幼い(?)命の精霊
精霊は長寿です
宝石の有る壁に、小さな影が有った。
(また人間が来た…)
小さな影は精霊だった。
宝石みたいに、綺麗に輝く精霊。
白い身体に青い尻尾、爪は赤で、目は透き通ったエメラルドグリーン。
存在自体が宝石のような精霊。
だいたい、30センチ程。
「綺麗な精霊」
「………綺麗」
「美しいわ…」
上からアヤメ、ラング、アミダ。
「おい待った!何で見えんだ?」
「俺も見える。」
「私もだよ。」
「俺も!」
「ネルも!」
精霊が見えない筈の5人が、見えると叫んだ。
「当たり前じゃないか。ぼくは上位精霊。誰でも見える。」
精霊が突然しゃべった。
少しぎこちないが人語で有る。
「喋るぼくが珍しい?当たり前だろ?上位精霊なんだから。」
「上位精霊は誰でも見えるし、喋れると言う事かしら?」
「そうだよ。いざという時に、神の伝令役になるからね。さて、何用かな?」
「秘薬が欲しいの。」
命の精霊に目的を言うアヤメに、命の精霊は怒りを露わにした。
「また!また人間は秘薬を求めて穏やかに暮らしてたぼくを捕まえに来たのか!やらん!絶対やらん!」
「困るわ。大切な人の命が危ないの。」
「知らないよ。人は命を粗末に扱う!命に感謝もしない!自分の為だけに行動して!困ったら他人任せ!」
「あなたが人間が嫌いなのは分かった。だけど、私には関係ないわ。」
「利用したいと?ぼくの意志は関係ないと?随分上から目線だな!」
「あなたが、癇癪起こした子供みたいだからよ。もちろん、意志は尊重するし、利用なんかしない。けど、一方的に嫌われ、理由も聞かず、愚痴まで聞かされても困るわ。」
皆アヤメを止めにかかった。
もう少し、言い方が有るだろうと言ったが、聞き耳を持たない。
「あなたが追われたのは、あなたが気まぐれに助けたからでしょ。あなたを頼ったのは、頼ればくれたから。あなたを追いかけたのは、あなたが面倒になればくれたから。あなたは、自分の意志を貫いた事なんて、一度も無いわ。」
「っ!ぼくが悪いと?全て?」
「違う。やるなら最後まで、責任持ちなさい!人間が嫌いなら、攻撃すればよかった!命の精霊なら、殺すも簡単でしょう?嫌なら、意地でも渡さない。そうすれば人間は追わない。死にたくないから。死の精霊と呼ばれたかもね!」
「う…だって…見捨てられなかった」
「なら、相応の対価を求めれば良い!」
「何もいらない!」
「有るじゃない!平穏が欲しいのでしょう!なら、記憶を対価にすれば良い!」
精霊が目を見開いた。
確かに、それなら誰も知らずに奇跡の一言ですんだ。
上位精霊なら、記憶の操作ぐらい簡単に出来る。
一時の記憶なんて簡単に。
「あなたは、良く考え無かった。どんな生き物も死は怖い。人間じゃなくても、薬を知れば欲しがるわ。」
「そうだね。深く考え無かった。自分の力が誇りだったから、隠したく無かったんだ。」
「それに、死は覆せない。寿命は延ばせ無い。違う?」
「…そうだよ。その場しのぎだよ。」
「それ言った?」
「あ!皆死にたくないから来ただけで、本当の効力は知らなかった…中にはどうしようも無い者も居たのに、嫌だって言って逃げちゃった…」
ようは、考え不足、説明不足によって人間が、不老不死の秘薬だと勘違いした事が大騒動に発展したと言う事だった。
もちろん、精霊が全て悪いのでは無く、双方の誤解が解かれなかっただけだ。
「ぼくも、馬鹿だなぁ。何が上位精霊なんだろう。掟も有るのに…」
「掟?」
「うん。力を際限なく使いのは禁止。知られてまずい事は、事実をもみ消す。契約のもと力を貸すなら、対価を貰うなど…」
おい!
