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家建てるぞ~!

紆余曲折あったがようやく家を建てることになった。

はてさて、どんな家に仕上がるのか?


それでは、どぞー

晴「楓~、居るかー?」


書斎に行くと書類を整理していた楓を見つけた。


楓「せ、晴夜さん!? もう大丈夫なんですか!?」


晴「ん~、まあ概ね回復したよ」


せっかく整理した書類が吹き飛ぶのも構わずこちらに駆け寄ってくる。


楓「良かったぁ~、3日も目を覚まさないので心配したんですよ?」


安堵した様子で微笑む楓、しかし聞き流せない部分があった気がする。


晴「待て、俺って3日も寝てたのか?」


どうりで体が重いわけだ。

だるいんじゃなくて、体が鈍っていたのか。


楓「はい、あの後倒れられてから3日は経ちましたよ。 その間の看病は、晴夜さんの妹さんと美桜さんが付きっきりでしていたんですよ」


晴「そうだったのか。 ありがとな、二人とも」


美桜「何、気にするでない」


璃桜「そうですわ、それくらい当然ですわ」


二人は嬉しそうに微笑む。

こうして並んでみると、本当に姉妹のようだ。


晴「ところで楓、お願いg「ちょっと、なんであたし達を無視するのさ」なんだよ、萃香」


今まで、なるべく視界に入れないようにしていたのだが話し掛けられちゃ無視するわけにもいかない。

なんでか知らないが、萃香と勇儀は楓が書類整理をしている傍らで酒をかッ喰らっていた。


晴「いろいろ言いたい事はあるけどとりあえず、何してんだお前ら?」


萃・勇「「酒を飲んでいますが何か?」」


晴「そりゃ、見れば分かる。 そうじゃなくて、なんで楓が仕事している側で飲んでいるのかを聞いてんの」


萃香「特に意味は無いよ」


勇儀「敢えて言うんなら、なんとなく?」


ダメだこいつら、早く何とかしないと・・・


晴「まったく、どうしようも無いな。 そうは思わないか、鈴華?」


萃・勇「!!?」


俺の背後には、優雅に微笑んでいる鈴華が居た。


鈴「そうですね、さすがに度が過ぎていますね」


顔は微笑んでいるのだが、萃香と勇儀を見る視線は鋭い。


勇「くっ、萃香逃げるよ!」


萃「合点!」


二人は一目散にその場から消えた。


鈴「はぁ、あの子達も悪い子ではないんですけどね」


晴「なら再教育すればいいんじゃないか?」


鈴「・・・・・・」


晴「・・・・・・」


鈴「あぁ! そうですね、そうしましょう!!」


すごくいい考えを聞いた時のような顔をしている。

心なしか、目が活き活きと輝いて見えた。

ちなみに、鬼はこの妖怪の山に住むこととなったらしい。

俺が乱入したのは、あくまで楓が死にそうだったからで勝負自体は鈴華の勝ちだったからだ。


楓「話は終わりましたか? それで、お願いというのは家のことですね?」


晴「流石、話が早いな。 頼めるか?」


楓「もちろんです。 いつでも取り掛かれるように下準備だけは前々からやっておきましたから」


晴「そうなのか、悪いな。 っと、紹介が遅れたな。 璃桜、挨拶」


璃桜が楓と鈴華の前に出て一礼。


璃桜「晴夜お兄様の妹の星月璃桜ですわ、以後お見知り置きを」


楓「天魔の楓です、よろしく」


鈴「鬼子母神の鈴華です、こちらこそよろしくお願いします」


楓と鈴華もそれに応え、軽く自己紹介をする。


楓「それでは、少し待っていてください」


そう言って、楓はどこかに飛び去った。


それを見送った後、鈴華から質問があった。


鈴「家を作るのですか?」


晴「ああ、あるのと無いのとではかなり違うからな」


それに璃桜っていう新しい家族が増えたし、そのうちあいつらも出来れば迎え入れたい。


鈴「そうですか、それなら私達も手伝いましょう。 鬼は建築が得意ですからね」


晴「そうなのか? そいつは助かる、それじゃあ手伝ってくれ」


