表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

帰還した四天王

ミア、姫音、璃桜の告白から数日。晴夜達の下に・・・


それではどぞ~

俺は基本的に眠りが深い。

旅をしている時は地面の固さや外気の影響で眠りが浅く、きっかり8時間寝る前に起きてしまったことも多々あったが、妖怪の山に居を構えてからというもの、それも無くなった。

桜舞亭は朝から晩まで常に日が当たる位置に建てられており、一日のうちに日が当たらない箇所は無いように作られている。

日当たり良好、いいね。

そんな朝、夜露に濡れた桜の花が朝日に照らされてキラキラとそしてはらはらと舞い踊る大体7時くらい。

そんな時間帯に俺は目を覚ました。

強烈な体の火照りによって・・・


晴「なん・・・・なんだよ、なんで・・・・・こんなにクソ暑いんだ?」


いくらなんでもこの暑さは異常だ。 夏でもないのに、いや夏でもこんなに暑くはならないだろう。まるで風邪を引いて高熱を出した時みたいに顔が熱い。それに、何かが巻きついているみたいだ、腕を動かそうとしてもなかなかに動かしづらい。


晴「一体・・・何が?」


ボーっとする頭を回転させ意識が覚醒していくにしたがって、自分の状況が理解できるようになってくる。

見慣れた天井、それだけでここが自分の部屋だと言う事は分かった。

なんとか右腕を動かして手を上に持ってくるように動かすと、


モフッ むにゅん 


なにやらモフモフしたモノが手の甲をなぞり、ついで掌にはしっとりと手に張り付くような質感の何かがすっぽりと収まった。

なんだこれは?

妙に手にフィットし、低反発な触り心地はいつまでも触っていたくなるような魔力めいたものを感じさせる。

しかし、どこかで似たようなモノを触った気がするのは気のせいだろうか?

こういう場合、小説なんかだと主人公の隣に何故か女の子が眠っていて寝ているとはいえ女の子の胸を触ってしまって女の子に怒られる、っていうラッキースケベな展開がよくある(?)がまさかね?

