天才
タイトル見れば誰が出てくるか、分かりますね?
それでは、どぞー
初めて、戦闘した日から500年くらい経った。
えっ? 話飛びすぎ? だってそうしないと話が進まないんだもん。
まぁ、さらっと説明するよ。
まず、霊力だけどびっくりするぐらい上がった。 例えるなら富士山からキリマンジャロくらいになった。 うん、分かんないね。 とにかく、すごく上がったとだけ。
それと、50年ぐらい前かな? 魔力が自分の体に流れているのを発見した。
どうやら、年月が過ぎたことで自然と分かるくらいの量まで上がったみたいだ。
それからは魔力の修行もしている。
体術も剣術もかなり上達し、そこらの妖怪ならこれだけで捌けるようになった。
あと憑依についてだけど、これはすごかった。
自分の限界を知るために美桜にお願いして全力を出した。
すると、姿は前と同じだが自分の後ろに巨大な桜の木が出現した。
どうやら、余りある神力が具現化した物らしい。
そこらの妖怪は神力に当てられ次々と倒れていった。
うん、これは最後の切り札にしよう。
憑依が解けると疲労感と倦怠感に襲われたが前のように倒れる事は無かった。
体に魂が馴染んだから負担が減ったそうだ。
能力はまず自分の【癒しと浄化を操る程度の能力】だが単純に回復量と速度が上がった。
それから、自分以外の対象にも使えるようになった。
美桜の【桜花を司る程度の能力】は桜を創り出せる本数が飛躍的に伸びた。
今なら、千本桜も楽勝で出来る。
副産物の【火と水を操る程度の能力】だが、これの使い勝手がすごい。
自分の能力と組み合わせる事で、癒しの水だとか浄化の炎とか【癒し】と【浄化】を付加出来るようになった。
日常生活でも大いに役立つ。 飲み水としてはもちろん、癒しを付加する事で回復水としても使えるし浄化の炎で焼けば食中毒にならずに済むようになった。
ついでに、空も自由自在に飛べるまでになったよ。
こんなところかな?
かなり力もついてきたので当初から計画していたぶらり旅を実行に移そうと思う。
晴「かなり力もついてきたし、そろそろここから外に出て自由気ままに旅しようと思うんだけどどうだい、美桜?」
現在美桜は猫の姿で自分の膝の上に乗っている。
美桜「妾は晴夜と一緒ならどこに行こうと構わぬよ」
晴「そっか、それじゃあまずはここら辺一帯を元に戻さなくちゃ」
そう言って、能力を使用する。
陣の範囲全体を浄化する。 すると、巨木は普通の木になり500年前の場所に戻り陣は解除された。
浄化の意味に状態を戻す、とあるのでこんな事も出来るが時間を遡れるわけではなく、あくまであるべき姿に戻す事が出来るだけのようだ。
身支度はとっくに済ませてある。 桜嵐は、紐で肩に掛ける。 美桜を肩に乗せ、いつでも出発できる状態だ。
晴「それじゃ、行こうか」
地を蹴り、まだ見ぬ世界の姿に心を躍らせ歩き出した。
遥か昔だけに、その自然は美しかった。
人の手が一切加えられていないどこまでも続く緑の森、流れる川、澄んだ空気がそこにはあった。
が、その中に一つだけ、明らかに不自然な物が存在していた。
妖怪が存在しているのだから当然人も居るだろうとは思っていたが、これは流石に俺の頭のキャパを超えている。
晴「何でこんな物がこの時代にあるんだ?」
美桜「妾にもわからぬ。 じゃが、面白そうではないか」
そう、今は俺がいた時代よりも遥かずっと昔のはずだ。
しかし、目の前の物は大都市と呼ぶにふさわしい建造物群がそびえ立っている。
周りは壁で囲まれており、おそらく妖怪の侵入を阻止しているのだろう。
しかし、俺の知識の中にある都市とは比べ物にならないくらい、高度な技術が使われている。
どっちかと言うと、ドラ○もんの未来の世界と言ったほうがしっくり来る。
美桜は目をキラキラさせながら、猫から俺の中に戻った。
一人のほうが行動しやすいからだろう。
晴「なんだかよく分からないけれど、とりあえず入ってみるか」
美桜「うむ、早く行くのじゃ!」
美桜は、はしゃぎながら急かしてくる。
その様子に苦笑しながら大都市の中へと入って行った。
中はもっとすごかった。 外から見ただけでは中の様子が伺えなかったために分からなかったが、立ち並んでいる建物はすべてが計算されているかのように無駄が無く、空間を最大限に利用していた。
飲食店ではロボットがウエイターをやっていたり、何も無いところからステータス画面のように半透明のパネルのようなものが現れ、それを使っていわゆるデスクワークをしていた。
中でも、特に驚いたのが地面すれすれを滑空するように移動している乗り物だ。
はっきりいってどういう原理で動いているのか想像がつかない。
俺のいた時代は4本のタイヤが付いていて、燃料を燃やしてタイヤを動かす動力を得ていたが、あれはまったく分からない。
そもそもどうやって浮いているのかすら分からない。
まぁ、分からないことを考えても仕方が無いので今は散策を続けよう。
美桜「(すごいの~、おっ! あれはなんじゃ?)」
美桜は子供のようにはしゃいでいる。
