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いい日旅立ち(後編)

それでは、後半をお楽しみください。

神社へと着いた俺は居間に諏訪子と神奈子を呼び出した。


神奈子「話ってのは何なんだい?」


神奈子は聞いてくるが諏訪子は俯いて黙ったままだ。

おそらく、薄々感づいている。


晴「実はね・・・そろそろ、旅を再開しようかと思うんだ」


神奈子の表情が驚きに変わるのに対し、諏訪子は顔を上げ、


諏「やっぱりか、そろそろじゃないかと思ったんだよね」


予想が的中したとでも言いたげな顔をしていた。


神奈子「諏訪子!? あんた知ってたのかい!?」


諏「いや、ただそろそろじゃないかなとは思っていただけだよ。 それで、いつ出発するの?」


晴「この話が終わったらすぐかな、荷物はあまり無いから準備も昨日のうちに終わったし」


実際、手荷物なんてものはほとんど無く路銀を入れる巾着と食料を入れる袋くらいだ。


晴「それから、これを二人にあげるよ。 こっちは天照と天鈿女に渡してくれないか?」


取り出したのは、例に漏れずペンダント。

蛇と桜が神奈子、蛙と桜が諏訪子のものだ。


晴「これはそうだな、証・・・かな? 俺の護りたいものの証」


神奈子「ありがとう、大事にするよ」


諏「それじゃあ、私からは鉄の輪をあげるよ」


そう言って取り出したのは、腕輪くらいの鉄の輪だ。

自分の腕に丁度収まるサイズだ。


晴「サイズもぴったりだし、すごく軽い。 ありがと、大切にするよ」


神奈子「それじゃ、私からはこの酒を持っていきな」


って言うか、それお神酒じゃね?

まあ、いいか。 くれるって言ってるんだし。


晴「サンキュ、いい酒だな」


神奈子「当然だ!」


自身満々に胸を張る神奈子。

なんで、神奈子が威張るんだ?


晴「美桜、お前も挨拶したらどうだ?」


晴夜の隣に美桜が花びらを纏いながら現れる。


美桜「二人には本当に世話になったな、妾達は不老ゆえまた会いに来るからの」


諏「うん、待ってるからね。 旅先でも元気でね」


目に涙を溜めながら必死に笑顔を作る諏訪子。

美桜と諏訪子は仲が良く、本当の姉妹のように接していた。


美桜「うむ、元気でな。 神奈子、諏訪子の事を頼むぞ」


神奈子「ああ、任せときな」


居間から外に出ると、太陽は完全に昇り、相変わらずの晴天だった。


晴「それじゃ、そろそろ行くよ。 またな!!」


地面を強く蹴り、まだ見ぬ景色を求め空へと旅立った。











諏「行っちゃったか...」


晴夜達が飛んでいった空を見ながらぽつりと呟く。

次の瞬間、頭に衝撃が走る。


諏「!ッ~~~、何するのさ、神奈子!」


どうやら、頭を引っ叩かれたようだ。


神奈子「いつまでも辛気臭い顔するんじゃないよ、こっちまで気が滅入る」


諏「だからって、叩かなくてもいいじゃないか!」


神奈子「ああ、叩けば直ると思って」


ほう、そんな理由で私の頭を叩いたのか・・・


諏「どうやら、神奈子とは一度じっくり話し合う必要があるみたいだね」


神奈子「上等じゃないか、かかってきなよ」


私は鉄の輪、神奈子は御柱をそれぞれ構える。


諏「この、女郎ーーー!!」


神奈子「こんの、ペタンコ幼女ーーー!!」


二人の喧嘩は夕方まで続き、巫女さん総出で止めに入るまで続いた。











そんな事は露知らず、晴夜は暢気に鼻歌を歌いながら歩いていた。


晴「~~~~~♪」


なにか目的があって歩くのではなく、風の向くまま気の向くまま、時間を気にしないで旅が出来る。

両手には神奈子からもらった酒と杯が二人分、隣には美桜が顕現しており、歩きながら飲むのはマナーとしてどうかと思うがそんな事二人は気にしない。

ちなみに、美桜は耳と尻尾を隠しているのでパッと見髪が白いだけの人間にしか見えない。


晴「さ~て、どこに行こうかな?」


美桜「まずは、拠点となる場所を探さぬか?」


晴「拠点って言うと家のことか?」


美桜「うむ、家があれば最終的にはそこに戻ればいいし便利じゃ、何より家があるのと無いのとでは精神的にもプラスになるはずじゃ」


確かにそれはそうだ。

生前も、散歩に出かけても家という帰る場所があったから折り返して戻る事が出来た。

そう考えると欲しくなってくるが問題がいろいろ生じてくる。


晴「でも、人の集落には作れないよな」


自分は不老ゆえ、10年20年は平気で家を空ける可能性もある。

帰って来たら別の誰かが住んでいました、じゃ笑えない。

しかも、必ず異端として追い出されるのは目に見えている。

人が近づかず、且つ立地のいい場所となるとかなり絞られてくる。


晴「まあ、時間はたっぷりあるんだし村とか里を転々としながら探すのが一番かな?」


とりあえずは、この状況を何とかしなくては。

さっきから、誰かにつけられているのは感じていたが複数人いた様で囲まれていた。

多分、追い剥ぎか山賊の類だろう。

数は目測で5,6人、多分まだ隠れている。

そのうちのリーダーっぽいのが話しかけてきた。


?「おいおい兄ちゃん、えらくべっぴんさんを連れているじゃねーか。 痛い目に合いたくなかったら荷物とその女を置いて失せな」


周りの連中は下品な目つきで美桜をなめる様にジロジロと眺め、下卑た笑いをしている。


晴「どうする、美桜?」


美桜「どうもこうも、相手にするだけ無駄じゃろうな。 不愉快じゃから妾は寝る」


そう言って、花びらを纏いながら俺の中に戻る。

美桜がいきなり消えたことで、かなり動揺している。


?「て、てめぇっ!さっきの女はどこへやった!?」


晴「は?女? まだ昼過ぎだぜ、夢を見るなら昼寝してろよ」


とりあえず、すっとぼける。

いちいち相手していたら、きりが無い。


?「くそっ!野郎どもやっちまえ!!」


一斉に飛び掛ってくる。

隠れていた奴らまで出てくる始末だ。

完全な物量作戦。

だけど、こんなのに刀や能力を使うまでも無いな。

どんなに数が多くても、飛び道具が無い限り一度に攻撃できる人数は大体3人程度。

それくらいなら容易くあしらえる。

一人目が殴り掛かってきたところを、カウンターで顔面に拳を突き刺し吹き飛ばす。

棍棒を両手で振り下ろそうとしている奴に接近し、膝で腹とみぞおちの真ん中辺りを蹴り込む。

その隙を突いて、殴り掛かってきた奴の腕を取りそのまま投げ飛ばす。


晴「悪いけど、あんたらじゃ1000人いようと変わらないよ」


濃密な殺気を飛ばし威嚇する。

しかし、それだけでその場にいる全員が口から泡を吹いて気絶してしまった。


晴「ありゃ、やりすぎた?」


ま、いいか。 こんな奴らにかける情けなんて持ち合わせていないし。


晴「さぁて、どこに行こうかな?」


視界に映るのは山、森、草原、川。

そして、そよ風が頬を撫でる。


晴「風が気持ちいいな、とりあえず風と共に歩いてみるか」


途中で村か里があったら、宿を恵んでもらおう。

背中に心地いい風を感じながら、一歩一歩を踏みしめるように歩き出した。


今度はどこに行こうか・・・?


感想・要望・誤字指摘待ってます。

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