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平安の都

妖怪の山を後にして、晴夜達は相変わらず各地を転々としていた


それでは、どぞー

晴「ッシ!」


?「ギャアアアアアア!!」


晴夜の一閃で熊のような妖怪は断末魔に近い悲鳴を上げながら逃げていった。


晴「ふぅ、今日であの村ともお別れか」


天狗の里から旅立って数年、相変わらず一年ほど村に滞在しては妖怪を退治するのでは無く降りかかる火の粉から護る事を生業として生活していた。

そして、今日で丁度一年が経つ。

村の人たちは、余所者の自分を暖かく迎えてくれて空き家ではあるが家も提供してくれた。

やっぱり、人との交流はいいものである。

元の時代では決して経験する事の無い、暖かい人付き合いがとても心地いい。


晴「あぁ、どうにも湿っぽい考えが浮かんでくるな」


やはりどうしても別れというのは、慣れない。

自分に優しくしてくれれば、それはなおさらだ。


晴「ま、気が変わらないうちにさっさとお暇しますか」


そう言って、現在滞在している村に戻った。






村長「そうですか、もう一年経ちますか」


この村は大分山奥にひっそりとあるが、そんな事気にならないくらい平和である。

しかし、妖怪は滅多に来ないもののいざ来るとどうしようもない事に悩んでいたところ、晴夜が訪れた。

目の前にいる、初老の男性がこの村の村長さんだ。

この人は今の時代には珍しく、とても博識で村の人全員で掛かっても知恵比べでは負けないくらいだ。


晴「はい、そろそろ他の地を見に行きたいと思います」


晴夜の言葉に村長はとても残念そうに眉を落としたが、こればっかりは仕方ないと割り切ったのか顔を上げ、


村長「貴方が居なくなるのはとても寂しいですが、これは貴方が決めた事。 私達の勝手な都合で引き止める事は出来ませんな」


穏やかな笑みを浮かべた。


晴「最後に、置き土産を差し上げます。 皆を広場に集めてくれませんか?」





場所は村の中心にあるそれなりの大きさの広場。

周りには、村中の人たちが集まっていた。

その中心で、晴夜は美桜を憑依させる。

いきなり風貌が変わった晴夜を見て、村人は驚くがそれを気にせず神力によって小さいが桜の木を創った。

それと同時に憑依も解く。

疲労感と倦怠感に襲われるが、最初よりは大分慣れた。


晴「この桜の木を置いていきます。 大事に育ててくださいね、そうすれば妖怪はこの村に近づく事が出来なくなりますから」


村人達は驚きでもはや声も出せていない。


晴「短い間でしたが、お世話になりました」


そう言って、桜を纏って消えるように村を去った。


晴夜が村を去ってから村長は、


村長「皆の者、あの方は星月一族の者であり、一瞬だけ姿を現したのは猫神様じゃ。その猫神様が我々のために力を分けて下さった。 この木を村の護り神にしようと思うのじゃがどうじゃ?」


村人に反対する者は居なく、また猫神信仰と星月一族の名前が広まった。






村を旅立ってから、大分進んでいくと茶屋が一軒あったので休憩がてら立ち寄る事にした。

もしかしたら、面白い話が聞けるかもしれない。


晴「すいません、団子二皿ください」


店の奥から景気のいい返事が響いてくる。

団子を待つ間、相席していた旅人風の人に話しかける。


晴「こんにちは、いきなりで申し訳ないのですがここ最近で何か面白そうな噂はないですかね?」


すると、その人は嫌な顔一つせず、


?「そうだなぁ、ここ最近陰陽師の連中が(まつりごと)に介入し始めたらしい。 なんでも、占いなんかで政治を動かしてるって噂だ」


陰陽師、晴夜も前まではそう呼ばれていたが星月一族が定着してからは呼ばれなくなった。

貴族達は優秀な陰陽師を抱えており、一般の民は高額の依頼料を払えずに困っているらしい。


?「後はそうだな、星月一族って知ってるか? 護り神を宿し、その力はどんな陰陽師が束になっても足下にも及ばない程の実力で村を転々としている奴等だ」


晴「ええ、名前くらいは知ってますよ」


目の前に本人が居るけどね。


?「貴族達はどうにかして星月一族の力が欲しいみたいでな、必死に全国を探しているって話だ」


ああ、だからやたらと噂の伝達が早かったのか。


晴「確か、星月一族は妖怪も助けるのでしょう? そのような人達を探してどうするつもりなのでしょう?」


?「さあな、貴族様の考えなんて俺ら一般人にはわからねえよ。 そういえば、妖怪といえば最近鬼どもがよく出没するらしいからあんたも気をつけなよ」


鬼・・・妖怪の中でも最高のスペックを持ち、その性格はおおらかで宴会と戦いをこよなく愛する種族。

そして、人間と最も関わりが深い妖怪でもある。


晴「それは恐いですね、気をつけます」


肩を抱くような芝居を打つ。


?「それじゃ、俺はもう行くよ。 あぁそうだ、都にはもう行ったかい?」


晴「いえ、まだですが?」


?「なら行ってみるといい。 都には貴族様がかぐや姫に求婚するためになが~~い行列を作っているらしいからよ」


そう言って、店を出て行った。

入れ替わりに店員さんが団子を二皿とお茶を持って来てくれた。

団子を一つ取って口に運びながら、


晴「かぐや姫ね・・・」


確か、月に帰るんだったか?

と言うことは、あいつと何らかの関わりがあるとみていいのかな?


晴「ま、悩むより直接確かめた方が早いか」


次の行き先は、都にしよう。

貴族や陰陽師が五月蝿そうだが、なんとかなるだろう。











晴「ほぇ~、ここが都か~」


あれから、半日空を飛んで都に着いた。

流石都、どの村よりも発展しており大通りは活気で溢れている。


晴「だけど、それゆえの格差か・・・」


大通りから外れた路地裏なんかでは、ゴミが散乱し異臭が漂っている。

それでも、その異臭が大通りには漏れていないところをみると、陰陽師とかが何かしらの結界でも張っているんだろう。


晴「表の華、裏の醜はどの時代の都でも同じか」


最上層の人が居るなら、最下層の人も必ず居る。

そして、最上層は下の者を居ない者として見向きもしない。

人間の欲が形となった結果だ。

仕方ないとは言わないが、この問題は個人ではどうする事も出来ない。

たとえ、他者を完膚無きまでに叩きのめす力があろうとも、この問題の前では無力もいいところだ。

だからと言って手を差し伸べるかと言えばそれもしない。

これは、上の奴らが蒔いた種。 それを摘み取ることなんてしない。

逃げるって言われるかも知れないが、結局は個人の考えなんてものはどうとでも解釈できるし、それは全員に当て嵌まる。

結局は自分の自己満足でしかないのだ。


晴「いけね、変な事考えてしまった」


先ほどの考えを打ち消すように頭を振り、今日の宿はどうしようか?なんて考えながら大通りを進んでいった。


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