27話 聖なる光の鉄槌
1時間ほど走り続けて目的地にたどり着いた。
「多分、ここであっているはず」
「ゴブリンの巣の殲滅依頼がこの近くにあったから」
うん、私の**『危険感知』**もビンビン反応を示しているよ。 巣穴独特の、嫌な気配がする。
「じゃあ行くよ」
「まって! このまま突撃するの?」
「奇襲をかけるにしても、何か準備をしないと」
「ゴブリンは巣のなかも合わせると50匹近くいるはずだから!」
「うん、大丈夫。私は無詠唱魔術師だから準備なんていらないし」
「え!? 無詠唱魔術?」
私は洞窟の入り口に向かって走り出し、その後を慌ててメティナさんが追いかけてきた。
この殲滅は時間との勝負だ。避けたり防がれたりすれば時間の無駄なので、私は走りながら地・水・火・風、全ての属性魔法に「透明色の染色」をしておいた。
これで不可視の弾丸の準備完了。
洞窟に近づいた私は、入り口付近にいた見張りゴブリンを無色のエアカッターで瞬殺。
そのまま、洞窟の中に入っていった。
洞窟の中は酷い有様だった。
奥に行けば行くほど、酷い暴行を受けて殺されたであろう女性の死体が多数あった。
腐臭と血の匂い。
私は吐きそうになるのをぐっと我慢しながら、遭遇するゴブリンを次々と処理しつつ走り続けた。
そこに声が聞こえた。
「嫌~~~! 助けて! 誰か、嫌、嫌~~!!」
声の聞こえた方の広場に行くと……四肢を抑えられ、今まさに犯される寸前のエルフの少女を発見した。 周りには、下卑た笑いを浮かべるゴブリンの群れ。
プツン。
私の中で、何かが切れる音がした。
「……汚らわしい」
私は魔力を練り上げて、その魔法を解放した。
「魔を祓え! ≪聖なる光≫!!」
カッ!!!!
私を中心に半径50mの**「光の球体」**が爆発的に膨張し、その中にいる「魔の存在」を全て飲み込んだ。
私の奥の手の一つ。
対【魔】用の光魔法。 使用すると最大MPの3/4を持っていかれる超高コスト魔法だけど、MPの量によって威力が変わる。
ただ、困った事に範囲を指定出来ないから滅多に使えない。
以前、初めてこの魔法を使った時は大変だった。
まだ威力はそこまで強くなかったのに攻撃範囲は広かったから、範囲内で生き残った魔獣が一斉に私にヘイトを向けて攻撃してきたからね。
あれは本当に死ぬかと思ったよ。
でも今は違う。
今の私のMP(3000オーバー)でゴブリン程度だと、オーバーキルどころじゃない。
悲鳴を上げる暇もなく、光の中で塵となって消滅した。
洞窟内が昼間のように明るくなり、そして静寂が訪れた。
何が起こったかわからず茫然とする少女に、メティナさんが駆け寄っていった。
「テミス! 大丈夫? 何もされてない?」
「う、うん、大丈夫……助けてくれてありがとう……」
「私は何もしてないよ。そこにいる彼女、ユイさんが一人で殲滅してくれたから」
テミスと呼ばれた少女は、私に向かって頭を下げてお礼を言ってきた。
「本当に危険なところを助けてもらって、ありがとうございました……」
「私はエルフ族のテミスといいます」
「私はユイです」
「私はメティナさんが必死にあなたを助けようとしてたから、手伝っただけだよ」
再び二人が頭を下げてお礼をしてきた。
「もう、いいよ~ 間に合って本当によかったよ」
「ユイさんは、王都の宮廷魔術師ですか?」
「え? 違うよ?」
「王都は行った事もないですし」
「それと、私に『さん』はいらないですよ」
見た目の年は、私とそんなに変わらないだろうけどエルフだからね~。
絶対かなり年上だろうし、
敬語使われちゃうと恐縮しちゃうよ。
「でも、いえ、わかりました。でもユイも私達に普通に話して欲しいかな?」
え~、恐らく何十歳も年上の人にそれはやりにくいよ~……なんて思っていたら、 「私達っていくつぐらいだと思ってる?」って聞いてきた。
「え? エルフだから、かなり上かと?」
「ブー! 違うよ~~!」
何か頬を膨らませて怒ってる?
むちゃくちゃ可愛いんですけど?
「私達はエルフのなかでは一番【若い】14歳です!」
「エルフだからって何十年も生きてるって思うなんて酷いです~!」
「偏見だ~!」
えっと、何から突っ込もう?
こっちが素のメティナさんなのかな?
手をブンブン動かして抗議してる姿が可愛すぎるんですけど?
「わかったよ~、ごめんなさい!」
「でもエルフは見た目じゃわからないもの」
「普通に話すから、そんなに怒らないで~ 抱きしめたくなっちゃうから」
「え? なんで怒ってたら抱きしめられるの?」
「だって表情とか仕草が可愛いから?」
「もう~~~!」
「まあ、取り敢えず外に出よう」
「そうだね」
私達はナルイラの町に到着した。 メティナとテミスは王都に行く途中だったので、ここまで一緒に来たんだ。
「本当に寄って行かないの?」
「うん、出来るだけ早く王都に行きたいし」
「そうそう、あまり遅かったら小言をいわれるしね?」
「そっかー、残念だけど仕方ないね」
「これあげるから使ってね?」
私は例の**「結界装置の魔道具」**を差し出した。
「安心して寝れる為の魔道具で、見ているものを見えていないと勘違いさせる**『認識阻害』の魔法と、結界内に入って真っすぐ歩いているつもりでも無意識に結界から遠ざける『方向阻害』**の魔法を組み込んだ結界装置」
「寝床に近づけさせない為の結界だけど、まだまだ改良をするつもり」
「まだ試作段階だけど、少しでも安全に寝れるようにね」
「ユイ、本当にいいの? これ結構凄い魔道具だと思うんだけど」
「うん、2人には無事に王都に着いてもらいたいからね」
「ありがとう、じゃあ、使わせてもらうね」
「ユイがいつか本当の一人旅を始める時は、必ず声をかけてね?」
「私達も、もっと強くなれるように頑張るから」
「また一緒に旅をしようね」
「うん、今度は世界中を!」
「うん、いつの日か絶対に!」
「じゃあ行くね~」 「うん、またね~」 「バイバイ~」
また会う約束をして、メティナ達は王都へ向かって行った。
また友達が増えた。
嬉しい気持ちと、少しの寂しさを抱えながら、私は久しぶりの我が家へ帰った。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