視覚を共有しているので、目に映るものすべてに興味津々のようだ。
そういう俺も近未来の技術に興味津々できょろきょろと視線を彷徨わせていた。
しばらく、散策を続けていたが少し前から視線を感じるようになった。
最初は気のせいかと思ったが、どこに行こうとその視線が無くなることは無かった。
晴「(美桜、気づいているか?)」
美桜「(うむ、どうやらつけられているようじゃな)」
体は人間なのだから大丈夫かと思ったが、どうやら考えが甘かったらしい。
美桜「(どうする? 逃げるかの?)」
全力を出せばこの都市から逃げることなど容易いが、そこまでする必要なんて無いだろ。
晴「(いや、この視線の人物に会ってみたい)」
それに、500年ぶりに他の人と会話できる機会だ。
どんなにいけ好かない奴でも会ってみたいというのが本音だ。
美桜「(ならば、どうにかして引きずり出さなくてはいけないのぅ)」
晴「(それなら考えがあるから大丈夫だ)」
そう言うと、また散策に戻った。
私はいつもどおり書類を上層部に提出して家に帰る途中だった。
今進めている、とある計画の折り返し地点までをまとめ次の段階がどれくらいで終わるかの期日を報告してきた帰りだった。
ふと、一人の少年の姿が目に入った。 年は私と同じくらいに見える。
その少年は珍しいものでも見るかのように首をせしわなく動かして目をキラキラさせながら歩いていた。
普通なら気にも留めなかっただろうが、何故か私はその少年が気になり後を追った。
しばらく後をつけたが少年は、どこか目的地があるのではなくただ散策をしているだけのようだ。
不意に立ち止まり辺りをきょろきょろと見渡す。
――まさか、気づかれた?――
しかし、何事も無かったように歩き出したので私は胸を撫で下ろした。
私は普通の人なら気づかない距離を保って、後をつけていたのだから気づかれることは無いはずだ。
すると、少年はアクセサリーショップに入って行った。
私も後を追い、その店に入り少年からは見えにくいが私からは見えやすい位置に移動した。
それも自然に見えるように。
彼は、ペンダントをひとしきり見てからトイレに入って行った。
流石にトイレについていくことはできないので彼が出てくるまで待つことにする。
しかし、15分経っても出てくる様子が無い。
いくらなんでも遅すぎる。
混んでいるわけでもないのに・・・
ふと、外のほうを見ると先ほどの少年が店を出て行くところだった。
私は驚愕した。
――なぜ? 私は彼がトイレに入ってから片時も意識をそらしてなど無かった――
けれど、彼は外にいる。
疑問は尽きないがこのままでは彼を見失ってしまう。
急いで店を出て彼の姿を探すとちょうど曲がり角に差し掛かっていた。
私も後を追ったがその曲がり角を進むと行き止まりの路地裏だった。
少年の姿はない。
私が困惑していると後ろから声を掛けられた。
晴「君が、俺を見ていたのかい?」
混乱している少女の背中に声を掛けると驚いたように後ろを振り返った。
その姿は、赤と青の配色に何かの星座だろうか?模様をあしらったとても前衛的な服に同じ配色の帽子をかぶっていて、長い銀髪を三つ編みにした自分と同じくらいの年の美少女だった。
驚いた顔は一瞬で、すぐに冷静さを取り戻したのか表情には警戒が見て取れる。
?「あなた、何者なの?」
・・・・・、質問を質問で返してくるなんて始めての経験だがなるほど、あまり気分のいいものじゃないな。
表面上は冷静だが、内心は動揺しているのか? どちらにしろ礼儀が少々なってないな。
だから、少し意地悪な言い回しをした。
晴「人のことを散々つけまわしておいて、人の質問に質問で返してくるような奴の質問なんて答えたくないね」
少し、挑発してみる。
うわ、ここだけ見るとすげぇ嫌な奴だな、俺って。
その言葉にピクリと眉を動かしたが、
永「失礼、そうだったわね。 私は八意永琳、貴方を尾行していたのは私よ」
意外にも素直だった。
晴「よろしい。 さて、俺が何者か、だったか? 俺は種族は人間、名前は星月晴夜だ」
ありのままの事実を言ったんだが、永琳は疑いの視線を向けてきた。
永「外から来たの? でも貴方からはなんの力も感じられない。 外には妖怪がうじゃうじゃいるのよ。 それをどうやって・・・!!?」
そう、俺はここに入る際に霊力を外に漏れないよう、美桜に細工をしてもらった。
今、首につけているペンダントは意思ひとつで霊力以外を完全に隠し、霊力は一般人と同じレベルにまで隠す神具で美桜に作ってもらった。 形はもちろん桜の花だ。
俺も、神力で作ることができるが、まだ花びらしかできない。
霊力の部分だけを開放すると、永琳が驚いたような顔をする。
晴「納得したかな?」
永「え、ええ。 それだけの霊力があれば外の妖怪に襲われても平気ね。 それじゃ、貴方はここに何しに来たの?」
晴「ここには、観光で来たのかな? なんだか面白そうだったんで、つい」
すると、永琳はぽかんと口を開けて固まってしまった。
永「クスッ、アハハハハ!」
と思ったらいきなり笑われてしまった。
何かおかしなことでも言ったかな?
