36話 決意の朝と、別れの予感
私は、急いで部屋に戻って来た。
解毒薬を作る為にね。
本当は少し足りなかったけど、材料はまだまだあるから作れば問題ない。
でも異常と言われる私の調合スキルをあの場で見せるわけにはいかなかったからね。
もう事情は伝わってたので、予定数を作り終えて、ロスさんに手渡した。
とりあえず、私の仕事はここまで。
後は任せて部屋に戻った。
今日は疲れたのでゆっくり休もうと思ったのに、ブルーナが寝かせてくれない。
「ブルーナ? もう寝よう?」
「やだ……ぎゅってして……」
ブルーナは甘えん坊モード全開だった。
翌朝。 朝食の時に神妙な面持ちで、ロスさんにお願いをされた。
「ユイさん、ブルーナ達を王都に連れて行ってくれませんか?」
「達」って言うのはきっと、ブルーナの弟のことだろうね。
「お父さん? どうしたの?」
そっか、ブルーナは知らないのね。
「ユイさん、私からもお願いできませんか?」
母親までも一緒に言いだした。
「お母さんまでどうしたの?」
「報酬はユイさんとブルーナ達が一生遊んで暮らせる金額を先にお渡しします」
……これは、遺産分与だ。 ブルーナの両親はここで死ぬつもりなんだね。
「え? どういう事? お母さん?」
「ブルーナ、今この街に向かって凶悪な魔獣が攻めて来ようとしてるの」
「!! ユイさん! 今ここでそれは!」
「いえ、ブルーナにも知っててもらいます」
「そして、この街の領主は討伐軍を結成して打って出たのだけど……全滅したの」
「え?」
「それで今は、第二軍を準備中だけど勝てる見込みは少ないみたい」
「だからブルーナを安全な所に逃がして欲しいって依頼よ」
ブルーナは両親を見た。
「お父さんとお母さんも一緒に逃げよう?」
「私だけなんて嫌だよ!」
「ブルーナ、私は立場上この街から逃げる事ができないのだよ」
「私もね一緒に手伝わないといけないから、先にユイさんと一緒に避難してて?」
さすがのブルーナも、これが今生の別れになる可能性が高いことがわかって、今にも大泣きしそうだった。
私はそんなブルーナの頭にポンと手を置いた。
「大丈夫だよ」
そしてロスさんに返事をした。
「この依頼は受けることができません」
「っ! ユイさん!」
「ブルーナにはまだ両親が必要だからです」
「しかし……」
「あの魔獣は、私が倒してきます」
「そんな!」
「無茶だよ、軍が全滅する相手なんでしょう?」
「ユイが死んじゃうよ!」
「私の魔法が異常な事、ブルーナは知っているでしょう?」
「でもでも……」
「あの時、盗賊に襲われてた時に戦っていた私を見てどう思った?」
「……とっても強くてカッコよかった」
「ありがとう」
「でも、私はあの時、全然本気の魔法は使ってないよ?」
「私の手加減なしの魔法はまわりを巻き込んじゃうしね」
「だから勝算はある」
「問題は誰も巻き込まないように、私が一人で戦える環境だけ」
「そして今がそのチャンスなの」
「ユイさん、私はあなたに助けてもらってばかりですね」
「私はこの恩を返せるのでしょうか?」
「返せない時は……娘さんをもらいますよ」
「それは、私も娘も喜んでお渡ししますよ」
ちょっ、冗談ですよ?
場を和ませる冗談だからね?
「もう~! 二人共~~!」
ブルーナは顔を真っ赤にして抗議してた。嬉しそうに。
「冗談ですよ。私はブルーナを助けたいだけ」
「ブルーナは笑っている方が可愛いでしょ?」
「ありがとうございます。では各ギルドや領主にもまだ出撃しないように止めておきますね」
凄いね、そんな事できるの?
この街でどれだけ権力をもってるのよ?
大商人恐るべし。
「はい、じゃあ着替えたら行ってきます」
「ユイ、気を付けてね?」
「うん、ありがとう」
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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