アフター2 友人の結婚式
「燿」
「ん?」
「ちょっとトイレ行ってくる」
「そっか。んー……なら僕はちょっと二人と話してこようかな」
「わかった」
僕は本日の主役である二人の元に向かう。
「どうも」
「あ、平坂くん。おや、今日はドレスじゃないんですね」
披露宴の最中ウェディングドレスから薄桃色のカラードレスに着替えを終えた春木……改め、周防里菜が言う。
「今日はっていうか、僕は普段からドレスじゃないんだけど?」
仕事の時なんて普通にスーツなんですけど?
「でもこの前テレビで────」
それについては。
「春木さんや」
「今はもう周防でーす」
「じゃ、周防さんや」
僕が呼び直すと「ん? 呼んだ?」と新郎が反応する。
「君の方じゃないんだ」
「呼び分けてくれ、頼む」
「わかったよ、暦くん」
「そこんとこよろしくな平坂」
さて、と。
改めて僕は里菜の方に向き直る。
「それで里菜さんや」
「どうしました?」
「あれはドレスではない」
僕が着たのはワンピースであってだね……え? なんでワンピースなんぞを着る羽目になったのかって? それはね……ボーナスという言葉に揺さぶられたからなんですね。
「ふふ。いやわかってますよ? いやー、世間の反応見るのも面白かったですね。商品はどうなったんですか?」
「……売れ行き上々でしたよー」
そのおかげでボーナスもたんまりもらえましたとさ。
「で、私も買いましたよ。それにしてもいろいろやってるんですね、平坂くんのお勤め先」
そうなの。食品とかもやってるけど、化粧品とかもやってるんだよね。
「平坂くんがCMに出てて私びっくりしちゃいましたよ」
隣の暦も腕を組んでうんうんと頷いてる。
「そうそう。なんかいきなり里菜が動画共有してきて秋谷凛出演してる新作の予告でも出たのかと思ったらお前だったし」
「それはお騒がせしましたね」
それにしても、と里菜がつぶやく。
「どうしたの?」
「いや、私が何かをするまでもなくまさか平坂くんが女装するとは……と思いまして」
「あはは。お金のためだよ」
僕の言葉に「ん? なんか欲しい物でもあるのか?」と暦が首を傾げた。
「そりゃ……まあ」
いろいろとお金があった方がいいじゃん?
「あー」
なんか察したような顔をしてる。
「ま、頑張れよ」
暦が柔らかく笑う。
「私も手伝いますよ。ドレスのこととか」
「それは美月に言ってくんない?」
僕のドレスとか必要ないからね?
「でも、冬野さんなら気にしなそうですけどね」
「僕の意思を無視しないでくださいね?」
なんだったら日織さんもノリノリでドレス着せようとするかもしれないし。おそらくは魁星さんは止めないだろうし。
「とりあえず二人とも、改めてお幸せに」
僕は二人にそう告げて、戻ってきてたらしい美月のいる方に向かう。




