表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/166

それぞれの道それぞれの思い

神獣は健気です

 夏休みの最終日の前日、〈レジェンド〉は魔王城を後にする事になった。


「はい、探してた薬草。」

「ありがとう。魔王、ちゃんと書類は渡しておくわ。」

「頼んだ。元気でね。」

「いつでも来いよ!」

「ウルは戦いたいだけでしょう。」

「アミダの言うとおり!」

「う、うるさい!アミダもネルも同じだろう!」

「分かった~また来るよ~」

「鍛えときなさいね。」


 こんなに、魔物達に受け入れられた人間は初めてだと、魔王は思う。


「リベンジするぜウル!」

「俺もだ!」

「ジン、ムウはもっと筋肉付けろ!」

「………アミダ、また精霊の話しよう」

「そうねラング。楽しみにしてる。」


 一同は別れの言葉を交わして、〈レッドエリア〉を後にした…




☆☆☆☆☆


「魔王城!?」


 エリナ先生は絶叫した。

 当たり前だが…


「あの地に行ったの!?あの魔物の巣窟に!?何してたの!?」

「落ち着いて下さい。」

「薬草取りに~〈レッドエリア〉に行ったの~」

「そうしたら、魔王に会ってさ!」

「………良い魔物ばかりだった」

「勉強になった。」

「あのね~行くのが、問題なの!」


 エリナ先生の説教を聞くこと、約一時間やっと解放された一同は校長室に向かう。


「これが、渡された書類かね?また随分多いのぅ…」

「ちゃんと渡しましたから。」

「うむ、ご苦労様。」


 〈レジェンド〉は用事が済むと、各自の部屋に戻って行った。

 校長は皆が出て行くと、早速封を開けて読み始めた。


~~~~~


 元勇者と神獣へ


 いきなりの事に驚かれたでしょう。

 しかし、長々とした挨拶は省きます。

 事は急を用し、既に世界中に異変が現れています。

 お気づきかと思いますが、突然変異した魔物、狂った魔物に留まらず、人類にまで影響が現れています。

 また、精霊が死ぬと言う、有り得ない筈だった事も確認されました。

 あの伝説に残る、大戦争の特徴に良く似ています。

 あれが、目覚めるとなれば、世界中が混沌と化すでしょう。

 詳しい詳細を纏め、一緒に入れて有りますから、御思案の程をよろしくお願いします。


魔王


