81話 鬼軍曹ユイ、再び!?
感動の再会とプロポーズが終わり、涙も乾いたところで。
私はパンパンと手を叩いて場の空気を切り替えた。
「それでは早速ですが、今後の事を話したいと思います」
「今後の事?」
「え? 何の事だ?」
ミナとキーゴは、突然の話にわけがわからず首を傾げた。
しかし私は、それには答えずズバッと言い放った。
「先ずはキーゴさん。 今の仕事は今日で辞めて下さい」
「は? いや、ちょっと待ってくれ」
キーゴが慌てて反論する。
「いくらミナがレベル4の錬金術師になったとはいえ、俺もしっかりと働いてミナを支えたいんだ! 紐になるつもりはない!」
「え? それは当たり前ですよね?」
「・・・え?」
キョトンとするキーゴに対して、私は絶対零度の冷たい視線を送った。
その視線を受けたキーゴは、背筋が凍る思いをしたようで、ヒッ、と小さく鳴いた。
「今後は仕事の『分担』が必要だと思うのです」
「えっと、ごめん。どう言う事だ?」
「キーゴさんは、この店の『店長』として、品出し、接客、販売をして下さい」
「「え!?」」
「だって、錬金術のお店で若い女性が一人で店番をしていたら、どう言う目で見られるかわかっていますよね? 変な客も来ますよね?」
「そ、それはもちろん!!」
「だからミナさんは、依頼があったり在庫が少なくなった物を作る『裏方の仕事』に徹して欲しいんです。
それに今後は錬金術の依頼が殺到すると思いますよ? **『レベル4の錬金術師』**が知れ渡るのも時間の問題ですから」
「それはそうだな……」
キーゴは真剣な顔で考え込み、そして頷いた。
「わかった。店は頑張って俺が何とかする。……でも、当面はミナと一緒に仕事をさせてくれ。
俺に接客は出来ないし、商品の事もわからないことばかりだから」
「は?」
今日一番の、ゴミを見るような冷たい視線を浴びて、キーゴは震え上がった。
「ひいっ!!」
「出来ない? 『出来ない』じゃなくて、**『ミナさんの為に一生懸命努力して出来る様になる!』**の間違いですよね?」
「も、も、も、もちろんだ! だけど実際に現場に出て覚えないと、全くわからないから・・・」
「それについては、既に手を打っています」
私はニッコリと微笑んだ。
「接客、店舗運営、在庫管理等のノウハウですが……『ロス・キューデ商会』で約1ヶ月の特別研修を受けさせてもらえる事になっていますから」
「ロス・キューデ商会!?」
キーゴは商会の名前を聞いて、目が飛び出るんじゃないかと思う程驚いていた。
ミナも口を手で覆っている。
「ロス・キューデ商会って、王都でも今一番勢いのある商会って聞いた事があるわよ? その商会だよね?」
「ん〜、そうなのかな? でも、その商会です」
私はさらっと説明した。
「ロスさんとは色々とありまして……まあ、この辺りは察して下さい? それでオウディスにも直営の店があるんだけど、さっきお願いをしに行ったら責任者の人が出て来て、直ぐに許可がもらえました」
「「・・・・」」
『そんな事ありえるのか?』
『普通は無いわよね?』
『だよな? それにロス・キューデ商会と言ったら、今働きたい職場No.1の超エリート集団だと聞いたぞ?』
『でしょうね』
『そんな所で俺なんかが・・・』
『まあ、そこはユイちゃんだし? ここは素直に恩情を受けましょう?』
『そうだな。そうだよな』
二人の顔に書いてある心の声が聞こえてきそうだ。
「どうしました?」
「いや、ありがたく受けさせてもらうよ! やらせてくれ!」
「はい、頑張ってください」
「わかった。ありがとう」
「あ! ただ、覚える事は大量にあると思うし、期間が短いから**『超スパルタ』**になるかもって言われてますが、大丈夫ですよね?」
「えええ!?」
その言葉を聞いたキーゴは顔面蒼白になった。
「まあ、そこは愛の力で乗り切ってください!」
「・・・・・はい」
「ユイちゃん? ちなみに研修時間はどれぐらいなの?」
心配そうにミナが聞く。
「えっと、確か休憩込みの朝7時から夕方5時だと言ってました」
「それなら何とか頑張れるかな?」
キーゴがホッとした顔をした。甘いな。
「あ、もちろん。ミナさんの店の商品知識や錬金術の基礎知識については、それ以外の時間で覚えて下さいね?」
「えっっ!?」
「何ですか? ミナさんは同じぐらいの時間を、いえ、もっと過酷な時間を頑張り努力してレベル4を習得したんですよ? キーゴさんと一緒になるために」
「ご、ごめん・・・死ぬ気でやるよ」
「ユイちゃん? キーゴをあまりイジメないであげて?」
「え〜〜、いじめて無いですよ〜。発破をかけてるだけです〜」
ミナは苦笑しながら、私に近づいてきた。
「私の為に色々してくれてありがとうね」
「いえいえ。私も**『ミナお姉ちゃん』**には幸せになって欲しいから」
少し驚いたミナだったが、直ぐに満面の笑みでユイを抱きしめた。
「ありがとう」
それからは、私の計画通り順調に準備が進んだ。
キーゴさんの研修は、あまりの過酷さと覚えることの多さに予定より少しオーバーして、2か月近くかかっちゃったけど、充分許容範囲だった。
キーゴさんは毎日ヘロヘロになって帰ってきていたけど、その目は死んでいなかった。愛だね。
まあその間、私はミナお姉ちゃんと二人で楽しく過ごさせてもらったから嬉しかったけどね。
お茶したり、買い物したり、たまに錬金術の研究をしたり。
本当に姉妹みたいな時間を過ごせた。
その後は、2人の新婚生活(店長と錬金術師)を邪魔しない程度にお店に顔を出した。
店はキーゴさんの頑張りもあって大繁盛し、ミナさんは裏方で安心して錬金術に打ち込めるようになったみたい。
幸せそうな2人を見る事が出来て、本当によかったと思う。
私の役目はこれで終わりだね。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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