夏休みも過酷です
男3人哀れ…
無事に合格した〈レジェンド〉は食堂に集まった。
皆、実家には帰らないと決めたので、夏休みの計画を話し合う事になった。
「明後日から夏休みだぜ!」
「……………嬉しそうだね。」
「当たり前だろラング!」
「「夏休みって何?」」
「「「ええ!?」」」
夏休みの習慣が無いらしい、アヤメとツバサに皆で説明する。
「長い休日だ!」
「………夏は暑いから夏休みが出来たの。……春と冬も有るよ。」
「のんびり過ごすも良し、勉強するのも良し、遊ぶも良しです。」
当たり前の事って説明難しいね…
「じゃあ寝よ~」
「ツバサはいつもでしょう?何しましょう?休日はいつも修行だし…。」
「遊びに行こうぜ!」
「………残念だけど、宿題有るよ…」
「ふむ。薬草の採取か。」
「なんだと!」
見慣れない薬草の名前の数々、怪しい物ばかりなのが気になる。
「あ!良い事思い付いたわ。」
「何だ?」
「〈レッドエリア〉に行きましょう。」
「「「え!?」」」
〈レッドエリア〉は魔物の巣窟の危険な未開拓の地。
沢山、珍しい薬草や、鉱物、宝石が有るため、冒険者は挑みに行くが、半数は戻って来ない。
度胸試しに、どこかの騎士団が入った所、ドラゴンに遭遇。
半死半生で逃げ帰ったらしい。
魔王も居る。
「何故そうなる!?」
「………無理」
「流石師匠、発想も凄すぎます。」
「薬草の採取に、各自の修行、神獣との親睦を深めて、度胸もつく。良い事ばかりじゃないの。」
「………僕神獣居ないよ。……ムウもじゃない?」
「言ってなかった。この間会った。」
「……僕だけ居ないの…」
ラングがしおれていく。
「居るでしょう?」
「…え?」
「呼んでみなさい。」
「…居るの?…出て来て」
ラングの横に、綺麗な青い金魚が現れた。ヒレが羽になっている。尾は長く、ひらひらしている。羽ばたか無くても、浮いていられるらしい。飾りの様だ。
瞳が綺麗な空色で引き込まれそうだ。
「はじめまして、我が主。」
「………はじめまして、名前は?」
「神獣に名前は有りません。」
「……んと、スカイ!」
「〈スカイ〉ですか?気に入りました♪」
「………空色の瞳が綺麗。」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
神獣〈スカイ〉は丁寧にお辞儀する。
「なんか、優雅だ!」
「良い子ね。」
「良かったなラング。」
「…えへへ。くすぐったいよ。」
ラングは〈スカイ〉しか目に入って無いらしい。
戯れて遊び始めたラングに、ジン、アヤメ、ムウはそっとしとく事にした。
「決まりね。」
「結局行くの!」
「何か文句有る?」
「アリマセン!」
夏休みは〈レッドエリア〉に行くことが決定した。
「あれ?ツバサは?」
「もう寝てるわ…随分前から。」
「……………ふみゅふみゅzzZ」
(((か、可愛い!)))
男3人、ツバサの寝顔にノックアウトされ、それに気付いたアヤメに殴られた。
☆☆☆☆☆
夏休み初日。
「神獣に乗って行くけど、ジンとラングの神獣は飛べないよね、ムウの神獣は?」
「飛べます。〈スピネル〉」
〈スピネル〉が姿を表した。
「はじめましてだな。〈スピネル〉だよろしく頼む。」
「鳥だ~ふかふか~」
「ツバサ殿あまり押さないで欲しい…」
「気持ち良い~」
「聞いてないな…」
ツバサは〈スピネル〉の羽毛が気に入ったらしい。
「ツバサの神獣は何だ?」
「〈麗牙〉おいで~」
ツバサの背後に、建物一つ分の大きさのドラゴンが現れた。
白い鱗に金の毛が額から尾にかけて生えている。
瞳も金色で、理知的な光を宿す。
「かっこいい!」
「はじめまして、〈レイガ〉と言う。」
「〈麗牙〉は~乗せる人選ぶから、私とアヤメしか乗れないね~」
「ふむ。乗せる気は無い。摘むか、くわえるなら良し。ただし、落とすかもしれんがな。」
「「「遠慮します!」」」
「〈レイガ〉殿は我と格が違うな。この中で一番格が高い。」
「そうなのか〈スピネル〉。」
〈スピネル〉によると、レイガ>フウガ>その他らしい。
「なら、私は〈麗牙〉に乗せてもらうわ。〈風牙〉は頼めば乗せてくれるわ。機嫌損ね無いでねジン。」
〈麗牙〉の迫力に固まった3人に、話しかけるアヤメ。
「何で俺だけ!?」
「ラングは良い子だから心配無いもの。〈風牙〉よろしく。」
「…分かった。主よ、少しでも腹が立ったら落とすぞ。」
「ラングは落とさないで。ジンは良いけど。」
「………よろしくお願いします。〈フウガ〉さん」
「ふむ。ラングは気に入った。上手くジンだけ落とそう。」
「やめて~落とさないで!」
「ならば、黙れ!」
「はい。ごめんなさい。」
なんとか、〈風牙〉を説得し、各自神獣に乗り込み、〈レッドエリア〉に向かって飛び立った〈レジェンド〉。
飛んでる間、ずっと無言のジンは不気味だった。
