問題発生、特訓は過酷
面倒事は避けたいよね
対抗戦前日。
問題が発生した。
「何で?何で皆辞退したんだ?」
「エリナ先生に聞きに行きます。」
「「「「……」」」」
「何か?」
「アヤメ~多分エリナ先生頭抱えて沈没してると思うよ~」
「「「同意」」」
それでも気になると、全員の意見が一致したので、職員室へ。
「見事に沈没してる…」
皆が見たのは、頭抱えて沈没して灰になりそうなエリナ先生だった…
「先生?あのー」
「何かしら?まさか辞退したいとか?またなの?全員?どうして?ああもう!」
「違うよ~理由聞きにきた「そうなの!本当に!?」…はい」
「良かった~何とかなった~♪」
「説明求む!」
「分かったわ…実はね…」
~~~~~
エレミア・ミラ・サウエラン
実は一応、〈ニーファ〉の末端貴族で有り、魔法の名家の彼女に、彼女のチーム〈ミラージュ〉には、サウエランお抱えの護衛スコット家のリーゼ・スコットが居る。
スコット家は〈ニーファ〉で陰で囁かれる、裏の社会の家名。
更に、エレミアの友人、クリスティア・ウォル・ガーデンはニーファの貴族で有り水のガーデン家と言われる名家の次女。
そして、いつ知り合ったか謎の、ラザック・ガーディナは、〈ガイス〉出身の斧使い。戦闘になると人が変わり、冷酷な一面があり、避けられている。
最後に、ガナン・バラードは目立たないがとにかくタフ。拳のみで戦う、暑すぎる男。ラザックによく斧で殴られ、尚ピンピンしている。
皆が思った。
戦いたくない!
~~~~~
「名家と揉めるの嫌、殺されそう、絶対近寄りたくないなど、理由は戦いたくないからよ…。」
ガクリ
「先生生きて~!」
なる程、面倒だ!先生ご苦労様です!
「誰もいなかったら、私のせいになって、皆を無理やり参加させなきゃ行けなくなる所だったの……」
「…辞退は「殺す気?」…しません!」
面倒な事になった。
☆☆☆☆☆
「役割を決めるわ。」
「役割?」
「そう。総当たりなら役割は意味ないけど、チーム戦なら逆に無いと足の引っ張り合いになる。だから決めるの。」
「なる程!どうするんだ!」
「今から模擬戦をして決める。決定事項は私とツバサは補助に回る。」
「何で?」
「貴族相手に~圧勝は駄目でしょ~」
「「「だよね」」」
既にレジェンド専用となりつつある、第三グランドに集まった。
アヤメとツバサは準備が有ると言い、一度寮に戻り、何やら見慣れない物を持ちやってきた。
「エリナ先生にグランドの、破壊の許可取ってきたから、今日は思いっきりやるよ。授業も免除してもらったしね。」
先ほどアヤメがエリナ先生と相談した事は、“今日の授業の免除”“グランドの使用”“その際の被害はエリナ先生持ち”の3つ。契約書も作った。 よほど困ってたらしく、すぐに承諾してくれただけでなく、沢山の魔法薬も用意してくれた。
「今までも凄く、思いっきりやってたよな?まだやんの?」
「もちろん~♪」
ジン、ラング、ムウは青ざめた。
「ジン、大剣貸して!」
「ああ。重いぞ。」
ジンは、最初大剣を持った時の事を思い出し、忠告するが、無用だった。
アヤメは片手で受け取り、鞘から出す。
「アヤメは力が無いから、レイピアにしたんじゃ?」
「そうだよ。手数で勝負するから、刀は疲れるの。同じ片刃の武器ならレイピアの方が向いてるの。」
いやはや。強い人は違う。扱うだけでなく更に上を目指すのか。
ジンは昔の自分の浅はかさにイラついた。人の為武器を選んだ自分に。
(最初から、強く慣れやしない馬鹿な選択をしておいて、ちゃんと向き不向きを理解し強くなった2人に強いことを非難し愚痴るなんて、最低だ!)
‐やっと分かったか‐
(ああ。自分の為に頑張るよ!)