完全に目が覚めた俺はとりあえず体の位置はそのままに目と頭だけ動かして周囲の状況を観察する。

もう一度天井をみる。 ・・・見慣れた天井。 間違いなく俺の部屋の天井だ。

次に家具・・・といっても書き物をするための机と行灯、掛け軸には『楽しけりゃ何だっていいんじゃない? 晴夜』と書かれている。 間違いなく俺の字だ。

他に物なんて無い、押入れや棚を開ければまだ何かあるがこの状態で確かめられるはずもない。

で、部屋の中を見渡している時にふと目に映ったものがある。 というか、何故最初にそれに気付かなかったのかと突っ込まれるかもしれないがあえて言おう。

俺の目と鼻の先にぴんと立った耳があった。

その耳は時折ピクピクと動いており、思わずふーっと息を吹きかけてみると一際大きくビクッとはねた。

毛の色は金色・・・・間違いなくあの子だね。

拘束が緩くなったので左腕を動かして、少しだけ布団を捲った。

そこには案の定、


晴「おはよう、姫音」


姫音「お、おはようございます、んっ...、晴夜様」


顔を真っ赤にした姫音が俯いた状態で俺の隣に居た。

心成しか、フルフルと震えている。

そして、暑かった理由はなんてことは無い。 姫音の9本の尻尾がすべて俺に巻き付いていたからである。これは流石に暑いって・・・


晴「とりあえず尻尾、放してくれない?」


俺がそう言うと、姫音は無言で頷いて尻尾を自分の後ろに引っ込める。

うん、これで大分快適になった。 まだ内熱のせいでボーっとするけどまぁ大丈夫だろう。

ちなみに、未だ俺の手はポジションを変えていない。離そうとした瞬間に姫音の手がそれを阻止しようと両手を使って押し付けるように押さえてきたのだ。

さて、とりあえず起きるか。

右手に名残惜しさを感じつつも離すと「あっ・・・」と声を上げ、姫音が名残惜しげな、寂しそうな表情をする。

それから密着している体を起こすと一緒に姫音も起きた。

寝巻きが妙に着崩れて肩が露出している感じは何とも色っぽい。


晴「何時から入っていた?」


姫音「・・・今朝方です」


未だに姫音の顔は赤い。 


晴「そっか、次からは尻尾を全部巻きつけるのはやめてくれよ? あれ、結構暑いんだ」


ぐしぐしと頭を撫でてやると、その端正な顔がほにゃっと崩れた。

さて、そろそろ起きようかね。

いい時間帯だし、今から作り始めれば皆が起きてくる頃には作り終わるだろう。


晴「じゃ、俺は着替えるから」


そう言って、布団から這い出ると着替えが収納されている押入れを開く。

中にはこの時代にはある筈の無い洋服が数着と黒の着流しに背中に桜と猫のシルエットが描かれている甚平が置いてあった。

甚平の刺繍は自分でやったものである。

何の装飾もないただの甚平じゃ地味だったので実に50年の歳月をかけて少しずつ仕上げていき、試行錯誤の末ようやく完成した一品である。

まぁ、今日はいつもの黒の半そでカッターシャツにジーパンという格好をするが・・・

姫音は、「失礼します」と一声かけてから出て行った。

その後ろ姿を見ながら思う。



今日の朝飯は何にしようかなぁ・・・?






晴「平和だな~」


美桜「そうじゃのぅ~」


あぁ~、お茶が美味い。

みんなで朝食を食べ終え、今はまったりのんびりしているところだ。


ミ「はっ!やっ!」


ガッ、ガッ、ブォン!!


姫音「シッ!ふっ!」


ヒュッヒュン、パラララララララ!!


庭ではミアと姫音が軽く組み手をしている。 軽くといっても低級妖怪からすれば、本気で逃げなければ狩られるレベルだが。

二人ともしばらく見ないうちにずいぶんと成長した。

外見的な意味もあるがミアは相手との間合いを見極め、常に自分が有利になるような立ち居地を確保しているし、姫音は常に相手を観察して状況に合わせて、弾幕やインファイトを使い分ける戦い方をしている。

この二人の共通していることは、あまり能力を使わない点だ。

もちろん、能力が上手く使えない訳じゃない。

二人は純粋な戦闘技術を高めるために、あえて能力を使わず体術と弾幕で戦っていた。

そうすることで、状況判断と戦略の幅が広がる事になる。

能力は個人にしか持ち得ないスキルだ。 ゆえに絶対的なアドバンテージとなりえる。

しかし、能力に頼り過ぎているともし攻略された時に非常に不利になる諸刃の剣なのだ。

あの俺を式神にしようとした妖怪、八雲紫と言ったか?

彼女も自分の能力に絶対の自信を持っていたようだ。 妖力量は今のミアや姫音と同じくらい、俺の霊力や魔力には及ばないものの大妖怪と言っても過言じゃない。

今まで名前を聞かなかったのは、つい最近力を付けたかよほど頭が切れるかのどちらかだろう。

あの胡散臭い雰囲気からして後者だろうな。 ちゃんと自分と相手の力量差を考えた上で俺の前に姿を現したみたいだし、あの能力や結界術に関してだって相当なものだ。

っと、何時の間にか思考がミア達のことからあの妖怪に切り替わっていた。

ミア達の方に意識を向けると一段落ついたようだった。


晴「二人ともお疲れさん、なかなかよかったよ」


俺が二人を労うと二人ともうれしそうに尻尾をパタパタと振っている。

そこへ、タイミングを見計らったかのように一人の来客が訪れた。

突然霧のようなものが集まりだして人の形を作り出す。


萃「晴夜~、居るかい?」


現れたのは鬼の萃香だった。

一気に酒の匂いが辺りに漂い始める。

鬼の酒ってかなり強くて辛いんだよな~、俺は甘い酒のほうが好みだけど偶に飲みたくなるんだよね。

そんなどうでもいいことは置いといて、萃香は何しに来たんだろうか?

いつもは酒を飲んでいるか、楓のところで酒を飲んでいるか、鈴華達と酒を飲んでいるか、再教育という名目で鈴華と戦っているんだけどな。


晴「萃香、どうしたんだ?」


萃「前に他の四天王は武者修行に出ているって言ったろ? その二人が帰って来たんだよ」


あぁ~、四天王の二人が武者修行に出ているんだっけか?

