08話 理不尽と言う名の必殺技と禁断の魔道具
初めての魔獣討伐を行った日からほぼ毎日、近くの森に通い続けて自信がついた私は、調子に乗って「北側の森」の奥へ行ってみた。
結論から言うと、それが失敗だった。
遭遇したのは、本来なら今の私でも倒せるはずの「牛の魔獣」。
でも、目の前にいるのは明らかにサイズがおかしい。通常の3倍はある。 そう、レアタイプだ。
デカいだけならまだしも、硬すぎる! ファイヤーボールを顔面に当てても「あ?」みたいな顔してるし、アースランスで串刺しにしようとしても、皮膚が硬すぎて弾かれる。
そのくせ、戦車みたいなスピードで突っ込んでくるんだから始末に負えない。
唯一、水が弱点なのかウォーターボールが少し効いたけど、ダメージがショボすぎてHPバーが全然減らない(見えないけど)。
これじゃあ倒しきる前に、私のMPが枯渇する。
「やばい、やばい、どうしよう!?」
残りのMPを逃げる為だけに使って町まで戻る? ……ダメだ、あんなのが町まで追ってきたら、おじいちゃんもおばあちゃんも死んじゃう。
とりあえず一旦距離をとって、脳みそフル回転で考えるんだ!
私は走る方向を確認し、**≪闇≫**で敵の視界を潰した。
そして真っ暗な中、決めていた方向へ全力疾走!
牛戦車が闇から出てくる前に、身を隠す場所を探す。
険しい岩山のふもとに大きな木のくぼみを発見!
後ろと左右は岩壁、前は木。最高の死角だ。
街道からは反対向きだからやり過ごせるかと思ったけど…… ドシ、ドシ、ドシ。 地面の揺れが、真っ直ぐこっちに向かってきてる。
嘘でしょ? 視覚以外の何か(嗅覚?)で追跡してるの?
まだ距離はあるけど、見つかるのは時間の問題だ。
私は覚悟を決めた。 逃げられないなら、やるしかない。
完全に見つかっていない今が、最初で最後のチャンス。
水が弱点だから、出来る限り水を圧縮して……硬く、鋭くイメージする。 ひたすら硬度を上げていったら、いつの間にかカチコチの「氷の矢」になっていた。 これなら刺さるかも。
でも、あの装甲を貫くには威力が足りない気がする。
こんな時、リーニさんならどうするのかな。 リーニさんなら……。
っ! そうだ、あの時リーニさんは**「風に火を混ぜて」**た!
物理法則と魔法のハイブリッド。あれを一か八かやってみよう。
私は「氷の矢」の後ろに、火の魔法をセット。
瞬間的に爆発させて、弾丸のように射出するイメージ。
さらに風魔法で矢に螺旋回転をかけ、ジャイロ効果で精度と貫通力を上げる。
頭の中で計算式が走る。
前世の記憶にある**「対物ライフル」**のイメージを、魔法で強制再現!
慎重に3つの魔法を調整しつつ、目視できる距離まで迫ってきた牛戦車に狙いを定めた。
「……貫け! ≪スナイパー・マジック≫!!」
ドォォォォォン!!
撃った私が認識できないほどの速度で氷の弾丸が飛翔し、衝撃波と共に魔獣を貫通した。
魔獣はその場に崩れ落ち……貫通した矢はさらに後ろにあった大岩をも粉々に粉砕した。
「…………」
私は恐ろしく破壊し尽くされた跡は見なかった事にし、戦利品だけササッと回収して、目をそらしながらその場を離れた。 やりすぎたなんてレベルじゃない。
「はぁ、疲れた~……」
安堵したら急に足の力が抜けた。
さっきの木のくぼみで休憩しながら、ステータスの確認でもしようかな。
【ステータス】 名前: ユイ HP: 200 / MP: 620
【魔法】
極地属性 Lv4 / 極水属性 Lv5 (MAX?) / 極火属性 Lv4 / 極風属性 Lv4
極光属性 Lv3 / 極闇属性 Lv3
極六属性魔法習得ボーナス Lv3
【スキル】
極染色 Lv3 / 極錬金術 Lv2 / 極裁縫 Lv3
極エイムマジック Lv1 (←New!)