~~~~~


「全く、用意が良いのぅ…相変わらず魔王の一族はお人好しじゃ。」

「主よ…わかって居ろう?」

「分かって居るから、神獣使いを探し、集めたんじゃ。」

「思ったより、強者の神獣使いだったな…あの娘達は神の魂を持つ者だ。最近になって確信した。」

「やはりか。ジンは伝説の英雄の魂をラングは精霊の魂を、ムウは伝説の賢者の魂を持った者だろうなぁ…覚醒はまだかのぅ。良く此処まで集まったわ。」

「お主も、預言者の魂の持ち主ぞ。」

「お前さんから、何度も聞いたわい。」

「此度の戦。敗戦は許されん。」 

「伝説の戦の様に、逃げられる事も許されんがのぅ。」


〈アスファラティア大陸攻防戦〉

 伝説に語り継がれる、アスファラティア大陸を巡った戦争。

 一人の魔法師が、悪魔と契約した事で大陸を巡る大戦争となった。

 大半の悪魔は、神と人間、魔王軍の〈連合軍〉により、討伐されたが、上位の悪魔と魔法師は逃がしてしまう。

 今はどこかの空間の間にて、深い眠りについたと言われている。

 その時の特徴が、世界中の生き物が狂い、姿を変え、不死の精霊が死ぬと言う、大惨事となった事だ。

 神、英雄、賢者、精霊王が預言者の元に集まり事を収めたと語り継がれて居る。


「実際は、神の元に集まったのじゃったか?」 

「そうだ。神が人間に従う分けなかろう。我々神獣はその後生まれた、いわば地位が低い者だしな。」

「これまた、大層なことじゃ…」

「人事では無いぞ主。まだ時間は有るが…魔王のおかげで早期発見出来たのはとても大きい。」

「しかし、魂の覚醒を待たねばな…」




☆☆☆☆☆


 寮の自室で、ジンと〈ファング〉は話し合う。


「なあ!俺の特技って何だ?」

「そんな事人に聞くな!」

「獅子じゃん!」

「どうでも良いわ!」

「なんか無い?」

「…努力と前向きさ?」

「なんで疑問系!?」

「いきなり、何が言いたいのだ?」

「いやさ、アヤメは素早さと的確さ、ツバサは策略と絶対の意志、ラングは精霊だろ、ムウは剣技と冷静な所が優れてんじゃん!」

「つまり、自分には無いのかと?」

「そう!」

「無いな。」

「んな!?」

「お前は、努力しかない。だが、今努力をしているか?甘えてないか?」

「うぐ…」

「なら、今から努力せよ。」

「分かった!」

(分かりやすい性格だな…)


 ジンと〈ファング〉は意外と相性が良いらしい。

 ジンは大剣の特訓に集中する事にした…




☆☆☆☆☆


「……ねえ〈スカイ〉」

「何でしょう?」

「……精霊にもいろいろ居るね」

「個性豊かですね。」

「………精霊について教えて」

「良いですよ。」


 ラングは〈スカイ〉から沢山の知識を貰ったが、〈スカイ〉は話が長くなる傾向が有るらしく、理解に時間が掛かった…


「……話長い」

「癖でつい…申し訳有りません」

「……分かった。努力する」


 とにかく、紙に書き込んでいくラングの手元は、紙の束が出来上がりました…




☆☆☆☆☆


 未だに怪我が治りきらない、〈麗牙〉と〈風牙〉に付きっきりで手当てするアヤメとツバサ。

 只今第三グランドを占領している。

 まだ〈麗牙〉は元から丈夫なのでマシだが、〈風牙〉は未だに飛ぶのに苦労している。


「帰りも無理して皆を乗せるから、酷くなるのよ。」

「いや、ここまで怪我した事無くてな…あまり概念が無いのだ…」

「〈麗牙〉はもう大丈夫だよ~自然に治る所まで治った~」


 そこに〈麗牙〉の怪我を見ていたツバサが戻って来た。


「うわ~ここ酷い~」

「あら、まだ隠してたの?」

「いや、大丈夫だから!」

「はい~」

「いだだ!いてーー」


 塗り薬が染みるらしく、懸命に抵抗しているが、アヤメとツバサからは逃げられない。


「まだここにも~」

「嫌だからって隠し過ぎよ!」

「ギャーーーーー!」


 大きな体の〈風牙〉が暴れたら、普通は大惨事になるが、2人に抜け目は無く魔法で拘束されて、身動きが取れない。


「〈麗牙〉は平気だったよ~」 

「あれは作りが違う!」

「はいはい!」

「もう止めてー」

「治らないと~役立たずだよ~」


 ツバサの一言は〈風牙〉に抜群のダメージを与えた。

 いきなり大人しくなる〈風牙〉に、呆れながら薬を塗る2人。

 我慢していたが、涙目だった…




☆☆☆☆☆


「師匠達は今忙しいからな…」

「だから呼んだのか?」


 ムウは学園の近くの山で、〈スピネル〉を呼び出した。


「ああ。聞きたい事が有ってな。魔力の質が安定する方法は無いか?」

「ふむ。あの娘達みたいに、感情のコントロールをすれば、安定する。」

「難しいな…」

「習慣となれば、簡単だがな。先ずは瞑想をする時間を増やしてみろ。」 

「なる程、無心になるとはこの事か…」


 目を瞑り、集中し始めたムウは、あまり集中出来ない事に苛立った。


「いろいろ頭を過ぎる。音がうるさい。無心とは難しいな…」

「まあな。精神を鍛えるには持って来いだがな。」

「やっと、魔王城で訓練して、魔力の色が抜けたのに…」


 あの1ヶ月、魔物達と組み手をし、戦いに集中する事で、恨みの感情が薄れたのか、魔力が透明になった。

 だが、まだ不安定で少しの感情の揺らぎに染まってしまう。

 薄いからまだ良いが、油断したら元に戻ると魔王に注意された。

 師匠達にも聞いたが、とにかく感情に振り回され無い事と言われた。


『常に己を客観的に見よ。激情に悩んだら、とにかく精神を鎮めよ。』


 とアヤメに言われ


『先を見据え、冷静になれ。安心できる物を持つのも手だ。』


 とツバサからアドバイスも貰った。


「安心出来る物…何だろう?」

「刀は?」

「力だな…」

「うむむ…」


 ムウと〈スピネル〉は、とにかく悩み続けた…










★精霊達の思い★


 


