狂ったサンダーバード
魔王の良い出番が無い!?
真っ暗な部屋の中
思い出すあの頃の光景
『期待している』
『成功しなさい』
『これが必要だ』
『あれをしなさい』
決められた人生に、決められた人格
『まだ駄目だ』
『まだ足りないわ』
努力して努力して、それでも求められ
『期待外れだ』
『私悲しいわ』
努力は認められず、否定された
そして、捨てられた
(今は違う。今は認めてくれる仲間が居る。分かってくれる大切な仲間が)
少年は真っ直ぐだった
ひたすらに努力を続ける程に
それが、一番尊い才能で有り、偉大な精神であった
(決めたんだ!もう人の為で無く、自分の為に沢山努力すると)
少年は眠りに落ちた
☆☆☆☆☆
強くなる。
簡単に言えるが、簡単ではない言葉。
「もう一週間なのに!」
「くそ!掠りもしない!」
「まだまだ!」
一週間頑張って、死に物狂いで特訓して挑み続けるが、掠り傷さえ与えられないジンとムウ。
一週間挑み続けたが、負けまくり、最早勝ちが執念と化したウル。
「強くなるならつべこべ言わない!」
「ほらほら~立って~」
どうにもならなくなり、弟子入りを志願し特訓を受けている。
ラングは、精霊が見える魔物達と色々な情報を交換している。
アミダも見えるらしく、仲が良い。
ネルは皆の世話をしながら、観察し学んでいる。
「世界は過酷だね!」
ネルはその答えに行き着いた。
「休憩しましょう。」
「「「…ああ」」」
「生きてる~?」
「「「…多分」」」
干からびた3人に、ネルが慌てて水を差し出すと、水を全て飲み干さんとばかりに飲み始める3人。
10分程休憩しそろそろ再開するかと立ち上がった時。
「大変だ!皆戦う準備してくれ!」
リザードマンが慌てて飛び込んできた。
「何があった!」
「サンダーバードが現れた!」
「何だと!?」
慌てて準備をし始める魔物達にジンが問いかける。
「サンダーバード?魔物だろ?それがどうしたんだ?」
ここは〈レッドエリア〉に有る魔王城だ何が可笑しいのか分からない。
「最近、魔王様の言うこと聞かない魔物が増えてんだ!サンダーバードは山奥に住む協力な魔物!魔王様でも倒せん!」
「はあ!?どうして?」
「確かに魔王様は魔物の王だが、魔王が一番強い訳じゃ無い!だから、魔王の座を狙う魔物が居るんだ!だけど、魔王になれるのは外交が出来る、知識がある魔物だけだ!」
「サンダーバードは?」
「話にならん。人語が喋れんし、頭悪い!」
「皆が人語を喋れる訳じゃないわ。とにかく戦闘体制を整えて。」
「分かった!」
ウル、アミダの説明からなんとなく分かった、〈レジェンド〉は戦闘体制を整え始めた。
皆で外に出る。
☆☆☆☆☆
バキバキッ
雷を纏った大きな鳥と、魔王が対峙している。
「下がって下さい魔王陛下!」
「駄目だ!様子がおかしい!」
サンダーバードは焦点が合っていない。明らかに理性を失っている。
ガァーー
「魔物の言葉も忘れたか?」
「下がって魔王!良く見て、変な魔力がまとわりついてるわ!」
「アヤメか。確かに妙だな。」
「倒す以外に選択肢は無いわ!」
「倒せるか?」
「私とツバサなら多分ね。」
「2人で行く~周りに居たら邪魔~」
「すまない。皆!下がってくれ!」
魔王と魔物達では無理だと判断した魔王が命じ、皆下がる。
〈レジェンド〉のジン、ラング、ムウは魔王の側に居ることにした。
2人が危険だと、言うなら自分たちでは無理だと判断した。
バチバチッ
「厄介ね…〈風牙〉」
「あれはまずいぞ主!」
「〈麗牙〉お願い~」
「ふむ。狂って居るな。」
神獣が現れ、戦闘体制に入る。ツバサの表情も消えた。
アヤメが爆炎を起こす。
サンダーバードは除けもせず当たったが、効いてない。
〈麗牙〉の牙が迫る。
サンダーバードは放電した。
〈麗牙〉は下がって回避、尾を叩きつける。
