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宵闇の王女

気の向くままに旅を続けている晴夜と美桜。

その途中で待っていた出会いとは・・・?


タイトルでもうおわかりですね?


それでは、どぞー

太陽はとっくに沈み、夜が訪れる時間。

空には満天の星と銀色に光輝く月が暗い夜道を照らしている。

こんな日に野宿をするのはもったいないという事で、月の光だけを頼りに夜の散歩をする人影がある。

言わずもがなこの小説の主人公、星月晴夜である。

守矢神社を旅立ってから、早いもので一週間が経った。

出発した当初は気の向くままに歩いていたが、妖怪に襲われる回数が異常なほど多かった。

だから、低級妖怪を退ける結界を身に宿す事で普通に野宿できるようにし、食料に関しては、森に入れば困る事は無く、水は能力でどうとでも出来るので旅自体は快適だ。

何より、一人旅ではなく美桜が居る。

もはや二心同体である美桜が居るのだから文句がある訳も無い。


美桜「(夜に歩くのもいいものじゃな)」


晴「そうだろ? それに美桜が居るんだから文句無しだな」


美桜「(・・・ばかもの///)」


あぁ、やっぱり愛しいなコノヤロ~。

時に星空を見上げ、時に無駄にくるくると踊るように回り、時に月を見上げてある少女のことを思い出す。

そんな感じで誰も居ない夜道を闊歩する。

それは宛ら(さながら)一人だけの舞踏会のように、まるで世界が自分を中心としているかのように。

しかし、その世界は唐突に終わりを告げる。


美桜「(晴夜、かなり大きな妖力がこちらに近づいているのじゃ)」


晴「ああ、ミアや姫音と同じかそれ以上の力を感じる」


今の晴夜は力を隠しているので、普通の人間と同じ位の霊力しかないように妖怪側からは見えるはず。

だから、妖怪に狙われやすい。

結界もあまりに強い妖怪には効かないのでそれなりの強さなのは伺える。

そして、目の前が漆黒に染まった。

比喩では無い。

月の光も星々の光も完全に遮られ、漆黒の闇と表現するにふさわしいもので包まれているかのようだった。

そこに声が響く。


?「こんな夜中に人が出歩いているなんて運がいいな~、本当はこのまま食べちゃうとこだけど月が綺麗だし恐怖に染まる顔を見るのもいいかな」


漆黒が晴れ、声が聞こえた方を振り向くと自分と同い年くらいに見える少女が居た。

黒いドレスを身に纏い、金色の髪は背中くらいの長さで頭についている赤いリボンがよく映える。

大人びたプロポーションとは裏腹にあどけなさが残るがとても綺麗な顔立ちをした少女は月の光に照らされてにこにこと笑っていた。


ル「こんばんは、旅人さん。 私は、宵闇の王女ルーミア。こんな良い夜に出歩きたい気持ちは分かるけど妖怪に食べられちゃうよ?」


先ほどと表情は一緒だが目が笑っていない。

獲物を捉えて離さない赤い瞳は獣のそれだ。

殺気と一緒に妖力も開放し、手にはその体型に似合わない漆黒の十字剣が握られている。


晴「これはご丁寧に、俺は晴夜。 晴れた夜って意味で晴夜だ。たとえ、妖怪に襲われたとしても君みたいな美少女と会えるならそれも一興だと思うけど?」


冗談めかした態度で返す。

その態度が可笑しかったのか、鈴を転がしたように笑った。


ル「あはは、ありがとう。 晴れた夜で晴夜か、いい名前だね。 覚えていたら覚えておくね。 それじゃ、そろそろ私に食べられてくれないかな?」


言葉と同時に手に持った十字剣で切りつけてきた。

並みの妖怪から見ても目視できない速度だが、愚直なまでに真っ直ぐなので身を低くしてかわし、距離を取る。

避けられたのが予想外だったのか、その場で追撃もせずにこちらを見てくる。