 〈ファング〉は思う

 ジンの努力は無駄では無いと

 昔を思い出す…

 まだ人の為に努力した小さな子供を…



 只ひたすらに、人々の求める出来た子供を目指す

 意味が分からなくとも

 皆が喜ぶ姿が好きだから

 遊びも必要無かった

 出来た子供に遊びは似合わないから

 誰にも知られず努力した

 朝から晩まで、本を読み、剣を振り、魔力を感じて居た

 努力は好きだった

 ちゃんと答えてくれるから

 ちゃんと皆が見てくれるから


 おかげで、周りの子供より出来る子供になった

 努力しても友達は出来なかったけど

 周りは友達が出来ないと、悲しんだ

 だから明るく好かれるように努力した

 少し友達が出来た

 友達は絵がうまかった


 周りはその子のようになりなさいと、求めた

 頑張って絵を学んだ


 違う友達は剣技が凄かった

 周りは強くなってと頼んだ

 だから、沢山絵を描き、沢山剣を振った


 違う友達は頭が良かった

 周りは勉強が出来る子供は素晴らしいと力説した

 だから、沢山絵を描き、沢山剣を振り、沢山勉強をした


 大人の求める出来た子供はきりがなかった

 でも努力は怠らなかった


 ある日テストが有った

 皆平均点を取った

 周りは言った、この子は特技が無いと…

 自慢出来る物が無いと…

 周りの大人は興味を失った…

 それでも努力は怠らなかった

 そうすれば、皆見てくれると思ったから


 ある日両親が言った

 つまらない子、平凡で恥ずかしいと…

 期待はずれだったと…


 それからは、両親も俺を出来損ないと呼び嫌がった

 沢山の説教が有った

 沢山の罵声を浴びせられた

 それでも、頑張ったけど、学園に捨てられた

 両親は言った

 何か出来る用になるまで、帰って来るなと…




 〈ファング〉は知っている。

 普通の子に無い才能を…


(早く気付けその努力が才能だ…)




☆☆☆☆☆ 


 〈風牙〉は心配して居た

 昔から優し過ぎる彼女は、傷付きやすいガラス細工の様に儚く、危なっかしい

 そして、ツバサに依存している…




 生まれた時から魔力が多く

 幼い時から聡明で

 周囲はただただ、優秀な作品として見て来た

 あまりに完成された存在

 でも彼女は、それを使い権力を得るなど考えもせず、平穏を求めた

 だが、天才と言う存在に平穏は無い

 出来るから求められ、利用され、恐れられる

 彼女は優し過ぎた

 自分の力で他人が不幸になる事も嫌、求められた手を払いのけるのは抵抗が有った

 板挟みの状況で他人を気に掛ける程に…

 ある日、自分と近い者に出会った

 その者は優しさと厳しさを上手く使いこなせた

 彼女に頼ると安心出来た

 彼女が居るから、無理も出来た

 普通に笑って、泣いて、怒って、暮らせる日々の永遠を信じた


 だがある日、運命を知って嘆き悲しんだ

 片方しか生きられ無い

 自分が死ぬと、友が悲しむ

 友が死ぬのは、自分が嫌

 選択の時が近づいて、友が言った

 あなたならば、任せられる

 嫌だと言った

 全てを求める事は出来ないと言われた

 時には、優しさだけでは駄目だと言われた


 幸いにも、2人で生き延びた

 友が自分のわがままを叶えてくれた

 友の手を血で汚して、自分が何もしなかった事はとても辛かった

 友が作る世界は全てが輝いていた

 だから友と共に歩むと決めた

 天才では無い自分を見てくれる、大切な親友と共に…




 〈風牙〉はずっと見て来た

 自分の無力に腹が立った

 本当の彼女を良く知る自分は、何をしていたのかと…


(お前は間違い無く天才だ…だが結局は一人の人間だ意志も有る、だからこそ自分の足で立ってくれ…)




