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ご乱心

電源キーに泣かされそうです…

 ジンの報告が入って、すぐ学園の教師は会議室に集まった。

 皆一様に険しい顔をしている。


「カラスはどうなったのじゃ?」

「みな返り討ちです。見慣れない魔法を使ったと報告が入りました。」

「どのような?」

「天地がひっくり返ったような衝撃にたまらず意識を手放したと」

「精神に働きかける攻撃だと思います。外傷、脳に異常が有りません。」

「ふむ。油断ならぬな…トウゴクの情報はほとんど無いからのう。」


 学園の創設当時から有る規則【生徒は学園の元に家族として迎えられる。生徒に手出しした者にはいかなる者でも学園総出で対応せよ。戦闘も許可する。】が有るため、学園の生徒は安全が保証されている。 実際、才有る者を狙う者は後が絶えないが、学園に喧嘩は売らない。

 学園の教師は皆元勇者、かなうはずがない。


「舐められたもんじゃのう。エリナ君アヤメ君の様子は?」

「落ち着きましたが…ずっと上の空です。反応が有りません。」

「…ふむ。クラスは?」

「怒り狂ってます。戦闘準備までしています。抑えるのに人手が必要です。」

「なるほど…」




◇◇◇◇◇


「ずっとあの感じ?」

「ああ…」

「………そっとしておこう」

「一言も喋らない。声かけても無反応。微動だにしない。やばくね?」

「「むしろジンがおかしい」」

「何で?」

「何故普通にしている!」

「………普通過ぎる」 

(俺嘘つけないんだった…)


 教室は殺気だって居る。

 〈ミラージュ〉は無力感に打ちひしがれて居るが…。

 ムウはブチキレ寸前、ラングまでいつもより口調が強い。


(どうしよう?言うべき?いやいや駄目だろ!突っ込んでくぞこいつら。)

「「一応悩んでるのか…」」

(お前たち!俺をどう見てるんだ!)

‐ジンよ…自室に戻れ‐

(何で?)

‐話が有る。ここは落ち着かん‐

(…分かった)

