令により動く、アバター(人形)が、現在のツバサ。
本体が面に出るのは、かなり稀。本体は力を蓄え、調節、アバターの管理をしており、魔力の上限も決められる。
アバターは、本体が沢山の作業をしている間に動く、体の維持を担当している。
アバターを作らないと、動けない為、食事、運動、様々な日常生活が送れない。
仮の魂と言った所。
本体は、精神を維持しながら、知識と力を蓄えるのに手一杯。
~~~~~
「ようは、引きこもって居るの~」
「初耳なんだけど。」
「アヤメも知らなかったの!」
「言ってない~」
「何の準備ですか?」
「いろいろ。その時になれば分かるよ~」
「………魔力の上限は、どれだけ?」
「分からないの~解放した事無いから~今も制限しているのは事実~」
…今の魔力で?
「まじ!?」
「嘘言わないよ~」
クスクス笑うツバサに、複雑な心境のアヤメ、驚きの顔のジン、ポカーンとしたラング、なぜだか片膝付いたムウ。
「そろそろ行こうか~魔物が来たよ~」
「んげ!コウモリ!」
「ジャイアントバット、羽に触れたら斬れるわよ。綺麗に。」
またまた大群で現れたジャイアントバットに、遠距離攻撃を開始する一同。
「大蛇の轟き」
「光の雨」
「闇の弾丸」
大蛇が無数に出現して暴れ出し、光の矢が雨となり降り注ぐ。
闇の弾丸が、魔物の動きを阻害する。
アヤメの鎌鼬が飛び、ツバサの水の檻が魔物を閉じ込め、そのまま檻が収縮して魔物を圧殺する。
ようやく目の前が開き、アヤメとツバサが先導して奥に進む。
「この下の階は知らないから、各自気をつけて!」
「了解!」
「………分かった」
「承知。」
「ウルフの群れ発見~」
坂の下に、ウルフの群れが待ち構えている。
アヤメの水砲で、群れを突き放した。
ジン、大剣を叩きつけ、火の大蛇を同時に放つ。
ラングは風魔法で、大蛇を大きくする。
ムウ刀を抜き、近くのウルフを斬り捨てていく。
ツバサの風玉が、ウルフを吹き飛ばした。
「なんとか、なった!」
「気を抜かないで。最初に言うけど、ここからは罠だって有るから。」
「………見抜くには」
「よく見るしかない~」
「分かりました。」
走り出して直ぐに、ジンが落とし穴に落ち、ムウが間一髪で掴み上げる。
落とし穴の下は沢山の、棘がびっしりと有る。骸骨も有る為、冒険者が落ちたんだろう。
少したつと、穴は塞がって、うっすら穴の筋が地面に有る。
「よく見て分かるのか?」
「………無理」
「分からん。」
アヤメとツバサは、普通に避けて走っていくが、ジンは頭上から岩が、ラングは壁から炎が、ムウには矢が飛んできた。
小さなスイッチが有り、踏んだり、触ったら、起動するらしい。
時々アヤメとツバサに罠が発動するが、2人共見もせずかわし、切り抜ける。
「置いてかないで!」
「………何で平気なの?」
「流石です。」
疲労困憊の男3人に、アヤメが叫んだ。
「まだまだ奥が有るから、頑張って。」
「「「え!?」」」
沢山の罠と魔物に、苦労しながら、坂を見つけて下っていく。
地下に行くにつれて、魔物の数や強さ、罠の種類が上がる。
時には魔物の群れの中に放り込まれ、時には棘だらけの屋根が落ちてきて、時には良く分からない液体が飛んでくる。
「死ぬ!」
「………熱!」
「うお!」
罠を見つける暇が無い。
一枚の扉を見つけて、立ち止まる一同は危機感を覚える。
「何か有るよな!」
「良くない物だけどね。」
「………開かないよ?」
「ここ以外には、先に行く手立てが無いのよね。」
「師匠、誰がキメラを見つけ出したのでしょうか?」
走りながら疑問になった事を、ムウは恐る恐る聞いてみた。
こんなに入るのに大変な場所に、キメラが居る事と、それが何故依頼になったのかが分からないジン、ラング、ムウ。
「この洞窟の近くの街が有るから、頻繁に魔物討伐の依頼は有るわよ。時折、魔物が街まで出て行くからね。多分、キメラは目撃者が居るんじゃないかな?」
