あったの? 新聞部
一枚の紙が、学園を揺るがす。
『新聞部の部長……てかぶっちゃけると部員は1人ですが! 現在部員絶賛募集中のニスがお届けする、気になるあの人のタイプ取材しましたコーナー始まるよ!』
そのままである。
『ファンクラブが有る人が3人も居る……〈レジェンド〉の皆さんから行ってみよーう!』
ノリノリである。
『一番ずっこけそうなジンさんから……はいはい? 興味ない? まあ、行ってみよーう!』
「酷くない!?」
『はい、自己紹介お願いします!』
「スルー!? ジン・ラインブルグ、魔法科二年、生徒会所属、〈ガイス〉出身、武器は大剣、こんな感じで良いか?」
『バッチリです! では質問します! 好みのタイプは?』
「心が強い人、かな?」
『ふーん……有り難う御座いました!』
「だから、酷くない!?」
ジンの扱いは酷いの一言である。
『ああ! 聞き忘れてました。チーム名は誰が? 理由は?』
「俺が。凄いチームになりそうだったからだ」
『なる程、だからこんな名前なんですね! ちょっと恥ずかしい名前です』
「酷い!」
『次、行ってみよーう!』
ぶっちゃけるニス。
ちょっと楽しいかも?
『次は……弟みたいでほっとけない!? ラング君です!』
「……君?」
『気にしない気にしない!』
「……はあ……自己紹介だよね? ……ラング・カウザック、魔法科二年、生徒会所属、〈フラウニア〉出身、武器は槍だけど魔法が主力……こんな感じ?」
『そうそう』
「……何故、頭撫でるの?」
『は!? ついつい。えっと、好みのタイプは?』
「……優しい人」
『うん、優しい人かぁ』
「……頭」
『は!? チーム名に思う所は?』
「……ちょっと痛い名前」
『だよねー! 有り難う御座いました!』
ラングに対しては、なんだか年下の男の子に接するみたいだった。
『はい! 次は……気になっている人多いと思う! 美形でクールなムウさんです! うわ、実物ハンパない』
「何がだ?」
『何でも無いです。……ぽっ』
「面倒だ……進める。ムウ・サラード、魔法科二年、生徒会所属、〈ガイス〉出身、武器は刀」
『珍しいですよね刀』
「そうだな」
『か、会話が……でも、そこが良い! 幸せ! あの、好みのタイプは?』
「恋愛に腑抜ける暇はない」
『がっくり……でも、そこが良い! ファンクラブの事は?』
「あれか……うざいな」
『ガーン! ……チーム名はどう思いますか?』
「あまり名乗りたくない」
『ですよね~』
「もう良いか?」
『はい。有り難う御座いました!』
ニスのタイプが分かっただけである。
まあ、良いか。
『次は……お姉様なアヤメさん』
「実際に後輩にそう呼ばれてますね。はじめまして」
『はじめましてです! まつげ長いな~』
「ちょっと近いですね……」
『ごめんなさい。自己紹介お願いします』
「アヤメ・シラギ、魔法科二年、生徒会所属、〈トウゴク〉出身、武器はレイピアです」
『本当に、学生ですか?』
「学生ですよ」
『笑顔が神々しい! いろいろ醜い私には眩しいです!』
「そんな事ないですよ」
『お優しい! 失礼ですが、好みのタイプは?』
「頼りがいのある方、ですかね?」
『難しいと思いますね……アヤメさん、完璧ですから』
「そうでもないですよ」
『基準が分かりません。ファンクラブに関してはどう思いますか?』
「あまり騒がないで下さいね。周りの方に迷惑ですから」
『配慮も完璧です。チーム名について、どう思いますか?』
「少しおこがましいですね……でも、集まった仲間の実力は保証します」
『フォローも忘れない! 有り難う御座いましたお姉様!』
ニスが暴走している気がする。
お姉様は定着してしまったらしい。
『次は……いつもはほんわか、でも戦いでは頼れるお姉様なツバサさん』
「どうも~」
『今は、ほんわかモードですね! どちらのツバサさんにもファンが多いです。自己紹介お願いします』
「ツバサ・シラハネ、魔法科二年だよ~生徒会所属してる。出身は〈トウゴク〉で、アヤメとは幼なじみだよ~良く似てるって言われる。武器は双剣、時々鉄扇だよ~」
『双剣、重くないですか? 長さも普通の刀ですし』
「慣れてるから気にならないよ~扱うにはコツが必要だけど~」
『難しそうですね。好みのタイプは?』
「う~ん、私より強い人?」
『無理ですね! ファンクラブについてはご存じで?』
「知ってるよ~何故出来たのか謎なんだけどね~」
『見れば分かるような……』
「自分の事は分からないや~そうそう、あまり騒ぎ過ぎないでね~寝れないから」
『そこですか!? チーム名については、どう思いますか?』
「あの時、ジン以外誰も思い付かなかったんだよね~ジンらしいかな~?」
『なる程、有り難う御座いました』
マイペースでまったりと終わった取材であった。
Sランカーより強いって、Sランカーしか居ませんね。
『次、正直疲れたけど、〈ミラージュ〉の皆さんに伺いました! 実は、隠れたファンが居るとの噂が有ります! 最初は、暑苦しい人!』
「おい!」
『省略したいので、〈ミラージュ〉の皆さんは〈レジェンド〉と同級生で、同じく生徒会所属です』
「省略……」
『では、ガナン・バラードさん、聞く必要有るのか分かりませんが、好みのタイプを教えて下さい』
「強い女性だな」
『有り難う御座いました!』
「早!」
聞く事無いらしい。
『はい、次はラザック・ガーディナさんです! 好みのタイプは?』
「興味ねーな」
『短い! 何も無い! 紙が泣く!』
最短記録!