「やってないじゃない…」
「あう。必死に求めるんだもん…」
「あなた幾つ?」
「えっと…千は越えたかな?」
「学びなさいよ…」
「まだ若い方なんだよ!?」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
「本当だよ!他の上位精霊は万を軽く越えてるし!」
精霊はかなりの長寿らしい。
「世代交代して千年だと、まだ分からない事だらけだよ。人間の寿命が短いから、何で長生きしたいか良く分からないよ。」
「つまり、若者なのね…」
「世代交代するんだね」
アヤメと魔王は理解した。
価値観が全く違うから、誤解が誤解を招いて、尚気付かなかったのだと…
「ごめん。勉強になった。理由聞いても良いかな?」
一同は、一から十まで丁寧に説明した。
「魔物を守る人間が居たんだ。引きこもってたから、知らなかった…」
「彼女たちが稀だよ」
「なるほど、悪い人間ばかりじゃないんだね。良いよあげる!」
「良いの?」
あまりに早い方向転換に、驚いた一同は固まった。
「良いよ!ただし、対価を貰うね。」
「何かしら?」
「知識を頂戴!」
「どうやって?」
「精霊は頭の中覗けるんだ!」
「え…ああそう。」
「大丈夫。欲しいのは、今の世界の情報だけだから、それだけ貰う。」
皆承諾し、精霊が魔法陣を発動させると皆頭に違和感を感じた。
少しくすぐったい。
「ありがとう!終わったよ!かなり知らない事が多かったよ。」
「ここに居たら、分からないわよ。」
「ははは…今から作るね!」
精霊が手を前に出すと、精霊の目の前に光が集まる。
周りの宝石から光が集まってくる。
終わった時には、そこには小さな小瓶に薬が入った物が有った。
アヤメの手に収まる。
「それ飲ませて!生命力と魔力が回復するから。」
精霊は周りを見渡す。
皆もつられて見渡した。
「宝石が小さくなった?」
「この薬はね、長い時を掛けて成長する宝石の貯えられた力を凝縮するんだ。とても長い時を掛けて成長する宝石の時間を貰う事になるから、時間を無駄にする人間に渡したく無かったの。」
「そうなの。ありがとう。」
「かなり力使うから…疲れちゃった…寝るね…お休み…」
そう言って、精霊は宝石に囲まれ眠りについた。
皆起こさないように、小声でお礼を言うとその場を去っていった。
絶対にこの事は言わないと、精霊に告げて…
それを聞いた精霊は、小さく笑った…
☆☆☆☆☆
「洞窟から出たら次の日の朝って…」
「長い時間居たのね…」
洞窟に入ったのは朝、今も朝つまり1日洞窟に居たらしい。
「移転魔法を使うわ。」
「それが良いね!眠い!」
「………賛成」
「よろしくお願いします。」
「「「「使えるの!?」」」」
魔王一行は知らなかった為、驚きに思わず叫んだ。
「言った事が有るか、見えるか、場所の詳細を知って居れば飛べるわ。いくわよ!」
少しズレた回答だったが、魔法陣が輝き目の前に魔王城が現れ納得した。
「そういえば、どうやって飲ませるんだ?」
「………眠ってるよね」
「口移しよ。当たり前じゃない。」
当たり前なの?
☆☆☆☆☆
「良く寝た~おはようアヤメ!」
「おはようじゃない!ツバサ、何やったか分かってる?」
「はいはい~寝たら~〈麗牙〉から聞いたよ~」
「はあ…」
全く緊張感の無い、ツバサの第一声に呆れてベッドに倒れ込んで眠り始めたアヤメに、布団を被せて呟く。
「ありがと~お休み~」
☆☆☆☆☆
「良かった!」
「………元気になったね!」
「師匠、心配しました…」
「ごめん。アヤメが倒れたら頭の中の何かが切れちゃって~」
ぶちキレたんですか…
「だからってあれは、止めようね」
魔王も苦笑しながら、嬉しそうだ。
「サンダーバードは~記憶飛んでる~」
「塵も残さず消えました。」
「良かった~!アヤメに怪我させたらああなるから~」
絶対やりません!てか出来ません!
