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なよ竹のかぐや

都で生活する事にした晴夜と美桜。

果てさて、どう生活するのか?


それでは、どぞー

都で生活する事を決めた際、まずは住居の確保が最優先だったのだが流石都、空き家がごろごろと点在していた。

そのうちの一軒を能力と掃除できれいにして、生活に必要なものをそろえて一日目が終わった。

翌日は、かぐや姫に会うための行列を見に行ったのだがこれがすごかった。

文字通り長蛇の列がそこには出来ており、貢物なんかがその大半を占めていた。

こんなの処理し切れるのか?と思うほど一人一人の量が半端じゃない。


晴「すごいな、これ全部かぐや姫に献上される物か」


ただ長い行列に物珍しさを感じて見に来ただけなので、もう興味は失せた。

それよりも、どうやって稼ごうか。

路銀はまだあるが、何かと金が必要になってくるのが世の常だ。

妖怪退治はあまりしたくないが、人を無差別に襲う妖怪だけ選べば大丈夫か?

そう思い立ち、妖怪退治を始めたのだがここで一つ失敗を犯した。

星月の名前を出してしまったのである。

一日目はそこまで依頼は多くなかったが、二日目からは依頼が雪崩れのように押し寄せてきて、さらには貴族達に、


?「わしの元で働かぬか?」


と、怒濤のように勧誘してきてそれはさながら押し売りのセールスマンのようだった。

民の妖怪退治は被っているものも多く、依頼の量は多いが一匹の妖怪を退治すると5.6件はまとめて解決できてしまうのでちょうどいいくらいだ。

その時は、依頼の量で割った分の料金しか取らないのでとてもリーズナブルだ。

貴族の依頼はめんどくさいものが多く、その多くが護衛の依頼だったりする。

民からは、現陰陽師の10分の1くらいしか請求しないが貴族が絡むとなかなか手が出せない金額を請求するので民からの信頼は厚いが、貴族及び陰陽師からは煙たがられた。

当然だね、そうなるように仕組んだんだから。

それでも、勧誘が途絶えることは無かった。


美桜「(晴夜もなかなかに性格が悪いのう)」


晴「(嫌いになったか?)」


美桜「(それだけはありえないのじゃ)」


そんな感じでそれなりに時間が経った。

最近では民からの依頼も落ち着き、日に一軒あるかないかというくらいまでになった。

妖怪退治をしている傍ら、助けてもいる。

話が通じて、気が向いたときだけだが。

そんな時、美桜からお願いをされた。


美桜「(かぐや姫とやらを見てみたい)」


晴「(なんでまた急に?)」


美桜「(お主は気にならんのか? 帝でさえかぐや姫の虜にされておるのじゃ。 気にならぬ訳がない)」


美桜は、いい暇つぶしでも見つけたかのようなはしゃぎっぷりである。

別に最近は依頼もそこまで多くない、って言うか徐々に減ってきているので暇になってきたからちょうどいい。


晴「それじゃ、見に行くか? でも、貢物はどうする?」


美桜「(それじゃったら、神力でお神酒でも創ろうかの?)」


文字通り神が創った酒、神力を使って桜の木を創る。

中に空洞を作り、そこに能力を使って水で満たす。

後は、神力でゆっくりと酒に変換するだけ。

それを、器に入れて浄化で不純物を取り除けば完成。

ご都合主義? 常識に囚われちゃいけないぜ?

これぞ神の奇跡!!

日本酒独特の匂いにほのかな桜の香りが漂う。

味はもちろん、癒しを付加すれば命の水に早代わり。

とっても簡単。

名前はそうだな、『晴桜』とでもつけるか。

さて、かぐや姫に会いに行きますか。






前はあれだけ並んでいた貴族も今は5人だけになったらしい。

確か、藤原は覚えているんだけど後は忘れた。

俺は妖怪退治屋として、貢物の酒を献上する。

星月の名前を出したらあっさり通してくれた。

そして、屋敷に招かれたはいいが肝心のかぐや姫は顔を隠している。

なんでも体調が優れないんだとか。

そりゃ、毎日貴族の相手してたら体調の一つも崩すわな。

当の貴族達は口々に愛の言葉を送っているが、よくもまあそんな言葉を吐けるよな。

聞いているこっちが恥ずかしいわ!

