ムウの魔力※
ムウはいい子です。
今日は一時限目に魔法薬、二時限目に魔法の座学を行い、三時限目、四時限目は続けて魔法陣の勉強を行った。魔法薬はひたすらに薬草を覚え、魔法は基礎の基礎で簡単な一言での詠唱を復習し、魔法陣は細かい図形を二時間かけて写した。
お昼休みが終わって、待ちに待った魔法の実習が始まる。
「皆様お待たせ♪実習ですよ☆ジャージに着替えて、第三グランドに集合です☆」
今日は、初めての魔法の実習。
この学園は〔座学なんてしてもわからんじゃろ。とにかく実戦じゃ。〕という校長の暴走…もとい効率性を考えたカリキュラムになっている。
とにかく、実習が多い。いきなり薬草を選べと難題を突き付けられるほどに。それも、毒草が混じっていたりして、ジンが保健室に運ばれた。幸い痺れる程度だったので助かった。
はたと立ち止まって、くるりと振り向いた笑顔のエリナ先生。
「そうそう!男子共♪女子更衣室には厳重な覗き防止結界が張られてるから、覗いたらまる焦げだぞ♪分かった?」
「エリナ先生怖いです!笑顔がむちゃくちゃ怖いです!」
「一人居たのよ~まる焦げになった人」
「居たのかよ!誰だよ!?」
(言えない!言いたいけど、言えないわ!だって校長先生だもの!)
女子はそそくさと更衣室に向かい、男子は勇者は誰かと噂していた。
◇◇◇◇◇
「ふむ。わしの株が跳ね上がったわい!」「校長先生!書類はまだですか?」
「……zzZ」
「校長先生はかなり絵が下手ですよね…あれを見たら…」
「起きとる起きとる!」
「…おはようございます」
「おまえさんには勝てんわい。腹黒監視局長殿」
「監視局では情報命ですから」
【監視局】とは学園において、沢山の国から来た生徒達を、監視、管理する役職である。いらぬ争い(校内戦争)やいらぬ誤解を無くす為に、各国から派遣された者達。出身国以外情報は一切無い。名前も公表しない。
監視局長はその中から一年毎にランダムで入れ替わる。交代制にする事で、学園の独占を阻止している。
ほとんどが情報戦になるため、情報には目ざとい。
「嫌な役職じゃわい。書類はそこに有るじゃろう?」
「相変わらず貯めすぎですね。埋もれてますし…よいしょ」
「エレミア・ミラ・サウエランは確かに、自分の名前にこだわっておるが、争いはしないよ。無理じゃから」
「そのようですね…ご苦労様です。しかし、油断は禁物です。それでは」
それだけ言い、出て行った現監視局長を見てため息をつく。
(あやつは嫌いじゃ。いつも笑っておるが、裏で何考えておるか…)
◇◇◇◇◇
「エレミア!」
「リーゼ!どうしたのかしら?」
この子はリーゼ・スコット見た目はブラウンの髪に同じ色の目。編み込んだ髪型が特徴ね…。 私もブラウンの髪だけど、少しリーゼの方が明るいわ。私の目は銀だから浮くのよね…。 同じチームよ。
「監視局があなたの時調べているわよ。この間の騒動で目を付けられたみたい」
「っ!あいつが悪いのに?分かったわ。気を付けるわ。礼を言うわ」
この子は私の家が雇った護衛であり、友人。良く助けてくれる。本当は名前で呼び合うのは駄目なんだけど、両親も黙認してくれている。
とにかく言動に注意しなくては。認めたくないけど、我が家はあまり地位が高く無いのだから。
★第三グランド★
「グランドというか、草原かよ!」
「ジンうるさい~」
第三グランドには既に皆集まったのだが、あまりの広さに皆固まっている。見渡す限り広々とした草原である。
「集まったね☆チームで別れて~!早速魔法の打ち合いをするわよ!今回は無属性の魔法を使ってね☆」
魔法には属性があり、火水風地雷氷聖闇が一般的で、古代魔法に時空、特殊魔法が有る。