学園から少し離れて居る為、良く知らないが、実は街では普通に魔物が目撃され、冒険者のおかげでなんとかなって居るらしい。
そして、街が大きい為、街の騎士が定期的に討伐に訪れるらしく、そこまで大事にならなくて済んでいるが、洞窟の地下五階辺りまで騎士が降りた時にキメラを目撃、キメラの力に叶わないと判断して騎士達は洞窟から出て、ギルドに依頼を出した。
それが真実なのだが、一同が知る由もない。
「鍵なら開けようか~?」
「出た!」
ツバサは針を取り出した。
なんだか、ノリノリなのは何故なんだろう…
「開けるしかないよね。」
「了解!最近付けられた鍵みたい~」
現在は地下四階と五階の中間地点で、前に来た騎士達がキメラが出てこないように、時間稼ぎにしかならないが、鍵をかけていったらしい。
三分で開いたが…
「はや!」
「一回やりたかったの~」
「………初めてなの?」
「初めて~♪」
「そのわりには、簡単に開いたわね。」
「ギルドで練習した~」
「何時の間に!?」
「………出来るんだ」
「流石師匠。」
ガチャリと開いた扉は、手前に開き奥に続いている。
「ここからは、休めないわ。突っ切るわよ。大丈夫?」
「頑張る!」
「………多分」
「大丈夫です。」
「どこまで有るか、分からないからね。気を抜かないで。」
一同は奥に進む。
魔物は、数が減り、逆に強くなっている。
罠の危険度もかなり上がった。
「やべー!」
「………ぎゃ!」
「ぬう!」
いきなり、でっかい蜥蜴が現れた。
酸の胃液を飛ばす、かなりすばしっこい厄介な魔物。
とにかく酸を飛ばして、走り回って居るため、近付けない。
「見てないで助けて!」
「無理~デュラハンが居る~」
アヤメとツバサは、もっと厄介なデュラハンに対応している為、助太刀出来ない。
「業火の大蛇」
「風の刃」
「闇の波動」
ジンの放つ大蛇が蜥蜴に迫るが、素早い動きで避け回る。
ラングの強化された刃も避けられ、酸が飛んでくるが、ムウの闇が飲み込んだ。
「アヤメ、時間稼ぎよろしく~」
「分かった。」
ツバサの周りに魔力が集まる。
デュラハンが動くが、アヤメのレイピアが阻む。
デュラハンに物理的攻撃は効かない。
ツバサの溜めた魔力が、一点に集まって放たれた。
デュラハンに光線が迫る。
かつてエレミアの放った光線とは、比べ物にならない速さと、攻撃力で迫る。
デュラハンが闇の空間を眼前に展開するが、難なく貫通してデュラハンを貫いた。
デュラハンの体は光線に焼き尽くされた。
「お待たせ」
「アヤメ!助かる!」
「………早すぎる」
「ムウ~闇で酸を受け続けて~」
「はい!」
ムウの闇が広がり、酸を飲み続ける。
アヤメのレイピアの軌跡が幾重にも重なる。
蜥蜴はバラバラに切り裂かれて、切り口から酸が溢れる。
アヤメは下がり、ムウの闇の膜の内側に非難する。
一瞬の出来事。
ジン、ラング、ムウには、何が起きたか分からなかった。
「行くわよ。」
アヤメの一言で、我に帰った3人は、アヤメとツバサに続く。
いきなり槍、鎌、炎、刃物、酸が一斉に飛んでくるがアヤメとツバサが全て防いだ。
罠もかなり危ない。
狭い場所で、巨大な岩が落ちてきて、ジン、ラング、ムウは肝が冷えた。 ツバサの双剣が粉々にしてしまったが… かなり奥まで突っ走って来たが…
「結構奥に来たよな?」
「行き止まりよ。」
「………何も居ないよ」
「見間違いでしょうか?」
「真下に居るよ~」
「え!?」
おもむろに、ツバサが近くに有った岩を押すと地面が割れた。
「うわ!」
「………ひぃ!」
「ちょっとツバサ!」
「く!」
「大丈夫~」
皆が落ちたのは、坂になっている地面だった。
今まで岩ばかりだったのに、いきなり土の上に落ちて驚いた一同。
立ち上がり、周囲を見渡すと、広い空間にむき出しの土。
そして…
グルルッ
真ん中が獅子、左右にヤギ、背中に羽、尾は蛇の三メートル程あるキメラが居た…
ご感想お待ちしております