鈴「わかりました。それでは後で数人手配しておきます」


そんな話をしていると、楓が帰ってきた。

それから、新たに二人の人影が増えている。


楓「お待たせしました」


晴「帰ってきたか。 それと久しぶりだな、文」


黒い髪をショートカットにし、小さかった翼は風を捉えられるまでになり外見は14歳くらいまでに成長した少女、文だった。

あの日もらった小さな羽を取り出す。

黒く艶のある小さな羽は少女が成長したことを実感させてくれる。


文「お久しぶりです、また晴夜様に会えて嬉しいです!」


嬉しそうに笑う文。

よほど嬉しいのか、羽が上下に落ち着き無く動く。


晴「大きくなったな~、あの日転んで泣きそうになっていたのにな」


文「そ、そんなことまで覚えてなくていいですよ~///」


今度は腕をパタパタと上下させて顔を赤くさせている。

ヤベェ、面白い。


晴「それで、君は? 俺は晴夜、長生きな人間だよ」


美桜「妾は美桜じゃ」


璃桜「璃桜ですわ、よろしくお願いします」


さっきから文の後ろに隠れて、ちらちらと視線を送ってくる少女に話しかける。


?「ッ~~~~~!!」


話しかけると、完全に文の後ろに隠れてしまった。


文「ほらにとり、晴夜様は大丈夫だから」


文に促され、俯き加減でしゃべりだす。


に「河城にとり、種族は河童」


それだけ言うと、また文の後ろに隠れてしまった。

文は困ったように笑い、


文「にとりは恥ずかしがり屋なんですよ。 そのうち、慣れれば普通に話してくれると思います」


に「あの・・・」


すると、にとりが話しかけてきた。


に「晴夜は人間なんだよね?」


晴「ん? ああ、不老だけど人間だよ」


に「じゃ、じゃあさ・・・」


そこで、躊躇う様に言葉を切り、


に「私と・・・友達になってくれる?」


被った帽子から片目だけでこちらを見つめてくる。

なんだ、そんなことか・・・


晴「ああ、いいぜ。 よろしくな?」


にとりに手を差し出す。

その手を控えめながらもしっかりと握り、


に「よろしく・・・盟友」


そこで、初めてにとりが笑った。


文「は~、晴夜様はすごいですね。 にとりは極度の恥ずかしがり屋なのにもう友達になっちゃいましたね」


に「む、あくまで人間に対してだけだよ? そこのところは勘違いしないでほしいな」


楓「ゴホン、そういった話は後でやってください。 今は晴夜さんの家を作るための会議をここで行うんですから」


咳払いをして、書斎から持ってきた紙と筆を準備する。


楓「まずは、どのような家にしたいんですか?」


晴「そうだな、まずは・・・」




少年・天狗・鬼・河童、会議中・・・




晴「と、これくらいかな?」


楓「え~っと、まとめますと・・・」


・5,6人は余裕で生活できる広さ

・風呂完備

・台所はそれなりの広さ

・日当たりのいい場所

・庭は、花見が出来るくらいは欲しい


楓「と言う事で、よろしいですか?」


晴「ああ、それと璃桜の桜は庭に移動させるからそこんところも考えなくちゃな」


思いもよらず嬉しい結果になったが。


文「ふむふむ、どれくらいで完成できる?」


に「う~ん、鬼も手伝ってくれるって言うし、多く見積もっても7日でできるよ」


随分速いな、オイ。


晴「たった7日で出来るのか?」


に「これくらい河童に掛かれば、全然余裕だよ」


先ほどの固さは若干抜け、大分口数も多くなってきた。


に「それから、晴夜は完成するまで見に来ちゃだめだよ。 もちろん、手伝うのも禁止」


晴「どうして? 俺も専門じゃないができるぞ?」


文「だって、驚かせたいじゃないですか。 これから、この山の一員になるわけですから私たちなりの歓迎ですよ」


にとりや楓も、うんうんと頷いている。


美桜「せっかくの好意じゃ、素直に受け取って置いたらどうじゃ?」


