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人妖大戦

やっと、出張から帰ってきた。

長いようで短かった。


それでは、どぞー

月移住計画まで残り半年といったある日、散歩に出かけると気になる情報を耳に挟んだ。

最近、妖怪たちがこの近辺から姿を消したらしい。

それまでは、防衛軍が襲撃にきた妖怪たちとドンパチを繰り広げていたが最近その数がめっきり減ったらしい。

防衛軍の人に話を聞くと、


?「我等の力に恐れをなして、ついに諦めたのだろう」


とか言っていたが、どっちかと言うと嵐の前の静けさのようなそんな不気味さを感じる。

思い過ごしならいいんだけど。

永琳は家を空ける日数が次第に増えてきて、一週間空けることなど当たり前になってきていた。

家に帰ってくる日は、仕事の疲れを癒してもらうために能力を最大限発動して労った。

帰ってくるときは、疲れた様子だがまた施設に行くときには完全回復させて送り出す。

それが自分に出来る唯一の事だった。




そして計画実行の日、住民はすでに全員ロケットに乗り込んでいる。 数は10台。

外には防衛用のロボットが数百体配置されている。

理由は簡単、ロケット発射までの時間稼ぎの為だ。

半年前に妖怪の襲撃がぱったりと止んだ。

それは、この大都市を大群でもって殲滅する妖怪たちの企みだった。

それに気付いたのが約一ヶ月前、それから急ピッチで防衛用のロボットを作ったが数はこれだけしか出来なかった。

対して妖怪は、少なくても一万はいるとの事。

防衛用ロボットは決して弱くは無い。

むしろ中級妖怪程度なら楽に倒せる性能を持っている。

しかし、それも数という波の前では無力だ。

高い所から遠くを見ると土埃が上がっている。

妖怪の大群だろう。

それに反応したロボットは次々と土埃に向かって走っていく。


晴「うひゃ~、すごい数の妖怪だな。 ロボット数百体でどこまで持つかな?」


永「晴夜・・・」


後ろを振り返ると永琳が立っていた。

その表情は何か思いつめたような表情だ。


永「晴夜、今からでも遅くは無いわ。 一緒に月へ行きましょう? いくら貴方でもあの数に攻められたら死んでしまうわ!!」


それは、悲痛な叫びだった。

いくら個人で強くとも数はそれを簡単にひっくり返してしまう。

もし、どんな数にも負けない強さがあるならそれは絶対の強さだ。

しかし、人間は弱い。

だから、数で持ってそれを力とするのだ。


晴「永琳、そろそろロケットに戻りな。 発射の準備をするんだ、どうやらロボットは全滅したようだし」


見ると、土埃は徐々にこちらに近づいてきていた。

永琳が驚いた表情をしている。

もう少し時間を稼げると思っていたのだろう。

同時にロケットが一台発射された。 残り9台。


晴「今から俺は時間を稼ぎに行ってくる。 なに、殲滅じゃなくて足止めだ。 戦いようはいくらでもあるさ」


永「無茶よ! 私のロボットですら少しの時間しか稼げなかったのよ? そんな中に行くなんt 「永琳!!」!!?」


永琳の言葉を遮り、近づく。


晴「これを、あげるよ」


渡したのは、弓矢と桜の花びらがモチーフの銀製のペンダントだ。


晴「これは、永琳と俺の絆の証だ」


そして、永琳を強く抱きしめる。


晴「ありがとう、元気でね」


そう言って、空へと飛び立つ。

目指すは妖怪の大群、永琳が何事か叫んでいたがそれを無視して土埃に突っ込んだ。

ロケットが飛び立つ。 あと8台。






「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


妖怪たちが雄たけびを上げながら侵攻してくる。

圧倒的な戦力差、勝てる見込みなど普通に考えて無い。

普通ならば、どうするだろう?

逃げ出すか?

命乞いをするか?

はたまた勇猛果敢に挑むか?

どれをとっても死は確実。

普通ならばそうだろう。 普通ならば。

しかし、星月晴夜は立っていた。

妖怪を目の前にしてなお、威風堂々と立っていた。


晴「悪いけど、こっから先へは通せない。 護りたいものがあるんでね」


不思議と恐くなかった。

これだけの妖怪を相手にしても全然恐怖心が湧いてこなかった。


晴「いくよ、美桜!」


美桜「(うむ!)」


 ―――護神『木花咲耶姫神』!!―――


姿が猫耳白髪の少年に変わる。

今回は最初から本気だ。

と言うか、初めて本気を出すな。

背後には見るものすべてを魅了する巨大な桜の木が出現した。

いきなり現れた巨木に驚き、妖怪の侵攻が止まる。

その間に一台、又一台とロケットが発射された。 残り6台。


晴「さて、どこまで耐えられるかな?」


手を前に突き出し、唱える。


晴「花爆『花びらの爆発(ペトル・エクスプロージョン)』」


背後の桜から無数の花びらが風に乗って、妖怪たちの下へ流れていく。

それは、まさに幻想の世界。

花びら一枚一枚が自由に宙を舞踊る。

そして、そのうちの一片が妖怪の頭へと降りた瞬間、


ドガァァァァァァァァン!!!


