サキュバスとダークリッチ
魔王が可哀想な事に…
一同は洞窟の中の入り口付近で、悪戦苦闘していた。
「どうなってんだ!」
「………魔物多い」
「この!きりがない!」
「私言うことも聞かないね…」
「魔王の役立たず!」
「アヤメ、酷いな…」
「魔王陛下お下がり下さい!」
「あらまあ…矛が振るえないわ…」
「アミダ頑張って!とりゃ!」
とにかく、魔物が多く、更に魔王の言う事も聞かず、悪戦苦闘中。
「強行突破するわ!」
アヤメの周囲に魔力が集まる。
一同下がる。
爆炎が周囲を焼き尽くしたが、一同にも迫る。
「聖なる保護の盾」
ラングの以前より、強固になった盾がギリギリで防いだ。
とりあえず、この辺一帯の魔物は倒せたらしい。
急いで奥に向かう一同。
奥に行くに連れて、魔物の数は減り、変わりに強い魔物が増えた。
アヤメと魔王は言葉の通り、斬って捨てて行く。
ジンとムウは生き逃れ、迫ってくる魔物を確実に仕留める。
ラングは皆の体力や、傷を治していく。
ウル、アミダ、ネルは持ち前の視力、嗅覚、聴覚で敵を察知して伝える。
ウルは持ち前の爪で、アミダは長い尻尾と矛で、ネルは自分と同じ位の大きさのハンマーで戦って居る。
「空気が変わったわね」
「そろそろ、ダークリッチが居る場所に着くよ。」
アヤメ、魔王が奥から漏れてくる魔力に反応した時、突然サキュバスが現れた。
「ダークリッチ様に何用かな?魔王までご苦労様ね♪人間まで連れてくるなんて、頭打った?」
「相変わらずだねアイリ。ダークリッチに聞きたい事が有ってね。」
サキュバス…アイリはダークリッチの側使いで、魔王に対しても敬意は払わない。
サキュバス独特の色気に誘われる様に、ジン、ラング、ウル、ネルはふらふらと近付いて行く。
「あらまあ、素直で良い子ネ!美味しく頂くわ♪」
魔王には効かないらしく、ムウは師匠の事で頭がいっぱいになって居るらしく、無反応。
「いい加減にしろ!」
文字通り、アヤメの雷が、サキュバスと惹きつけられた一同の間に落ちた。
「ぎゃあ!」
「………あわわ」
「ギャンッ!」
「ニャアッ!」
とりあえず正気に戻ったらしく、アヤメに土下座した4人。
「うわあ!人間は短気ネ!男取られて怒るなヨ!」
「アイリ、良く見ろ。怒りの方向性が違うから。」
正座した4人に説教をし始めたアヤメ。
「あんた達何しに来たのかしら?」
「「「「情報収集です!」」」」
「遊んでるんじゃ無いわよ!」
「「「「ごめんなさい…」」」」
アヤメの後ろに鬼が光臨している。
「綺麗な顔して怖いネ♪」
「アイリ、他人ごとじゃないと思うよ…あ、振り向いた。」
「アイリだったかしら?ダークリッチに会わせなさい!斬るわよ!」
「早い!レイピアいつ抜いたの!落ち着いてよー良い男あげるから♪」
「いらん!」
「わあ!魔王止めて!羽放して!痛い痛い!レイピア当たってるヨ~!」
アイリは必死に逃げようとしたが、アヤメの方が遥かに早く、捕まった。
流石に、怖くなったアイリは魔王に救いを求めたが、魔王は苦笑しただけで動かない。
「無理だから。私も一瞬で斬られるから。命は大切だよね。」
「魔王の馬鹿!どっちの味方なのよ!役立たず!」
「なんかさっきも言われたよね…私帰ろうかな?」
「何言っているのかしら?」
「アヤメ、落ち着け!分かった帰らないから!」
魔王の頬に一筋の傷が出来た。
あまりの素早さと強さと凄まじい怒気に、場がアヤメに支配された。
「あたし、掌で弄ぶの専門なのに…」
「アイリ、諦めようか。」
「道案内して貰うわよアイリ。もちろん嘘吐いたり、逆らったら、分かるわよね?」
「あい!分かったから、レイピア下げて下さい!」
結局負けたアイリは、弱々しく羽ばたきながら、案内する。
後ろにピタリと突きつけられたレイピアに怯えながら、健気に道案内する姿に一同は合掌した。
☆☆☆☆☆
あれから30分位歩き続けて、一枚の異様な雰囲気の扉の前に居る。
「ここです…アヤメ様…」
「ありがとう。で、開け方は?」
「流石に、抜け目無いですね…鍵穴に魔力を流して下さい。」
「罠だといけないから、あなたがやりなさい。」
「あい。」
最早、抵抗する気無しのアイリが魔力を流す。
案外、スムーズに開いた扉の向こうから、正体不明の煙りが立ち込める。
「この煙り何かしら?」
「ダークリッチ様が…薬の実験をしています…無害です…」
「行きなさい魔王!」
「私なんだ。そこで私なんだ。」
しぶしぶ進んで行く魔王は、無害だと判断して皆を呼んだ。
一同が部屋に入ると、部屋の奥から声が響いた。
「アイリ…何故連れてきた。と言うより、何故死にかけて居る?」
「申し訳ありません…魔王が用が有るそうです…」
アイリは、緊張から解き放たれた反動で倒れ込んだ。
「ダークリッチ、命の精霊について教えてくれ。」
「今は忙しい。…この薬の実験に付き合うなら…良いが…」
物凄く不気味な、紫色の液体を指差したダークリッチ。
この液体から煙りが出ているらしい…
「いや、危ないからね…」
「ふん!役立たずじゃな…」
「また言われたし…」
「帰れ…忙しいのだ」
魔王の心のHPは0になった。
なんかいじけ始めた。
「帰らないわ。教えなさい。」
「高圧的じゃな…年上に対する礼儀を知らんのか?」
「「「あんたが言うな!」」」
ウル、アミダ、ネルが突っ込んだ。
昔、遥か年上の魔王に実験薬を試そうと強引に押し掛けた、前科が有る…
「うるさいわ!儂は人間は嫌いじゃ!」
「斬るわよ。」
「儂は普通の剣では斬れん!」
ダークリッチは、自ら実験薬を飲み、ゴーストみたいな体になっている。
「だから、透き通ってるの。」
「今更か。小娘の遊びに付き合ってられん!つまらん用事でここまで来るな!」
あ!地雷踏んだ!