で、その二人が帰ってきたから顔を見せろと、そういうことか?


晴「ん~、めんどいからパスで」


理由としては、会ったら碌な事にならないと分かっているからである。

だって鬼だぜ?妖怪の山に住んでいる人間なんて言ったら絶対に絡まれる。最低でも喧嘩、どっちに転んでも喧嘩になる、絶対に。

すると、俺の答えに不服そうに頬を膨らませて、


萃「え~、母様から連れてくるように言われてるんだよ~。仮にもこの山の頭でしょ~?」


ちょっと待て、今聞き捨てならない発言があったぞ?


晴「おい、いつから俺はこの山の頭になったんだ?頭は鈴華のはずだろ?」


萃「え?だって、九尾の妖獣を二匹も従えて、本人は鬼の四天王を同時に相手して辛勝するほどの実力者。さらに、護神まで居るとあっちゃあ頭にしない方がおかしいでしょ?」


晴「いや、俺一応人間だからね?」


ここは妖怪の山なのだ。 いくらなんでもその山の頭が人間というのはいろいろおかしいのではないだろうか。いや、おかしい。


萃「そんなことどうでもいいよ。ほら、皆待ってるから」


そう言って、俺の手を掴んで浮かび上がる萃香。

見た目が幼女なので忘れそうになるが、萃香は鬼である。人間の男一人くらい軽々と運べてしまうわけで・・・


萃「いざ、私達の屋敷へ~」


晴「や~め~ろ~、離せ~!」


美桜「いいではないか、顔を出すくらい」


後ろからしがみ付いて、肩に顔を乗せている美桜が言う。


晴「行ったら行ったで絶対喧嘩になるだろうが!」


萃「まぁ、当然だね」


美桜「じゃろうな」


さも、当たり前のことを、と言った感じでしれっと答える二人。


晴「あぁ、くっそ・・・めんどくせぇ」


どうやら諦めるしかないようである。


ミア「あたし達も行こうか?」


姫音「そうですね」


璃桜「なにやら面倒そうな予感も感じますしね」


二匹の妖獣と桜の精も後に続く。












萃「はい、到着~」


萃香に攫われそのまま飛ぶこと十分弱。

妖怪の山の山頂付近、そこに鬼達の集落が作られていた。

と言っても、ドデカイ屋敷が一軒あるだけだが・・・

デカイ、本当にデカイ。俺の屋敷もそれなりだが、これは大きさだけで言うならさらにデカイ。

部屋割りだとかそんなのがどうなっているのかは知らないが、とにかく何が言いたいかと言うと、大きいのである。


萃「さ、入って入って~」


上機嫌で中へと入っていく幼女・・・もとい萃香についていくと、ある部屋の前で止まった。


萃「母様、晴夜達を連れて来たよ~」


襖をスパーンッと開け放ち入っていく萃香に続き、俺達も中に入る。

瞬間、匂ってくる強烈な酒の匂い。

部屋の中では鬼達が、仲間の帰還を祝って酒を飲んでいるが何も無くたって常に酒をかっ食らっているような連中である。今更気にもならない。


晴「よーっす、来てやったぞ鈴華」


部屋に入った瞬間、向けられる二つの視線。

いや、他の飲んでいる鬼もこちらを見ているのだが、それらはなんというかこれから面白いことでも期待するかのような視線で、今上げた二つの視線と言うのは、最奥で鈴華と酒を飲んでいる二人の鬼によるものだろう。