永「貴方面白いわね。 見たところ害は無さそうだし・・・ねぇ、これからどうするの?」
晴「そうだな、もうしばらくここを散策したら別の場所にでも行こうかな?」
別にここで生活するわけではないから見るものを見たら旅の続きをするつもりだった。 できることなら生活してみたかったが無いものねだりをしても仕方ない。
それに、久しぶりに人と会話できてそれなりに楽しかった。
永「ということは、忙しいわけでも行く宛があるわけでもないのね?」
晴「まぁ、そうなるな」
どうしてそんなことを聞くのだろう? そう思っていると次に発せられた言葉は耳を疑うものだった。
永「ねえ、しばらくここに滞在してみない? もちろん衣食住はこちらで用意するわ」
この提案というか、言葉は予想していなかった。
こんなどこの馬の骨とも分からない輩を滞在させる理由が見つからない。
とりあえず、どういうことか聞いてみるか。
晴「どうして? そんなことをして永琳になんの利益がある?」
すると、永琳は、
永「貴方に興味が湧いたのよ。 それに利益はあるわ。 貴方にやってもらいたいことがあるの。」
なるほど、衣食住を提供する見返りとして労働力を提供しろということか。
まあ、時間はたっぷりあるしそれも一興かな? 飽きたら出て行けばいい。
晴「いいよ。 こっちとしても、少し生活してみたかったし願ったり叶ったりだ」
そう答えると、うれしそうに微笑んだ。
不覚にもその笑顔に一瞬ドキッとしてしまった。
永「それじゃ、詳しいことは私の家で話すわ。 ついてきて」
そう言って歩き出した永琳の後ろをついていくと、周りの家と比べるのもおこがましい程の豪邸に着いた。
晴「うひゃ~、でっかいな~」
美桜「(本当に大きいの~)」
永「私としてはこんなに大きな家は要らないのだけれどね」
そういうと、中に入っていくので後に続いた。
チラッと見るとセキュリティがいくつも掛けられていた。
こんなの空き巣に入ったら、何が飛び出してきても不思議じゃない。
中も中ですごかった。
まず、部屋数が半端じゃない。
一人暮らしらしいが30人は暮らせるほどの数は余裕である。
リビングもかなり広く、それでいて家具は機能性に特化しておりどれもが一目で上等なものだとわかる。
なにやらバケツのようなロボットがいくつも巡回しており、それが通った後は床がピカピカになっていた。
イメージとしては、○書に出てくるあれだ。
分かる人にはわかるだろう。
永琳に案内された部屋もどこぞの高級ホテル顔負けの内装だった。
永「部屋はここを使って頂戴。 私の部屋はこの部屋の正面にあるから用があれば来て頂戴」
晴「えっ!? ここに住むのか?」
衣食住を提供するとは言われたが、一緒に住むのは初耳だ。
しかし、永琳はなんでもないかのように、
永「そうよ、言ってなかったかしら? それとも、私と同棲するのは嫌?」
顔がニヤついている。
くそう、確信犯か。
俺が慌てる姿を見たいがための行動だろう。
よほど自分のルックスに自信があるらしい。
だがな、こっちは500年の間美桜と一緒に生活してたんだ。
今更、美人と同棲したって平静を保てるぜ。
晴「いや、こんなに綺麗な人とひとつ屋根の下で暮らせるなんて俺は幸せだよ」
そう言って笑いかけた。
すると、面白いように顔を真っ赤にした永琳がそこにはいた。
どうやら、異性にこんなことを言われた経験が少ないみたいだな。
これは、からかいがいがありそうだ。
俺はニヤニヤしながら、
晴「どうしたの? 顔が真っ赤だよ、熱でもあるんじゃない?」
永琳の額に自分の手を当てる。
永琳はすぐに離れ、
永「だ、大丈夫よ! それより、やってもらいたいことがあるって言ったでしょ? それを説明するからリビングに行きましょ」
早足で、リビングに向かって歩き出した。
それを苦笑しながら、ついていくと美桜が、
美桜「(あんまりからかうでないぞ。 本気にしてしまったら責任を取らなければならんからな。 女の復讐ほど面倒なことは無いからの)」
と、忠告してきた。
晴「(ああ、肝に銘じておくよ)」
晴夜は空いてしまった距離を埋めるように駆け足で永琳の後を追った。
時間が跳んでいるのは、勘弁してください。
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