‐ふん!せいぜい足掻け‐
「ジンどうした~?」
「ツバサか。神獣と話してた。」
「そう。アヤメが呼んでるよ~」
「すまん!何だ?」
「考えてる時に悪いけど、手入れはどうしてる?」
「毎晩磨いてるよ?」
「なら、気付いてると思うけど、沢山細かい傷が有るから、直すわ。」
「有ったのか!?」
皆ため息を吐いた。当たり前だ。
「でも、どうやって?金無いよ?」
大剣に20万掛かって、今手持ちがない。これでも学園で買ったから安かった方だ。
普通の値段は100万以上だが、ジンの使って居る大剣は学生が鍛えた物なので、安く売られていた。
もちろん、修理代も安いがさすがに無理がある。
因みに、バイトで貯めてたお金なので、財産だったりする。
「錬金術で魔法の付属と修理を両立するわ。お金はいらないから大丈夫よ。」
魔法の付属は錬金術の類に入り、修理も可能だが、両立は難しい。
特に今回は、大剣自体が安物で不純物が多いから難しい。
錬金術は、チーム内ではアヤメしか出来ない。
つまり、一人でやると言うことになる。
「悪いな…また何か御礼する。」
「良いのに。まあ貰っとく。」
集中し始めたアヤメを見て、皆黙りこむ。
魔法陣が現れアヤメが何かを呟き、大剣に手を添えると、大剣が輝き始めた。
更に何かを刻み込む。
ようやく、魔法陣が消えると、新品みたいな大剣が現れた。
時間にして30分集中し続けたアヤメは、一息つく。
「大剣の不純物を取り除いて、硬化の魔法を付属したから、かなり丈夫になったはずよ。あと、魔法文字で“切る”と刻んだから、切れ味も増したわ。」
「ありがとう!すげーな!」
「錬金術は~本来こんなに早く、沢山の付属や、不純物の除去は出来ないんだよ~アヤメの才能の成せる技~♪」
「へえ。すげーな♪」
アヤメは困った顔をしてるが、悪い気はしないみたいで、少し笑って居る。
たまに、ツバサはアヤメを我が事のように自慢したがるのだ。
「その荷物は何だ?」
いきなりムウが聞いて来た。
「杖だよ~魔法の補助の為の♪後、ナイフ類。」
「杖はラングの槍と合成しようと思ってね。ラング槍貸して。」
ラングは槍を渡し、固唾を飲んで見守る。入会祝の槍だからだ。
「心配しないで。見た目は変えない。柄の部分に杖を置き換えて、魔法の耐久性と魔法の補助の両立をさせるのよ。」
「………良かった。ありがとう。」
また30分位集中し錬金術を使い、槍の性能を上げる。
「槍に強化の魔法を付属したから。めったな事が無ければ、折れることも、刃が欠けることも無いはずよ。」
「………凄い。魔力が練りやすい。……………精霊も気に入ったみたい!」
「良かった。ムウ、刀貸して。」
「あ、ああ。休憩しなくて大丈夫か?」
「平気よ。…一日中やってた事有るから……。心配してくれてありがとう。」
アヤメはムウの刀を見て言う。
「かなり手入れされてるけど、すり減ってるわね。ナイフ類持って来て正確だったわ。」
「ナイフと合成するのか?確かにもう買い替え時だったが…」
「そうよ。この鉄不純物が無いね。良い業物だわ。」
「無名だが、いい物だ。気に入って居たから替えたく無かった。助かる。」
アヤメは少し笑ってから、また30分位集中し、合成していった。
ナイフが二本無くなった。
「強化の魔法付属したから、すり減る事も心配しなくて良いわ。名を付けたら?」
「ふむ。礼を言う。名は考えておこう。」
しばらく休んで、訓練を開始する。
ツバサは鉄扇を構えた。
「初めて見るな!」
「かなり使い勝手良いんだよ~」
軽く振ると地面に亀裂が走った。
「んな!」
「鉄扇には、魔力を通し易く、付属効果が掛かって居て、魔法を纏わせて戦うの。舞うみたいにね!」
「わあ!」
「不可視の盾!」
「ラング助かったが、盾でか過ぎ!」
「………何時もより使いやすいんだ。制御が難しい。少ない魔力でこんなになるなんて………精霊もびっくりしてる。」
「杖の効果ね。今から慣れればいいわ。」
目の前には、五メートル程の高さの聖属性の盾があった。
「何時までもこうしちゃ居られない!」
「俺が行く!」
ムウがツバサに切りかかる。
ツバサは鉄扇を閉じ受ける。
甲高い音と火花が散った。
ツバサはすぐに鉄扇に雷属性を纏わせる。
ムウとっさに下がる。
ツバサは開いた手で水魔法を飛ばし、更に鉄扇に纏った雷を飛ばす。
ラングの盾が寸での所で出現するが、盾が割れる。 ムウその隙に離れるが、アヤメが追撃する。
ジンがツバサに大剣を叩きつける。
ツバサは鉄扇で軌道をそらし、氷の矢を飛ばす。
無詠唱、無動作は超高難易度。
ジンは驚き、避け損ない、肩と足に刺さる。
痛みに屈しそうになるが、後ろに飛び距離を開ける。
ムウ闇魔法を纏う。
アヤメ風の刃を飛ばす。
闇が風を飲みこむ。
アヤメはその隙に聖属性の槍を作り出す。
左手に構え突き出す。
アヤメの魔力にムウの魔力が負け腕に刺さる。
ムウとっさに火弾を放つ。
アヤメ水の盾を作る。
火弾が爆発する。
その隙にムウは相性が悪いと判断。
ジンとラングの方に全力で走る。
