57話 ギルドマスターからの面倒な依頼
「え!?」
さすがのビオラさんもビックリしたみたいだ。
「ユイちゃん、もしかして使えそうなの?」
私は感じたままを説明した。
「この魔法陣はまだちゃんと機能していると思います」
「ただ、やっぱり使える人がいないだけかな?」
「私も**【今は】**まだ使えないと思います」
「なんとなく? ですけど」
触った瞬間に流れてきた魔力? の感じからすると、私には恐らくまだ**「Lvが足りない」**のかもしれない。 そんな感覚だった。
「そう、残念ね」
「でも私はユイちゃんがこの魔法陣を使いこなす様な気がするわね」
「はい、頑張ります」
「ふふふ、無理しなくていいからね?」
「はい」
その後、私達はギルドの個室に戻って来た。
しばらくビオラさんと喋っていると、誰かが部屋をノックした。 「
どうぞ」 入って来たのは風格が漂う50代ぐらいの男性だった。
「どうしたの? ギルマス」
え? この人がギルマスなの?
「邪魔をする」
「この子が、ビオラが言っていた子か?」
「そうよ。可愛いでしょう?」
ギルマスはその問いには答えず私を見た。
「私はこの王都の冒険者ギルドのマスターをしているアルカスだ」
「始めまして、私はユイです。ビオラさんには大変お世話になっています」
「お前が珍しいぐらいにかまっている冒険者だからな、一度見に来た」
「ふっふっふ、彼女の成長は私の想像を遥かに超えるスピードよ?」
「それじゃあ、あれはどうだ? 任せられないか?」
「ダメよ。彼女は自由に動いて成長するタイプなの」
「彼女を縛り付けるような依頼は駄目よ」
「しかし……」
「駄目。絶対に許可しないわよ」
なんか険悪な空気なんですけど。
目の前で夫婦喧嘩はやめて欲しいよ。
「あの~、内容によっては依頼を受けてもいいですよ?」
「何? 本当か!」
「ユイちゃん、気を使わなくていいから、あなたは自分がやりたいように動きなさい」
「でも何か凄く気になっちゃって」
「話を聞いてから、無理だと思ったら断ってもいいならですが」
「ああ、それでかまわん」
「本当に無理だと思ったら断るのよ?」
「はい」
依頼の大まかな内容はこんな感じだった。
商人Aが数か月前に**「新しい鉱脈」**を発見した。
しかし周辺に魔獣が多数確認されたので、対応をするべく王都に戻った。
王都に戻って手続きをしている間に、商人Bが魔獣を討伐してしまった。
当然AとBは鉱脈の所有権や採掘権を巡って激しく対立した。
商業ギルドが間に入って仲裁をしているが両者とも譲らなかった。
さらにもう1つ深刻な問題があって、その鉱脈には魔獣や魔物が住み着いていたらしい。
冒険者ギルドに討伐依頼をしているが、討伐失敗が続いているみたい。
さらに奥には**「ボス」**の存在が確認されているが、誰も倒せないそうだ。
ちなみにボスまでたどり着いたのは、王都軍の第二兵団。
でも結局、ボス戦に敗退したから公表をしていないのだって。
ダサいね。
今回の依頼は、その**「ボスの討伐」**。 鉱脈内の魔獣はこのボスが生み出しているらしく、ボスの殲滅が最優先だって。
そして依頼を受ける前に、**「AとBのどちらの商人に着くか宣言してから」**討伐に向かわないといけないみたい。
ようするに、先にボスを倒したら採掘権等を得られるので、討伐前にどっちの商人につくか宣言しろって事ね。
うん、面倒くさい。
その鉱脈の魔獣はレアな鉱石を落とす事が稀にあるから、最初は人気の依頼だったみたい。
ただ、鉄や鉱石を含んだ魔獣なので、斬撃が効きにくく、1匹倒すのも一苦労なので、割に合わないと今では不人気な依頼になったそうだ。
う~ん、私があまり持っていない素材(鉱石系)を落とすのは魅力的だね。
依頼はボスの討伐だけど、鉱脈内の魔獣を1匹でも倒せば依頼の失敗にはならないみたいだし。
「商人の争いはどうでもいいけど、素材が欲しいから、この依頼受けます」
「そうか、ありがとう!」
「ユイちゃん、無理をしては駄目よ?」
「はい、無理そうなら逃げ帰ってきます」
「でも素材は欲しいから1匹ぐらいは倒して帰ってきます」
「では、これが依頼書だ。これを商業ギルドで渡してくれ」
「わかりました」
「ユイちゃん、本当に気を付けてね?」
「はい」
私が向かった先は商業ギルド。
こっちもバカでかい建物だった。
中に入った瞬間、全員が私を見た。
ですよね~? やり過ぎたよね?
うん、わかってた。
今の服装は、ワインレッドのドレス風ひざ丈ワンピースに、同色のヒール靴。
うん、超目立つ。 王都の商業ギルドだから恥ずかしくないように、お嬢様風に着替え来たのだけど。
うん、失敗。TPO間違えた。
どうしよう、この空気?
やっぱり逃げようと考えていると、受付嬢が私の方へ走ってきた。
「もしかしてユイさんですか?」
「はい、そうです」
「冒険者のギルマスより話は伺っています。こちらへどうぞ」
私は個室へ案内された。
「私は商業ギルドの受付をしているメイナです」
「冒険者のユイです」
「それではこちらの書類に目を通していただいてサインをしてください」
うん、内容は聞いていた通りだね。最後にどっちの商人を選ぶかだけど、読むのが面倒くさくなってきた。
「商人はどっちでもいいのだけど、お勧めはどっち?」
「え?」
「ん?」
なんでそんなに驚くの?
「迷うことなく一択だと思っていましたが?」
「だって、この王都の商人の事情なんて知らないですし?」
「え?」
だから、何でそんなに驚くの?
「この商人の争いは、王都で納税1位の商人パウサー・テレス様と、3位のロス・キューデ様です」
「なので一択かと思ったのですが?」
「えええええ?」
いや、いや、そんな情報知らなかったし。 あのロスさんが当事者だったの?
「ちなみに、先に鉱脈を見つけたのはどっちですか?」
「ロス・キューデ様です」
「ですよね~、そう思いました」
「はい、一択でした。ロス・キューデさんを支持します」
書類にサインをしてメイナさんに渡した。 その後、説明を受けてから商業ギルドを後にした。
(なんだ、最初からロスさんの依頼ならそう言ってくれればよかったのに!)
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