無属性はただの魔力の塊で属性を含まない、単純な魔力の打ち合い。
「属性使っちゃ駄目よ。さあ始め☆」
それぞれがチーム毎に集まり始める中、レジェンドは揉めていた。
「面倒~」
「ツバサ少しだけ頑張ってよ」
眠そうに、ふらふらし始めるツバサを、苦笑しながら説得するアヤメ。
「…僕無理」
「はあ?ラング!授業だしやってみろよ!大丈夫だって!」
「パス」
「ムウまでかよ!」
やらないと言い始める、ラングとムウにどうにかやる気を引き出そうとするジン。
「俺の魔力は危険」
「あ?意味分かんねー!何がどう…」
その瞬間ムウが魔力を解放する。
ざわりと空気が変わり、軋む。
あまりの恐怖に人は支配されると身動きが取れなくなり、呼吸すらままならない。
ムウはチームの範囲内にしか解放していないから騒ぎにならずに済んだ。
ジン、ラングは身動きが取れず青ざめている。ラングは気絶しそうだ。
闇が皆を死にいざなうように、ムウの周りに広がって行く。
「分かったか?危険なんだ。ただの闇魔法じゃない、“魔力が”闇そのものなんだ!分かったら近づくな!」
魔力は本来、ただ解放するだけなら無属性なのが当たり前だ。
しかしムウの魔力は魔力まで、“闇に染まっている”のだ。これは、本人でもどうにも出来ない現象で、かなり異常な状態。
それを目にして尚、ゆっくり近付いて行くツバサ。ツバサが触れた魔力の色が薄れて、消えていく。
「ムウ~危険じゃないよ。大丈夫。近づいても平気だよ~。落ち着いて~」
「ツバサ…平気なのか?何故?」
「私も平気よ。ジンとラングは慣れないだけよ」
「アヤメも平気なのか…どうして収まった?」
今まで抑えないと止まらなかった魔力が収まって行く。
【還元】
高難易度の魔力操作技術。他の魔法師の魔力を、自分の魔力で抑え、ゆっくりとこぼれ落ちる魔力を持ち主に返す。
魔法を始めて間もない者は、時折魔力の暴走を起こす事があり、自然と落ち着くまで待つか、【還元】を行う事で対応する。
自然に落ち着いても体に過度な負担がかかる為、【還元】を使った方が良いとされるが、使い手が限られる。
ムウは始めての事に驚きながら、少し気分が落ち着いた。そして、今まで自分の魔力に恐れない者に会ったことが無かった為に、嬉しいと感じていた。
(少し嬉しいな…)
不思議に思いつつ、自分の意志で魔力を抑える。直ぐに魔力は収まった。
「あ…ああ。びっびっくりした。なっ何だ今の?死ぬかと思った」
「………精霊が悲しそう」
「今のが俺の魔力だ。いつも抑えているから分からなかったんだろう」
「………なにか有ったんだね。…精霊が悲しそうにしてる…」
「今は言えない」
「悪い俺…おまえが怖い」
パァ―――ン
「いだっ!なんだよツバサ!」
いきなりツバサがジンに平手打ちをし、まだ抑えられないのか、もう一発叩こうかとしたが、アヤメに両手を掴まれ、一度恨めしそうにアヤメを見てから、漸く手から力を抜いた。
そして、ジンに向き直る。
「ムウは怖くない。今まで周りに気を付けて必死に抑えてた!ムウが一番良く分かってるから頑張って抑えてたのに!それを知らずにこわ…」
「もういい」
「い……ムウ?」
「もういい。これが当たり前なんだ。………ありがとう」
そういい残しグランドの端に移動するムウの横顔は、必死に何かに耐えているようだった。
ツバサもアヤメと共にふらりと去っていき、ラングは何かを考えて居た。取り残されたジンは呆然と突っ立って居た。
結局実習はチームがバラバラになり、皆何も言わず、何もしないで終わった…
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