マイペースは絶対崩さないツバサに、皆苦笑しながら笑って居た…
アヤメは脱力して居たが…
「良く知ってたね~秘薬~」
ツバサに秘薬の事は話していない、皆驚き周りを見渡した。
「知識で知ってるの~精霊については、良く知ってるの~」
「流石だね。強いだけじゃ無いって事だね。」
「魔王も知ってたでしょ~?」
「まあ、文献に載ってるし。」
どうやら、頭の作りが他と違うらしい…びっくり玉手箱みたいだ…
「命の精霊は~確か幼いよね~?」
「ええ…千は越えてたけど。」
「精霊は長寿だし~」
何で知ってんだよ!
「皆驚き過ぎ~文献を漁れば身に付くよ~多分~」
「昔から、文献に囲まれてたわねツバサは…しかも、隠れて。」
「知識は武器だよ~」
「いやいや、5歳から読まないから。」
5歳!?
「もう驚き疲れた!」
「………凄い」
「流石師匠です。」
驚き疲れて何も言えない、魔王一行はとりあえず、遠い目になった…
(あれは、演じる為に学んだだけなんだけど…敵を知り己を知れば百戦危うからずだっけ?気の遠い作業だったよ…)
ツバサが周りに、凄いと思われるのには、途方も無い努力と、凄まじい回転力の頭脳、曲げない意志による才能に頼らず、奢らずの精神の賜物。
(自分を偽るのは大変だなぁ…自分の感覚、感情まで偽らなきゃならない。)
彼女は一度たりとも、素顔を晒した事が無い。
自分でさえ、自分が分からなくなる程に。
(それでも、今は爪を研ぎ続けよう。来るべき戦いの為に)
彼女は常に先を見据えている…
☆☆☆☆☆
「〈スピネル〉俺は変わった?」
ムウは魔王城の屋根の上で、〈スピネル〉を呼び出し、唐突に切り出した。
「変わったぞ。良い顔をして居る。」
「そうか。今とても楽しい。生きている実感が有る。」
「良かったな。魔力の色も落ち着いて来た。」
「そういえば、なんかすっきりして居る。魔力に抵抗が無い。」
「主が前を向いて歩けるのは、嬉しい。」
「そうか。いつも側に居たんだったな…」
ムウは過去を振り返った…
☆☆☆☆☆
ムウはいつも、兄の影に居た。
兄の背中を、憧れの目で見ていた。
兄は、とても強く、優しく、明るく、皆の人気者だった。
兄が太陽なら、ムウは月だった。 周りも兄を頼って、ムウは気に掛けなかった。
それが嫌だった訳では無かった。
ある日、突然魔物が村を襲撃した。
珍しい事では無いが、その時に戦える人数が足りなかった。
少し前に、魔物の襲撃を受けて、未だに傷後が収まって居なかった。
父親と兄は、村では唯一戦える存在だった。
だが、予想以上に魔物が強かった。
父親と兄は、深手を負わせたが、魔物にやられた。
暴れ出した魔物は、ムウに迫った。
母が庇い、目の前で息を引き取った。
無力に嘆き、自分を恨んだ。
周りは元気付け、立ち直らせようとあれこれ試した。
ムウは気付いて居た。
周りは兄を求めて居ると。
ムウの状態と、闇の魔力に周りは、ムウを嫌がり、気味悪がり、そのたびに兄の話題や両親の悪口を口にした。
ムウは村人を恨まなかった。
当然だと、自分で思って居た。
何も出来ず、何もせず、立ち直ろうともせず、全てを恨む自分に生きる資格も無いと思い続けて居た。
しかし、ムウは冷静に事を見ていた。
全て失って尚、目を反らすことはしなかった。
ムウは兄には無い、冷静な判断力と、事実を認め、受け入れる強さが有った。
誰も気付かない、静かな才能を…。
☆☆☆☆☆
「あの2人は何故、一目で見抜いた?」
「あの娘達は、全て乗り越え、受け入れ、それを利用し生きてきた、強者だからよ。まあ、そうで無くては、生き残れなかっただけだが。」
「あんなに強い生き物は居ないと思って居た。」
「あの娘達が特別だ。それに、何度も挫折を繰り返し、強くなったのだろう。」
「想像出来ない。」
「確かに、想像出来ないな。」
ムウと〈スピネル〉は、笑いあった…
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