サンダーバードはよろめいただけで、直ぐに突っ込んで来る。
「痛感が無いのかな~」
ツバサが双剣で斬り掛かる。
固い。
羽毛が有り得ない程固い。
「羽毛が固い!おかしい!」
「分かったわ!魔法を当てていく!」
サンダーバードの攻撃をかい潜りながら、聖なる矢を放つ。
雷に弾かれる。
「あんなに強かった?雷!」
「いいえ!全てがおかしいわ!」
雷撃が放たれる。
一瞬の隙に双剣を逆手に持ち急降下。
浅く傷ついただけで終わる。
流石に驚いた2人の隙に雷撃が放たれる。
神獣が守ったが倒れた。
「嘘!〈麗牙〉」
「グッ無理だ立てん!」
「〈風牙〉!?」
「うう…」
神獣が耐えられない電力など有り得ない筈だ。
そう考えてしまい隙が出来た。
アヤメにサンダーバードの嘴が迫る。
慌てて回避したが、横腹に当たり吹き飛ばされた。
そのまま動かない。
血溜まりが広がる。
「アヤメ!?」
ツバサの魔力が一気に溢れ出した。
色が赤い。
怒りに染まった魔力。
「貴様!覚悟せよ!」
ツバサの纏う空気が変わった。
怒り狂ったドラゴンでも生易しい程の怒り狂った魔力。
魔力に触れたら灰も残さないだろう。
皆恐怖に知らず知らずに下がる。
「お前は塵も残さず消してやる!」
ツバサが吠えた。
理性が飛んだ筈のサンダーバードまでが下がる。
ツバサが自身の魔力の封印を全て外した。
それだけで大地が抉れ溶ける。
サンダーバードが雷撃を飛ばす。
ツバサは双剣に纏った魔力で弾く。
いきなりツバサが消えた。
否、早すぎて見えない。
サンダーバードの左翼が切り落とされた。
サンダーバード体が炎に包まれる。
白く燃える超高温の炎。
サンダーバードが暴れる。
ツバサは気にせず突っ込んだ。
サンダーバードの背から突っ込み、腹から出る。
サンダーバードの固い羽毛と体を突き破った威力に恐怖する。
あの技は、この間ジンに説明した技。
サンダーバードが悲鳴も出せずに崩れ落ちた。
だが、それでも生ぬるいと切り刻むツバサの相貌は虚無。
その異様さが皆の恐怖を再度呼び覚ました。
サンダーバードの体は細切りにされ、白い炎に焼き尽くされ灰も残らなかった。
最後まで無表情のツバサに誰も声が掛けられない。
「ツバサ…もう…良いわ…」
アヤメが意識を取り戻した。
傷が深い。
腹が抉れている。
皆、顔を背けた。
治癒魔法でも治せないと思ったから。
「アヤメ、待ってて。我が体内に巡る命の魔力」
ツバサが初めて詠唱し始めた。
魔力の色はいつの間にか透明になっていた。
「やめて…ツバサ…それは命を削る!」
アヤメが叫んだ。
皆が驚き止めようとするが、魔力によって近付けない。
「我が命を糧に更なる癒やしを求めん我が命を燃やし友を癒せ」
魔法が発動する。
アヤメの傷は綺麗に塞がった。
本来、治癒魔法でも一回で治せるのは限られる。
表面の傷ならまだしも、筋肉、内臓、骨は何度も何度も、大人数でかけ続けてやっと治せるかもしれない程度。
つまり、今見ている光景は異様だ。
「やめてって言ったのに!」
「ごめん…後は頼んだ…」
ツバサが崩れ落ちた。
☆☆☆☆☆
アヤメはツバサを抱え、部屋に戻り出て来ない。
既に半日籠もったきりで、食事を持って行ったメイドによると、話しかけても反応が無く、食事も取っていないらしい。
「魔王、あの魔法知ってるか?」
「ああ…」
「………言いにくい事?」
「とてもな…」
「頼む。教えてくれ。」
「分かった。」
~~~~~
禁止指定魔法〈生命の治癒〉は、術者の生命力と莫大な魔力を使い、自分を生け贄にして、対象の全ての傷や病を治す。
傷や病を治す時間を、自らの寿命から補うと言った方が分かりやすい。
成功率がかなり低く、知っている者も限られる。
成功しても、術者が死ぬか、良くて廃人となる為禁止された。
