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妖怪の山再び

永琳との再開を果たした晴夜。

そして、これを機に都を離れる事にする・・・


それでは、どぞー

月人の来襲から翌日、かぐや姫が帰ったという報告は瞬く間に全国に広がりあらゆる人が悲しんだ。特に帝の悲しみは深く、3日3晩泣き続けたそうだ。

輝夜を育てた老夫婦は、帝に不老不死の薬を献上し帝はそれを後の富士山と呼ばれる火口に廃棄する事を決めたそうだ。

その後のことは知らない。

なぜなら、帝に報告をした際にまた旅に出る事を伝えたからである。

これ以上ここに留まると難癖つけられて追われる可能性が濃厚になったからだ。

理由としては、一切仕事が来なくなった事と皆俺を避けるような態度が気になったため、調べてみると輝夜に求婚した貴族が逆恨みの矛先をこちらに向けてきたからだった。

これで、しばらくは都周辺の土地に近づく事は出来なくなった。


晴「これからどうすっかな~」


前に立ち寄った団子屋で休憩していると、気になる話が聞こえてきた。


?「おいおい、お前さん聞いたか? 何でも天狗の巣窟である妖怪の山周辺に鬼が現れたらしいぞ」


?「なんと!? それではますます、あそこ周辺は近づけないではないか!?」


?「ああ、どうやら貴族様お抱えの陰陽師でも近づくものは居ないって話だ」


妖怪の山・・・か。

そういえば、楓や文は元気だろうか?

しばらくは人前にあまり姿を晒す事もできないし丁度いいかもな。

お茶を煽り、勘定を払うと早速妖怪の山に向けて歩き出した。













晴「これは!・・・いったい?」


3日かけて妖怪の山の麓まで飛んできたが様子がおかしかった。

妖力が一箇所に集中している。

それも山頂付近にだ。

確かあそこら辺は開けた場所があったはずだ。

山を登っていくと、一人の白狼天狗が倒れていた。


晴「おい、どうした! 何があったんだ?」


白狼天狗は息も絶え絶えに何とか言葉を搾り出す。


?「お・・・に・・・・が・・・攻め・・・て、天・・・・魔・・・・・様が」


そこで完全に気絶したようだ。

能力を使って傷を癒して全速力で上空へと飛んだ。

山頂付近の開けた土地では、楓と鬼が一騎打ちで戦っていた。

鬼の容貌は、艶のある亜麻色の髪が腰まで届いており、顔立ちは整っており戦いの最中だというのに全てを包み込むような表情をしている。そして、一際目を引くのが着ている着物では覆い尽くせないサイズの胸。少し動いたら零れてしまうのではないか、と思ってしまうほどに大きい。

その鬼はまるで、母性の塊みたいに全身からそのような雰囲気が漂っている。

楓は妖怪の中では遥かに強い力を秘めているが、戦っている鬼はそれ以上の力を保有しているのが分かる。

楓は苦悶の表情をしながら戦っているのに対し、鬼の方はまだまだ余裕が伺える。

おそらくそろそろケリが着くだろう。

両者の妖力が膨れ上がる。


晴「これは・・・ちょっとマズイな」


このままでは、楓が危ない。

そう思うよりも早く、楓の元に向かって飛んだ。













楓「ハアアアアアアアアアアア!!」


私は今までで最高の威力を誇るこの攻撃に全てをかけた。

相手は、鬼の頭領である鬼子母神。 もとより敵う相手ではない。

しかし、私には譲れないものがある。 私は全ての天狗を纏める長、天魔なのだ。

相手がいかに強いからといって、負けを認めることなど出来ない。

風を纏った弾幕が相手に襲い掛かる。

この技は貫通力を極限まで高めた技だ。普通の妖怪ならば受け止めようとしたら逆に肉が抉られ、骨に穴が開いたとしても弾幕の威力は衰えずに貫通する。

そして相手はそれを真っ向から受け止めた。

地面にも着弾し、土煙が上がる。

もう、妖力は空っぽだ。膝は笑い、立って居るのもやっとの状態だ。

これで倒せなければ私達の負け、頼む、倒れていてくれ。

しかし、現実は非常で煙が晴れると同時に笑い声が響く。


鬼母「ふふふふふふ、流石に最後のは焦りました。 でも、その技は少々脆いですね」


相手はほとんど無傷で立っていた。

着ている着物の端が少々破れていただけで、他に目立った外傷は無い。


鬼母「どうやら、貴女はもう戦えないようですね。 最後に言い残すことはありますか?」


楓「私以外の天狗の安全を保障して欲しい」


鬼母「分かりました、子供達にも伝えておきましょう」


鬼子母神の妖力が膨れ上がる。

次の攻撃で私は消し飛ぶだろう。

結局勝てなかったな、でもこれで天狗達の安全は保障された。

ふと頭に浮かんだのは、ある人間の顔だった。

私が死んだらあの人は悲しんでくれるだろうか?