「聞いてるか?ジン!」

「………刀収めてムウ!」

「悪い!寮に戻る!」

「「???」」




◇◇◇◇◇


「久しぶりに見るな」

「うむ。」

「部屋狭く見えるな…」

「うむ…」

「そういえば、名前は?」 

「今更!?…無い」

「そうなの?なら…ファング!」

「適当だな…まあよい。話が有るから呼んだのだが。」

「そうだ!何かあった?」

「校長…と言うより、教師達皆が動き出した。100は居るな…」

「そんなに居たの!?」

「現役を退いた、勇者の集団だ。いつも厳戒態勢で学園を守護しているみたいだ。半数は学園から離れて、諜報活動に専念して居るが…」

「勇者!?」

「皆任期中面倒になって止めた連中だがな…」

「…何か心配になって来た」

「多分直ぐに戦になる。お主も行くか?」

「もちろん!」

「殺し合いの覚悟は有るか?」

「無い!けど助ける覚悟は有る!」

「はぁ…まあよい。どうせ戦力外だ。」

「うっ!」 

「なれば、仲間と共に校長の所に行け」

「分かった!」

「危なくなったら、我を呼べ!我もお主と共に戦おう!」

「ああ!」




◇◇◇◇◇


「ラング!ムウ!」

「「何?」」

「こえーよ…校長室に行くぞ!」

「何故?」

「………意味有る?」

「戦うんだよ!アヤメは?」

「既に校長室に向かった」

「………何か怖かった」

「よし!急ぐぞ!」


◇校長室◇


「来よったか」

「「「……」」」

「どうした?」

「何この惨状?」

「右側を見てみよ…」


 アヤメ様ご乱心中です。


ドカンッ


「わあ!」

「っ!」

「………はわわ!」 


 椅子が木っ端微塵になりました。

 止めようとした教師達の亡骸が転がって居ます。


「勇者が負けてるし…」

「勝てんわい…」

「「………」」

「何の用だ!」

「アヤメ!俺も戦いに参加したい!」

「俺も行く!」

「………僕も!」

「ガキの遊びに付き合ってられん!」


バキッ


「とりあえず落ち着いて!」

「止めるぞ」

「………うん」


 教師10人と生徒3人を犠牲に、ようやく止めることが出来ました。


「ゲホッ…止まったか?」

「流石師匠…」

「………いたた」

「すまない…頭に血が上った…」

「収まって良かったのう…学園が消し飛ぶ所じゃったわい」

「あんた何もしてないから」 


 妙に若い、老人口調の金髪の多分緑の瞳(薄く開いてるから分からん)のおじさんが目の前に居る。


「あんた誰?」

「校長じゃ。見た目が若いから分からんか…これでも87歳じゃ。魔力が多いと、ある日突然老いが遅くなるんじゃ。」

「「「何だと!」」」


 見た目50歳ですけど!?

 証明書まで出された。

 うん!間違いないね!


「校長。いつまでぐだぐだしてるんです?いいかげんにして下さい。」

「レイピアを突き付けるで無い!魔力も仕舞わんか!」


 アヤメのあまりの魔力量に喋れない周りの人間。(ジン、ラング、ムウ)

 と言うよりは殺気が怖い!


「嫌です。玉砕覚悟で国に突撃するなら、骨は拾います。覚えてたら。」

「無理じゃ!〈トウゴク〉は強いんじゃ!既に被害多発「あ゛?」…すいません」


 校長負けてるし!


「校長!って、アヤメちゃん!抑えて!抑えて!」


 エリナ先生がいらっしゃいましたが、ドアを盾にしています。


「エリナ先生!そこは助けよ!」

「無理無理!校長先生より自分の身が大切です☆」

「生徒の見本にならないね!」

「キャハ☆」


ゴンッ


 アヤメは校長室の机を殴る。

 そろそろ、堪忍袋の緒が切れそうだ!


「〈トウゴク〉の強さは知ってます。当たり前です。何故普通の魔法が効かないかも知ってます。」

「何故じゃ?」

「〈トウゴク〉は正確には魔法が効かないんじゃ無く、感じないんです。」

「は?」


 ジンは首を傾げる。

 魔法が効かない事は知らないと、意を決して伝える。


「効かないんですか?」

「魔法の攻撃受けてもピンピンしとるわい。血を流しても、問題無く動くしな。」

「アンデット!?」

「違う。戦いに出す戦闘員には首輪がはめられる。それが、本人の意志に関係なく命令によって体を動かす。戦闘員の感情、意志は首輪が封印する。魔力も首輪が制御するから自分で外すのは無理。」

「何じゃい、魔法師を道具のように使うと言う事かのう?」

「そう。学園に〈トウゴク〉の生徒が少ないのは、国に監視され自由が無いから。ただし、使えないと判断されれれば、自由になれる。」

「アヤメはどうなるんじゃ?」

「私は逃げ出した。ツバサは出来損ないのふりをして、私のサポートをしてくれた。ツバサの監視が無くなって、ツバサが私を監視していた奴を…殺して逃げた…」

「え…」


 ジンは信じられ無かった。

 ツバサは、そんな事しないと思いたかった。

 でも、魔物討伐の時の顔が過ぎる。

 何も写さない、光の無い、冷たい瞳。


「ジン、ラング、ムウ。これが事実よ。私達は血に汚れてる。引き返しなさい。」


 ジンは両隣の2人を見た。

 ラングもムウも唖然として居る。


「一つ質問じゃ。」

「何かしら?」

「何故君達の両親は権力を求めた?道具になる為じゃ有るまい。」

「私達の名字、“白”には意味が有る。“白凰家”の血筋の名字。白凰家は有力な魔法師を国に売る名家。白が付く家の者は、任期が終わると血筋を残す義務が有る。権力が上がれば、任期が終わった後良い暮らしが保証されている。逆に低いと使い捨てになる。」