ル「まさか避けるなんて思わなかったから驚いたな~。 でも今度はそうはいかないよ」


またしても、真っ直ぐ突っ込んできた。

先ほどよりもいくらか早い。

しかし、剣は振り上げられる事は無く途中で落とし、ルーミアは勢いのまま抱き付いてきた。

剣を落としたことと様子がおかしかったので抱きついてきたルーミアを受け止めてみると目を回していた。


ル「・・・おなかすいた~」


・・・どうやら空腹で力が出ないらしい。

先ほどの殺気や妖力は微塵も感じられず、今は普通の女の子にしか見えない。


晴「なんだ、拍子抜けだな」


このままにしておくのは気が引けるので、お姫様抱っこで運びつつ野宿できる場所を探しにいく。

おんぶでもいいんだけど、さすがにね・・・察してくれ。


美桜「(妾にも久しぶりにお姫様抱っこして欲しいのじゃ~)」


晴「(後でな)」


野宿に適した場所はすぐに見つかった。

周囲に陣を張り、適当な場所にルーミアを寝かせる。

麻袋から食材を取り出し、能力で焚き火を創る。

えっ?能力の無駄遣い?なにそれ?食えんの?

能力で加工した木材を鍋の変わりにしたり、切った食材を魔法の火で焼いて味を付ければ簡単に今日の夕食が出来上がる。

食材の種類が少ない中でいかに上手い料理を作れるかが今の課題だ。

この時代は野菜が極端に少なく、木の実が中心のためどうしても米や肉が主食となってしまう。

食材が少ないなら少ないなりに工夫すれば良いじゃない!というわけで、いろいろ試してはいるのだがなかなかに上手くいかない。

とりあえず夕飯は出来たので、ルーミアが起きるのを待つ間美桜をお姫様抱っこでもしてあげるか。


美桜「~~~♪」


晴「随分とご機嫌だな?」


美桜「晴夜が一緒に居てくれるからじゃ」


晴「そうかい」


そんな笑顔でそんな事言われたら、昂ぶるじゃないか。

ちなみに初めてヤルまでは、3ヶ月も掛からなかったな。

それと、美桜が求めてきた時だけ相手をしている。

っと、これ以上はR指定に掛かりそうだから自重しておこう。

丁度ルーミアも目が覚めたみたいだし。


ル「あれ?ここは」


晴「目が覚めたか?」


ル「!!?、晴・・・夜・・・・?」


晴「ちゃんと覚えていたんだな、えらいえらい」


くしゃくしゃとルーミアの頭を撫でる。


ル「ふぁっ!・・・///」


驚いて身を固くするが、抵抗はしなかった。

手を頭から離すと、「あっ・・・」っと名残惜しそうにこちらを見る。

なんだか頬が少し紅い気もするが気のせいだろう。


晴「飯作ったから食おうぜ。 腹、減ってんだろ?」


その言葉に返事をするかのようにルーミアの方から「きゅるるる」、と可愛らしい音が聞こえた。

ルーミアは、顔を真っ赤に染めて俯きながらコクンと首を縦に振る。

漫画のようなひとコマに噴出しそうになるのを堪えて、器に料理を装う。


ル「いただきま~す♪」


掛け声と同時にルーミアは料理を口に運ぶ。

永年料理をしてきて腕には自信があるが、初めて食べさせる相手の反応は気になってしまう。

こればっかりはどうしようも無いのだ。


ル「!!?」


一口食べただけで口を押さえ俯いてしまった。

何かアレルギーでも持っていたのだろうか?

心配になり声をかけようとすると、


ル「おいしい!! 人間のお肉なんかよりもずっとずっとおいしいよ!!」


幸せそうな満面の笑顔でそう言うのだった。

どうやら口に合ったようだ。

やはりおいしいと言ってもらえると作った甲斐があるね。

よほどお腹が空いていたらしく、結構多めに作ったのにあっという間に無くなった。


ル「は~、ご馳走様でした~」


晴「お粗末さまでした」


使った食器や調理器具は浄化の力で綺麗さっぱり汚れを落とす。

能力の無駄遣いなんて言わないで!!

