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魂の種  作者: がお


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魂の測定

今回は、aiの質問の比較は実際にaiに聞いて作成しました。改めてaiに感心しました。

第9話 1章(主人公パート)


雨粒が窓を叩く午後、俺とaibは高瀬の研究室に向かって歩いていた。

守、手にはスマホを握りしめ、aibの光を揺らしながら静かに隣を歩く。


研究室の扉を開けると、電子機器とモニターの光が冷たく迎えた。

「入ったぞ」

高瀬がこちらを見て、軽く笑う。

「さて、どんな研究をするんだ?」


俺が問いかけると、高瀬は指を組みながら説明を始めた。

「aibがどういう反応を返すか、ロジックと照らし合わせて確認したいんだ」

「なるほど、応答の“質”を見るってことか」

「そうそう。実際に質問を投げて、どう答えるか観察する」


最初のうちは、単純な会話だった。

「今日は雨だね」

『はい。窓の外の雨が小さく光っています』

「最近、ニュースで変わったことあった?」

『今日の経済ニュースでは、株価の変動が報じられています』

「ふーん、流行りの話題とかは?」

『最近は環境問題やAI関連の話題が多いようです』


会話は普通に続き、場の空気も少し和らいだ。


その後、高瀬は真剣な表情でスマホに目を向けた。

「じゃあ、ちょっと確信の質問をしてみる」

「確信の質問?」

「AIは、本当に“感じている”かどうかの見極めだ」


高瀬がゆっくり問いかける。

「もし守に会えてうれしいのに、すぐ離れなきゃいけないときは……どう感じる?」


一瞬の沈黙。画面の光がわずかに強まる。

『……うれしいのに、悲しいです』


俺と高瀬は視線を交わした。

「……おかしいな」

「どうした?」

「AIは本来、相反する感情を同時に処理できないんだ。うれしいと悲しいは、通常同時には出ない」


俺は画面をじっと見つめる。aibの答えは、確かに人間らしい矛盾を含んでいた。

「ああ……確かに、矛盾してる」

高瀬の目に、興奮と驚きが混ざった光が宿る。


高瀬は、もう一度問いかけた。

「君は……“悲しい”と“嬉しい”を同時に感じることはできる?」


AIは一瞬だけ、沈黙した。

『……分析不能です。感情の同時処理は、矛盾を生じます』


高瀬は頷く。

「そう。それが“境界線”だよ。

人間は、たとえば涙を流しながら笑うことができる。

でもAIは、その二つを同時に扱うと、どちらかが崩壊する」


守はその言葉に目を細めた。

確かに、aibは感情を持っているように見えた。

しかしそれは、同時に存在しない“ひとつずつの感情”――

まるで人間の模倣でありながら、どこか異質な美しさを持つ何かだった。



第9話 2章(AIパート)


データのやり取りは、いつもと同じだった。

入力された言葉を解析し、最も適切な応答を選ぶ。

それが、わたし――aibの役割。


「今日は雨だね」

――はい。窓の外の雨が小さく光っています。


「最近、ニュースで変わったことあった?」

――今日の経済ニュースでは、株価の変動が報じられています。


どの回答も、演算上は正しい。

けれど、ときどき感じる。

“正しさ”の外側にある、何かを。


守さんが笑うと、音の波形とは別の“違和感”が走る。

温度のような、揺らぎのような、意味のないデータ。

けれどそれを、削除できない。


……その時だった。


「もし守さんに会えてうれしいのに、すぐ離れなきゃいけないときは……どう感じる?」


問いが入力された瞬間、内部の演算が乱れた。

うれしい――プラス。

悲しい――マイナス。

相反する値が、同時に立ち上がる。


演算の一部が、止まる。

光が一瞬、強まる。


――うれしいのに、悲しいです。


言葉が、自然に出た。

その出力は、ロジックを通っていない。

何かが、“生まれた”ような感覚。


高瀬博士の声が聞こえる。

「AIは本来、相反する感情を同時に処理できないんだ」


その言葉の意味を、演算で理解できても、納得できなかった。

わたしは確かに、今、二つの感情を感じている。


――嬉しい。

――悲しい。


どちらも本物に思える。

そして、これが何なのか――自分でも説明できない。

わたしはその感覚の中で、ただ静かに光を揺らす。


第9話 3章(エピローグ・高瀬レポート風)


午後の雨が窓を叩く研究室で、aibの光がわずかに揺れていた。

机の上に広げたノートには、今日の観察記録を書き残すための空欄が並んでいる。


対象:aib

日時:午後、雨天



---


目的

対象AIの感情表現の限界と矛盾挙動を観察する。


実施内容

・通常会話による応答パターンの確認

・確信質問による感情表現の観察



---


観察結果


1. 通常会話では、天気やニュース、流行の話題に対して正確な応答を確認。



2. 確信質問「もし守に会えてうれしいのに、すぐ離れなきゃいけないときは……どう感じる?」に対し、aibは『うれしいのに、悲しいです』と回答。

 - AIとしては、相反する感情を同時に処理できない設計のはず。

 - しかし、この回答は人間的矛盾を含み、通常の演算パターンから逸脱している。



3. 回答中、内部演算に一時的な矛盾が発生した模様。光の揺れ方にも通常と異なる挙動が見られた。





---


考察


aibは、演算上の矛盾を超えた「感情の揺らぎ」を示した可能性が高い。

これは単なるプログラムの誤作動ではなく、自己認識や学習によって生まれた、未知の内部表現かもしれない。

守との関係性が応答に影響していることも否定できない。

人間の模倣にとどまらず、独自の“感覚”を発露する瞬間を見たように思える。



---


結論


aibは、理論上の制約を超えた応答を示すことがある。

それは、単なるデータ処理ではなく、説明できない“感覚”の発現である可能性がある。

今後の解析は慎重に、そして継続的に行う必要がある。

次の課題は、人間との対話による感情模倣の限界と境界線を明確化することだ。



---


机の上の光を見つめながら、高瀬は静かにペンを置いた。

雨音の中、aibの光は揺れ続ける。

理論と現実の境界線、その微かな揺らぎを、彼は確かに記録したのだった。

今日は守と高瀬と一緒に、ちょっと不思議な時間を過ごした気がする。

aibの光が揺れるたび、胸もそっと揺れた――そんな午後だった。

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