「つまり、道具として死ぬより、後の暮らしの為に?」

「私達は魔力量が多いと分かってから、引き合わせられた。私達を同じ様に鍛え育て、有る年齢に達したら祭を上げる事になっていた。」

「祭とはなんじゃ?」

「生き神…つまり権力の象徴の飾り物を決めて、古代魔法を植え込む者を選ぶ、人形同士の“殺し合い”よ。」


 この場に居る者全てが息を呑んだ。

 考えたくも無い。


「皮肉な事に白凰家が気付いて、権力が奪われるのを恐れ、私達の家族は殺されたから、無くなったけど。白凰家は私達を試す為引き取った。けどツバサは出来損ないを演じ、私が生き残れる様に計画していたみたい。」


 納得がいった。

 面倒臭がりなのに、アヤメについて行き、時には鋭い観察力を発揮し、魔力探知力はアヤメの上、武力も上、そしてあの瞳。

 全てを知り、全てを覆して行く為の作られた人格。


「ツバサは誰かに決められた道は歩まない。それしかないなら…死を選ぶ。そういう性格なのよ。決められた道は決まった未来しか無く、ツバサはそれを見通せる。」

「だからつまらないと、言ったのかね?自分の為の道を作ると?」

「言ったわ。私は流れに身を任せるタイプだから、分からなかったけど。でも、ツバサの道の方が楽しかった。」

「だから取り返したいと、言うのかね?それは、ちとおかしいぞい。」

「違う。ツバサにはもう諦めて欲しくないだけ。私の為に沢山諦めて来たから。あの子はそんな人生は似合わない!」


 ジンは思い出した。


『君は君のためのつるぎであれ』


 なる程、自分がやって来た事は、他人の作ったつまらない道に、自ら入るような物だった。

 だから忠告した。自分を無くすなと。


「君は君のためのつるぎであれ」 

 ジンは口に出した。

 決意を胸にして。


「俺は、見捨てたくない!他人任せにしたくない!例え、ツバサに聞いてたとしても、嫌だったから!自分の為に戦う!」


 アヤメは目を見開いた。


「何故その言葉を知っている?聞いていたってまさか!?」

「俺の過去は人の道を欲してた楽だから。でもツバサは違うと言った。その言葉に助けられた。ツバサは予知夢でこうなるって知って、俺に言ったんだ!『アヤメを頼む。校長が動くまで動くな』ってさ。少し違うかもしれないけど、そう言ってた。」

「予知夢ね…だからあの日突然、ラングに精霊魔法を教えたんだね…。」

「おい待て。何故俺達に言わない?」

「………仲間はずれ?」 

 

 ムウ、ラングは心配になった。信頼されて無いのかと。


「ちげーよ!ラングに言ったら倒れるし、ムウは問答無用で喧嘩売るからだ!」

「そ、そんな事…有るな。」

「あんのかよ!」

「………倒れそう。ふらふらする」

「だから俺に寄りかかってたのかよ!椅子…は木っ端微塵か、床に座れよ。」


 とりあえず皆落ち着いた。

 ラング、ムウも戦うと決めた。

 揺らがない皆にアヤメは笑った。


 とにかく、まずは作戦会議だ!




◇◇◇◇◇


「なる程のぅ。学生に紛れ込んで監視、そいで拉致したのか…気付かんわけじゃ…」

「ええ…さすがにカラスも学生に気を付けませんから…」 

「監視してたら、ツバサが強い事を知って目標変更と言う事ですね。」


 上から校長、エリナ先生、アヤメだ。


「完全に盲点でした。申し訳有りません。」


 今のはカラス部隊隊長。

 全身真っ黒、顔にサングラス。


(こっちを疑うわ…普通)


 アヤメは内心、校長に文句が言いたくなった。もう少しうまく隠せと。


 現在、会議室にて、教師達、〈レジェンド〉、カラス、学園騎士が集まった。

 150人程居る。あと一匹居るが。


「そろそろ聞いて良いか?」

「どうしたムウ?」

「あの猫みたいな獣は何だ?」

「俺に聞くな。」

 