璃桜「そうですわ、むしろ受け取らないほうが失礼ですわよ?」


晴「それもそうだな、それじゃあ頼んで良いかな?」


に「もちろん、すんごいのを作るから期待しててよ」


にとりの瞳はやる気満々と言うより、新しい玩具を見つけたときのような輝きを発していた。

その瞳に何故か分からないが、一抹の不安を感じたのだがあまり気にしないことにした。


鈴「それでは、家ができるまで私達の所に泊まっていってはどうでしょうか?」


鈴華が何故か分からないが、こちらに擦り寄ってきて腕を抱きかかえるように絡めてきた。

心なしか頬が赤い。


璃桜「むっ、お兄様に色目を使わないでほしいですわ」


それを璃桜が強引に引き剥がし、まるで自分の物だとでも言うように抱きついてくる。


鈴「あらいいじゃないですか、私は晴夜さんみたいに強い殿方が好みなんです」


璃桜「お兄様には、美桜お姉様と私が居るので間に合っていますわ」


鈴「美桜さんは分かるとして、貴女は晴夜さんの妹でしょう?」


璃桜「あら知らないんですの? 今時神々でも身内で契るくらいですもの、何の問題もありませんわ。 それに、本当に血が繋がっているわけでもないですし」


確かに、最近大和の神々が身内で契ったという噂は聞いた。

だけど、それを璃桜が知っているとは思わなかった。

二人は、バチバチと視線をぶつけ合っている。

二人の丁度真ん中で火花が散っているように見えるのは眼の錯覚だと信じたい。


晴「あんなことになっているけど、随分落ち着いているな。 いつもなら、脅すようなまねをするのに」


美桜「璃桜は別として、妾はな、晴夜が他の女子に色目を使っても必ず妾の所に戻って来てくれる、そう信じる事にしたのじゃ」


目を見る限り、無理をしている訳ではない。

それほど信頼してくれているのだ。


美桜「じゃがな、正室の座は誰にも渡さぬ。 それだけは肝に銘じておくのじゃ」


俺の顔を両手で挟んで、文字通り目と鼻の先に美桜の顔がある。


晴「わかってるよ、俺の一番は美桜以外にありえないからな」


美桜「うむ、分かっておればいいのじゃ」


左肩越しに美桜の重さと体温を感じる。


楓「あの~、二人だけの世界を構築しているところ恐縮なのですがそろそろ話を戻しても?」


楓がおずおずと手を上げて話しかけてきたところで、本題を思い出した。

そういえば、家を作る会議の途中だったな。


晴「ほら、二人ともその辺にしておけ」


未だに睨み合っている璃桜と鈴華の額を弾く。


璃桜「はぅっ! ご、ごめんなさい、お兄様」


鈴「あぅっ! 申し訳ありません、お恥ずかしいところをお見せしました」


晴「別にいいよ。 それで、家が出来るまでだけど、その辺ぶらぶらしてくるよ。 一週間ほど」


もはや恒例となった、一週間単位での散歩に出かけることにしよう。

別にこの山で過ごすのも悪くないんだけど、鬼や天狗たちが五月蝿そうだ。 っていうか、絶対絡まれる。


鈴「そうですか、それは残念です」


鈴華が本当に残念そうな顔をする。

その顔に罪悪感が芽生えなくも無いが、鈴華のところに行ったら夜通し宴会だとか24時間耐久バトルロワイヤルとか百人組み手なんかが起きそうで怖い。 いや、絶対近い事は起きるな。


璃桜「私はもちろん、お兄様とお姉様に付いていきますわ」


美桜とは反対の肩に璃桜がもたれかかって来た。


晴「そういうわけだ。 それじゃあ、一週間後を楽しみにしているよ」


庭に出て肩には美桜、璃桜が右腕をがっちりと組んでいる。

ちょっ、当たってる!


に「まかせといてよ!」


文「家が建ったらお祝いしましょうね!」


楓「お気をつけて」


鈴「また一週間後にお会いしましょう」


皆に手を振って、妖怪の山を後にした。





この一週間がとんでもなく濃い日々になるとも知らずに・・・




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