スキル発動後、対象物をロックオンすると1回だけ最初に使用する攻撃魔法が必中になる。
(効果範囲:極危険感知Lvに依存 / インターバル1時間)
【特性】
極危険感知 Lv4 (←UP!)
半径50m以内の危険な兆候を感じとる
うん、まあ予想通りだね。 私の仮説では、Lvの上がる条件は**「魔法の理解」と「習熟度(イメージ力)」**だと思う。
前世の記憶がある私は、この世界の誰よりも「物理現象」を理解している。 だから1回で高度な魔法が発動できて、爆速でレベルが上がるんだと思う。
【無詠唱】= スイッチの省略
【同属性・複数同時】= 並列処理
【異属性・複合魔法】= 物理融合(今回のレールガン)
たぶん、これらをクリアするたびにボーナスが入ってるんじゃないかな? これだとリーニさんが言っていた「何年使ってもLvが上がらない人がいる」のも納得だわ。 「爆発」を「火の神様の怒り」だと思ってる人と、「急激な燃焼と膨張」だと知ってる私とじゃ、解像度が違うもんね。
まあ、全部私の仮説だけど!
そんな事を小難しく考えながらステータスをぼ~っと眺めていたら、いつの間にか眠ってしまってました。
……はっ! 気が付いて起きたら、周りはもう真っ暗。
「やっば!!」 本来なら、まだこの辺りは魔物が少ない場所だけどゼロじゃない。 急いで帰ろう。
全力ダッシュで町に着いたのは、かなり遅い時間でした。
はい、めっちゃ怒られました。
とても心配かけてたみたいで、すでに町から捜索隊も出て行った後でした。 家に帰ったら、おじいちゃんとおばあちゃんに泣きながら抱きしめられました。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
本当に、本当に心配をかけてごめんなさい。 明日から当分は、魔法の練習をやめて家に引きこもります。反省します。
このところ、ずっと家にこもっています。謹慎中です。
家事手伝いは、ちゃんとしてますよ?
服作りもちゃんとやっていますよ?
あと、魔法の理解について「スキルにも同じことが適応されるんじゃないか?」と思って試してみました。
はい、やっぱり正解っぽいですね。
おかげで**「染色」「錬金」「裁縫」スキルは全てLv5**になりました。
そしてスキルは更に便利な物へと進化しました。
染色 Lv5:
半径10m以内にある物なら、触れなくてもイメージだけで染色可能に。
「部分指定」もできるようになったから、チェック柄も作れるよ~!
【染色取り消し】機能追加。リセット機能、神。
錬金&裁縫 Lv5:
【分解】機能追加。
失敗作を素材に戻せる。エコすぎる。
作れる幅もかなり増えて、魔石を使った「魔道具」も作れるようになった。 たぶん、今なら魔法の触媒アイテムも作れるだろうけど、お母さんの形見があるからそれはいいや。
そして私は今、**「ある魔道具」**を作っています。
何を作っているかは乙女の秘密です。
拷問されても言いません。
お墓まで持っていく秘密です。
彼の記憶(前世)をもとに作っているのだけど……。 レアモグラから取れた**「振動系スキルの魔石」を核として、スライムのプニプニ素材を元にコーティングして…… 形状は、こう、「小さな卵型」**にして……。
あとは、ちゃんとスキルが発動するか試さないとね。
ポチっとな。 ……ブブブブブブブ。
はい、発動しました。**【微細振動スキル(弱)】**が。
スライム素材のおかげで、肌触りは最高です。
うん、完成したね。 彼の記憶で、これの使い方は何度も見ているのでわかってる。
でもその前にしっかり動作確認をしよう。
実験に危険は付き物だからね。
安全最優先です。
おじいちゃんとおばあちゃんは畑仕事にいって、家に誰もいないね? 鍵、閉めたね?
「よし、やってみよ~ 肩こりに効くかな?(裏声)」
私は自分の部屋にこもって、厳正なる検証実験を開始! 被験者:私。
(中略)
……実験は大成功でした。
機能性、出力、持続時間、すべてにおいて想定以上の数値を叩き出しました。
今後も継続して、品質向上のためのデータ収集(毎日)を行いたいと思います。
あ、そうだ。 今日は【天気が良いから】布団でも干しておこうかな。
別に他意はないよ? うん、【天気が良いから】よく乾くしね! 汗とかね!
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