☆☆☆☆☆ 


 〈麗牙〉はツバサを見ていて辛い

 幼い時から全てを悟り、それを覆していくたびに、傷付く主の姿は、ボロボロで今にも崩れ落ちそうな程傷付いて居る…

 昔から解りすぎる事で壊れそうになり、壊れない為に自分を偽り傷付いて行く…




 膨大な魔力と知力によって、子供の時期の無い人生

 人の示した道を嫌い、我が道を行く性格に、知力が合わさった

 作られた道は答えが決まって居る、とても鋭い彼女には結果が見えすぎた

 退屈な道のりで最初に知ったのは、人は表面しか見ていない事

 ならば偽って、好きにはさせまい

 精神の世界に自分の世界を作り、偽物の自分を用意した

 自分が泣こうが、喚こうが、誰も関知しない世界に安堵した

 その時から本当の彼女を知る者は居なくなった

 アヤメも例外なく

 そうして居たら、感情が消えた

 必要無いから

 しかし、強固な意志と気高い精神だけ残った

 それだけ、自分の道を踏みにじられるのは嫌なのだろう

 彼女は頭の回転が早過ぎた

 上手く使えば利になるが、下手をしたら損をする

 諸刃の剣だ

 幸いにも彼女は上手く使いこなした





 それでも彼女の魂は泣いている

 辛く、悲しい現実に…

 彼女は足掻き苦しんで居る…

(なあ主よ…もう偽らなくても良いのだぞ…やりたい事をやってくれ…)




☆☆☆☆☆ 


 〈スカイ〉はラングをいつも優しく見守って来た

 ラングの優しさと純粋さが好きだから

 過去ラングの周りには、その美点を認めてくれる者が居なかった




 ラングは優しく、穏やかで精霊の気持ちを汲んで代弁して居た

 だが周りは理解しなかった

 否、理解しようともしなかった

 ラングの行動には意味が有る

 しかし、周りには失敗にしか見えない

 魔力も少なく、周りは興味を無くした

 常に独り言を喋って居る気味悪い子供と言われていた

 ラングは精霊と話して居たが、人は自分に理解出来ない事は否定する

 次第に一人ぼっちになっていったが、精霊達は彼の側にずっと居た

 彼の貴重な才能は人々に否定され続けて、彼も言わなくなった

 彼は求めた、理解してくれる存在を…




 〈スカイ〉は微笑みそして思う

(もう認めてくれる仲間が居ます。貴重な才能も有ります。もっと自信を持って下さい…)




☆☆☆☆☆ 


 〈スピネル〉はムウの本心を知っている

 それはとても尊い物だった…

 思いだす、あの頃のムウの独り言を…

 言葉にしなかった、魂の独り言を…

 魂に寄り添う神獣は聞いていた…




 昔から思って居た事

 只一つの反発心、月と言われ、反抗もしなかった少年の思い

 俺は月じゃない

 兄(太陽)が無ければ輝けない月じゃない

 そんな特別な物じゃ無い

 どこにでも有る星

 それが俺だ

 何にも特別な存在でも無い星

 数多に渡り種類のある星

 だからこそ、輝ける

 だからこそ、意味が有る


 ムウと言う名は両親が付けた名ではない

 村の伝統で、名は村長を初めとした、両親以外の大人が、5歳になった時に決める

 その子供に合う名を

 それまでは仮の名で呼ばれるが、名を付けられた時点で消される

 俺の名の意味は、無

 兄の名はユウつまり、有

 兄は沢山の才能を発揮したから

 俺は兄の影で何もしなかったから

 嫌だとは思わなかった

 村人に意味ない子供と言われても

 感情も無かったのかも知れない

 只、何かをして、喜ばせる事、驚かせる事、誉められる事に意味を見いだせなかった


 星は誰かの為に輝くのではない

 只自由に輝くだけだ

 自分の為に


 だからこそ、自分の為に自分が許せなかった

 自分の為に守ると決めたのに守れなかったから

 只のわがままだ

 何の変哲も無い星の…




 〈スピネル〉は思う

 只の星では無いと…

 光り輝く、美しい星だと…

 〈スピネル〉は少年の汚れ無き魂が好きだった

 それを汚した村人に怒りを覚えた程に…


(お前は尊い只一つの星だよ…)

ご感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