と、音を立てて爆発した。

まともに喰らった妖怪は頭が吹っ飛びすでに絶命している。

何が起こったかわからず混乱しているうちに次々と花びらは爆発していく。

この技は神力で創った花びらに魔力を込め、火を操る能力で対象に触れた瞬間着火して爆発すると言う物だ。

単純だがその分威力が高く、多対一ではかなりの力を発揮する。

正直これだけでも足止めには十分だが、せっかくなので技の練習に付き合ってもらうか。


晴「それじゃ、次いくよ。 桜嵐、抜刀!」


刀を構え、突撃する。

妖怪が攻撃範囲に入った・・・


晴「千桜『舞い踊るは桜の如く』」


右から左へ刀を一閃する。

それだけで、胴体が上下に分かれた。

切れ味は抜群、さらに刀を振るう。

妖怪達が襲い掛かってくるが全て避け、一匹一匹斬り刻んでいく。

やっているのは殺し合いにも関わらず、晴夜が戦う様はまるで踊っているかのように一つ一つの動作が美しい。

戦場に似つかわしくない、桜を背景に踊るように戦う姿は見る者を虜にしてしまうだろう。

実際、見惚れている妖怪も少なくない。

相手の懐に潜り込み、切り上げる。 切り上げた勢いのまま跳躍し別の妖怪の頭に刀を突き立てる。

囲まれたら霊力弾をばら撒き、傷ついたら能力ですぐに癒す。

一番最初に放った技も着々と数を減らしていった。

しばらく、戦っているとどうやら次のロケットで最後のようだ。

これくらい時間を稼げば大丈夫だろう。

永琳は無事に月まで行けたかな?

護神状態のまま木だけを消し、誰も居なくなったであろう都市へと戻った。

置いてけぼりがいないか確認するために・・・。





最後のロケットも無事に飛び立ち都市にはもう誰も居なかった。


晴「よし、誰も居ないな。 さ~て、次はどっちの方角に行こうかな?・・・・・ん?」


不意に都市全ての液晶に映像が流れ出した。

映っているのは、あのいけ好かない3人組のリーダーっぽい奴だ。


?「ご苦労だったね、君のおかげで全てのロケットは月へと飛び立つ事が出来た。 感謝してるよ」


明らかに最後の方は棒読みだったのでぜんっぜんありがたくない。


?「さて、多大な働きをしてくれた君に我々からプレゼントがある。 きっと気に入ってくれると思うよ」


あいつらが?俺にプレゼント? 聞いた瞬間悪寒が走った。

なんだか物凄く嫌な予感がする。

そしてその予感は的中し次に発せられた言葉は信じられないものだった。


?「そのプレゼントとは、この都市全体のエネルギーを一箇所に集めて一気に開放するという物だ。 分かりやすく言えばこの都市全体が爆弾のような物だね、それではさよならだ」


そこで映像は終わった。

爆弾なんて生易しい物じゃない。

この都市全体のエネルギーっていったら核爆弾の約10倍になる。

そんなものを一箇所に集めて開放したら、外の妖怪ごと焼け死んでしまう。

クソッ! 最後にとんでもない置き土産を残して行きやがった。


このままだとまずい、どうする?

外の妖怪もこのままじゃ全滅だ。クソッ、間に合うか?

俺は妖怪たちのいる場所へ向けて全速力で飛んだ。


美桜「(待て、どうするつもりじゃ?)」


晴「決まってる、妖怪を見殺しには出来ない」


美桜が驚いているのが分かる。

先ほど普通に殺し合いをしていたが、今は状況が違う。

ちょうど中間地点まで来た時に、後ろで大爆発が起きた。


―――しまった!! 間に合わなかった!!―――


美桜「(安心するのじゃ、晴夜だけは死なせん)」


炎が自分を飲み込む前に水のヴェールが体を包んだ。

美桜が能力を使ったのだろう。

美桜は富士山の噴火を鎮める水の神としての一面もあるため、火はまったく効果が無い。

光と衝撃波が止むと、当たり一面焼け野原だった。

妖怪は一匹として残っていない。

それでも、俺は無傷だった。 正確には護ってもらったのだ。

自分の中にいる神様に・・・


晴「皆・・・死んでしまったのか?」


おそらく、あの爆発を受けて生きている者はいないだろう。

そう思うと、心にぽっかりと穴が開いたような虚無感に襲われた。

今は、何もヤル気がしない。


美桜「(しっかりしろ、とは言わぬ。 じゃが、どこかでしばらく休んだ方がいいじゃろうな。

先ほど爆発から身を護ったせいでかなりの神力を使ったからの。

酷い疲労感に襲われるぞ)」


それなら、しばらくの間眠ろうかな?

次に人がでてくるまでの間、どこかの山にでも潜んでいようかな。

それなりに高い山の開けた場所まで行き、不認の陣を敷く。

誰かが入ってくると感知して起きられるように設定して、

その中に桜の木を一本それなりのサイズ出現させ、それに寄りかかるようにして座る。


美桜「覚悟しておくのじゃぞ?」


技の効果が切れ、容姿も普段の姿になった。

それと同時に、物凄い疲労感に襲われるも一言だけつぶやいた。


晴「お・・・や・・・す・・・・・み・・・・み・・・・・ぉ」


次に目覚めたらいったいどこに行こうかな?

そんな事を考えながら深い眠りについた。













その頃、月では一人の女性が血に染まりながら、泣いていた。

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