『ああもう! 本当は同チームの――』
「うるさい! 黙れ!」
『出た斧! まさか当たっていたとは!』
「……」
墓穴を掘ったラザックであった。
『次は、リーゼ・スコットさん! 好みのタイプは?』
「お……」
『お?』
「お、お父さん……みたいな人」
『まさかのお父さんっ子!?』
「恥ずかしい!」
『あ! 逃げちゃった……』
どういうお父さんだろうか?
気になる。
『次! クリスティア・ウォル・ガーデンさん! 名前長い! 流石貴族!』
「確かに、長いですよね」
『好みのタイプ、聞いても怒られませんかね? 黒い服の人来ませんよね?』
「大丈夫ですよ。家がそれどころではないですから。そうですね……弟みたいな方ですかね?」
『ふむ。手がかかる方? 可愛い方?』
「どちらも良いですね」
『お、お母さんオーラが!』
分かりやすいですね。
『次! エレミア・ミラ・サウエランさんです! 好みのタイプは?』
「馴れ馴れしいですわね。好みですの? 頼れて気が利く殿方ですわね」
『ありきたりですね……』
「何か言いまして!?」
『いえ。チーム名はエレミアさんがつけられたと聞きましたが』
「そうですわ。良い名前でしょう? 私達にピッタリですわ! 男2人を除いて」
『うわー可哀想』
「何か、言いまして!?」
『いえ、有り難う御座いました』
なんか刺々しい。
『今回はここまで! と言うより、1人では限界です! 楽しんで頂けたでしょうかね? それでは、また機会が有れば』
楽しかったのはニスだと思う。
新聞が発行された学園では、密かな戦いが繰り広げられていた。
簡単に言えば、ファンクラブの会員が慌ただしく走り回っているのである。
新聞部の部員も増えたらしい。
「これ、誰が読むんだ?」
「さあ……」
「……とりあえず渡されたけど」
「興味ないや~」
「ですね」
「でも、暇つぶしには良いかな?」
「そうだね~」
取材を受けた本人達は、昼食後に集まっていた。
全員に渡された新聞を流し読みした後、様々な話題で盛り上がる。
「お父さんっ子だったのね」
「言わないで下さいクリス嬢」
「私も初めて知りましたわ」
「言わないでエレミア……」
「ラザック……誰だ?」
「……聞くなガナン」
〈ミラージュ〉のメンバーは意外と楽しんでいるようだ。
「ラザック、今言っちまえ」
「黙れジン」
「……気になる」
「気にするな……」
「ふむ。言ってみろ」
「ムウお前もか!」
「「「気になる」」」
ジン、ラング、ムウも気になるらしい。
ラザックは逃げようとするが、囲まれていて動けない。
「お父さんってどんな人~?」
「う……寡黙な人」
「強いの?」
「うん。凄腕だよ」
「会った事無いから、ちょっと想像出来ませんね」
「忠義心は折り紙付きよ。あと、気付いたら後ろに居る感じですわね」
逃げる事を諦めたリーゼ。
エレミアに父親を誉められて、嬉しそうな顔をする。
「アヤメさんとツバサさんは、ちょっと条件が厳しいですね」
「そんな事無いわよ」
「そうだよクリス~」
「無理ですわ」
「無理だと思う」
「「何故?」」
何故と聞かれても……ねえ?
慌ただしい外を気にせず、まったりと昼食後を過ごす一同であった。
「ラザック! 誰だ?」
「会長もですか!?」
生徒会室に入って直ぐに、会長とチャカに捕まったラザック。
と言うより、生徒会室の皆が気になっているようで、さり気なく囲んでいる。
風紀委員が部屋の前で待機しているので脱出は不可能である。完璧だ……。
「今そんな暇無いだろ!」
「こんな時だからこそ、息抜きは必要なのだよ!」
「んな馬鹿な!」
「さあ、観念するっす!」
「しねーよ!」
楽しそうで何よりです。
「あ、あのー」
珍しくシディアが声をかける。
「ん?」
「だ、黙って見守るのも、大切だと思いますよ?」
「ふむ」
「そ、その内分かる事だと思いますし」
「それを見てニヤニヤするのも楽しそうだな!」
「か、会長?」
「面白そうっすね!」
「楽しみにしてるよ!」
「見逃さないっすよ!」
助かった……のか?
「助かりました! 多分!」
「い、いえ」
これからは、周りの目を意識せざるを得ないのは決定だけどね。
壁の向こうで風紀委員達がやる気に満ちた目をしている事を、ラザックが知らないのは幸いか……な?
「さて、いきなりで悪いが……この書類の束の整理を手伝ってくれ」
机に積まれた書類の束。
目の高さまである書類の棟が、3つ程積まれている。
その横に、種類毎に分けられた書類が入った箱がいくつか。
見ただけで、ぞっとする。
「おおう……」
「……一年生が犠牲に」
「うむ……」
一年生徒会メンバーが、皆床に転がっている。
早い時間に来て書類と格闘した結果、負けたらしい。
ルクス、ゼファ、シディアは今も格闘している最中である。
副会長は書類を受け取りに職員室に向かったらしい。
まだ増えるのか……。
「見てないで仕事する」
「早く~」
作業に取り掛かるアヤメとツバサ。
その手付きは素晴らしく、次々と種類毎に分けていく。
ちゃんと向きまで揃えられ、丁寧な作業かつスピーディーである。
ささっと分けられる書類を見て、頼もしい援軍の登場に喜び、今まで以上のやる気を見せる生徒会メンバー。
いつの間にか復活した一年生徒会メンバーも参戦する。
生徒会室には、紙の捲れる音とペンを動かす音だけが響いていた。