ザシュ!
アヤメのレイピアがやすやすと、ダークリッチを切り裂いた。
「斬れるじゃない。血は出ないのね。」
「まさか錬金術か!久しぶりに痛いわいなんか感動じゃな…」
「そうよ。錬金術で作られたレイピアなのよ。」
普通に話始めた2人に、ついて行けない残りの一同。
「で、教えなさい。」
「嫌じゃな…もっとゆっくり楽しもうぞ!どんな風に作った?」
ザシュザシュ!
ダークリッチに、深い傷が二本増えた。
「話位聞いてくれる?」
「ふぉふぉ!痛いの痛いの!久しいのう!太刀筋も美しい!」
アヤメの怒気を気にせず、自らの体の傷を調べ始めたダークリッチ。
(((何こいつ。Mなの?)))
ウル、アミダ、ネルは呆然と心の中で突っ込んだ。
「性格に難が有るんじゃ無くて、狂ってね?」
「………そうだね」
「関わりたくないな。」
ジン、ラング、ムウは引きまくってる。
「話を!聞け!」
「分かった分かった。何だ?」
「命の精霊の居場所が知りたい。」
ようやく本題に入れたが、ダークリッチは難色を示す。
「会えるかは、運次第だ!この洞窟の更に深くに、人間から逃げて住み着いておる!会えても、逃げられる。」
「ここに居たの…」
流石に盲点だったと、魔王は思った。
確かに、闇しかない。
「探しましょう。奥にはどうやって?」
「この扉の近くに細い脇道が有る。そこから行けるぞ。しかし、何故探して居る?」
今までの事を説明した一同。
「あの魔法か!なら秘薬しか手は無いな…しかし使える人間が居るとは!実験に使いたいのう!」
ザンッ!
「腕が落ちた、拾ってくれアイリ。くっつける。」
「はい。ダークリッチ様。」
不思議な色の軟膏を塗ると、綺麗に傷が塞がった。
隅っこに小さくダークリッチ専用と書いてある。
「無駄な時間を使ったわ。急ぎましょう!」
アヤメの一言で、我に帰った一同は部屋を後にする。魔王を引きずって…
☆☆☆☆☆
岩陰に隠れて、人一人がやっと通れる程の細い脇道が有った。
「これは、見逃すわね。」
「とりあえず奥に行こうか!」
「お!やっと復活したな、魔王!」
「傷を広げないでくれないかジン…」
細い道に悪戦苦闘しながら、進む一同はどんどん暗くなる道に不安を感じる。
生き物の気配も無い。
「暗いわね。今までは上の亀裂から光が差し込んでいたのに。」
「亀裂が無いね。いつからかな?確かに隠れて住むなら理想的だね。」
アヤメが掌の上に火の玉を作り、大松の代わりにした。
それでも暗い。
「広い空間に出たわ。」
「真っ暗闇だね。」
暗くて見えないが、かなり広い空間だと思われる。
声が響きわたる。
「ラング、何か感じない?」
精霊に詳しいラングに聞くアヤメ。
「………奥に何か居ると思う」
はっきりとは、分からないと首を振るラング。アミダも分からないらしい。
「奥に進みましょう。」
ジンとラングも掌に火の玉と光の玉を作り、照らし出す。
奥にぽっかりと穴が開いている。
「………あ!精霊が居る。」
「本当ね。」
穴に近くとラングとアミダが、精霊の気配を察知した。
穴に入る一同は幻想的な風景に言葉を失った。
穴の中には、沢山の宝石が光輝いていた。
上に小さな亀裂が有り、僅かな光で幻想的な風景を作り出していた…
☆☆☆☆☆
ある精霊は人々に追いかけまわされた
その精霊の作る秘薬は、どんな病にもどんな傷にも効いたから
最初はただの気まぐれであげた
次は頼み込まれてあげた
その次は追いかけまわされ疲れてしまったからあげた
きりのない、人々の生に対する欲望
精霊は逃げ惑い、森の奥深く、湖の中、火山にまで逃げた
しかし、人々は追い求めた
ある日見つけた洞窟は、心地よい闇に満ち溢れていた
人々には恐怖しか与えない闇
しかし、命は闇から生まれ、闇に帰って行く
精霊は洞窟の奥深くに住み着いた
その精霊は、命の精霊と呼ばれる…
「何か来た…」
密かに精霊がつぶやいた…
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