30話 快適な馬車ライフ?
「ふぅ……」
ああ、怒りに我を忘れて**「氷魔法」**を使っちゃたよ。
どうやって誤魔化そう、と考えていると声をかけられてしまった。
「助けていただいて、ありがとうございました」
「私はグラネットと申します。この護衛隊の隊長をしています」
「あなたは王都の宮廷魔術師様でしょうか?」
また宮廷魔術師って言われたよ。
この世界の魔法使いは宮廷にしかいないの?
「いえ違います。旅をしているただの冒険者のユイです」
「そうでしたか、しかし凄まじく洗練された魔法でした……」
「いえ、そんな事は」
あああ、早くこの場を離れたい。目立ちたくない。
「では、私は先を急ぎますので、これで失礼します」
私は踵をかえして、その場を離れよう(逃げよう)としたら、身なりのいいおじさんが走ってきた。
「待ってください! まだお礼をしていません!」
「失礼しました。私はこの馬車の所有者で商人のロス・キューデです」
「本当にありがとうございました!」
突然、追いかけてきて呼び止めないで欲しい。ビクッてしちゃったじゃない。
それにあまり近づかないで欲しい。
「お礼はいらないです」
「しかし、そういうわけには……」
今度は商人の後ろから、先ほど馬車から引きずり出されてた女の子が、こっちに走って来た。
「お姉さん、助けてくれてありがとう!」
ペコリとお辞儀をしてお礼を言ってきた。
可愛い女の子だね、10歳ぐらいかな?
「うん、無事でよかったね」
「お姉さん、もうどっか行っちゃうの?」
「まだ旅の途中だからね、次の町まで行くつもりだから」
「え、じゃあ**『クシオスの街』**まで行くの?」
え? どこよ? それ。
「ごめんなさい、この辺りの土地勘がなくて街の名前はわからないの」
「そうでしたか、ここから西に行くと王都があって、東に行くとクシオスの街ですよ」
え? 王都が西?
私、森をさまよっている間に王都を通り過ぎてたって事?
「西に王都があるの? その更に西の街は何かわかる?」
「えっと、**『オウディスの街』**です」
うわ~! オウディスも通り越してるよ!
私、どんだけ歩いたの!?
「そっか~、ありがとう」
「じゃあクシオスの街にでも行ってみようかな(流れで)」
「やった~~!!」
何で喜ぶの?
「じゃあ一緒に行きましょう?」
「ねえ、お父さん、いいでしょう?」
えええ、ちょっと待って。私、男の人と一緒に寝泊まりするのは嫌なんですけど?
「じゃあ、私専用の馬車でいいよね?」
「あ、ごめんなさい。まだ名乗っていなかったですね」
「私はブルーナ・キューデ。15歳です!」
……15歳!? 嘘でしょ?
「えっと、ご一緒してもいいのですか?」
「ええ、もちろんです。ただブルーナ一人用の馬車なので少し狭いかもしれませんが」
「いえ、でも本当に私が一緒でもいいの?」
「もちろんです!」
「じゃあ行きましょう!」
ブルーナは嬉しそうに私の手を引っ張って自分の馬車に向かっていった。
まあ、いいか。街まで送ってもらえるなら楽だしね。
うん、まあ予想通り、馬車の移動は快適だった。
二人で座る分には余裕があったし、お喋りをしていても勝手に進んで行くのだから。
ただ一つ難点を上げるとしたら……寝床は狭かった。
まあ馬車だし一人専用のだから仕方ないのだけどね。
横幅が60cmほどのスペースだから、結構ピッタリくっついて寝る事になった。
けど一番の問題はブルーナの寝相が悪かったこと。
寝言は言うし、動きまくるし、それにね、うん、まあ……色々当たって大変だった。
翌朝からも、ブルーナとお喋りしながら馬車に乗っているのだけど、食事やトイレ、休憩の時にも私の手を取ってついて来るんだよ。
これでブルーナにしっぽがあったら、激しく左右に振っているんだろうね。
それに馬車に座るときも、日に日に私にくっついて座るようになってきた。
「ブルーナ、くっつき過ぎだよ~、もう少し離れて座って?」
「ええええ? 何でですか? 私が嫌いですか?」
何か本気で泣きそうな目をして私に訴えてきた。
「いや、そうじゃなくてね?」
「じゃあ、いいよね?」
ブルーナは、英雄を見るようなキラキラした目で私を見るから困るよ。
「はあ……」 私は諦める事にした。
本気で嫌ってるわけではないからね。
道のりは順調で、明日にはクシオスの街に着くところまで来た。
でもブルーナにだけ私の【秘密】などを話しているうちに、私に対する依存度がヤバイほど高くなっていた。
食事等で馬車を降りて少し歩くだけでも、私と手をつないで歩かないと泣きそうになる。
しかも、恋人繋ぎだよ? 周りからは「仲のいい姉妹」に見えると好評だったけど、私はちょっと恥ずかしいよ?
丁度、その話をしている人がいてブルーナが嬉しそうにしていた。
「私達、仲のいい姉妹に見えるんだって!」
「それじゃあ私がお姉さんだね」
「はい! 今度から**『お姉様』**って呼びます!」
「やめて! それだけはやめて、本当に!」 (百合の花が咲き乱れちゃう!)
「えええ~、でも私の方が年下なんだし違和感ないよ~?」
ん? え? 二人で首をかしげて見つめあってしまった。
「あ! そういえば言ってなかったけど、私も15歳だよ?」
「ええええ!?」
ブルーナは私の身長(169cm)と胸(巨乳)を凝視して「嘘だ~」って言いだした。
確かに私の身長は高い方だと思うし、ブルーナは150cmぐらいだから同い年には見えないかもね。
「私は本当に15歳だよ?」
私はギルドカードも見せてあげた。
信じられないものでも見る目で私をみて、また「お姉様」って言いかけたから全力で阻止した。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