出来れば、もう一度会いたかったな。

鬼子母神が妖力弾を放つ。

自分の妖力弾とは比べ物にならないくらいの威力だというのが分かる。

避けようにも、この足では無理だ。

もう目の前まで迫っている。

私は固く瞳を閉じた。


楓「・・・・・・・・・?」


しかし、いつまで経っても衝撃はやって来なかった。

不思議に思い瞳を開けると、


晴「ていっ!」


楓「きゃうっ!」


いきなり頭に衝撃を感じた。

そのせいで何とか体を支えていた膝は限界を迎え、その場にへたり込む。


楓「!?、!?、!??」


訳がわからず顔を上げると、


晴「あきらめるのが早すぎだ、もう少し粘れるだろ?」


先ほど、頭に思い浮かべた人間の顔がそこにあった。


楓「え? 晴夜さん? どうして?」


訳がわからない、いくらなんでもタイミングが良すぎだ。


晴「家を建てようと思ってね。 都でちょっと目立ち過ぎてしばらく身を隠そうと妖怪の山に来たら、まさかこんな状況になっているなんてな」


呆れながら、鬼子母神の方を向く。


鬼母「貴方は何者ですか? 人間が妖怪の戦いに水を差すのは自殺志願者にしか思えないのですが」


どうやら水を差されたことに対して相当ご立腹のようだ。

周りの鬼達からも罵声が飛んでくる。


晴「勝負はもう付いただろ? これ以上やるっていうんなら俺が相手になるけど?」


すると、周りが一瞬静まり返り次の瞬間には笑い声に変わった。

それは嘲笑、周りの鬼達は一人残らず笑い転げている。

楓は悔しそうに唇を噛んでいる。

そこへ一人の鬼が出てきた。


?「なにもお袋が手を下すまでもねぇ、俺が相手をしてやるよ」


その鬼の名乗りに周りが湧いた。

先ほどの嘲笑は消え去り、まるで闘技場にでもいるかのような熱気に包まれた。


鬼母「では、私が審判をしましょう。 両者とも良いですね?」


晴「その前に、武器は使っても良いのか?」


鬼母「いいですよ、人間はか弱いですからね」


楓を他の天狗に任せ、お互いに向かいあうようにして立ち、手に刀を鞘に収めた状態で持つ。


鬼母「それでは・・・・始め!!」


合図と同時に鬼が吹っ飛び、それを他の鬼がなんとか受け止める。

周りの鬼や天狗は呆然としており、その中で晴夜の声だけが響く。


晴「なんだ、鬼っていうのは随分とか弱いんだな?」


先ほどまで黙っていた天狗たちが一気に湧いた。

逆に鬼どもは未だに事態を飲み込めず、ポカンと口を開けていた。


鬼母「・・・・・・・・貴方はいったい何者ですか?」


その中でも一番早く我に帰った鬼子母神が問いかけてきた。


晴「人に名前を尋ねるときは自分から名乗るものだぜ、鬼さんや」


鈴「そうですね失礼しました、私は鬼子母神の鈴華(れいか)と申します。 それで貴方は?」


晴「星月晴夜、ちょっと長生きな人間だよ」


こちらも名乗ると、驚いたような顔をした。


鈴「貴方が星月一族の初代当主の晴夜さんでしたか。 しかし、何故生きておられるのですか?」


晴「名前を変えて各地を転々としていたらいつの間にか一族扱いされていただけだよ。 俺は不老だからさ」


その言葉に納得したように、頷く鈴華。


鈴「なるほど、そうでしたか。 という事は、舞桜神様とお見受けしても?」


晴「あまりその呼ばれ方は好きじゃないから、晴夜と呼んでくれッ!!」


その言葉を言った瞬間、左から殺気を感じて横に跳ぶと立っていた場所にクレーターが出来た。

そのクレーターを作った犯人は小柄な背に不釣合いな程大きな二本の角が特徴の少女だ。

その両腕と髪を縛っている輪から鎖がぶら下がっており、先端に分銅のような物が付いている。


?「流石に武神なだけはあるね。 結構本気でやったんだけど」


言葉とは裏腹にその顔は嬉しそうだ。


?「ちょっと待ちなよ、萃香! 抜け駆けは許さないよ」


すると今度は、頭に一角獣のような立派な角をつけた美人が居た。

体操服のように見える服、下はロングスカートで金髪。

分銅は無いけど、腕には鎖を下げている。

萃香と呼ばれた子鬼は、それに反発する。


萃「えー、良いじゃん勇儀。こういうのは早い者勝ちでしょ?」


なにやら、二人で言い争っている。

長くなりそうなので楓の様子を見に行こうとしたら、それに気付いた二人が同時に肩を掴んできた。


萃・勇「「逃がさないよ?」」


どうやら、何時の間にか戦う事が決定しているようだ。

鈴華の方に顔を向けると困ったように笑った。

諦めろということらしい。


晴「別に逃げやしないさ、楓の様子を見に行くだけだ」


勇「本当だろうね、鬼は嘘が嫌いだよ?」


晴「分かったから離してくれ」


そういうと、しぶしぶとだが離してくれた。

どうやら、じゃんけんで順番を決めているようでさっきからあいこが続いている。

そんな二人をよそに楓のところまで歩いていく。


晴「随分こっ酷くやられたみたいだな?」


