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新しい家族

鬼二人との戦いのあと、倒れてしまった晴夜。

目が覚めると・・・


それでは、どぞー

浅く意識が浮上する。

瞼は重くてまだ開けられないが、どうやら寝ていたようだ。

確か萃香と勇儀と戦って勝った後、力の使い過ぎで倒れたんだっけか?

勝ったはいいけど、もう少しスマートに勝ちたかったな。

倒れるギリギリまで消耗するなんて、まだまだ修行不足だ。

それにしても自分の頭を包んでいるこの枕はとても気持ちが良い。

手に吸い付くようにしっとりすべすべな触り心地でいつまでも触っていたくなるような質感。

それでいてある程度の弾力があり、さらに人肌並に暖かい。

仄かに香る桜の匂いが良い夢を見させてくれるようなそんな一品だ。

あまりに気持ち良いので寝返りを打ち頬擦りをすると、


?「ゃんっ、お兄様くすぐったいですわ」


そんな声が聞こえた。

一瞬で頭が覚醒し、勢いよく体を起こしたせいで後ろで「きゃっ!」っと短い悲鳴が上がる。

振り返ると、どこか美桜に似ている少女が驚いたような顔をしていた。

美桜と違う点と言えば、耳と尻尾が無い。

視線を下に降ろすと、かなりきわどい部分まで桜色の着物のすそが肌蹴て綺麗な生足が晒されている。


?「おはようございます、お兄様。 お目覚めはいかがですか? あれだけの戦闘をしたんですもの、まだ無理をなさらないでくださいね」


驚いた顔を直ぐに戻し、ニコリと微笑む少女。


晴「あ、ああ、おはよう。 とりあえず、いろいろ聞きたい事はあるけど君の名前は? 俺は晴夜だ」


少女は少し困ったような顔をし、


?「(わたくし)に名前はありませんの。 私は最近になってようやく自我が芽生え、こうしてお兄様の前に姿を現せるようになったんですもの」


晴「最近になって、自我が芽生えた?」


自我が芽生えたってことは、化身か何かか?


?「そうですわ、自我が芽生えてからはずっとお兄様とお姉様を待っていたんですの」


晴「そのお兄様とお姉様ってなんだ?」


この少女は初めて会ったときから自分の事をお兄様と呼んでいる。

正直自分に妹が居たという記憶なんて無い。


?「晴夜お兄様に美桜お姉様のことですわ。 私がそう呼んでいるだけで、実際の血縁関係はありませんけど」


美桜に似た容姿、微かに感じられるのは神力。

そして、ほのかに香る桜の匂いと女性特有の甘い匂いが混ざりあった匂い。

思い当たる節は幾つかあるが、今までこんな事は無かった。


晴「君はもしかして、あの桜なのか?」


天狗の里の一角に佇む桜の木を指して言う。

初めて妖怪の山を訪れて一眠りした木だ。

今でも満開の花びらが宙を舞っている。

そう言うと少女は嬉しそうに頷き、


?「その通りですわ。 お兄様とお姉様の力で創られた桜に自我が芽生えたのが私ですの」


やっぱりそうか、薄々勘付いてはいたけど・・・

だけど、なんでこの子だけなんだろう?


美桜「それは、最近になって桜を好きになったものが一定の人数を超えたからじゃな」


声と共に隣に美桜が現れる。


?「! 初めまして、お姉様」


一瞬驚いたものの美桜だと分かると表情を柔らかくする。


美桜「うむ、これからよろしくの」


ひらひらと手を振って応える。


晴「どういうことだ、美桜?」


美桜「つまりじゃな、桜が一種の信仰の対象になっているのじゃ。 信仰を集めたモノはいずれ自我が芽生える。 この娘の場合は少し特殊じゃがの」


桜は俺のせいもあって、春になるとどこに行っても目に付くくらい全国に広がっている。

特に都の桜は大きさ・本数ともに他の追随を許さないほどだ。

桜はそれだけ人々に愛されている。

それが信仰の対象に変わっても不思議ではない。


晴「さらに、俺達自身が創った桜だから他とは違ったって訳か」


今まで桜の木を里などに置いていく場合は、他の木を桜に変えただけだった。

それでも、普通よりは神力が備わっているけど。

神力だけで創った桜は放置などせず、創ったら消していたから実質この世に存在している神力100%の桜はあの木だけだ。

しかし、この桜に限り消さないで置いた。

桜を司るだけあって、桜の木から情報を入手する事が出来るからである。

滅多に使わないけどね。


美桜「こんなところかの? ところで晴夜、そろそろ可愛い妹の為に名前を決めてやったらどうじゃ?」


そういえば、この子は名前が無いんだったな。


晴「そうだな、う~ん」


立ち上がり、空を見上げる。

雲一つ無い青空には風に乗って桜の花びらが舞っており、遠くからは天狗や鬼達の声が聞こえてくる。

よし、決めた!