俺に気付いた鈴華は朗らかに微笑んで、


鈴「ようこそいらっしゃいました皆さん、歓迎しますよ」


晴「仲間が帰ってきたんだってな?ほら、やるよ」


一応屋敷から持ってきた『晴桜』を姫音から受け取って鈴華に渡そうとすると、


萃「おおおおおおお!! これは、かの有名な『晴桜』じゃないか!? いやっほ~い!!」


手から酒を掠め取ると、小躍りしながら外へと飛び出そうとする。


?「「「「ちょっとまった~!!」」」」


萃香の行く手を阻むかのように他の鬼どもが立ちはだかる。

皆、その目をギラギラさせながら視線は萃香の持っている酒瓶に注がれていた。


勇「萃香! 一人占めは良くないんじゃないかい?」


その中から勇儀が声をあげるが、


萃「フッ」


ニヒルに笑うと、一瞬で霧と化した萃香がその場から消えてしまった。


勇「あぁ!! しまった!!」


気付いた時には遅い、霧化した萃香を捕らえられる者はおらず、萃香は行方をくらませてしまった。


勇「チッ、追うよ!」


勇儀を筆頭に次から次へと鬼達が外に駆け出していく。鬼気迫るとか鬼の形相ってこういうのを言うのか?と、割とどうでもいいことを考えながらその様子を傍観していた。


晴「はぁ、まったく」


酒一本で騒ぎ過ぎだ、とは言わない。

それが鬼という種族だからである、言ったところで無駄な事。

鈴華達の方へ視線を向けると、相変わらずニコニコ笑っている鈴華と俺を観察するように視線を向ける二人。


晴「さて」


ほとんどの鬼が居なくなった部屋で三人に対峙するように座る。

その後ろにミア、璃桜、姫音の順で座る。


晴「星月晴夜、この山に居を構える一応人間だ」


とりあえず、自己紹介。

円滑なコミュニケーションとは、相手に自分の事を良く知ってもらうことから始まるのだ、とは誰の言葉だったかね?


美桜「神咲美桜、ここに居る晴夜の護神じゃ。そして正室でもある」


俺の隣に寄りかかるようにして顕現する。扇子で口元を覆い、珍しく妖艶な笑みを浮かべている。


璃桜「私は星月璃桜、晴夜お兄様と美桜お姉様の妹にあたりますわ」


次に璃桜が口を開き、


ミア「あたしはミア、晴夜様に仕える狼です」


姫音「同じく姫音、私は狐ですが以後お見知り置きを」


ミア、姫音がそれに続く。


晴「さて、お二方の名前を伺っても?」


まず、最初に口を開いたのは鈴華の左側に座っている鬼だ。

外見から見るに女、それも見た目中学生くらいの少女だ。動きやすさを重視したように改造した着物ドレス風味の物を着ており、額に小さな角がぴょこんと二つ。鈴華と同じ亜麻色の髪をショートボブにしているが母性を感じさせる鈴華と違って気の強そうな印象を受ける。

もう慣れたが、例の如く美少女だ。


?「あたしは鬼の四天王が一人、砕の瑞姫こと隆虎(たかとら)瑞希(みずき)だよ。よろしくね」


続いて、さっきから妙に値踏みしているような視線をぶつけてきている鬼が口を開く。


?「鬼の四天王の一人、耐の金弥。苗字は面倒だからつけていない」


黒髪を短く刈り上げ、頭から真っ直ぐ上に伸びた角が一本。切れ長の目は相手を威圧させるには十分な迫力で、右目にある細い縦長の傷がそれを増長させている。かっこいいと言うより怖いと言ったほうがいいかもしれない。ヤーさんの若頭って感じかな?

一言で片付けるなら無愛想。なんていうか睨まれている気がするんだけど気のせいじゃないよなぁ…


晴「了解。で、なんでお前はそんなにガンくれてんだ?喧嘩売ってんのか?」


さっきからスルーしていたけど、自己紹介も終わったことだし突っ込んだっていいだろう。その不躾な視線に後ろの二人が今にも掴みかからんばかりの雰囲気を醸し出しているし。


金「お袋、やっぱり納得できねぇ。こんな奴がお袋より強いだなんて思えねぇ。霊力だって人並みにしか無ぇじゃねえか。こんなのが・・・ッ!!」


言葉の途中で急に金弥が後ろに下がり、鈴華を庇うように立つ。その表情からは焦りと動揺が色濃く見え、頬を冷や汗が伝っている。


美桜「口を慎めよ、小童」


聞いただけでゾッとする、底冷えするような声音。隣で佇んでいた美桜は先ほどとまったく同じ体勢だ。しかし、纏っている雰囲気は明らかに怒っていらっしゃった。大抵の事は笑って流す美桜だが、俺の事になった途端急激に沸点が下がる。それも極端に。