元は、奴隷の生命力を使い、国主などの重要人物に使われていた。
~~~~~
「息が有るのが奇跡的だ…」
「そんな」
「………どうしよう」
「師匠」
皆が沈黙し、空気が重苦しい。
「すまない。私達が倒さなければならなかったのに、強いからと任せてしまった。守ってくれたのに、恐怖まで感じてしまった。」
「魔王、俺も怖かった。」
「………強いのは分かってたけど……あの戦い方も魔力も怖かった」
「黙れ!」
ムウは耐えきれず、叫び始めた。
「魔力が怖いだと?戦い方が怖いだと?あの状況で、敵に向かう事の方が怖いだろ!俺の魔力だって闇に染まってる!あの魔力の色は怒り。恨みの闇より怖くない!俺の魔力に怯えなくなったお前らが怖がってどうする!今まで何度救われた!」
ムウの怒りに何も言えない、ジンとラング。
「それに、あの2人の過去の断片は知っているだろう?あの過去が有るのに、乗り越えて魔力の色が透明に…いやむしろ清らかな魔力になったのは、どれだけの努力と苦難だと思うんだ!只自分の無力に恨みがあるだけの、俺の魔力であれだぞ!」
「悪いムウ…そうだった」
「………だけど、ムウの過去もだけじゃ無いよ…」
「っ!言い過ぎた。」
全て聞いて居た魔王が立ち上がった。
「強すぎるとね…頼れないんだよ。」
「魔王?」
「………どういう事?」
「なんだ?」
「力が有るのは、良い事ばかりじゃない。強いから、頼られすぎる。強い者は弱い所を見せられ無い。それだけで周りは混乱するからね。私もその部類に入る。辛くても言えないのは辛い。表面は平気でも、裏で足掻くんだ。」
辛そうに、顔を歪めながら言葉を繋げる魔王。
「皆、本当に仲間だと思うなら、何も言わず、今はそっとしといてやれ。痛みは本人しか分からないからね…」
そう言って魔王は部屋を後にした…
☆☆☆☆☆
危篤状態のツバサを見つめるアヤメは泣いていた。
涙は出ていないが、心の中で泣いていた。
「涙はあの時に枯れたのね…こんな事に泣けたら良いのに…」
『アヤメ!私はね泣けないの!だからねアヤメは泣いてね…泣けるのは凄いんだよ!感情が有るのは羨ましいな!』
「あなたは無いと言ったね…私には有るのかな…」
蒼白な肌になり、息も弱々しく、魔力も不安定。
体温もかなり低い。
「〈風牙〉どうしたら良い?」
‐秘薬ならば或いは…‐
「秘薬?」
‐命の精霊が作る秘薬はどんな病にも効くと聞いた‐
「どこに居るの?」
‐…闇の中だ‐
「闇?」
‐我は知らぬ。魔王ならば或いは…‐
アヤメは立ち上がり、歩き出した…
☆☆☆☆☆
「どうした?もう大丈夫なのか?」
「魔王、命の精霊について教えて」
「…どこで聞いた?」
「神獣に聞いたわ」
「闇の中だ…生きている者には厳しい場所で詳しくは知らない。」
「どこ?」
「落ち着け!」
「………落ち着いて」
「師匠急いでも始まりません。」
魔王に掴み掛かるアヤメを抑える、ジンとラング、ムウ。
「ゲホッ…闇に詳しいダークリッチに聞けば分かるはずだ。私も行こう。」
「助かるわ。」
「俺も行く!」
「………僕も」
「俺も!」
5人はダークリッチが居る、洞窟の地下深くに行く事になった。
話を聞いた、ウル、アミダ、ネルも同行する事になった。
不気味な洞窟…その地下深くに住まうダークリッチは魔王に膝を折らない、古くから生きる魔物で、魔王の相談役だが、性格に難が有り、人間嫌いらしい。
一同は決意を胸にただひたすら進む…
☆☆☆☆☆
とある所に優れたリッチが居た
とてもとても優れたリッチが居た
魔王でさえ知らない事、出来ない事が出来た
魔王に誘われても、頭を下げられても、決して従わなかった
リッチは魔王からダークの名を与えられた
リッチはダークリッチとなった
ダークリッチはいつも洞窟に居る
今も密かに洞窟で実験を行って居る…
ご感想お待ちしております