片付けを終えるとルーミアから距離をとり、刀を抜いて振るう。

その刀身が描く弧は一瞬だけ現れる三日月のように美しく、空の月の光が反射して本当に月が存在しているかのようだ。

横に一閃、慣性を利用して逆手に持ち替え切り上げる。

くるりと回ってその勢いのまま切り払い、刀を手放して空中で逆の手に持ち返る。

斜め上に突きを繰り出し、隙を塞ぐように足はステップを踏む。

晴夜の足捌きはまるで湖面を滑るように(なめ)らかで例えるならムーンウォークのようだ。

これを応用すると、風に舞う桜のように立ち回ることが出来る。

不規則な動きゆえに相手は間合いが取り辛く、攻撃に転じにくいがあくまで対人間での話。

対妖怪では、これが回避重視になる。

まだ妖怪での実践段階ではないが、人間相手には十分通用するレベルだ。

そして、剣舞が終了すると一人だけの観客から拍手が送られた。


ル「すごく綺麗だったよ~」


晴「ありがとう、さて俺はそろそろ寝るよ。 明日に響くしね、おやすみ」


そう言って瞳を閉じると、すぐに眠気が襲ってきた。











先ほどまで踊るように刀を振るっていた少年は横になるとすぐに寝てしまった。

規則正しい寝息が聞こえてくる。

先ほどまで自分の事を食べようとしていた妖怪が居るのにも関わらずだ。

多分、今襲えば簡単に殺せるだろう。しかし、その気にはなれなかった。

お腹が膨れたということもあるが、なんとなくこの少年は殺したくなかった。

無意識に頭に手をやり、撫でられたときの感触を思い出す。

暖かくて優しい手が頭を包むように置かれ、クシャクシャと撫でてくれた。

それがとても気持ちよくて、離れていく手が名残惜しかった。

そういえば誰かと食事をしたり、撫でてもらったのは初めてだ。


ル「もっと、撫でて欲しかったな・・・」


思わず口から出た言葉に驚き、自分の行動に気が付いて頬が染まる。

その考えを忘れるように、頭をブンブンと横に振る。


ル「晴夜は妖怪が、私が恐くないのかな?」


すぐ近くで寝ている少年を見る。

私は闇を統べる妖怪。

人間は光を遮られただけで惑い、恐怖し、狂ったように叫び、私に食べられていった。

その恐怖が私の力となり、いつしか私はどんな妖怪よりも強い力を手に入れ闇の王女と呼ばれていた。

そして、私は一人になったが別に寂しくは無かった。

力が弱かった時に知り合い程度の妖怪も居たが、親しくなる前に離れていき友と呼べるような妖怪は誰一人として居なかった。

それが当たり前と思っていたし、人間は唯の食料としか見ていなかった。

最近は人間も夜に出歩かなくなっており、中々見つけることが出来ない日が続いていた。

おかげで最近は木の実なんかを食べたりして、空腹を紛らわせていたのだがそこに久しぶりに人間を見つけた。

その人間は月の光で照らされている道無き道を踊るようなステップで歩いている。

近づくとこちらに気付き、自己紹介をしたら返してきた。

名前は晴夜というらしい。

この人間は私を恐れていない。

私から離れていった妖怪は皆、私を恐れるような目をしていたのを覚えている。

どうして私を恐れないんだろう?