悪ふざけで軽口を叩く程度なら気にも留めないが、明確な敵意や害意を持った暴言に関してはそれに該当しない。まず間違いなく消される。存在的に。

ここ最近で美桜の怒りに触れた奴は、細胞一つ一つを丁寧に灰にされていたな。もう数十年前の話だが。

多分今なら、頭に角が生えているって錯覚できるかも知れない。後ろの三人は初めて美桜が怒っているところを見るのか、唖然としている。

うん、そうなるのも分かるわ。俺も初めて美桜が怒ったのを見たときはしばらく動けなかったからなぁ。

顔の下半分は扇子に隠れて見えない。が、目は確実に笑っていなかった。


「くふふ、覚悟は出来ておろうな?小童?」


ドンッと屋敷が揺れた。美桜から凄まじい量の神力が漏れ出ている。駄々漏れだ。下級どころか中級妖怪でさえ、無事で居られるか怪しいレベルの濃密な力の奔流に鈴華でさえもたじろいでいる。


パシンッ


と、扇子を閉じた音が聞こえた瞬間には、


金「が……はっ!!」


金弥が壁に叩きつけられていた。あれだけの衝撃にも関わらず、屋敷が倒壊しないどころか壁すら突き破れないとは、いやはや頑丈だな。美桜も本気ではないのだろうけど、壁の一枚はいくと思っていただけに予想外だ。


ミ「ねぇ、今の見えた?」


姫「いえ、扇子の音が聞こえた時にはすでに終わってたよ」


璃「恐ろしく速かったですわ」


美桜が何をしたかというと、なんてことは無い。唯、扇子で相手を殴った。唯それだけだ。距離的に無理だろうという突っ込みは受けない。確かに金弥と俺が座る位置では3メートルは離れているがそこはほれ、基本何でもありだし、これくらい普通だろ?

でも流石にそろそろ止めないと、いろいろと面倒なことになりそうだ。主に機嫌が悪くなった美桜のフォロー的な意味で。


晴「美桜」


美桜「なんじゃせい…んっ!」


美桜がこちらを向いた瞬間、顎に手を添えて軽く触れるだけの口付けをする。いきなりで呆気に取られている美桜を抱き寄せて耳元で二,三言囁くと、顔を真っ赤にさせながら小さくコクンと頷いた。尻尾はゆっくりと左右に揺れており、時折ペシンと叩いてくるので機嫌は直ったと見て間違い無い。

背中に視線を感じるが敢えてスルーしつつ、若干頬を染めた鈴華と真っ赤になって俯いている瑞希に意識を向けた。


晴「いや、悪いな。美桜は俺の事になると沸点が極端に下がる事を言うの忘れてた。いきなり扇子で殴ったのは悪かった」


鈴「いえ、元はあの子が挑発紛いの発言をしたのがいけないんですから。後で謝罪するように言って効かせますので」


晴「そ、んじゃそろそろお暇するわ」


俺が立ち上がるのに合わせて後ろの三人も立ち上がる。鈴華が立ち上がったことで瑞希も慌てて立ち上がり出口まで案内してくれた。何気にこの屋敷、迷いそうで困る。慣れるまで不便そうだな。


鈴「夜には本格的に宴会を催しますので晴夜さん達も来て下さいね」


晴「分かった。それじゃあ、十樽程酒でも持ってくから楽しみにしてな」


鈴「はい、ではまた夜に」


鈴華達と別れて屋敷に帰る。今から宴会の時間まで約七時間ほど。徹夜で騒ぐことは目に見えているので今のうちから仮眠を取ることにするかな。美桜を連れて寝室に行こうとすると、やっぱり三人も着いてきた。


晴「悪いけど今日は約束しちまったからまた今度な」


そう言うとしぶしぶとだが引き下がってくれた。

布団に潜ると、美桜は恥ずかしげに頬を染めながらそれでも嬉しそうに首に腕を絡めてきた。


それじゃあ、存分に可愛がってあげようかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