しかも、大抵が上っ面だけの内容だし。

すると、かぐや姫が始めて口を開いた。

その声はまるで鈴を転がしたかのように響く。


かぐや「皆様の気持ちは分かりました。本当にその気持ちが偽りでないのならこれから出す条件を満たしてください。それが出来た者と婚約しましょう」


貴族達の顔は喜色に染まったが、すぐに困惑の表情になる。


かぐや「阿倍御主人様には火鼠の裘を、藤原不比等様には蓬莱の玉の枝を、大伴御行様には龍の首の珠を、石上麻呂様には燕の産んだ子安貝を、石作皇子様には仏の御石の鉢を、そして妖怪退治屋、名は?」


晴「星月嶺(れい)でございます」


一瞬だけ、一瞬だけだがかぐや姫が息を呑むのが分かった。

偶然にしては、出来すぎだな。

やっぱり、何かしらの関係がある線が濃厚か?


かぐや「貴方が噂の星月一族・・・・・・では、貴方には妖怪の山の殲滅を依頼しましょう。

無論、一人で」


とんでも無い事を言い出したよ、この姫様は。


晴「ふむ、では貴女様のことは諦めましょう」


そう言って、立ち上がり部屋を出て行こうとする。

周りの貴族達は当然、部屋の者全員が唖然としている。

すると、一人の貴族(名前は忘れた)が叫んだ。


?「お主は、その程度の気持ちで求婚を求めたのか!?」


他の貴族もこちらを睨みつける。


晴「いえいえ、滅相もない。 ただ、自分では釣り合わなかった。 夢から覚めたとでも言いましょうか、それに気付いただけでございます」


それっきり、貴族は興味を無くしたように元の位置に座った。

所詮今のも点数稼ぎか、口がニヤついている。


そう言って、屋敷を後にした。






その日の晩、俺はかぐや姫の屋敷に忍び込んだ。

理由は、一目見るためと、あいつとの関わりがあるのかの確認だ。

屋敷には、腕利きの陰陽師が徘徊しているが、ある部屋だけ誰も近寄らない。

あれじゃあ、そこにかぐや姫が居ますよって言ってるようなものだ。

その部屋の縁側には、とても美しい少女が月を見上げていた。

あれがかぐや姫だろう。


美桜「(ふむ、噂は本当じゃったな)」


確かにこの時代のどんな女性と比べても、遥か高みにある美貌を持っていた。

だからって、どうこうしようなんて考えは微塵もない。

とりあえず、話かけてみるか。


晴「こんばんは、今日も月が綺麗だな」


かぐや「!!!??」


やっぱり、いきなり話しかけるのはまずかったか?

思いっきり驚いている。


かぐや「だ、だれ!?」


晴「昼間お会いしたでしょう? 星月嶺ですよ」


かぐや「あ、貴方が?」


どうやら素性がわかり、少しだけ安心したようだ。

まだ、警戒が解かれていないが・・・


晴「って言ってもそれは偽名、本当は晴夜って名前だ」


今度は別の意味で驚いたらしい。


かぐや「じゃあ、貴方が永琳の言っていた・・・?」


どうやら、ビンゴのようだ。

すると、いきなり雰囲気が変わった。

さっきまでの神聖な感じは何処にも無く、年相応の少女のものへと。


かぐや「なるほどね~、確かに永琳の言っていた通りだわ」


口調もかなり砕けた感じになり、おもちゃを前にした子供のような目になる。

かぐや姫が隣に座るように促すのでそれに従う。


輝「私は、蓬莱山輝夜よ。輝夜でいいわ、それよりも私に求婚してきていきなり帰るってどういうこと?」


少し膨れっ面になりながら、抗議の声をあげる。

それはさながら、相手にされなくて拗ねているようにも思える。

いや、実際そうなのだろう。

引く手数多のかぐや姫の求婚をあっさりやめたのだから当然だ。

自分の美しさに自信があるのだろうが、


晴「悪いけど、一目見ようとしただけで婚約する気は最初から無かったんだ。 貴族や帝を敵に回したらめんどいし」


はっきり言って、美しいがそれだけだ。

それに、美桜がいるしね。


輝「確かに、帝を敵に回すのはめんどくさいわね。 それで、何しに来たの?」


晴「永琳は元気だったか?」


それだけが聞きたかった。

それさえ聞ければさっさと出て行くつもりだったが、


輝「えぇ、元気だったわ。 貴方の話をしている時なんてまるで恋する乙女のような表情よ」


悪戯っぽく笑う輝夜。


晴「そっか、それじゃここら辺でお暇するよ」


そう言って、背中を向けたところで服の袖を引っ張られた。


輝「もう行くの? もう少し話相手になってよ」


上目遣いで見つめてくるが、


晴「残念だけど、呼ばれているぞ。 また来るからさ」


おそらく、おじいさんとおばあさんだろう。

その声はだんだんと近づいてくる。


輝「分かったわ、またね」


軽く手を振ってきたので、それに応え控えめに手を振りながら自宅へと戻った。


なんだかな~、最近どうも気持ちがついて来ない。


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