35話 救済の風
はあ~……。
思っていた以上に重い話だ。
今のうちにブルーナ達を連れて、この街から逃げるのが正解かもしれない。
でも、これは見捨てると後悔しちゃうよね。夢見が悪くなる。
「いくつか質問がありますがいいですか?」
「ああ」
「街に数個はあったと思いますが、解毒薬は使いましたか?」
「使った。賛否はあると思うが、正規軍の幹部を優先した」
「その効果はありましたか?」
「ああ、毒は消えた」
「その解毒薬は薬屋と雑貨屋に売っていた、**『あれ』**で間違いないですか?」
「それで間違いない。商業ギルドが買い取って病院に提供したからな」
「あの瓶1っで何人に使えました?」
「1瓶で5人分だったと聞いている」
「最後に解毒が必要な人の人数ってわかりますか?」
「一時間前の人数だが、327名だ。……誰も亡くなっていなければだが」
「わかりました」
「人数分の解毒薬は、私が用意します」
「なんだって!?」
驚くギルドマスターと、ざわめく周りの商人たち。
「正直あまり知られたくないのだけど、その人数分なら私の持っている解毒薬で足りると思います」
「今回は緊急事態だから提供します」
「!!」
「テイラーー!!」
「今すぐ扉を閉めろ! 誰も出入りをさせるな!!」
ギルマスは突然、商業ギルドの門番みたいな人に命じて扉を閉めさせた。
バンッ!!
「今、ここにいる全ての者に、商業ギルドマスターの名において命じる!」
「今、ここで見聞きした事の他言を禁ずる!」
「いかなる理由があろうとだ!」
「わかったか?」
驚く事に、その場にいた商人たちが全員、背筋を伸ばして「はい!」って返事をした。
ギルマス凄~い。カリスマだね。
「ベイル、念のため今ここにいる全ての人を記録しておけ」
「わかりました」
ギルマスが私の方に向き直した。
「それで……本当にこの人数の解毒薬を提供してもらえるのか?」
「はい、前に大量の素材を発見したので、全て解毒薬にして所持しています」
「私の解毒薬は1瓶で10人分だと思うので、33個渡します」
「1瓶で10人分、最高品質の品か……」
「ありがとう。解毒薬は全て買取りにさせてもらう」
「用意が出来たら、ロスに渡してくれ」
「あいつの客人から直接買い取るわけにはいかんからな」
「それとも、この事はロスにも黙っていた方がいいか?」
「いえ大丈夫です。私もロスさんを信用していますから」
「わかった」
「それでは、取りに帰る前に、一度病院へよって行きます」
「魔法使いも疲弊してると思うので、HPが危ない人には回復をしてから戻ります」
「すまない……よろしく頼む」
私は病院の場所を教えてもらい、出来るかぎり急いで向かった。
現場に近づくにつれ、怒涛のような叫びが聞こえてくる。
「誰か! だれか回復をお願いします!」
若い女の人が涙を流しながら叫んでいる。
「もう無理だ、皆もうMPがない!」
「でも、このままだと!」
「わかっている、だが諦めてくれ!」
「全員は救えない。もう命の選択をしなければ駄目なんだ!」
「でも・・」
そこに肩で息をして、今にも倒れそうな女性が走って来た。
「私がやります」
「駄目だ! あんたも、もうMPが無いだろう! これ以上はあんたが死んでしまう!」
「大丈夫です……」
「駄目だ!」
こんな声があっちこっちから聞こえてきた。
ここは病院の横の建物。
広いフロアに毒に侵された人が全員寝かされていた。
もうそれは、見るに堪えない地獄絵図だった。
これを見た瞬間、一人ずつ誰が危篤か見て周る場合じゃないと理解した。
そんな悠長なことしてたら間に合わない。
私は魔力に声を乗せて**風魔法(拡声)**を使い、声を拡散させた。
『今から全員に回復魔法をかけます。全員、静かにしてくだい』
私の声がスピーカーから聞こえる声の様に、全体に響き渡った。
しかし、突然起こった事に理解ができずに、ざわめきは収まらなかった。
私の事が信用できない事ぐらいはわかる、でも!
『場の魔力が乱れて効果が薄くなるから、静かにして!!』
シーン。
皆、ビックリして私を見た。
うん、静まった。今のうちだね。
私は回復魔法をより強くイメージして圧縮し、声と同じ要領で風魔法に乗せて回復魔法の広範囲化をした。
そして、力ある言葉と共に光魔法を解き放った。
「全ての者を救え! ≪癒しの光≫!!」
カッ!!!!
強烈な光が辺りを包み込み、範囲内の全ての人に回復魔法が発動した。
苦しんでいた人々の呼吸が落ち着き、顔色が戻っていく。
『これでしばらくは安心です。魔法使いの人も含めて一度休んでください』
『この後、商業ギルドから解毒薬が届きますので全員助かります。安心してください』
全員が茫然と私を見ている。神を見るような目で。 やばい、目立ちすぎた。
と、とりあえず、喧騒が戻る前にこの場を退散だ!
そして私は、逃げるようにその場を後にした。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




