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第3話 推しヒロインの趣味

 

「二人ともバイバーイ!」

 

 夏元が帰っていく。

 時刻は午後二時。マスト前。僕が冗談で「ここ待ち合わせにする?」と聞くと冬野が首を横に振る。

 

「ここまでの道が分かんないから、ムリ」

「だよね」

 

 冬野の家の方向は知らないけど、冬野と会った場所までなら僕も戻れる。一旦はそこまで移動してみることにした。

 

「それで、ここが朝に冬野さんと会った場所なわけだけど」

「見覚えある」

「じゃあ、ここにする?」

「もうちょっと家の近くが良いかな」

「……分かったよ」

 

 僕の登校時間が伸びるけど、冬野と一緒に通えると思えば安い物だ。早起きするだけの得がある。

 

「ここを通ってね」

「うん」

 

 さらに進んでいくと「バウッ!」と犬の吠える声が聞こえた。

 

「ひぅっ!」

「大丈夫、冬野さん?」

「う、うん……燿がいるからね、こっちには。まあ、それに朝も吠えられたし」

 

 僕を盾にして犬の前を通り過ぎる。リードで犬小屋に繋がれてるから問題ないと思うけど。冬野の精神的な問題だと思う。

 

「それで、次は?」

「えっと……このまま行って、開けた場所に出たら」

 

 歩道の整備された場所に出ると冬野は犬がいなくなったことに安堵したのか、胸を撫で下ろす。

 

「ここが良いかな」

「ここまで来いと」

「そうしてくれるとありがたいね」

 

 犬のいないところを通るルートも知ってるから、次はそっちにしよう。

 

「それにしても、思ったより迷ってなかったのかな? でも……今日、燿と会ったあの後はちょっと不安かも」

 

 僕が道を覚える邪魔をしたのか。でもあのままだと学園に時間通りに着かなかったかもしれないし。

 

「嫌ならムリにとは言わないけど……?」

「嫌だなんて言ってないからね?」

 

 嫌なわけがない。

 言うつもりもない。

 

「そっか、ありがと」

「どういたしまして」

「これからも迷惑かけるだろうけど」

 

 冬野はクールな印象だけどちょっと天然で。

 

「それ決定事項なのね」

 

 そして。

 

「だって、わたしだからね」

 

 卑屈だ。

 

「陽毬みたいに何かしらでお返しするから、その内」

「……となると、手作りの何かかな」

「わたしに対する要求、ハードル高くない?」

「あ、ごめん」

 

 僕のゲーム知識からポロリと出てしまった。冬野の趣味は料理だったから。

 

「ううん。わたしはまだ迷惑かけるだろうから。料理……あんまりやった事ないけど。その内ね」

 

 料理は学園に来てからのだったのか。

 

「作ってくれるんだ」

 

 期待してる。

 その言葉を飲み込んだ。

 

「ありがとう」

 

 たぶん、その言葉は冬野にとっては欲しくない言葉だろうから。


「期待しないでよ」

「気持ちが大事なんだよ」


 そういうのって。

 僕らは互いに「じゃ、また明日」と言い合って別れた。

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