服はボロボロ、その破れ目からは素肌が覗いており、そこから血が出ている箇所も少なくない。

顔には傷が無いが、やはり疲労の色は濃いようだ。


楓「やっぱり勝てませんでした。 私は天狗の長として失格ですね」


明らかに落ち込んでいる。

そんな楓を思いっきり抱き寄せる。


楓「ひゃっ! あ、ああああの、晴夜さん!?」


晴「じっとしてろ」


能力を使って、楓の傷という傷を全て癒す。

楓の傷口が淡く光を放ち、みるみる内に塞がっていきやがて完全に消えた。

しかし、傷が塞がったにも関わらず楓を抱きしめたままだった。


楓「あの・・・どうされたのですか?」


顔を真っ赤に染めながら、こちらを見上げる楓。


晴「何で楓が長として失格なんだ?」


楓「え?」


言葉の意味が分からなかったのか、きょとんとしている。


晴「里の天狗の為にそんなになるまで戦って、負けはしたものの天狗全員の安全を保障させたお前がどうして上に立つ資格がないんだ?」


楓「そ、それはっ!」


楓の頭に手を乗せ、優しく撫でる。


晴「気をしっかり持て、この山の天狗を纏められるのは楓しか居ないんだからさ」


ハッとしたように目を見開き、静かに嗚咽を噛み殺す様に泣き出した楓の頭を優しく撫で続けた。







晴「落ち着いたか?」


楓「はい、取り乱してしまってすみません」


楓が落ち着くまで10分、その間ずっと楓の頭を撫で続けていた。

真っ赤な顔は相変わらずで、目も赤くなっていた。


晴「さて、俺はちょこっと遊んでくるよ」


そう言って立ち上がり、膝に付いた埃を払う。


楓「気をつけてくださいね、あの二人は鬼の四天王で他の鬼とは一線を描く強さを持っています」


心配そうな顔をしている楓の頭を撫で、


晴「了解。 それと楓、目のやり場に困るからこれを着ていろ」


そう言って、自分が着ている上着を楓に着せてやる。その昔、都市の中で買ったものだが浄化の作用が効いていたのか未だに新品同様な状態だ。

楓は、今の自分の姿を見てまた顔が赤くなった。

お腹はほとんどが露出しており、下は結構ギリギリのラインまで破けている。

上着は楓の体を包んで尚、まだ余裕がある。

この少女が天狗を纏めているのだから、世界は広い。

鈴華達のところまで歩いていくと、


萃「ひゅ~、男だねぇ」


勇「よっ、この色男」


萃香と勇儀が茶化してくる。


晴「やめろ、照れるじゃないか」


そう言いながら、おどけた様に答える。


鈴「いえ、実際あんなことされたら大抵は堕ちますよ?」


鈴華が洒落にならないことを言ってくる。


晴「そんな事よりもどうするんだ? 俺と戦いたいんだろ?」


萃「う~ん、私達じゃ決まらないからさ、晴夜が決めてよ」


勇「それなら、私達も納得できるしさ」


どうやら、相手の選択権がこちらに任されたらしい。


晴「そういえば四天王って聞いたけど、後二人はどこにいるんだ?」


萃香と勇儀が四天王ならあと二人足りない。

鈴華ではないだろうし、多分そいつ等とも戦うことになるのだから出来るだけ一回で終わらせたい。


勇「ああ、後二人は今武者修行ってことで全国の強い奴を求めて旅に出ているよ」


なるほど、だから居ないのか・・・


晴「それじゃ、二人同時に掛かって来て良いよ。 こっちも二人がかりのようなもんだし」


その言葉に、三人は?マークを浮かべる。


萃「どういうことさ? あんたは一人しか居ないじゃないか?」


晴「それは戦ってみれば分かるよ」


萃「それもそうだね。ああ、武神と戦えるなんてワクワクするね」


勇「ああ、武神相手なら手加減も要らないだろうしね」


もはや、待ちきれないようで萃香は腕をぐるぐると回し、勇儀は杯に酒を注いでいる。


鈴「それでは双方準備は良いですか?」


萃香も勇儀も構えずに、名乗り上げた。


勇「鬼の四天王が一人、力の勇儀! 力で私の右に出る者は居ないよ!!」


萃「鬼の四天王が一人、技の萃香! 鬼は力任せだけだとは思わないことだね!!」


二人は高らかに叫ぶ。

対して、晴夜は静かに告げる。


晴「星月晴夜、唯の長生きな人間さ」


言うと同時に霊力、魔力を開放する。

今回は全開だ。流石に鬼の四天王を二人相手にして出し惜しみは出来ない。

周りの鬼達は今までにない位の歓声を上げ、天狗たちも同じくらい歓声を上げる。

萃香と勇儀は驚きつつも嬉しそうに笑い、


萃「いいね、いいね! 久しぶりに本気が出せそうだよ」


勇「確かに、これなら相手にとって不足はないね」


妖力を開放してきた。

霊力と魔力、妖力が互いに干渉しあい空気が震える。


鈴「それでは・・・始め!!」


鈴華の声を合図に、武神と呼ばれる人間と鬼の四天王二人の戦いが始まった。


とくにな~し


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