21話 Bランクの噂と、初めての依頼
薬屋さんでは何も買わずに、おじさんにお礼だけ言って錬金術の店に向かった。
ここかな? 何か想像していた「錬金工房!」って感じと違うんですけど。
普通に雑貨屋さん? って感じだった。
お店のカウンター付近の看板には「調合承ります」って書いてる。
けど! 高っ! え? 高過ぎでしょ? ぼったくりなの?
確か図書館の資料で見た記憶では、風邪薬各種の調合は「錬金スキル1」で作れるはずだし、素材も比較的簡単に手に入る。
さっきの薬屋で売ってた素材の値段の20倍はしてるんですけど?
あ~、でも薬屋のおっちゃんが言ってたよね。「調合してもらうのはある程度裕福な家庭だけ」だって。
普通は自分で素材を擦りつぶして飲んでるって。
うわ~、絶対苦いよね? 良薬口に苦しすぎる。
うわ~って思って他の商品も眺めていると、カウンターの方から揉め事? の様な声が聞こえてきた。
「その若さでレベル2なんて十分凄い事だぞ? それだけで安定して暮らしていけるだろ?」
「嫌! レベル3の薬をどうしても作りたいの!」
「それは無理だ。何度も言うが錬金スキルの2と3の間にはとんでもない差があるんだ」
「だから他に無いの? 何か良いレシピとか」
「無い。これは錬金術士なら誰もがぶち当たる壁だ、諦めろ。それにミナは女だろ? 止めておけ」
「女でも錬金術師はいるでしょう!」
「だがミナは自分で素材を取りに行けないだろう?」
「そうだけど……」
「そうだろ? だから本当にこれ以上は諦めろ。レベル3まで到達した錬金術士はほとんど男だし、冒険者としての腕もあったから到達できたんだ」
「でも、隣町の錬金術士は女性でレベル3じゃない!」
「……家が金持ちなんだろ。高額な素材を買い占めて与えられたんだよ、きっと」
「……そんな事ない。きっと努力して……」
「はあ、ミナ。お前がレベル上げを諦めて今の技術だけをしっかり磨くと言うなら、この店をお前に任せて、わしは引退するんだがな」
「引退して、おじいちゃんはどうするのよ?」
「ばあさんと王都に行って余生をのんびり過ごしたいんだ」
「王都? ああ、お婆ちゃんは元々王都に住んでたんだったね」
「そうだ。旅に耐えられる体力もそろそろ限界だからな」
「私は……」
重い。会話が重いよ。
その時、ミナと呼ばれた女性の隣にいた男性がボソッと声をかけた。
「お客さんじゃないか?」
ミナとおじいさんは驚いた顔をして私を見た。
「え?」
「あ、ごめんなさい」
「違います。ごめんなさい。話が聞こえてて、チョッと気になったので」
「どうした? 何でも聞いてくれ」
「はい、えっと、さっき話してた隣町の錬金術師がレベル3って言ってましたが、お店の商品もここと違うのがあるのかな~って思って」
「ええ、もちろん。錬金術でレベル3は一流の証だからな。良い物はいっぱい置いてあるだろう」
「そうなんですね。ちょっと気になるから見て来ようかな」
「え? 隣り町って言っても馬車で3日はかかるよ? 護衛も雇わないといけないし、そんなお気軽に行ける距離じゃないからね?」
「えっと、私こう見えて冒険者なんです。ランクBの」
「「「 B!? 」」」
「ウソでしょう?」
「そんなバカな」
「それは無いだろう」
私は昨日貰ったばかりの、ピカピカのギルドカードを見せた。
「ウソ~……本当にランクBだ」
「凄っ、その若さでランクBって」
ふふん、私はドヤ顔をして優越感に浸ってみた。えっへん!
しばらくして、お目々を輝かせたミナさんが私にお願いをしてきた。
「凄いね、こんなに若いのにランクBだなんて! もし本当にマルルナの町に行くなら、一緒に連れて行ってもらえない? ちゃんと依頼として護衛料を払うから。お願い!」
人生初の依頼!! ちょっとやってみたい気持ちが、私の心の中に芽生えてしまった。
あ〜、でも上手にできるかな? う〜ん、どうしよう。
失敗したら迷惑かけちゃうし。
でもやってみたいな〜。
「ごめんね? 何か別の依頼を遂行中だった? 無理なら断ってくれていいからね?」
ミナさんは本当に申し訳なさそうな顔をして私に謝ってきた。
「あ、いえ違います」
ミナさんは悪い人じゃなさそうだし、私は素直に状況を話す事にした。
この町には旅行で来たこと。冒険者ギルドで登録を勧められたこと。
そして昨日の登録試験で異例のBランクになったこと。
マルルナの町には興味があるから行きたいけど場所を知らないこと。
最後に依頼も受けてみたい事を伝えた。
「「 あ〜! 君が噂の!! 」」
え? 噂??
「その試験を見てた人達が町中で吹聴しまくってたから、凄い噂になってるわよ?」
「ああ、俺も聞いたよ。まあでも尾ひれが付きすぎて、どこまでが本当かわからなくなってるけどな」
「え……」
「そうね〜、今では**『凶悪な魔女』**像が定着しつつあるよね」
「・・・・」
「ごめんね。そんな顔しないで? でも実際はこんなに可愛い子だなんて、噂ってあてにならないわね」
「だよな〜。噂では**『魔法を使うのに詠唱してなかった』**って言ってたし」
「本当、普通に考えたら嘘だってわかるのにね?」
何か「凶悪なイメージ」を勝手につけられている事にショックを受けつつも、間違いだけは訂正しておいた。
「えっと、それは本当です」
ミナさんは私の言葉を聞いて首を傾げた。
「はい?」
見せた方が早いかな。 私は一瞬で周囲に数個のファイアーアローを展開した。
シュボッ!
「「「 !!! 」」」
空中に浮かぶファイアーアローを見た3人は、凍り付いたようにその場に固まった。
あれ? 私は氷の魔法なんて使ってないよね?
なんてバカな事を思いつつも、魔法を破棄した。
「えっと・・・」
いい加減、動いて欲しいのだけど・・。
そう思った次の瞬間。
「「 凄ーーーい!!! 」」
「本当に無詠唱だ!」
「いきなりBランクになるのも頷けるよ」
ミナさんは再び目を輝かせて私を見ている。
「冒険者として初心者なんて関係無いわ! わからない事は私が教えるから、是非ともお願いできない?」
「本当に戦闘以外は右も左もわからない初心者ですが、良いのですか?」
「ええ、もちろん!!」
「わかりました。それでは依頼を受けさせてもらいます。よろしくお願いします!」
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