少女の方を振り返り、


晴「今日から君の名前は璃桜(りお)だ。 宝石のように輝く桜って意味を込めたんだけどどうかな?」


桜の木だけに桜の字は絶対に付けたかった。

あとは、いろいろ考えたけど美桜に負けないくらいの容姿と宝石のような気品が溢れていたので、この名前にした。

なかなか良い名前だと思う。


美桜「璃桜・・・か、なかなか良いではないか」


美桜には好評のようだ。


晴「君は気に入ってくれたかな?」


璃桜は両手を頬に当て、若干顔を赤らめながら俯いて何事か呟いている。


璃「璃桜・・・私のためにお兄様が付けてくださった・・・えへへへ///」


若干トリップしてるが気に入ってくれたようだ。

するとガバッと顔を上げ、


璃桜「それでは、今日から私は星月璃桜と名乗りますわ」


若干顔が赤いままだが嬉しそうに笑った。

苗字が同じだがあえてスルーしておこう。


晴「さて、名前も決まった事だし一番重要なことを聞きたいんだけどいいかな?」


そう、これから聞きたい事がもっとも重要だ。


璃桜「えへへ~・・・ッハ! な、何でしょうかお兄様?」


こちらの雰囲気に気付いたのか、佇まいを直す璃桜。


晴「さっきまで俺が枕にしていたのってもしかして・・・」


そう言って璃桜の足、正確には太ももの辺りを見る。

すると、恥ずかしそうに手で押さえながら


璃桜「はい、私の膝の上ですわ」


ポッとでも聞こえそうな感じで頬が赤くなる。

あ~、やっぱりか。

おぼろげにしか覚えていないが、いろいろと触った気がする。


晴「なんと言うか、うん、ごめん」


とりあえず頭を下げようとすると、肩を押さえて止められた。

すぐ近くに璃桜の顔がある。


璃桜「謝らないでくださいな、私がそうしたかっただけなんですから」


頬を赤らめながらはにかむ少女に不覚にもドキッとしてしまった。

美桜に似ているだけあってやっぱり可愛い。


晴「そうか、ありがとな」


頭に手を伸ばし、優しく撫でる。


璃桜「はぅっ、お兄様ぁ~」


頭を撫でただけで顔は蕩け、赤かった頬は真っ赤になり瞳は潤んでいる。

その姿は妙に色気があり、艶かしい。

そのまま、胸に顔を埋めるように抱きついてきた。


晴「お、おいっ! 璃桜?」


璃桜の体を優しく押し返そうとすると、


璃桜「お兄様ぁ~、離れちゃ嫌ですわ~」


かなり本気の涙目+上目遣いで見つめてくる。

うっ、そんな目で見つめないでくれ。


美桜「好きなようにさせておけば良いではないか。 ずっと待って居たんじゃしの」


そういいながら、猫の姿になり肩の上に乗ってきた。

そうは言うけどな、俺も男なんだぞ?

顔は美桜に似ていて、スタイルは美桜より若干劣るくらい。

しかし、バランスがしっかりと取れた体付きをしている。

控えめに見れないほどの美少女だ。

どうしても、密着すると意識してしまうのはしょうがない。


晴「はぁ、しょうがないな」


でも、諦めるしかないようだ。


璃桜「えへへ~、お兄様~♪」


でも、とても幸せそうな顔で笑っている璃桜を見ているとどうでも良くなってきた。


美桜「ふふふっ、甘えん坊な妹じゃな」


晴「ああ、まったくだな」


美桜と同じ白銀の長い髪を梳くって玩ぶ。

絹を触っているかのような手触りで、手から零れた髪はさらさらと絡まることなく落ちていく。

新しい家族が出来た事だし、本格的に家を作らなくちゃいけないな。





晴夜が本格的に家を建てる為に行動するのは、それから一時間後のことだった。


べったべたですね、書いててなんだかこっ恥ずかしくなりました。


感想・要望・誤字指摘ありましたらどうぞ。

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