ツバサの作り出した土の矢が地面から放たれる。
間一髪ラングの盾が間に合った。
互いに一息つく。
「魔法薬飲んで。本番は休憩は無いわ。傷が出来たらすぐ飲んで。」
「はあはあはあ…わ、分かった。」
「痛っ!容赦ないな…」
「………盾割れちゃった」
「ツバサの魔法だからね。無理もない。付属効果の方はどう?」
「「「完璧」」」
「良かった。」
「ツバサの鉄扇怖いな!」
「本当に舞ってるみたいだった。」
「そうでしょ~独自に改良したんだ~」
「鉄も綺麗に斬れるわよね。」
「「「え!」」」
さすがに3人は冷や汗を流す。
やらなかっただけで、やれば人体など真っ二つと言うことだ。
双剣と効果は変わらないが、見た目にギャップが有る。
双剣は直に戦うスタイルだが、鉄扇は魔法を飛ばすスタイルで来る。
もちろん、何とか近付けても鉄扇で斬られる。
「怖いな…」
「双剣の方が、威力は上よ~鉄扇はバリエーション豊富なの~」
「なる程!」
「そういえば、ラングは全属性使えるの?」
「……無理だよ………雷と水、氷、闇は駄目。聖属性が特に使い易い。風、火、地は普通かな?」
「なる程。補助に適してるわね。聖属性を伸ばして見て、風はいざという時の為に敵を飛ばせるよう練習して。」
「……分かった。2つに集中する。」
「ムウは闇魔法で魔法を無効化、素早さで撹乱をして。」
「分かった。」
役割は、ムウが特攻し撹乱、ジンがその隙に大剣の力業で的確に仕留め、ラングは2人に迫る魔法を盾で防ぐ。たまに、遠距離から攻撃して敵の神経を削る。
アヤメとツバサは、ジン、ムウに加速魔法をかけ続け、たまに援護射撃する。
決まったら直ぐに連携の確認の為、実戦に入る。
「結構良い感じだな!痛――!」
「ふむ。良い感じだ。痛っ」
「……なる程。痛たたっ」
3人共かなりボロボロになっているが、特訓の成果が出て、連携がうまくなって来て、役割の重要性を再確認する。
アヤメとツバサは休憩の後、即訓練に戻ると言い出し、3人は硬直した。
「もう限界だ!明日も有るし止めようぜ!もう夕飯の時間だし!」
「珍しいな。同意見だ。」
「………死んじゃう」
「体力無いね~魔法薬飲んだでしょ~後、明日の事は大丈夫!魔法で傷治すし、疲れは寝れば治るよ~」
「そうよ。まだ夕飯の時間でしょ。後二時間は頑張って。」
現在6時、門限は9時。ギリギリまでやると言うことになる。
朝からぶっ通しで訓練をしているので、3人は疲れ果てて居た。
アヤメとツバサは、少し汗かいたかなと言う程度で息も整って居る。
(((どうなってんの?)))
魔法薬の瓶は20個位転がって居る。エリナ先生が用意した本数は30個。
エリナ先生もとことんやれと、言っていたが、こうなると思って渡した確信犯だったりする。
因みに、魔法薬は各教師から奪って…もとい貰ってかき集めた物だ。
☆☆☆☆☆
『生徒の為なの!協力して!私の死活問題なの!問答無用よ!』
多分…いやきっと、絶対最後が本音だろうが、あまりの必死さと、強引さに皆奪われても取り返しはしなかった。
後で請求書を見たエリナ先生は、卒倒する事になる。
魔法薬は貴重だ、一個一万円する。
更にグランドが、かなり荒れたので業者を呼ぶ事になり、それも上乗せされた。
かなり広いので、それなりの金額になるが、割合する。
責任をアヤメに追求したエリナ先生は、ちゃんと契約書(“その際の被害はエリナ先生持ち”がはっきり書かれている)を作って有ると言われ諦めた。
確かにエリナ先生の文字で名前が書かれている。言い逃れは出来ない。
因みにアヤメは、校長先生にコピーを渡して居る為、抜かりは無い。
『本当に高校生なのかしら…隙が無さ過ぎるわよ…』
と呟いたエリナ先生に、教師全員心の中で同意したのは言うまでもない。
☆☆☆☆☆
結局男子3人はぼろ雑巾の様になり、寮に戻り、夕飯をがっついた後深い眠りについた。
「あのさ~杖良かったの~?」
「良いの。私使わないから。」
皆が眠りについた頃、アヤメとツバサは寮のベランダで話しをしていた。
あの杖は、アヤメが唯一両親から贈られた、最上級の杖。
アヤメの両親は、既に居ない。
ツバサにも居ない。
だからこそ、大事に保管されていた。
「あれは、幼い時に魔力量に気づいた両親が、うまく使ってくれって、渡してきた物だけど…今は必要無いからね。」
「でも初めての、そして最後のプレゼントでしょ~?」
「ラングなら使いこなせるし、埃被るより良いわ。」
「なら、良いけど~びっくりしたよ~」
「あはは。いきなり思いついたから。」
2人はひとしきり笑いあって、ツバサは自室に戻って行った。
「未練はみっともないじゃない…貴方は全てキッパリ諦めたのに…あの頃に戻りたいなんて…バカみたい…それに…」
アヤメは一人呟いた。
まだ、両親が欲にかられず、平和だった頃貰った杖。
あれに何度も助けられた。
だからこそ、友の助けになれば、とても嬉しい。
思わず笑顔になる自分に、少し驚き、そしてまた笑っていた…
(まだ私には感情は残って居る…)
ご感想お待ちしております。




