56話 朽ちた魔法
私は地図を見ながら、ロスさんに用意してもらった宿屋に向かった。
冒険者ギルドから徒歩で5分ぐらい。
立地最高。
宿は外見こそ普通だったけど、セキュリティーはしっかりしてるし、従業員の教育も行き届いてる。
一泊の料金を聞いたら、なんと**「朝食付きで無料」**だと言われた。
VIP待遇すぎる。
さすがにそこまでしてもらう訳にはいかないので、料金を払うと受付で言ったのだけど……。
なんでも、私が契約して卸してる薬品や生地が、とんでもない利益をたたき出しているそうだ。
この王都でロスさんは商人として納税5位だったみただけど、最近は3位まで急上昇したらしい。
このまま行くと、来年には王都で納税1位の大商人になる事も見えてきているとの事だった。
だから王都にいる間は、無料でここを提供したいとの事。
また「3食無料」や「部屋のグレードアップ」をすると、私が気を使って他の宿に逃げ出しそうだから、あえてこの条件(普通部屋・朝食のみ)に留めたんだって。
うん、よくわかっているね? 私の性格を熟知してる。
でもせっかくのご厚意だから、有難く使わせてもらう事にした。
部屋の広さは普通、壁の厚さも普通だから、耳を澄ませると隣の部屋の声が微かに聞こえる。
だから、ここで実験をするとご近所迷惑になるからやらないけどね。
それに当分は図書館にこもって本を読むだけだし十分だね。
翌日、図書館に行ってきたけど、やっぱり大きかった。
迷子になりそう。 制限付きの本も、ビオラさんの手紙を渡したら、すんなりと許可がでたよ。
しかも、ここは貸出OKだったので数冊を借りて宿で一日中、読書をしております。
引きこもり万歳。
宿に籠りだして4日目。
今日は新たな設置型の結界を作る実験をします。
題して、「完全防音結界」!
土と風魔法を使って、空気中で伝わってくる音を遮断する。 内と外側に効果をのせて維持し、有効範囲を半径3mほどで固定し、情報を魔石に書き込んだ。
これは遮音と吸音を併用した物を、魔法で疑似的に同様の効果を作り出した防音結界。
後はスキルを使って魔道具にした。
「うまく出来たかな?」
完成した魔道具のスイッチを入れて、有効範囲の外から鍋やフライパン、ガラス瓶等を結界内へ投げ入れてみた。
……シーン。
うん、完璧だ。
音が全くしなかった。 無音の世界。
これで防音結界の魔道具が完成だね。
例えばこの部屋で鉄をガンガン叩いて鍛冶をやっても音は漏れないから安心だよ!
最近は近所迷惑になるから実験をしてなかったけど、今日から実験再開だ~!
今日は図書館ではなく、冒険者ギルドに向かっています。
本を読んでいると、過去の実験でとても気になる記事があった。
この王都も実験に関わっていたみたいだから、何か知らないかビオラさんに聞きに行くのです。
だって、他に知り合いなんていないし。
数分でギルドに着いたけど、まだ朝早かったからなのか人で溢れかえっていた。
入りたくなかったけど、実験の内容を知りたい気持ちが勝ったから、いつも通り視線を無視して中へ入っていった。
「うわ~、やっぱり超混雑しているね」
ビオラさんは直ぐに見つかったけど、受付で忙しそうにしていた。
うん、やっぱり出直そう。 私は回れ右をした。
その瞬間、前回と同じく呼び止められた。 「ユイちゃん!!」
ビオラさんが私の方に走ってきた? 今、窓口で対応中だった男性もこっちを見てるんだけど? え? 大丈夫なの?
「おはようございます。後で構わないので少しお聞きしたい事がありまして」
「いいわよ。ここはうるさいから個室に行きましょう」
「え? まだ受付の仕事中ですよね?」
「大丈夫よ、あれぐらい代わりの者がするから気にしなくても」
え? でもさっきの男性が恨めしそうに私を見てるよ? これ私が恨まれない?
「わ、わかりました、お願いします」
私は逃げる様にビオラさんの後を追って個室に逃げ込んだ。
私は、テーブルを挟んでビオラさんの正面の椅子に腰かけた。
「それで聞きたい事って何?」
「図書館の本に書いてあった、**『転移魔法』**についてです」
「数百年前には使用された記録があったけど、今は誰も使えないって書いてました」
「それに数十年前に、この王都で使用実験をしたけど駄目だったとも書いてました」
「この実験内容はどこの本にも載っていなかったから、何か知らないかなって思い聞きに来ました」
「ああ、あれね~」
「何か知っているのですか?」
「これ自体は隠している内容でもないし、現物も見れるからね~」
ん? 現物?
「転移の魔法陣はそれぞれの国や街に残っているわよ?」
「転移するための詠唱も記録が残っているし、別に秘密でもないからね」
「でも、過去の実験で一流の魔法使いや、宮廷魔術師を総動員して実験をやってみたけど成功はしなかったみたい」
「そうなんですか」
「その魔法陣って今でも見れますか?」
「ええ、見れるわよ。行ってみる?」
「いいのですか?」
「いいわよ」
「それではお願いします!」
「後、その詠唱って本に書いてあるもので合ってます?」
「ええ、間違いないわ」
「わかりました。ありがとうございます」
「ええ、じゃあ、行きましょう」
「はい」
私達は歩いて公園に向かった。 公園に到着した私達は、右端の方に少し高台になっている所の階段をのぼった。
「ここよ~」
ビオラさんが指をさした先には、直径10mぐらいの魔法陣が刻まれていた。
「これが転移の魔法陣」
「さわってもいいですか?」
「どうぞ」
私は魔法陣の中心に移動して、魔法陣を触ってみた。
その瞬間。 ピカッ。 と、一瞬だけ魔法陣が光った。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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