そう疑問に思うよりも食欲が勝ち、人間に襲い掛かる。

久しぶりの獲物と喜んだのはいいが、狩る前に空腹で意識が途絶えてしまった。

なにやら鼻とお腹を刺激する匂いに目が覚め、そこにはあの人間が居た。

名前を呼ぶと嬉しそうに笑い、頭を撫でられた。

少し乱暴に撫でられたが不思議と不快ではなく、むしろ胸の奥がじんとなるような、しかし不快ではない心地良さを感じた。

すると、お腹が「きゅるるる」と鳴り、人間は笑いを堪えるような顔をしており、それが何故かすごく恥ずかしくて俯いた。

人間から渡された器の中身を口に運ぶと同時に驚く。

おいしい・・・

人肉や森の木の実なんかよりもずっとずっとおいしかった。

そして暖かかった。

あっという間に大きな器が空になるまで食べると、晴夜は嬉しそうに笑っていた。

食事が終わると、人間は刀を取り出して踊り始めた。

いや、踊っているように見えるが実際は剣術の鍛錬をしているのだ。

その様はとても綺麗で、すぐそこに月があるのではないかと錯覚するほど美しい。

剣舞が終わるとすぐに人間は眠ってしまった。

その人間、晴夜に近づき顔を覗き見る。

寝顔はまるで子供のようで、頬を突付くと「うう~ん」と唸る。

それが面白くて、しばらくそうやって遊んでいたが妖怪で夜だというのに眠くなってきた。


ル「おかしいな~? 普段は眠くないのに~」


そのまま晴夜の腕を枕にして眠ってしまった。

何故そうしたのかは分からない。

きっと眠くてまともな思考が出来なかったのだと思う。

そう思いたい、じゃないと自分の行動が恥ずかしすぎる。

晴夜の隣はなぜだか、すごく安心できた。











翌朝、右腕に強烈な痺れを感じて目を開けると・・・


ル「スー、ムニャムニャ」


ルーミアの寝顔があった。

なんだかこのパターンにデジャビュを感じる。

というか、右腕の痺れはルーミアが腕を枕にしているせいで血が足りなくなったせいか。

すでに指先は感覚が無い。

と言っても、気持ちよさそうに寝ているのに起こすのも忍びない。

ここは起きるまでまっt「んぅ? あ~、晴夜~おはよう~」手間が省けたな。

ルーミアが体を起こすのにあわせて自分も体を起こす。

腕が圧迫から開放され、徐々に血液が流れ始めた。

ルーミアは寝ぼけているのか、焦点が合っていない目をこすりながらこちらに体重を預けてくる。


晴「~~~~~っ!!」


ルーミアを左腕だけで支えると、右腕が先ほどとは比べ物にならないくらい痺れに襲われる。

経験した事がある人は分かると思うが、正座を長時間した後にやってくるあの痺れだ。

ルーミアはこちらに体重を預けたまま船をこぎ出しているし・・・・・あっ、能力使えばいいのか。

能力で右腕の血液量を正常に戻すと同時に痺れも跡形も無く消えた。

すると、今度は左腕に鋭い痛みを感じた。


ル「ほぉのおにふすふぉしふぁたい~(訳:このお肉少し固い~)」


見ると、ルーミアが服の上から腕に噛み付いていた。

血は出ていないものの、めちゃくちゃ痛い。


晴「いだだだだだだ!!ルーミアちょっ、まっ!!」


ヤバイ、このままじゃ噛み千切られる。


美桜「なんじゃ~、五月蝿いの~」


おお、ナイスタイミング!流石、護り神!


晴「美桜、ルーミア取って、早く!」


未だに腕に噛み付いているルーミアと俺の顔を交互に見比べて、微笑を一つ。

あれ? おかしくない? このままじゃ俺の腕が大変なことになるんだよ?

なのになんでそんな微笑ましいものを見るような目で笑っているの?


美桜「晴夜はモテるのぅ、じゃが晴夜の一番は妾じゃぞ?」


何を勘違いしているのか、まるで聖母のような微笑を浮かべているばかりで一向に助けてくれる気配は無し。

その間も左腕の痛みは増していく。


晴「ルーミア!本気でヤバイから、ちょっ、アッーーーー!」


















何とか腕は噛み千切られずにすんだ。

結構危なかったが・・・


晴「さてルーミア、俺達はそろそろ行くよ」


ル「そうなんだ・・・もうちょっと、お話したかったけど仕方ないね」


ルーミアの表情は見るからに曇っている。


晴「そんな顔すんなよ。俺は不老の人間だからな、生きていればまた会えるさ」


その言葉に、一気に表情が明るくなる。


ル「本当に!? 絶対また会えるよね?」


晴「ああ、約束だ」


最後に頭を撫でてやり、風の吹く方向に歩きはじめる。

ルーミアは大きく手を振っていて、それに応える様に手を大きく振った。

今度はどこに行こうかな?

この小説のルーミアは、

・外見は晴夜と同い年くらい(16歳くらい)

・大人びたプロポーション(いわゆるボンッ!キュッ!ポン!)

・性格は明るく、活発

で構成されております。


感想・要望・誤字指摘等ありましたらお願いします。

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