☆☆☆☆☆
〈レッドエリア〉に着いた皆は、異様な雰囲気に辺りを見渡した。
「流石に、魔物の気配が多いわね。」
「上空からも~沢山見えたしね~」
目的地の森に着いて直ぐに、神獣から降りて、彼らは姿を消した。
数多くの魔物が飛び交って居る為、危険と判断したが正解だった。
既に上空では、魔物が獲物を求め飛び回って居る。
「とにかく、薬草が有れば鞄に入れて、直ぐに皆の元に戻って。一人になる時は武器から手を離さないでね。」
「わ、分かった!」
「………頑張る」
「了解です。」
ガサリッ
いきなりゴブリンの群れが表れ、皆に群がる。
アヤメとツバサは、素早く離脱。
一気に距離を開ける。
ゴブリンは実力の差に気付き、ジン、ラング、ムウを標的にし、襲いかかって来た。
「げ!このやろう!邪魔だ!」
ジン大剣で叩き斬るが、数が多く対処しきれず、大剣を振り回した。
「この!動けん。」
ムウは刀で斬り捨て始めたが、数に負け刀が動かせず、近くの敵を蹴り飛ばす。
「強固な盾を!」
ラングはひたすら盾で防ぎ続ける。
「あれ、大丈夫かな~?」
「あの位倒せないなら、この先が大変ね…ジン!後ろ!」
「うわ!あぶねえ!紅蓮の大蛇!」
ジンは魔力操作で身に付けた、炎の大蛇を操り、敵を燃やす。
敵が混乱して居る隙にムウが斬り捨てて行く。
「弾けよ爆風!」
ラングが魔力調整を会得した影響でかなり威力の上がった、風玉を投げつけた。
当たると同時に、爆発的な突風により、ゴブリンが飛ばされ、包囲網が解けた。
ジンとムウが確実にゴブリンを葬り去る。
2人から逃れ、ラングに迫るゴブリンは風で真っ二つにされた。
ラングは風の刃なら無詠唱で飛ばせるようになったらしい。
「びっくりした!いきなり囲まれたし、いきなり襲われるし!」
「………魔物だしね」
「流石師匠、反応が早いですね。」
「この位当たり前よ。魔物討伐はいつも気を抜けないわ。」
「抜いた瞬間あの世行き~」
「帰りたい!」
「良いわよ。その代わり、私が相手しましょうか?」
「やっぱり、帰りません!」
ジンは思う。
(アヤメの方が魔物より怖いよ!)
薬草の知識は、アヤメとツバサが持っているから直ぐに見つかる。
だが、貴重な薬草はまだ見つからない。
「もうお昼だよ~」
「そういえば、飯はどうすんだ?」
「現地調達よ。当たり前でしょ。」
「魔物の肉か?」
「そうだよ~食べれないのも居るけどね~臭味が有るけど、慣れれば大丈夫~」
「嫌だ!無理!」
「………それはちょっと」
「流石に抵抗が…」
やはり、魔物の肉には抵抗が有るらしい。
魔物の肉は独特の臭味が有り、冒険者も嫌がる。
保存食を持って来るのが一般的だ。
毒の有る魔物も居る。
保存食を持って来なかった理由は、アヤメとツバサから、保存食に魔物が惹きつけられると言われ、更にあまり長持ちがしなく、かさばる為邪魔と拒否された。
「今更言わないでよ。」
「食べないなら良いよ~死ぬけど~」
結局、食べれる魔物で臭味も多少ましな魔物を探す事になった。
☆☆☆☆☆
「本当に居たんだ…」
〈レジェンド〉の皆の前に現れたのは、黒いマントにランタン、そしてかぼちゃの頭…つまり、あのイタズラ好きで有名な〈ジャック・オ・ランタン〉である。
「レアモンスター発見~ラッキー!狩るよ~!」
「あのかぼちゃ、美味で有名なのよ。ただかなり珍しい魔物なのよね。一度食べたかったのよ。」
「「「食べれるの!?」」」
「倒すと、頭だけ残る、謎の魔物よ。」
「まじかよ…」
「………目が本気」
「流石師匠です。運まで見方だ。」
凄まじい勢いで迫る、アヤメとツバサにジャックは…
「お菓子くれなきゃイタズラするぞ!」
と言いながら、どこから出したのか、鎌を振り上げる。
(((逃げろジャック!無理だ!)))
男3人は流石に可哀想になったので、ジャックに心の中で叫ぶ。
「イタズラ出来るならやってみなさい!」
「遅いよ~てい!」
見事に倒されました。
本当に頭だけ綺麗に残りました。
あの顔のまま…
(((うわー…)))
「食材ゲット!」
「やったね~」
「やっぱり食べるの?」
「………何かまだ光ってるよ…」
「不気味だ…」
「だって肉嫌でしょ~」
「早く煮ましょうか。ジン鍋出しなさい。出掛けに鞄渡したでしょ?」
ジンは鞄の中から、小さめの鍋を取り出した。
すっぽりと、かぼちゃは入った。
魔法で水を出し、魔法で火を起こして煮詰める。
味付け無し、時間も適当、火加減も適当に煮て、適当に切り分け小皿に分ける。
煮ている間にかぼちゃの光は消えた。
「美味しい!」
「ホクホク~」
女子2人は躊躇無く食べる。
男子3人は恐る恐る食べ始めた。
「なんだと!」
「………意外」
「うまい!」
皆美味しく頂きました。
ジャックさん、ありがとう。
イタズラはほどほどにしようね…
ご感想お待ちしております。