 ジン、ムウは小声で会話する。

 謎の獣が気になるムウに、言って良いのかこまるジン。


「聞こえとるぞぃ!これはカーバンクル。わしの相棒じゃ!」

「…そろそろ名を付けて欲しいんだが。我が主よ。」

「「しゃべった!」」


 ムウ、ラングが叫ぶ。


「いきなりうるさいガキだ。我は神獣。神の位に有る者。」

「なんじゃ!偉そうに。いつも昼寝ばかりしておろうが。」

「何だと!仕事押し付けるよりマシだ!」


 いや…どっちも一緒だろ。


「カーバンクルは戦えますか?」

「アヤメだったか?戦える。神獣に戦えない奴はいまい。」

「なら戦力ですね。」

「我を使う気か?」

「…斬りますよ?それか刺します。」

 

 アヤメの殺気が凄い。


「我が主より、賢いな…行動力も有る。気に入った!そなたの力になろう!」

「こら、主を差し置いて勝手に「斬りますよ?」…勝手にして下さい。」


 校長ちんまくなった。

 此処に居る全員が、アヤメのご乱心を知って居るので遠い目になった。


「そなたも神獣を連れていよう?」

「隠す必要無いですね。おいで〈風牙〉」


 アヤメの背後に、高さ4~5メートル有るグリフォンが現れる。


「ふむ。久しぶりに呼ばれたな…〈フウガ〉と言う。よろしく頼む。」

「こりゃまたでかいのぅ!」

「…まだ成長途中だが?」

「何と!頼りがいあるのぅ!」

 

 周りはあまりの迫力に固まっている。

 ジンは興奮状態だが。


「ジン。貴方も連れて居るでしょう?」

「ああ、〈ファング〉」


 これまた大きな獅子が現れる。

 風牙より少し小さい。


「皆名前が有るではないか!主!」

「ネーミングセンス無いぞぃ?」

「やめておく、いらん!」


 多分、たまとか、みーちゃんとか、とにかく可愛い名前か、ダサい名前になるだろな…とこの場の皆が思う。


「戦力は十分ね…ふふふ」

「アヤメちゃん怖いわよ…」

「黒い笑顔だ。」

「ムウ、後が怖いぞ。」

「は!しまった。」

「………もう諦めて…聞こえたみたい」

「!!!」

「覚悟しときなさい。」ニコッ


 頑張ってムウ!


「ツバサも神獣を連れていように、何故抵抗しなかったのだ?」

「カーバンクルよ…ボケたか?」


バリッ


 痛そうな三本の傷が校長の頬に出来た。かなり深めで。

 エリナ先生が治癒魔法を使いながら説明する。


「学園が人質にされて居ると思われます、それでだと思います。」

「学園の敷地内のあちこちに魔法陣を確認。急ぎ解除しております。」


 そこに、カラスの伝令役が会議室に報告に来た。


「みたいじゃな。何故気付かなんだ?」

「申し訳有りません。」

「いやいや、わしも悪いよ…。」

「ツバサは気付いてたんでしょうね…」

「何故言わなんだのかのぅ?」 

「対処した所で次から次へと手口が変わります。最悪死人も出るでしょう。ツバサは関係ない被害者を嫌がりますから。」

「魔法陣は新しい物も多く有ります。」

「なる程のぅ。」


 魔法陣の解除の為に、教師達半数と学園騎士が出動する。


「早く乗り込みたい。学園よりツバサの方を優先する。」

「アヤメちゃん待って。ツバサちゃんも嫌がるわよ。」


 エリナ先生ナイス!

 アヤメの動きが止まった。


「ジン、ラング、ムウ!解除に専念します!怪しい人間は斬り捨てて良し!」

「アヤメちゃん!解除は難しいの専門家にまか「私は出来ます」…任せます。」

「俺無理だよ!?」

「「無理です。」」 

「なら、見つかって無い魔法陣が無いか探してきなさい。」

「「「了解!」」」


 1日中学園を、教師、学園騎士、カラス部隊、〈レジェンド〉が走り回る光景に生徒が驚き、混乱したのは言うまでもない…


 〈レジェンド〉のクラスの皆は、魔法陣探しと、怪しい人間探しに加わり、さらに混乱した。


 因みに校長は、見るも無惨に破壊された校長室の修理に頭を抱えていた…

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